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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode7 新入生の悩み
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第102話 悩みの正体

こんにちわ。

9月最初の投稿です。

 最近元気が無い本郷を心配していた真樹は、先程のノックでエラーをした本郷を呼び出して話を聞く事にした。他の1年生部員や伸治も遺書にいる中、ようやく真実を話してくれた本郷だったのだが、その事実に一同は一瞬ポカンとしていた。本郷を悩ませていた原因は、彼が交際中の女性だというのだ。

「その、ごめんなさい。ちゃんと話せなくて…。」

 本郷は再度、申し訳なさそうに深々と謝罪した。真樹は難しい表情を浮かべながら一度頷き、本郷に向き直る。

「なるほど。それがお前の悩みの種だったのか。」

「いやいや、真樹!何でお前そんな冷静なんだよ!」

 伸治は少し動揺しながら真樹に突っ込む。そして、他の1年生部員たちも本郷に詰め寄った。

「お前彼女いたのかよ!一言も言ってなかったじゃねーか!」

「お前だけ彼女いてズルいぞ!俺は今だにモテたことないのに!」

「彼女がいるのに悩みとか贅沢すぎるだろ!だったら替わって欲しいわ!」

 それぞれ好き勝手言う1年生たちに対し、真樹が制止に入る。

「まぁ、待て。一旦落ち着け。本郷、ここまで話したんだ。何で悩んでいるか、教えてくれるな。」

「はい。実は…。」

 本郷はそれから、事の全てを話し始めた。


 それは約3か月前。本郷の中学の卒業式でのことだった。卒業式を終え、最後のホームルームの後に各自解散となったのだが、彼は自身の机の中に桜色の封筒が入っているのに気付いた。

「ん、なんだこれ?」

 トイレに入り、こっそり中を開けてみるとそこにはボールペンで文章が綴られた手紙が一通入っていたのだった。


『大事なお話があります。ホームルームが終わったら校舎裏に来て下さい。』


 送り主の名前は書いていなかった。少々不安だったが、とりあえず真実を助ける為に本郷は手紙の通り校舎裏にやってきた。すると、小柄で色白な黒髪ロングの女子生徒が一人立っており、本郷を見るなり笑顔で手を振ってきたのだった。

「あ、本郷くん!」

「ん、どうして台田(だいた)がここにいるんだ?」

 その女子生徒の名前は台田(だいた)みどり。本郷のクラスメートの女子生徒だった。3年生で初めて同じクラスになり、遊んだ事などはなかったが、席は隣で行事などでも同じ班になることが多かった。本郷は訳が分からずに立ちつくしていたが、台田は本郷に近づいてきて話し始めた。

「ごめんね、呼び出して。本郷くんにどうしても話したいことがあって。」

「俺に?どんな話?」

 本郷がそう聞くと、台田は少し顔を赤らめながら口を開いた。

「私ね、同じクラスになった時から本郷くんのこと好きだったの。でも、高校は別々になっちゃうし…。だからね、その前に伝えたかったの。お願い、私本郷くんの彼女になりたい!付き合って!」

 突然の告白だった。一瞬びっくりしてしまった本郷だったが、彼は一度も女性と付き合った経験は無く、知る限りでは台田が悪者ではないと思っていたので、頷きながら返事をした。

「え、マジで?お、おれなんかでよければ、こちらこそお願いします!」

「ホント!やったー!嬉しい!」

 それから本郷と台田の交際が始まったのだが、それが地獄への幕開けだとこの時彼は思わなかった。ゲームセンターでのデートでは…。

「おーい、いくらつぎ込むんだよ。早くほか行こうぜ!」

「だめ!今日は取れるって直感が頭に響いたの!ここで止めたら後悔するからそんなのは許されないの!」

 台田はクレーンゲームの前に長時間居座り続け、目当ての景品を前に格闘していた。この時既に2千円以上費やしており、更に順番を待っている他の利用客の列ができ始めていた。台田はいくつかの景品を既に取っていたが、お目当てが取れるまで止めないと聞かなかった。やがて、店員が二人の元にやってきた。

「ちょっと、お客さん。他の人待っているのに長時間占領されちゃ困るね。」

「何よ!こんなお客いじめの難易度にする方が悪いんじゃない!クレーム入れてやるから!」

「あー!!ごめんなさい!すぐ帰りますんで!」

 店員に注意されて更に突っかかる台田を、本郷が店員に謝りながら無理やり手を引っ張ってゲームセンターをあとにした。そして、台田は本郷を睨みつけながら怒り始めた。

「ちょっと!丈がもっと早く私を止めてくれなかったから、あの店員に怒られちゃったじゃない!謝ってよ!全部丈が悪いんだから!」

「はぁ…。」

「じゃあ、次のご飯全額奢って。さっきのでお金もほとんど無くなっちゃったし!女の子に奢れる男はカッコいいわよ!」

 自分勝手な上に反省の色が見えない台田に対し、本郷は辟易し始めていた。更に別の日には、放課後台田が通う高校の最寄り駅に呼び出され…。

「あ、丈来た!」

「何だよ、いきなり呼び出して。」

「お金貸して!5千円でいいから!」

「何でそうなるんだよ!」

「返すから、お願い!そうじゃないと私、明後日の友達の誕生日プレゼント買えなくなっちゃう!そんなんで人間関係壊れるの嫌だ!」

「…。一回でいいから親に頼んでも良いんじゃないか?それと、お金無いんならバイトでもすれば?お前の学校、禁止じゃないだろ?」

 本郷はそう提案したが、台田は全く聞く耳を持たない。

「この前お小遣い貰ったばかりだからもう親には頼れない。あと、バイトしたらその分デートする時間が減ってストレスたまるから絶対に嫌!」

 彼女は少しでもお金があるとすぐに使い果たす悪い癖があった。その上貯金もせず、人のお金に頼ろうとする部分に本郷は苛立ちを募らせ始めた。また、彼が登校している時にも電話やメッセージを大量に送り続けたことがあった。休み時間に本郷がスマホを開くと、メッセージや不在着信が100件以上たまっていることが当たり前になっている。そして、それに返事をすると必ず彼女から怒りの電話が耳に響くのだった。

「彼女がこんなに電話してるのに出ないなんて酷い!浮気でもしてるんでしょ!」

「してないって!何でそうなるんだよ?!」

「じゃあ、すぐに出てよ!こっちは死ぬほど寂しい思いしてるんだから!」

「俺もお前も普通に授業中だろ。無理だって!」

「だったらお腹痛いとか適当な理由つけてトイレに避難でもしてよ。彼女の私がそうしてるんだから、丈もそれ位やるのが当然でしょ!」

「…。」

 何とも自分勝手な台田だった。そんな彼女に長期間振り回され続けた本郷の心は、次第に蝕まれていったのだった。


「…と言う訳です。」

 話を聞いた一同はすっかり黙り込んでしまった。そして、千葉達1年生は申し訳なさそうに声をかけた。

「すまん、丈。お前がこんな苦労してたのに勝手なこと言って。」

「何かあったら、俺たちにも相談してくれ。」

「そうだ。お前には俺達が付いているんだから。」

 そして、真樹も付け加える。

「本郷。話は分かった。もう一人で抱え込まなくて良いから、この後の練習はしっかり集中するんだぞ!」

「はい!色々すみませんでした!」

 本郷は深々と頭を下げた。その後、休憩が終わって練習が再会したのだが、本郷は話してすっきりしたのか、動きのキレが戻り始めたように見えた。


 その後、練習が終わって部員たちは帰宅して行った。真樹は伸治、武司、沙崙と共に歩いていたのだが、その時真樹は本郷のことを説明した。その時、席を外していた武司と沙崙は、話を聞いて顔を顰めながら言った。

「彼女は欲しいけど…そんなのは嫌だな。」

「何、その女最低じゃん!同じ女として恥ずかしいわ!」

 二人は口を尖らせながら言った。そして、伸治は難しそうな表情で話はじめる。

「でもさぁ、恋は盲目っていうか…杜夫の時もそうだったけど、恋愛すると感覚が麻痺する事があるんじゃないか?何が正しいかの判断も怪しくなったり。」

「だが、今回は笑い事じゃない。あいつの今後にも関わるから、助けてやりたいな。」

 真樹はそう言った。そして、武司と伸治は苦笑いしながら話し始めた。

「俺、可愛い子と付き合いたいけどやっぱり中身がしっかりしてるのが良いわ。」

「俺も。あんな話聞いたら、恐ろしくて仕方ない。」

「バカ。恋愛なんかに現をぬかすなよ。」

 真樹は二人に突っ込んだ。どんな真樹に武司が突っ込む。

「お前もさぁ、少しは女嫌い克服して彼女作っても良いんじゃないか?そうすればお前だって毎日気まずい思いしなくて済むし、大和田もお前をバカにできなくなるだろ?」

「知るか、そんなこと。俺はこれでいいんだよ。それに、今更俺を好きになる女性はこの世に一人もいないから。あと、停学野郎のことはもうどうでもいい。」

 真樹がそう言うと、横にいた沙崙が手を上げながら話し始めた。因みに、裕也の停学期間はまだ継続中である。

「だったら、私が真樹の彼女になってあげる!民度が低い他の女子に比べればマシでしょ?」

「悪い冗談はよせ。俺は誰とも付き合うつもりはない。このまま一人で幸福を掴み取ってやるさ。」

「ちぇー、つまんないの!」

 沙崙はむくれながらそう言った。かくして、本郷の不調の原因が分かった真樹だったが、その解決方法に関してはまだ目途が立っていない状態だった。

こんにちわ。

やっぱりお金にだらしない人は嫌ですね。

真樹はどうするつもりなのでしょうか?

次回をお楽しみに!

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