第99話 調子が悪くないか?
こんにちわ!
今日から新章です!
沙崙へのいじめ問題が解決してから、およそ1週間が経過した。その後、彼女は立石がかけあった事によってA組に引き取られ、真樹とクラスメートになったのだった。因みに、大谷津学院国際科の生徒の方は、沙崙への仕打ちが批判されたことによってすっかり疲弊していた。更に、このことがきっかけで海外の協定校契約を次々と打ち切られたことによって、国際科は来年度の募集を停止、そのまま廃止することが決まったのだった。そんな状況の中だったが、真樹達野球部は新たに臨時マネージャーとして加入した沙崙と共に、今日も元気に放課後練習をしている。
「ファースト!」
「はい、お願いします!」
ノックをしてい関屋の掛け声に、一塁の守備に付いた真樹が元気良く返事する。夏の県予選までまだ少し時間があるが、3回戦止まりの状況を打破しようと部員たちは必死になっている。真樹の軽快な動きで打球を受け止め、練習着を泥だらけにしながらベンチに下がってきた。
「よーし、良いぞ真樹!その調子だ!」
「はい、ありがとうございます!」
関屋にそう言われた真樹はグローブを外して練習着についた泥を少し払う。すると、沙崙が水を差しだしてきた。
「お疲れ様、真樹!調子よさそうね!」
「勿論だ。今年は本気で勝ちに行きたいからな。」
「そう?じゃあ、私もマネージメント頑張んないとね!」
「誰もお前に文句言う奴いないだろ。」
真樹は沙崙にそう言った。沙崙は元々野球が好きで詳しいというだけあって、スコアリングや守備位置の指摘などは的確だった。就任初日も彼女の考案した練習メニューが行われたが、他の部員からもやりやすくてよかったと好評だった。
「嬉しいわ。謝謝!」
沙崙は微笑みながらそう言った。そして、真樹より先にノックを終えた伸治と武司が近づいてきた。
「よお、陳さん。マネージャー、少しは慣れてきた?」
「みんな陳さんが来てくれたことを喜んでいるよ。改めて宜しく!」
「ええ。こちらこそ!」
臨時マネージャー沙崙の加入は、部員たちにとってかなり得なことになっている。創設以来、マネージャーが不在だった大谷津学院野球部は、スケジュール管理なども全て部員たちが行っていたが、沙崙が来てくれたことによって、その分の負担が減ったのである。そんな中、真樹はふとグラウンドを見ると、厳しい顔をした。
「こらー、集中せんか!」
「ごめんなさい!」
まだノックが行われていたのだが、関屋の声に対し、一人の部員が申し訳なさそうな顔でそう言った。彼はサードについていたのだが、正面に来た打球をはじいてしまったのだった。その後のノックでも、何度かはじいたり送球が乱れたりと、今後に課題を残す内容のノックだった。そんな状況を見て、真樹は心配そうに言った。
「なぁ、本郷の奴少し変じゃないか?入った時はもう少しマシ…、いや寧ろかなりうまい部類に入ってたのに。」
「そう言われれば…確かに。」
「スランプって奴か?だとしたらた手助けしてやりたいな。」
武司と伸治も心配そうにそう言った。先程ノックを受けていた部員は本郷丈と言って、今年の春に入学してきた1年生である。長身だが体格は細身で、長打力もあまり高くはないが守備範囲がとても広いのが売りである。しかし、そんな彼はこの日は絶不調であった。その後の打撃練習でも、空振りや凡フライを繰り返し、すっかり意気消沈していた。そんな彼を、関屋も心配している。
「どうしたんだ、本郷?ここのところ調子が悪いみたいだが、体調でも崩しているのか?」
「い、いえ…大丈夫です!申し訳ありません。」
「ならいいんだが…うちは部員数ギリギリなんだからさ、お前に頑張ってもらわないと困るんだよ。その辺の自覚は持ちなさい。」
「分かりました…。すみません。」
本郷はぺこぺこと関屋に頭を下げながら言った。結局不安要素を残したまま、この日は練習を終えた。それから部員たちはぞろぞろと帰宅し始め、真樹は信じ、武司、沙崙と共に話しながら校門を出たのだった。そして、真樹は先程の本郷の事がどうしても頭から離れないでいた。
「うーん…絶対に変だ。本郷の奴。」
真樹の言葉に武司と伸治も渋い顔をしながら言った。
「確かに、なんか元気ないって言うか…。」
「あれは絶対、何か闇抱えてるな。」
3人の言葉に流石の沙崙も深刻な顔をせざるを得なかった。
「このまま放置するわけにはいかないわ。何とかマネージャーとして、彼を助けてあげないと。」
様子がおかしい本郷を何とかしてあげたいと思った4人。だが、彼らの想像を超える者がそこには待ち受けていたのだった。
こんにちわ!
折角真樹が進級したので、新入生の話を入れたいと思いました。
不穏な空気ですが、果たしてどうなるのか?
次回をお楽しみに!




