コピースキル
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
『レベルが上がりました!』
「うるせぇぇぇぇ!!!」
怒濤のレベルアップ通知に、俺の中の何かがキレた気がした。
「もう数えきれねぇくらいその通知聞いたよ!何度目だよ。纏めるかスキップ機能くらいつけとけや!」
疲労と緊張でくたくたになっているというのに、レベルアップ通知がうるさすぎて全く寝れない。
ゲーマーとして徹夜は慣れたものだが、辛くないなんてことはない寝れないのは素直にきつい。
その時。
「やっと終わった……」
ついに、レベルアップの通知が聞こえなくなった。
これで寝れる……と思ったのだが、一体どれくらいレベルが上がったのか、スキルポイントを獲得したのかがどうしても気になって目が冴えた。
「ステータス」
どきどきしながら、俺はそう呟いた。
ステータス
LV64 総合戦闘力 8328
名前:黒柳 悠
年齢:17
技能:ユニークスキル:『悦楽者』
EXスキル:『技能書』
ユニークスキル:『偽装者』
スキル:『鑑定』
スキル:『隠密』
スキル:『混乱付与』
スキル:『睡眠付与』
スキル:『回復魔法』
常用スキル
スキル:『気配察知』
スキル:『回避』
スキル:『逃走』
耐性:なし
残スキルポイント:1280
レベルめっちゃ上がったな。
まぁあんだけいた敵を全滅させたんだし、納得だな。
総合戦闘力も四桁になってるし。
と、そうだ。総合戦闘力で思い出した。
俺は初めて見たときから思っていたのだ。
総合戦闘力とは、何を総合した値なのか、と。
たぶん戦闘力と言うからには、筋力や防御力、そんなものを統合した結果が、その総合戦闘力になるのだと思う。
だから、鑑定スキルを使えば、総合戦闘力の詳細が見れると、そう思ったのだ。
てなわけで、鑑定
攻撃:1020
防御:1050
敏捷:1056
魔力:1812
魔攻:860
魔防:990
器用さ:1540
ビンゴ。やっぱりあった。
この本当のステータス━━裏ステータスと名付けよう。
この裏ステータスに表記されている数字を全て足すと、ちょうど総合戦闘力の8328になる。
この裏ステータスを見ると、俺が魔力に特化していることがわかった。だとすると、魔法を中心にスキルを取った方がいいか?
いや、待てよ……。
今の俺の所持スキルポイントは1280。
こんだけあれば、ユニークスキルの『観測者』を獲得できる。
あのスキルと、偽装者のスキルがあれば、確か敵が使ったスキルをコピーできるはずだ。
カーソルを下に下げる。
あった。
観測者のスキル。
これは……とるしかないよね?
だってスキルのコピーだぜ?
いわば、スキルポイントを消費しないでスキルを獲得できるってことだ。これはデカイだろ。
迷うまでもない。
『ユニークスキル鑑定者を獲得しました。それにより、ユニークスキル:『偽装者』と連動し、EXスキル:『偽造者』を獲得しました』
アナウンスが脳裏に響いた。
残りスキルポイントは680。
で、俺のレベルは64。観測者を取るまであったスキルポイントは1280だったから、一回のレベルアップで獲得できるスキルポイントは20ってことか……。
だとすると、俺があの天使からもらったスキルポイント1000はLV50分に相当するスキルポイントだったのか……。
観測者を獲得するためのスキルポイントは600、偽装者を獲得するためのスキルポイントは500。
偽造者のスキルを獲得するために必要なスキルポイントは合わせて1100だ。
もし俺の他に転移者が居たとしても、他の転移者が『偽造者』を所持している可能性は皆無に等しいだろう。
なぜなら、この偽造者を獲得する難易度はとんでもなく高いからだ。
最短距離で偽造者のスキルを得ようとしたとしたら、LV55まで一つもスキルをとってはいけない。
しかも、この偽造者は、技能書には乗っていない。
気づくことすら、難しいだろう。
ある意味、偽装者のスキルを始めに取ったのは運が良かったかもしれない。
そうじゃないと、たぶん観測者なんてスキル取らなかったと思うし。
ていうか、観測者って一体どんなスキルなんだ?
てなわけで、鑑定
鑑定結果:『観測者』━━━確率変動 動体視力上昇 スキル内包【千里眼:鑑定:集中:暗視】
なんだこのス━━。
俺はそこで思いとどまった。
一瞬、600のスキルポイントに値しないスキルだと頭が過ったが、それは違う。
「これは……化けるぞ」
内包しているスキルも、便利だが一番使える能力はこの確率変動だ。この能力があれば、魔物に状態異常などをかけるときのLV差依存とかの、特定のステータスに依存して発動するという効果を無効化できる。
単純な話、昨日の魔物よりけた違いに強い魔物が出て、混乱付与や睡眠付与のスキルが効かなかった場合、俺に残されている手は少ない。せいぜいが、他の魔物の認識を書き換えて同士討ちさせる程度だろう。
今の俺の力の主軸は『混乱付与』と『睡眠付与』だと言っても良い。偽装者に内包されている『認識操作』のスキルが昨日役に立ったのは、あれが乱戦だったからだ。
1対1だったら、たぶん使えないだろう。
それにたぶん『認識操作』もたぶん確率で発動するスキルだし。
使えば絶対に発動するって訳じゃないだろう。
そういうわけでも、この確率変動は強い。
もしかすると、必中で混乱と睡眠を付与することができるかもしれないし、認識操作だってそうだ。
状態異常が必ず当たるという前提ができたのなら、戦いの幅も大きく広がるだろう。
EXスキル偽造者を得て、通常のスキルは必要なくなった。……だとすると俺が取るべきスキルは『ユニークスキル』か『EXスキル』に限られる。
耐性系統のスキルは、この森の中にある毒物を食べれば取得できるだろう。幸い俺には鑑定がある。
死なない程度の毒量の食べ物を食べればいい。
だからやっぱり、俺が取るべきなのはユニークスキルかEXスキルなのだ。
カーソルを下に下げる。
と、そこで気づいた。
「あれ……?消滅してる」
獲得できるユニークスキルの数が、昨日より明らかに減っていることに。
見間違いではない。
だとすると……。
ユニークスキルの所持者が、現れたのか。
あの天使は言っていたユニークスキルとは、世界で一人だけがもつオンリーワンのスキルだと。
……ん?そうだ。じゃあよくよく考えれば偽造者のスキルを持ってるやつって絶対いないよな。
俺が獲得条件である『観測者』と『偽装者』を持ってるんだし。
だとしたら、なんで偽造者のスキルはユニークじゃないんだ?
……考えてもわからないか。
ともかく、できるだけ早くユニークスキルを獲得しておこう。
そのためには今はスキルポイント貯める一択だ。
偽造者があるしな。
せっかく、こんな力が物をいう世界に来たんだ。
強くならなきゃ損だろ。
でもとりあえず今は、眠ろう。
疲れてちゃ、満足に動けない。
それに、先ほどから一向に気配察知に魔物たちは引っ掛からない。この事から、この森の魔物が夜行性だと言うことが分かる。
昨日だって夜になった瞬間に、魔物が突然現れたし。
たぶん、太陽が出ている間はセーフタイムだ。
それにもしこの読みが外れたとしても、気配察知のスキルで敵が来たら分かるし。
飯は……もういいや。
少し寝てから、探しに行こう。
そこまでで、限界だった。
足がふらつき、地面に体が投げ出される。
降り積もった葉っぱがクッションになり、痛みはない。
逆に少し気持ちいいくらいだ。
意識が落ちていく。
溶けるように、沼に嵌まるように、どろどろとした闇に意識が塗りつぶされていく。
そして、完全に意識が落ちた。
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ステータス
LV64 総合戦闘力 8328
名前:黒柳 悠
年齢:17
技能:ユニークスキル:『悦楽者』
EXスキル:『技能書』
EXスキル:『偽造者』
ユニークスキル:『偽装者』
ユニークスキル:『観測者』
スキル:『鑑定』
スキル:『隠密』
スキル:『混乱付与』
スキル:『睡眠付与』
スキル:『回復魔法』
スキル:『拡散』
常用スキル
スキル:『気配察知』
スキル:『回避』
スキル:『逃走』
耐性:なし
残スキルポイント:680
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