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僕のパーティーはロリだらけ  作者: MyMy
勇者誕生編
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プロローグ



「うああああああ」


 僕こと、猪島圭人は大声をあげて尻餅をついた。

 深夜の路地裏はお世辞にも綺麗とは言い難いが、そんなこと気にはならなかった。


「くそったれえええええ」


 身長185センチを超える長身。姉のダイエットに付き合わされて、引き締まった体まではよかったのだが、短く切り揃えた髪、切れ目で見た相手をひるませる眼光。

 本当の僕を知らない者からは、よくヤンキーだと間違われた。


 そんな僕が叫びながら走っている。必死で足を動かし路地裏を縫うようにして移動する。もはやなりふり構っていられなかった。

 後ろを振り向くとバッチリと目があった。


 ーー爛々と輝く赤紫の瞳。


 3階だてのビルくらいの大きな躯。

 その姿は、トカゲに翼。神話や物語で見るようなドラゴンそのものだった。

 こんな状況でさえなかったら、僕もテンションが上がっていたと思う。


「グワアアアアッ!」


 吐息が後ろ髪を焦がす。石の城壁さえ溶かすその高温に鳥肌がたった。相手が少しでも本気だったのなら消し炭になっていただろう。


 ドレイクドラゴン。


 どう猛なレットドラゴンや、狡猾で知恵が働くグリーンドラゴンにはかなわいとしても、貪欲な食欲と繁殖性の高さから国の一級指定のモンスターには違いない。

 しかし、僕も異世界からの転移者。ならこの程度のピンチ……。

 瞬間。

 熱を感じた。とっさにしゃがむと、今まで自分の頭があったところにちょうど炎が通過する。


「もう無理ーー!」


 ……訂正。

 全くもって無力だった。


 「ギシャァッァ」


 夜の街にドラゴンの雄叫びがこだまする。

 ドラゴンは首を左右に揺らしながら迫ってきている。

 しかし運の悪いことに行き止まりに当たってしまった。

 土地勘のないところで走り回った結果である。


「あ、あはははは」


 思わず乾いた笑いが出た。

 ドラゴンは今度こそ逃さないとばかりに、ゆっくりと歯を噛み締めながら近づいてくる。

 ぞくりと冷たいものがよぎる。

 ちくしょう僕を食べても美味しくないぞ。


「クェちゅいおぱ」


 意味不明な叫び声をあげながらどうにか逃げ場はないかと左右を見渡す。

 同時にドラゴンが動いた。

 大きな牙が僕めがけて……


 ーードゴン


「大丈夫ですか! 先生!!」


 閉じていた目を開けると、横たわったドラゴンの上に幼女が立っていた。

 臙脂色の胸当てに同色の兜。身の丈を大きく超える大剣が深々とドラゴンの脳髄に突き刺さっている。

 満月をバックに立つその姿はまるで物語のワンシーンのようだ。


「あ、あぁ。……だいじょうぶだよ、セリア」


 彼女の姿を見た瞬間、力が抜けてその場に座り込んだ。

 ドラゴンは完全に頭が潰されているのが見てとれた。

 彼女は大剣を引き抜くと、竜の頭から華麗に着地する。


「ああーセリア。また抜け駆けー!」

「ふーせりあ、あしはやい」

「さすがセリア様です」


 彼女が僕の方に降りてくると同時に、三人の女の子が駆け寄ってきた。

 全員、異世界ならではのカラフルな頭をしており、どの子も小学生低学年をぐらいの身長をしている。


「もう。今度こそ、私が倒すって言ってたよね」

「ご、ごめん。なんと言うか条件反射でつい……」

「こんどは、くれあがたおすー」

「あらあら」

 メイド服を着た少女がその光景に微笑みを受けべていた。

 しかし、その姿はどこか楽しそうで、今まで戦場だったと言うことを忘れてしまいそうになる。


「でもさ、さすがケイトン。作戦どおり(・・・・・)ドレイクドラゴンを誘導することができたね」

「そうだよね。ドレイクドラゴンは自分より弱いもの(・・・・・・・・)にしか、攻撃しないのに上手く誘導することができるなんて、さすがです」

「おにいちゃん、かっこいいー」

 

 子供達が満面の笑みで話しかける。

 僕はなんとか立ち上がると、精一杯虚勢を張って……。


「ぁあ、もちろんだとも。これくらい余裕だよ」


 すみません、何回も死にかけました。

 ああ、なんでいつもこうなんだろ。彼女たちの自分の評価が異様に高すぎる。

 本当の僕はくそ弱いんです。

 幼女にレベリングを手伝ってもらっているグズなんです。

 みんなごめんなさい。


 そんな心境を知らずに、金髪の幼女テレーゼは無邪気に言う。


「さすが伝説の勇者さまだよね!!」


 グフっ。


 勘弁してくれ。俺は勇者なんかじゃないんだ!。

 この間まで親のスネかじっていた大学生なんだ。

 異世界の住人なら誰でもチート能力を持っていると思うなよ!


「はぁーおうち帰りたい」


 僕は、誰にも聞こえないように静かに呟いた。

 願わくば一刻も早く自分のベットに入りたかった。

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