ありがとうを……
最終回、ですね……
思い出すと、あの日からだよな……
平泉さんに振られた日から、賑やかになっていった、ような気がする。
こんな言い方をするのはどうかと思うけれど、振られてよかったのかもしれない。確かに振られて、これでもかってくらい落ち込んだ。
けど、今はそれ以上に、楽しい!
あれから水島さんや凛、桜羽さんと出会えた!
雨咲先生や佳香と話す機会も多くなって、少しは親しくなれたと思う。
平泉さんとも、友達として話したりする事ができている。
これ以上ないくらい充実した毎日はないと俺は思ったよ!
もしあの時、告白をOKされていなかったらこんな風にはならなかったはずだ。
もしもOKされたら、デートしたり勉強会したり、映画とか一緒に見に行ったりして毎日を楽しんでいたんじゃないかと思う。
楽しい。そう、楽しい。とてつもなく楽しい。
本当に?
きっと楽しいんだと思う。もしもの俺も今の俺も楽しいだろう。
でも、その2つの楽しさは違う。
俺は振られてから、変わっていったと思う。
俺は、支えてもらっていた。
いつも、だれかに。
昔のままの俺なら、誰かに支えてもらっていたことなんて気づかないんだろうな。
きっと全部自分の力で、なんて思っているんだろう。
けど、今ならわかる。支えてもらっていたことに。
あの人に支えてもらってなかったら、困っていた水島さんに話しかけていなかっただろう。
あの人に支えてもらってなかったら、他人だった桜羽さんに傘なんて貸さなかっただろう。
あの人に支えてもらってなかったら、凛と一緒にバスケットボールなんてしなかっただろう。
あの人に応援されたから、球技大会を頑張ろうって思えた。
……なんだ、そうだったのか。
俺は…あの人のことが………
あれから、後日。
放課後、俺はある人を教室に呼び出し、そして今待っている最中だ。
さすがに帰ってないといいんだけどな……
そして、教室の扉が開かれた。そこには俺が呼び出したであろう人物がいた。
「お待たせ〜! どうしたの〜? 急に呼び出して〜」
「ごめんごめん、用があってね」
教室に入ってきた。
不思議と緊張はしなかった。
自然と会話ができていた。
「用事〜?」
「そ、用事。大事な用事」
これから言うことは大事なことのはずなのに、緊張する気配がない。
むしろ言わなくてはいけない気がする。言わないと、後悔するだろう。
「大事な用事って〜?」
「ああ、それは……」
今まで支えてきてくれたこの人に、俺の気持ちを伝えなくてはいけない。
「俺は佳香が、好きだってことだ!」
「……っ」
佳香に!
佳香は俺のことを支えてくれた。その事に気づいてから俺は……いや、その前から…惹かれ始めていた。
素直になることがなかなかできなかった。
でも、今なら気持ちを伝えられる。
「佳香、好きだ! 」
「……っ!?」
佳香は驚いた顔をしていた。
そして、次第に顔を赤くしていき、真っ赤になってしまった。
それから少しの間は俯いていたが、顔を上げた時の表情は、笑顔だった。
佳香は口を開いた。
「……わ、わたしも! 涼くんが、好き!」
「っ!」
嬉しいよ、佳香。
「俺と、付き合ってもらえますか?」
「もちろん、喜んで〜!」
今まで見てきた中で、1番の笑顔を見た。
「佳香、ありがとう」
「ううん、わたしこそ〜。ありがとう〜、涼くん! 」
これからは、今まで以上に楽しい日々が待っているだろう。
だから、今まで以上に、ありがとうを伝えていきたい。
『告白を断られたらモテ始めた』は、これにて終わりになります。
今まで見てくださった皆様方、ありがとうございました。
多くの方々に見ていただいて、幸せです。
これからは他の2つの物語を進めていく予定なので、もしよろしければそちらも見てください。




