ハンバーグ!
エスパーをこじらせ過ぎた転校生に連れられてきた先は、見ただけですぐわかる高級住宅だった。
まさか本物のお嬢様だったとはな……
っていうか、なんで俺は初対面の人の家に連れてこられてるの?
「……ただいま」
「お邪魔します」
相手の両親が不審に思わないよう、堂々と家に入る。
「お腹空いた」
「はいはい、すぐ作りますよーっと」
食材は家に向かう途中に買っておいた。
適当なもの作ってそれ出せばいいか。
「はい、どうぞ」
「ん、おつかれ」
いや、おつかれって……
確かに料理するのも疲れるけど、この人を相手にする方が疲れるよ!?
できればそっちの方を労ってほしかったね。
無難にハンバーグを作り、皿に乗せテーブルの上に置いた。
すると七重さんはじっとハンバーグを見つめていた。
真顔と睨み顔しか見たことのない顔が、うっすらとではあるが、笑っていたのだ。
幼い頃遊んでいたおもちゃを見つけた、まるでそんな顔をしている。
「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
笑っていたことにツッコミを入れるべきか悩んでいると、見ているだけでは我慢出来なくなったみたいで食べ始めた。
フォークを使うのかと思っていたが、違うらしく箸を使ってハンバーグを食べ始めた。
何度か咀嚼した後、飲み込んで俯いてしまった。
もしや、口に合わなかった?
それとも分量を間違えて味が変になったのか!?
不安が増していく中、七重さんは俯いたまま顔をあげようとしない。
「あの、七重さん……?」
「……お」
「お?」
「お…おいしい! 美味しいわ!」
心配になり声をかけたが、七重さんは唐突に顔を上げ満面の笑みを浮かべていた。
なんだ、こんな可愛い顔もできるんだな。
先程はうっすらとしか笑っていなかったが、今は満面の笑みだ。
作った甲斐があったよ、ほんとに。
「ほんとに美味しい……ねぇ、那月くん! 私と結婚しましょ!」
「なんでだよ!?」
ほんと、なんでだよ……
どうしたらこの流れでプロポーズできるんだよ!?




