転校生
スマホのロックを解除してメッセージを確認する。
んーっと、どれどれ?
『先日はどうもありがとうございました!! おかげさまで、ギリギリ赤点回避できましたよ!!! これで楽しい楽しい夏休みを迎えられるっすね!!!』
お、凛からか。
赤点回避できたんだなぁー、よかったなぁー。
それと、先生には感謝しておけよ……
あんなに疲れ果てた先生は初めて見たからな……相当、教えるのが大変だったんだろうな。
燃え尽きた、と言ってもおかしくない程だった。
とりあえず返信しとかないと。
『おつかれさん。夏休み、存分に楽しめよ!』
こんな感じでいいかな。
あまり長すぎても困るだろうし。
丁度良くチャイムが鳴ったのでスマホをしまった。
その日の放課後は先生に呼び出しを受けた。
まさか赤点じゃないだろうな?
内心ヒヤつきながら職員室にいる先生の元を尋ねた。
「失礼しま〜っす」
少しだらしないが、他の先生はほとんどいなかったので大丈夫だろう。
雨咲先生は……いた。
あれ?誰かと話してる……見たことない人だけど。
とりあえず先生の元へ近づき、声をかける。
「先生」
「ん? おおっ、那月か。丁度良いな!」
「……」
丁度良い? っていうか、隣に人めちゃくちゃ睨んで来てるんだけど!?
先生、 この人怖いよ!? なに、先生のファンの人なの!?
隣にいる人を横目で見てみる。うん、怖い。
顔は整っているし、スタイルは……スレンダーだね。まな板なんて言ってないぞ? スレンダーっていうのはやや膨らみかけってところ。まな板は絶望てーー「なにか?」ーーなにもないですすみません。
なに? エスパーなのこの人?
考えてることを読み取れる人なの?
「なにか言いたい事でもあるんじゃないの?」
「いやいや、何も言いたいことなんてないよ」
「……ふーん」
無愛想、その言葉がピッタリだと思った。
金髪でツインテール、まるでラノベのお嬢様キャラだな。
親が金持ちとか言っておいて、実は家が貧乏ってこともありえる。
あるある展開だけど、そういうのは嫌いじゃない! むしろ好きだな!
「那月、紹介しよう。彼女が前から言っておいた転校生だ。名前は七重 月子。よろしく頼むぞ」
「あ、はい。よろしく、七重さん」
「……よろしく」
七重さんは一言そう言うと、顔を背けてしまった。
なんだか、気難しい人だな。
ふと、疲れそうな予感がした。
気のせいでありたい。




