多分…ね?
とにかくいろいろと言いたいことはある。
が、それはまず置いておこう。
結果から言うと、勝ってしまった。
しかもその後の試合もさらにその後の試合も……
くじ運が良すぎるよ、どんな手品使ったんだか教えて欲しいよホントに。
試合のことを知りたい?
そんなこと聞くなって…1日じゃ語り尽くせないくらい壮絶な内容だぜ?
まぁ、勝ってしまったならしょうがない。
勝ち続けて、とうとう決勝まで来てしまった。
クラスメイトは喜んでいるが、俺は喜んでいいのかわからん。
「やったなお前ら! 決勝だぞ!? これはもう優勝するしかないだろ!」
正気か、お前達よ。
確かにここまで来ると優勝を狙いたくなる気持ちもわかる。
だがな、相手を見てみろ。
バスケ部のレギュラーが3人いるぞ。ルール上3人までは問題ないが、そこまで本気になっていいのか?
これも勝負、諦めろってことだな。
「あれ?那月さんじゃないですか。閉会式前の観戦に来たんですか?」
「残念ながら、観戦ではなく参戦する方なんですよ……」
雨の日に傘を半ば無理やり貸した先輩こと桜羽さん。
久しぶりに話したような気がするが、そんなに時間は経っていないんだな。
「あら…では、これから決勝戦を?」
「はい。勝つのは難しいと思いますけど……まぁ、頑張りますよ!」
「頑張ってくださいね! 私は端っこで応援してますね!」
な、なんで端っこ!?
ツッコんだ方がいいのか!?いや、あえてスルーすべきか!?
「その…なんで端っこなんですか?」
「だって、端っこは人が集まりませんから……人混みは得意ではないので……すみません……」
「いえいえ、大丈夫ですよ!もう応援していただけるだけで十分嬉しいです!」
マズい、今更手を抜いて試合する訳にはいかなくなったぞ……
迂闊なことを言うもんじゃないな……
「それでは、これ以上はお邪魔になりますから、私は失礼しますね。試合、頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます!」
そう言うと桜羽さんは体育館の端っこに行ってしまった。
ほんとに端っこで応援するんだろうなぁ……
「おや、涼さんじゃないっすか」
「……こんにちは……」
今度は凛と水島さんがやって来た。
やっぱりみんな体育館に集まってくるんだよなぁ……
決勝戦の後、すぐに閉会式だから遅かれ早かれ集まってくる。
「2人とも決勝戦を見に来たの?」
「そうっすよ! どうせ暇だったので雲雀と観戦に来たんっすよ」
「…那月さんも……観戦に?」
「いや、俺はこれから決勝戦に出るところだよ」
そう言うと2人は驚いた顔をした。
「意外っすね……そんなに上手かったんすか?」
「いや、くじ運が良かったからだよ」
「……それでも、すごいと思います……」
「うーん…あ、ありがとう…?」
なんて言えばいいんだろうな?
とりあえずお礼を言っておいた。
「それじゃ、私たちも応援してるんで頑張ってくださいよ!」
「……応援、してます……」
「「端っこで」」
「なんでだよ!?」
さすがにこれはツッコむよ!?
でも、応援されるからには頑張るよ。
……多分。




