99:御開帳から訪問
地面までぶった斬っては修復の手間が掛かるね。という事でして、玄関先から庭へ更に変更して移動した一同だった。とりあえずスキル収納から金の箱二つ、白金の箱一つ、ミスリルの箱一つを取り出して並べる。斬りやすい方向に向けて。
「箱だけでも相当な収入ですね。白金は特にです。白金板数十枚は軽く値が付きますね」
「そこの価値が前後してるよね。中身はきっとミスリルの箱が上だろうけど、金属としてはそれなりだし」
「良いから順番に切りなさい」
「小太刀で本当に斬れるか試す。ちょと離れてくれ」
横を通る様に素振りをするが若干刃先がブレる。握手が合って無いんだよなぁ、太刀だと余計に酷くなるか……。
「……駄目だな、これじゃ斬れん。ちょっと待ってくれ」
ただでさえ固い金属だ。それを相手に剣先がブレては剣筋が一定せずに威力が落ちると判断したのだった。
アダマンタイト製の武器を全て取り出して握りを確かめて行く、どれが一番マシなのかを。
大物でぶった斬る予定だったのだが、大物ほど余計に酷くなる。うーんいかんな、選択肢が……。
「如何したのよ、やっぱり斬れそうにないの?」
「握手が合わないから剣先がブレるんだよ。なら大物で力ずくと考えたが余計に悪い。小太刀で斬るしか無いな【エンチャント/風抵抗Lv3】【エンチャント/ウィンドブレードLv2】」
「ちょとテリ。そんな事したら中身まで駄目になるわよ」
「速度で斬るからきっと大丈夫だ」
腰溜め姿勢で重心を下げ鞘を左手に持ち右手をグリップ部に添える。
鞘走りで更に速度を上げて一閃だ。いわずと知れた居合切り、本来は突然の襲撃に対する最速での抜刀法だが、用途が違おうが関係ない。振りかぶれば威力は上がるが速度は居合切りが確実に上だからだ。
鍵の上部分を刃が通ればさっと引く、鞘に戻した時には全て終わる。他の三つの箱も斬り小太刀共々収納した。
「おし完了だ。開けようか」
「剣筋が早すぎて見えませんでしたな」
「本当に切れてるんでしょうね?」
「なら開けるのは任せるわ、開けてみてよアリサ」
いきなり本命から開けるのかよ、普通逆だろと言いたいが、任せたので黙って見守ることにした。何だか中身が偏ってるな。
ミスリルの箱は本だけ、白金は武器だけ、金の箱の片方は煌びやかな宝石と思われる物だけ、もうひと箱は指輪やネックレスなどの宝飾品だけ、偏りすぎだろ。
「初めてこのクラスの宝箱を開けたんだけど、こんなに偏るもんなの?」
武器を手に取り鑑定してみるが元の箱のサイズが横幅一m程度だ。大物は無いな、精々普通サイズの片手剣が一番大きいかな。素材はオリハルコンで頭打ちだが、1本だけ厄介なのがあった。
鑑定
魔剣ヴァラヘルン
材質:刃、オリハルコン:グリップ、ミノタウロスロード背骨、シャドウスネーク革
価格:1350万リル
効果:硬化:石化:軽量化:魔術強化、人族特効
物騒過ぎる。
「この中で鑑定出来る人居ないかな?」
「それなら私にお任せを」
「ならこれを鑑定よろしく」
イケメンエルフに渡したのだが顔色が悪いな、やっぱ死蔵か。
「これは、強烈ですな……」
「やっぱ死蔵かな。サルーン、この剣を宝物庫に放り込んでおいてもらえるかな」
「テリストが保管しておけば出回る心配はないでしょう」
「確かにそうだが、物騒過ぎるんだよなぁ」
「そこまで言われるのならお預かりしましょう。ですが、簡単には出せなくなりますが宜しいですね?」
「永久に出さなくて良いよ、封印してくれると助かる」
「それほどですか」
「硬化と石化の特効付き、掠ったらアウトだな」
「わかりました。取り出せない様塗り固めて保管しましょう」
「さてさて、装飾品に空きスロットが多いのを見つけたいな。鑑定妨害とアラームの効果を付与可能なら良いが。残りは売り払うって事で」
「テリストは売却の伝手はありますか? 無ければ、その鑑定妨害とアラームの件も合わせて、そうですね、売価の5%で手を打ちませんか? 個数は五つ。スロット二つ付いた品を選定する作業まで置け負いましてその中から選んでいただくのは?」
手間を考えれば安いものだが、俺だけの資産というわけでもない。話を振ってみるか。
「武器も結局手に馴染んだ所で品が俺たちには不要だしな、どうする? アリサ」
「魔物ハンターギルドへ流せば確かに売れはするわよ。だけど目を付けられるから、それならお願いした方が良いわ」
「了解。そういう事ですので、金と白金の箱ごと売却をお願いします。
そして宝石か、売るか? 結婚に必要な宝飾類って何一つ確保してないから適当に見繕って各自に合わせた品を作ってもらうか? 出来合いよりは良いだろ?」
「結婚式を控えてる身としては必ず必要ですわよね。それならいっそ、という事ですか」
「だな、なら何時でも売れるし宝石は外そう、アリサが保管して好きな時に選んでくれ、女性たち全員でな」
「そういう事ね。サージ、頼むわね」
「はい、選定してお持ち致します」
サージが自ら持ち歩くマジックバッグに宝飾品の入っている金の箱と武器の入っている白金の箱を収納した。
「本当に厄介なのはこの本だな」
手に取ってみれば魔導書だ。これは以前、強制的に読まされた品だな。
とっかえひっかえパラパラと見て行き読んだ魔導書と確認できれば脇に高積みしていく。
ただでさえ横幅二m、奥行き一,五m、高さ一mほどあるのにぎっしり詰まっている。何冊あるのだか。
全員で見ているが、特段貴重な魔導書は無いのだろう。
だが、闇属性の魔導書らしき書物を発見した。といっても、とりあえずは一冊だ。各属性三冊から四冊は有る。なら、他のも有るはずって事でどんどん加速して探してみるのだった。
「ほら、たぶんこの4冊で全巻だな。闇属性の魔導書一揃え。ただな、これも禁術に成りえるのかな? エルフ的には、どうなの?」
「忌むべき魔術ではありますね、エルフでしたら決して手は出さないでしょう。
それはリニアテッドライフなどの死者復活。この場合はスケルトンやゾンビとして生き返らせ操る魔術も含まれる為です。
ですが有用な魔術が含まれているのも事実です。ライフドレインやマナドレインを覚える事が出来たとしたら相当に楽にはなりますね」
確かにな。魔物から減った分を強制的に補給できるのなら効率が割り増しされる。ポーションの消費が劇的に減る事を考えれば最高のパフォーマンスを叩き出せる。そこまで金銭的に追い詰められてはいないけども。
「なら、基本のダークアローとライフドレインとマナドレインだけに絞って使えばお咎めなし?」
「大っぴらに使わなければ良いでしょう、そこの記述を抜き出して転写してお渡しします。それで良いですか?」
「お願いするよ。その後は禁書にでも指定して放り込んどいてくれればいい」
「ではその様に、これもお願いしますよサージ」
「承りました」
全部サージのイケメンエルフに丸投げだな、有能な部下が居れば上は楽だわ。
「しかし、結構被ってるのが有るな。アリサ。自分の使える属性の魔導書を読むか?」
「読みたいとは思わないわね、その都度テリが実演してくれれば良いわ」
「実演ねぇ。サンフレアも実演しろって? こっちのサージの旦那がキレるぞ」
「頼みますからやめて下さい。一度荒廃すれば再生には相当な時間が掛かりますので」
そりゃそうだ。溶けて固まればがちがちだもんな、草が生えるようになるまで何年掛かる事やら。
「海上で使わなきゃ影響が大きいそうだ、エクスプロージョンで止めたが良いな」
「それでどうするのよ、この魔導書の山」
「如何すると言われてもね、俺は必要ないけど必要な人は居るだろ。俺の嫁にもさ、何処か一部屋貸してくれないかな、本棚設置して種類別に整理しておきたい」
「そんな事なさらずとも資料室をお使いください、基本八属性の内火と闇以外なら揃っています」
ほう、火が無いのか、確かに灰にする火は敬遠するとかラノベに書いてあったなロードス@戦記だが。
それなら選定して売り払うか、いらんし。
「お言葉に甘えますか。全部確認してないので、確認後売り払いますかね。欲しいならその時抜き出す方向でいいかな?」
「それで良いですよテリクン」
「おし、んじゃ寝るか。行こうかクイン、ほら、皆も寝るぞ」
『うにゃ~ん』
「それでしたら此方へ、ご案内致します」
一堂に寝れるようにと案内された部屋は八人部屋、最近嫁ばかりと寝ていたので今夜はクインを抱っこして寝るのだった。




