98:移動制限?
豪華な食事を堪能した俺たち七人とクインの面々だった。
対してサールン側の面々は本人と妹のサーシャ、それに試験官のサージ、後はメイドと料理長と思われる清潔そうな真っ白い前掛けを着けた男性一人だ。
説明された獣王国との戦争、ハイエルフが僅かに残ったとの説明からしてきっと二人共にハイエルフのはず。普通のエルフは太る概念がありませんと言った体型でこの様に肉付きの良い肢体の者が皆無だ。と言うより見た事が無い。そもそもそこが言いたいわけでは無い。
この二人と結婚すると俺の立場はどうなるの? と考えが頭から離れない、種族から考えて俺はこの国の中心にはなりえない、ならずっとハンター稼業で良いのか? という疑問がある。
妹がハンターとして活動していた事からそれも制限されないのでは? とは思うが、聞かなければ始まらないか。
「先ほど確認しませんでしたが俺の立場はどうなりますか? 確かに結婚となれば伴侶となる訳で、行動の制限とか、その辺りをお聞きしたいです。ぶっちゃければ生活圏を何処へ置いたらいいのか? ですかね」
「皇族の一員となりますので当然の疑問でしょう。国内から出なければ大丈夫と言っておきます。
諸外国へこの事を公表して結婚パーティーへお誘い、その場で式を執り行う、と言う流れです。
そうですね。本来であれば十五歳を待ちますが、テリストならば前倒しして構いませんでしょう。
サーシャを見て頂ければ分かる通りにこの国では皇族の家族だからとそれほど重要視されませんので。
ですが、子供が出来れば少し足枷が出来ますね。その点は申し訳なく思います。
それも行先を告げて許可を取る。この程度ですから大丈夫でしょう」
えらく大雑把だな。皇族の時点で確実に国のトップだよな。帝国とそんなに社会形態は違わないと思うのだが。その家族なら相当な地位にあると思うのだがな、良く分からん。
結婚は大々的にするよな普通、外交の一貫でもある訳で、周囲とのお付き合いからもお呼びするのは当然と思っていたからそこは的中したな。
それに名前もだよな。アリサとの結婚話からファーラルの性を名乗ってるけど、この点も複雑すぎて良く分からん。この場で何でも詰めるより少しずつ詰めることにしよう。皇国に腰を下ろす事が確定に成ったのだからな。
「わたくしの立場はどうなるのでしょうか? 亡命者で宜しいのでしょうか? それともテリクンの嫁としての位置でしょうか?」
「亡命者として希望されるのでしたら正式に獣王国への報告と今回の件に関して抗議する必要が有ります。
カーラ王女としてはどちらをお望みですか?」
「カーラ、決める前に一言言っておくぞ。亡命を選べば皇国と獣王国の確執が生まれかねん。俺が全てぶんどって来ているから抗議が来る事は確実だ。遅かれ早かれ必要な事だが時期を考えた方が良い」
「確かにその通りですね。獣王国が戦争に傾いても良い対策が取れてからが良いのでしょうか」
巻き込んでしまうがサルーンが決めたともいえる。俺を婿にするって話の時点で被る覚悟はできてるはず。だから直球で言っても大丈夫だとカーラは考えて、あえて戦争という言葉を出したんだろうな。
「戦争には踏み込めないと思いますよ、考えてみて下さい。
襲われたのは5名で会見の際です。それも魔術を封じられ武器も無く素手の状態で、それを噛み破ったのですから躊躇しますよ。テリストなら城をも破壊しせえる実力が有ることは彼方も承知済み。
そして参戦された場合は空を飛ぶ事も知っている為に直接乗り込まれる可能性が高い事も承知しているはずです。完全に負け戦確定です。絶対に仕掛けて来ないでしょう、いえ、仕掛ける事が出来ないでしょう」
おや。其処を後から説明したのか、俺がのんびりと1人で入っている最中に話したのかな? サルーンの言ってる事に気が付いた。
俺は皇国側の目線でしか考えていなかったのだ。 あれだけカーラに話しておきながら情けない、俺もまだまだだな。
「なるほど、獣王国からの目線ならそうなりますね。
それならどうです。叩いてまだ二ヵ月経ちませんし、資金も底をついてますからね。今は弱りに弱ってる最低状態。今ならどんな要望でも通しやすいですよ。戦争するには資金が必要不可欠、その資金が有りませんからね、回避する為にけっこう譲歩するはずですよ」
「そこまでする必要はありません、此方が挑発せずとも良いでしょう。中立関係を貫ければそれで良いのです。では亡命とその抗議を行う、で宜しいですね? カーラ王女」
ふむ、昔の恨みを少しは相手に返す手をするかと思ったが冷静だな。俺と大分違う。
「それでしたらお手数おかけしますが亡命と抗議をお願いします」
「任されました。ですが、テリストの伴侶として扱わせて頂きますね。他の方々も同様です」
「望むところですのでよろしくお願いします」
「少し話を前後させますが、時空魔術をおいそれと大勢に伝える訳にはまいりません。
そこで制限を掛けさせて頂きます。対象をテリストと奥様のみに絞らせて頂きます」
おや、心変わりしたのかね。俺が言う事じゃ無いが、決定権は奥さんにある、そういう事だ。
今から奥さん扱いにすると決めたテリストだった。
「それがよろしいでしょう。無暗に存在を広めない為にも制限を付けるべきだと考えておりました」
「話を変えますがターラルの隠し部屋を発見したと言ってましたね、何か収穫は有りましたか?」
「宝箱が四つですわね、魔物ハンターギルドに開封も依頼したのですわ、その前にトラブルでそのまま後にしましたわ」
これまた説明する羽目になるのだった。
「また大変な事に成ってるわね、テリスト宛に言伝を頼まれたのはその件だったのですか。此方から事情を話してきます。正当性が有り亡命を認めたと伝えれば収まるでしょう」
「こっちに来てからも人に迷惑かけ通しだな、申し訳ない」
「良いのよ。言葉で済む問題だから気にしなくて良いの、貴方たちには返せないほど恩があるのよ。それより開封して確かめてみたいですね」
「うーん。いっそ強引に開けるか、斬り飛ばした方が早いだろ」
「待ちなさいテリ、ミスリルは斬れないでしょ」
「刀なら斬れるかもよ、試す価値はあるって」
「あんたね、失敗したら折れるわよ」
アダマンタイト製の刀なのに折れるのかね?
「そんなに軟なのか?」
「はぁ、もう良いわ試しなさい」
「そう来ないとな!」
「いつもそんな事するの?」
「いやぁ、鍛冶スキルの熟練度が足りなくて開けれないから今回は斬ろうかなと」
「? 何故鍵開けと罠解除を使わないの?」
うーむ。暇な時にマキビシ作ってたからスキルが四に成ってるな、それなら銀までは可能か。
「それじゃ失礼して実践しますか、なんとか四まで上がったので銀までですね」
レクチャーしながら開けるのだった。
「この宝箱も所詮は金属なんですよ、そして罠解除を失敗したまま鍵を外せば危険が有ります。
だから鍵を開けません。【鍛冶スキルオン】 こうして指を差し込み切り離します。
このまま売却しては危険かもしれませんから鍵部分をついでに切り取ります」
開けて御開帳だ。触ると変形する可能性もある事から箱をひっくり返して中身をぽい、鍵部分を切り取った。
「【鍛冶スキルオフ】 こうすれば罠が発動しません。後はこの鍵部分を溶かして完了です」
生活魔法の火種だが、魔力を込めるだけ威力が上がる。この場合は火力だ。手に握ったままに加熱して溶かし、宝箱にそのまま投入して終わりだ。
「テリ。今回は少し当たりらしいわね」
「あーそう言えばそうだな。宝飾品のネックレスか、これは結構値がつきそうだな」
「て、テリスト。何をしのですか?」
「ですから鍛冶スキルでですね、切り取って」
「そこじゃないぞテリスト様。銀が手の中で溶けたように見えたのだ、其処を疑問に思っておられる」
なるほど。火魔術だと制御が難かしくて火力アップ=範囲も拡大、だからな、手の平だけに集中して熱量をあげるなら生活魔法が一番扱いやすい。
「そっちか。生活魔法の火種に魔力を注いで火力アップ、それで溶かしたんですよ。それと火の抵抗スキルですよ。便利ですよね、確かにHP削られまして痛いですが火傷しませんし」
つでに自動HP回復のスキルを鍛えられる副産物付きだからいう事無しである。
「は? 何を言っておられる?」
「いえいえ、言ったそのままですよ。加熱して溶かして処理しました。以上ですよ」
「……カーラさん、何時もこんな調子で開けておられるのか?」
「銀は初めてでしたが何時もの通りですね。今回は外では無かったので宝箱に戻したようですが」
「テリスト。本当に人ですか?」
うーむ、化け物扱いはよしてくれ……。
「人聞き悪いですよ、れっきとした猫人族ですよ」
「そうですよね、確かに確かめましたから」
「それじゃ開けに行きましょうか。玄関前で良いですよね【ライトボール】」




