96:内情
ヤヨイの事は伏せながらも経緯を詳細に伝えたのだった、めっちゃ呆れている女帝方の面々である。
あれを溶かしてダメにしたのが目の前にいると伝えたのだから俺の立場が最悪である。
「此方の女性が説明したことに偽りは無いか、テリスト」
「ありませんにゃ。ついでに言うと、帝国に魔術を混合する技術はないにゃ」
「先ほど魔導書を閲覧して放ったと申したでは無いか」
「ええ、言いましたにゃ。ですが、その禁術の魔導書とは一言も言ってませんにゃ」
「詭弁だろ貴様。もういい、その辺りの事情を正確に申せ」
話さないと理解は無理だろうな。俺が適当にしてたら出来た魔術だし。
「俺は闇属性以外の魔導書を丸暗記させられたにゃ。そこで気が付いたのにゃ、魔力からそれぞれの変換される順序をにゃ。
出だしの言葉が属性にゃ、還元しが変換用の言霊にゃ、発動のキーである呪文との間にある言葉が形状や効果と効能を表しているにゃ。
説明文から言霊を通り各属性へと変換されるにゃ、順序として紡いではいるがにゃ、逆順番に変換されてるにゃ。
そして同時詠唱にゃ。かなり微妙ですがにゃ、同時ではないにゃ、一瞬の間があるにゃ。
なら、魔術特性を組み合わせれば、それぞれの良い所を取り込み発動するのは無いかと考えたにゃ。
この場合、雷が先ならきっと失敗すると思ってるにゃ、其処の説明は省くがにゃ。
それで出来上がったのが、風のトルネードと雷のライトニングバーストを掛け合わせたライトニングトルネードにゃ。
肝心の魔人族の国の城を破壊し尽くしたのは、ライトニングバーストの代わりにエクスプロージョンを混ぜたファイアトルネードにゃ。
ただ、良く分からない事が一つあるにゃ、スキル欄には混合魔術とあるにゃ、これが禁術かにゃ?」
「クッ。七属性の魔導書と同時詠唱から自ら編み出したのか……間違いなくそれが禁術だ。あれとあれの組み合わせをぜったに考えるなよ、世界が破滅する」
「それを言って良いのかにゃ? 各属性共通だがにゃ、光と混ぜるのが一番の脅威にゃ、特に火だにゃ。カーラに止められてるから試す事はないにゃ」
「……俺は今の内にお前を殺したくなったぞ」
ふん、来るなら来るでお相手しまっせ。
「なら何時でも相手になるにゃ、最低でも騎士十万人以上は連れて来るにゃ、それでも途中で心が折れて大半が使い物にならなくなると思うがにゃ」
「双方やめなさい。話を聞く限りテリストが手を下したのは自らと周囲の人を守る為です。そこだけは貴方も分かったでしょう。
警戒心が強く純粋です。敵に回さなければ何の害にもなりません、それ処か守護神にもなりえます。
テリストが望むならもう一つ力を授けましょう。適性があれば貴方なら覚えられるでしょう」
「ま、まさか。あの方にお会いさせるのですか……」
「魔導書も失われ、このままでは継承者がいなくなります。それは世界にとっての損失、それだけは避けなければなりません」
「確かにそうですが……わかりました、後程私が案内しましょう」
何のことを言ってるのかさっぱりだな、内容としては失われつつある魔術を教えますって事に違いは無いのだが。
「お二人で納得されていますがにゃ、何なのでしょうかにゃ?」
「ゲートをご利用されましたね、その魔術です。時空魔術、時を支配し、空間を支配し得る魔術です」
「それって、港に着いた時にカイルって人に教えてくれる機関を紹介してくださいと頼んだ魔術ですにゃ。
学校へ行くなら教官へ相談しろってアドバイスしてくれましたにゃ」
「港町のカイル、カイル、あの子ですか、あの子なら確かに知ってますね。到着早々に魔物ハンターギルドで情報を集められ其処に行きつきましたか」
「ゲートの情報を頂きましたにゃ、転移系統の魔術が存在すると確信しましたにゃ」
「この問題はこれまでとしましょう。サージ、テリストたち七名を合格になさい。良いわね」
「御心のままに。
では、学科は召喚でしょうな。七属性も極めているのでしたら其方の受験はしないはずですから。
其方は資材を先に確保しておきましょう、時空魔術を先に。宜しいですね?」
「そうして頂戴」
「テリ。秘蔵の魔術を教わるのよ、信頼すべき所でしょ。あの魔導書を見て頂きなさい」
「ほんとかにゃ?」
「テリクンの心配も分かりますがサルーン陛下以上に信用できる方はいないと思いますよ」
「魔導書? テリストでも解読出来ないのですか?」
「それでしたらお見せしますにゃ、全く一文字すら読めないので手に負えませんからにゃ」
四冊共にテーブルへと置くと、その内一冊を手に取るのだった。少し見たかと思えば直ぐに閉じて此方に向き直る。
「なるほど、そういう事ですか。テリスト。貴方方は王城の宝物庫へ立ち入りましたね?」
「お察しの通りにゃ、命を狙われた腹いせに全部頂いて来たにゃ」
「全部! 全部ですか!」
「宝物庫の中身だけじゃないにゃ、家具も調理器具も何もかも全て取って来たにゃ。残ってるのと言えば埃ぐらいだにゃ」
「そ、その中に皮や鱗があ、ありませんでしたか?」
「確かにあったにゃ、アリサが鎧の強化に使ったらどうかと言ってた品だにゃ。何なのか分からない品を職員に見せたくなくて出さなかったけどにゃ。えーと、どれだったかにゃ」
白金貨と白金板の箱は覚えているが、他は覚えていなかったので、とりあえず奪って来た箱を片っ端に取り出して置いてみた。
「えーと、どれかにゃぁ…………あーあったあった、これだにゃ。これが違うなら他には無かったにゃ」
手に取る女帝だったが、突然涙を流し俺はがばっと抱き着かれたのだった。
「最高よテリスト! 愛してるわ、私と結婚しましょう!」
「ええええええ! ななななんなのにゃ!」
「サルーン陛下、おめでとうございます。まさか、生きてこの目で見れるとは思ってもおりませんでした。
テリスト様。今この時より、お仕えさせて頂きます!」
「はああああ? ちょ、ちょっと待つにゃ、訳が分からないにゃ!」
もう嫁さんが目の前にいようとお構いなしである、口を口で塞がれて押し倒してくる始末。
そんな中でも平然と説明して来るサージと呼ばれたイケメンエルフだった。
「此方の品は我が国の守護龍でしたエンシェントドラゴンの形見なのでございます。
100年ほど前でございましょうか。
当時獣王国とは仲が良く無く攻め込まれました。壊滅は免れましたがハイエルフが数名しか生き残れないほどの激戦につぐ激戦でした。その際に国宝である其方の遺品と同じく、今先ほどお出しに成られた時空魔術の魔導書と共に奪われたのです」
この時点でも俺は押し倒されたまま、誰か止めろよ。俺が強引に突き飛ばして止めるのは失礼にあたるんだからさ。
「現在中立国同士として数年に一度の割合で会うようになり、友好国へ至った場合には交渉しようと、そう考えていたのです。
交渉材料として浮上していたのはゲートの設置でした。これが投入されれば獣王国も相当な利益を生むはずと考えられていたのです。
その中、時空魔術の使い手が一人、また一人と倒れ、とうとう最後の一人になり絶望の真っただ中に落とされました。
それが十年ほど前でしょうか。そして希望の無い中に、今、今!
こうしてテリスト様が持ち運んでくださったおかげで、長年我が国が望んでいた悲願が達成されたのです! テリスト様、ありがとうございます!」
気が付いたイケメンサージだったが、この状態に気が付き固まったのはいうまでもない。




