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95:皇宮の一幕

 厳重に取り囲まれた俺たち七人だったがそのまま別室へと連れて行かれ、豪奢な出で立ちの女性の元へと連れて来られたのだった。

 わざわざ合わせるって事は相当な地位のはず。それも国のトップクラスなのは間違いないがどうだろうな。しかし、何か変だよな、顔だけなら普通のエルフ族として見えるのだが、体の肉付きがサーシャと同じでひょろくない。

 俺の好みとしてはドストライクだが、ってこの際俺の好みは置いておくとしても、この違和感は何だろうな、エルフ族では無いのかもしれない。


「そなたがテリスト・ファーラルですか」

「はい。Bランクハンターのテリストです」

「禁術を放とうとした、間違いありませんか?」


 それが今一分らないんだよなぁ。


「えーと、禁術か知りませんが確かに、風と雷を混ぜて放とうとはしました」

「その師匠が帝都の宮仕えなのも間違いありませんか?」

「直接の指導ではなくてですね、全て魔導書を読まされましたので後は自ら放っただけと言いますか」

「間違いありませんね、禁術を書物化するほどの技量を彼方も持ち合わせているようですね。

 やはりジアラハルトの王城を破壊しつくしたのは帝国の手の者と考えて差し支えないようです。

 これは困った事態です。いずれにせよジアラハルトに猶予はないようですね」


 おー、そっちに飛び火したか。俺が破壊したんですけどねぇ、これは言えないわ。教えた直後に国賊だ! とか言われて拘束されそう……。逃げ切れるかね……。


「サルーン陛下。もう手をこまねいていては手遅れになるかもしれません、事を起こすべきでは?」


 陛下って事は女帝? この女性が? おいおい。こんな方の前に俺たちを連れ出すなよ!

 この試験官も謎だよな。平気で俺たちを皇宮の中へ入れれる立場から相当な高位だろうし、普通は試験官役しないよな。


「……サーシャ、お久しぶりですね。この方々は貴方の目にどう映りましたか?」


 え? 知り合い?


「お久しぶりですお姉様。

 私が困っている所をトラブル覚悟でお助けするほどの胆力の持ち主です。

 その後も金銭に糸目を付けずに安全に配慮する懐の深い方です。

 技術の未熟な方へスキル取得と共に、技術が向上するよう自らお教えされており、並の方ではありません。

 現在はターバルダンジョンへ攻略を進めておられますが、自らの行動に縛りを付け、自らの強化を絶え間なく行っております。

 攻略の前準備として一枚のマップを購入されようとしましたが、その時点で何かに気が付かれ、書物の方に変更して購入されました。

 後程分かった事ですが、空白地帯から隠し部屋の存在を予想して見事に的中しております。かなりの勤勉を積まれた方とお見受けします。

 仲間内への配慮も欠かさず結束は強く信頼で結ばれています。

 しかし、敵対者には容赦無く、一度信用を失えば取り返すのは至難の業と思います。

 敵対しなければ、テリスト様からは決して危害を与えないでしょう」


 お姉様? そして俺の分析? 何なのよこれ?


「その様な人物ですか、はてさて、どうしたものか。テリスト。サーシャと婚姻を結ぶつもりはありませんか?」

 なんで其処で結婚話を振るのよ! こんな足枷付いた女性と縁があるとはね、どうするのよ。元々が結婚も視野に入れて助けた訳だが。まさか女帝の妹とは……。何であんなのに絡まれていたんだか。

「……」

「沈黙は肯定と取りますよ」


 あかん、スルーすると不味いのかよ! 口調が猫ぽい奴にまで嫁に出そうとするかね? ちと試すか。


「陛下と知らずご無礼のほどをもうし訳ありませんですにゃ。すでに嫁と言える女性が四名もいますのにゃ。そんな奴は陛下の妹君には相応しくないですにゃ」

「その様な理由ならば問題ありませんね、サーシャはどうですか?」

 えええええええ、問題無いのかよ! 蹴れよ!

「はい、お姉様の御心のままに」

 あかん、こっちも返事しやがった。俺から再度蹴ったらどうなるか分からんし、逃げ道が……。

「良かったわねテリ、陛下公認よ」


 あ、あのな、紐が付いてる女性と結ばれて嬉しいはずないだろうが!


「良くないにゃ! またお嫁さんが増えたのにゃ……」

 それもぶっといロープが繋がってる女性が。

「その口調止めなさいよ」

「当分変えないにゃ」

「陛下の恩前で見苦しい会話は慎みたまえ」

「すまないにゃ」

「衛兵。そういう事です、お下がりなさい」

「しかし、御身の安全が」

「お黙りなさい。妹の旦那様とその奥様方よ、控えなさい」

「はっ、不都合があれば直ぐに駆けつけさせて頂きます」


 ふぅ、圧迫してた連中が去ったか。これで少しは風通しが良くなったな。


「正式な挨拶がまだでしたね、サーシャの姉でサルーン・アーレアル・アヴァサレスです、以後良しなに」

 クインとサーシャ以外が挨拶を交わす。

「やはりカーラ・グラグロス王女殿下でしたか。ご結婚されてお名前が変わったのですね、お久しぶりです」

「お久しぶりにございます、サルーン陛下」


 あー トップ繋がりで顔見知りだったのか。どんな流れになるのかね……。


「貴方ほどの身分の方でしたら正式に要請があり入国されるのが通例、何か不都合がありましたか?」


 当然の疑問だな、他国に行く際は男爵ですらお伺いするとか言ってたし、それがランクアップして姫さんだもんなぁ。下手すると密入国で相手国へ抗議する事態になりかねない。


「実は、罪を犯したカーライル兄様を助ける為にお父様がテリスト様に罪をかぶせ殺そうとしたのです。その策略から逃れてこの地に参りました」

「もう少し詳しい動機なども含めて説明できますか?」


 結局は話す羽目になるのかよ、これじゃ結局は逃れられんか。それを伝えたら巻き込むんじゃないかな。


「テリスト様は伯爵が率いる暗殺者集団の壊滅と、スタンピートを二度に渡り食い止めた功績から伯爵位を授かりました。その際に領地を任されたのです。学業に専念されるために代官としてカーライル兄様が赴いておりました。

 七月からの長期休暇を利用して領地の見分に訪れたのですが、すでにカーライル兄様は罠を仕掛けておいででした。

 それを単独でテリスト様は罠を噛み破り、逆にカーライル兄様の犯罪の証拠を集められ、お父様に提出なさったのです。

 カーライル兄様の身柄確保の為に近衛騎士隊長のギルバードが向かいました。

 王都に帰還したわたくしたちは真っ先にお父様の元へと挨拶に訪れたのですが、お父様はすでにカーライル兄様を助ける為の方策を練り、テリスト様を亡き者にする事で、カーライル兄様を英雄へと押し上げる算段を整えていたのです。お父様の凶行で獣王国に留まることが出来ないと判断したわたくしたちは逃げて皇都へとまいりました」


「事情は察しました。テリストは獣王国の者に助けられたのですね。そしてその実力と禁術を使用してスタンピートの殲滅も行った。ですが、それが禁術とは知らずにここまでお出でになられた。

 しかしあのアーノルド殿がその様な事を、罪を犯しても長男を長男として助けようとしたのですね。

 国王としての対応としては下策も下策です。その様な事を経験されたのでしたら警戒心がお強いのも頷けます。皇国でごゆるりと生活なされると宜しいでしょう」


 ふぅ、これじゃ隠す事は出来ないな、例えカーラに嫌われようと、今清算すべきだろう。

 今伝えなければタイミングが無い。ズルズル引きずるほど余計に拗れる元にもなりかねないか、それにな……。


「カーラにはすまないがにゃ、報告する事があるにゃ。俺が王を送った日ににゃ、カーライルを殺して来たにゃ」

「ほ、本当ですか! テリスト様! お兄様を!」

「王を凶行に走らせた原因を作った人物にゃ、殺す以外の選択肢が無かったにゃ。

 ……罪を犯したとは言えカーラにとって俺は仇に違いないにゃ、復讐したいならこの命、差し出すにゃ」


 小太刀を取り出してカーラに差し出す。


「テリ! 何を言ってるのよ! 馬鹿な真似は止めなさい!」

「今の俺には血の繋がった家族はいないがにゃ、引き裂かれた痛みは知ってるにゃ、カーラが望むなら差し出すにゃ。グフッ、ガハッ…………」


 胸部を思いっきり殴られて空気を吐き出され、血を吐いたのだった、そしてカーラに抱き着かれる。

 吹き飛ばなかった理由は簡単だ、引く速度が早かった、それだけだ。

 背中側にも当然空気がある。其方へ力が伝達する前に引けば肉体だけで留まる。普通の人が出来るレベルじゃない。


「これ以上、これ以上わたくしは好きな方を失いたくありません! 馬鹿な事は言わないでください!」

「ゲホッ、すまない。カーラ、本当にすまない……」


 謝罪された方は最悪なんだよな、その内容が酷ければ酷いほど、謝ってるのだから許してやれ、当人にとってはどれだけ傷が付けられようと所詮は他人事ってな。

 嫌になるな、謝っても謝っても所詮は言葉だ、これからの行動で答えるしかない。


「謝罪はいりません。本来であれば処刑は確実の犯罪でした。早いか遅いかの違いでしかありません」

「手間が掛かる御仁ですね【ハイヒール】【クリーン】」


 陛下にに治療される俺だった。


「それではどうしましょう、テリスト殿と呼ばせて頂きますが、伯爵として扱うには事情が複雑ですからね」

「一般人として扱って頂ければ幸いですにゃ、爵位はない者としてお扱くださいにゃ、ついで殿も当然不要ですにゃ」

「それよりもテリ、ここまで内情を話したのなら魔族の国の件も話しなさいよ」

「任せるにゃ、もうこれ以上変な事に付き合うのは御免だにゃ」


 勝手に説明し始めるアリサだった。

 


 

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