94:強制入場
とりあえず落ち着けって事で、好きな果物でも食べろ、になり食べている俺たちだった。
「それで、結局話した事から余計に立場が危うくなったな。これじゃ獣王国以上に殺す必要が出て来るぞ」
「それは彼方が考えて行動を起こした場合でしょ、それまでは普通に過ごす、それで良いわよね?」
「確かに相手の反応待ちには違いないが、これじゃ他の属性竜の装備拡張すら無理だよな。大量に倒して素材を他国に持ち込み加工してもらう方が確実じゃないか?」
「それも選択肢としてはありですわね、それまであちらが動かなければという前提条件がありますけれども」
もう采は振られた。なる様にしかならないか。
「それじゃ対処療法で良いって事で終わりかな?」
『人族は本当に面倒じゃな。魔物は気楽じゃぞ、弱肉強食、それしか無いからの』
「シンプル過ぎて笑えませんわね」
「何にせよ突然の訪問者が来ても良い様に、常に休める時には休めって事だな」
「違いありませんわね」
「んじゃ寝るか、お休み」
「それならわらわも寝るかの」
クインと同じベッドにひっくり返りだらだらと過ごして時間を潰すのだった。暇すぎて空になった鉄の宝箱を鍛冶スキルでこねくり回して粘土感覚で遊ぶテリストだ。
作ったのはマキビシ、突然の来訪者に対する備えをするテリストだったのだ。
そして魔術学校受験当日の八月一週一日、この日もゆったりと過ごして昼まで時間を潰す。
普段着で昼食を済ませた俺たちは試験受付へと向かうのだった。
皇宮へはこれほど接近した事はない。相当に警備が厳しく、接近するだけで騎士から職務質問を受ける姿を見ていたからだ。そして受付に到着した。
「えー、今日の魔術学校の試験はまだ受け付けてますか?」
「勤勉だな、受付しているぞ。身分証の提示と試験費用一万リルを提出してもらう。金はあるか?」
巾着から金貨十枚を取り出して手渡す。
「見ての通りにBランクハンターです。名前はテリスト・ファーラル」
「テリスト、テリスト……あーお前さんか。属性竜のハーフプレートメイル一式を持っているな?」
「ええ、持ってますが何でしょうか?」
「後ろは同じPTのメンバーで良いんだな。魔物ハンターギルドが貴殿らに謝罪したいと、来られた際にお伝えしてくれと頼まれている。時間が空き次第行ってくれると助かる、伝えたぞ」
なるほど、受験する事を教えていたからな。手回ししたのか。
「ええ、確かに承りました」
「それでは一定人数になるまで待機するように。では次の方」
謝罪ねえ、下手に問い合わせたのなら知った人間が増えてるよな。さて、どう転ぶかね……。
俺たち七名と俺より先に受付を済ませた二名、俺たちの後に来た一名を入れて全員で十名。その十名の名簿を御者が預かり試験会場まで馬車で向かうのだった。
試験会場に到着した俺たちが見た瞬間の感想はひでえだ。地面が抉れたりしてボロボロじゃねえか、これを想定して外なのか。である。
俺たちが到着した頃、前者は既に試験が終わり馬車に乗り込んでいる最中だ。直ぐに俺たちの番となる。
そしてなぜか前二人共に使う魔術はレベル五で使用可能になる魔術だ。何か制限か合格基準でもあるのかね? それとも偶然か?
「それではテリスト。お前の実力を魔術のみで示せ」
一人、前に出てちょっと聞いてみる。
「はぁ、スキルレベル五なら合格するんですか?」
「答えられる訳なかろう、極秘事項だ」
「それならあれよ。連発しなさい」
珍しいなアリサから助言がきたよ。ならお言葉に甘えまして、限界の同時詠唱と参りますか。ここで試験に落ちたら四ヵ月も先だからな。気合いを入れて望まないと!
「ふむ。それもそうだな【火よ火よ火よ火よ火よ火よ火よ還元し、圧し圧し圧し圧し圧し圧し圧し圧し圧し圧し圧し圧し圧し圧し「止めろ! いったい何をやらかす気だ!】」
獣王国でも思ったのだが。何故に止める為、怒鳴られるんだろうな? 実力を示せと言ってるのは試験官だし、当然の行為じゃねえの?
「何って、実力を示すんでしょ、ですからエクスプロージョンを七連発しようかなーと」
「バカ者! そんな物騒なことをするな! 別のにしろ!」
「うーん、七連発は駄目となるとやっぱり一発がいいのか」
「だったらタイダルウェイブは如何なのよ」
サーシャと被るのは良くないだろうなぁ。
「うーん、あれはサーシャが使うべきだな。俺と被ると試験がどうなるか分からん。もう一段上だが一発ならこれが最善だろうな」
属性は違うがスキルレベルとしては一つ上の九だ。これなら合格間違いなしだろう。
「相談してないでさっさと行え、後が閊えてるんだぞ」
「申し訳ありません。ではいきます【火よ還元し、灼熱よ光よ漆黒よ滅せよ「止めろ! それ以上紡ぐな!】」
さっさとしろと言うからさっさと放とうとしてるのに、さっきから遅くなるように止めるとか何よ、急がせたいならそのまま使わせろよな。
「えー、なんで止めるんですか?」
「テリスト。お前はサンフレアを使おうとしたな、大規模にマグマ地帯を作るつもりかおろか者!」
「え? 魔導書見たら局地的って説明されてましたよ。狭いんじゃないの?」
「あ、あのな。確かに局地と書かれてはいるぞ、だがな範囲としては領域なんだよ。別のにしろ」
「それだとファイアレインも駄目ですよねぇ、あれは広過ぎる様な表記でしたし」
「あたりまえだ! そんなの使うな!」
光も同ランク程度で使えるが。物騒なのしか無いんだよな。部位欠損治療でも見せれば合格するだろうけども。誰が実験台になるって話で斬られたくないだろ。そもそもLv五を超える魔術には範囲が広いのばかり揃っている。狭いのが無いので下手に放つとまた止められる。どうしろってんだ?
「むー、わからん。使えるのが無いじゃんか、どうしろってんだ? エクスプロージョンで合格するならそれですませるんだが、教えないよな?」
「だから、極秘事項だ!」
「テリ。あれしかないわよ、ロックなんとかって岩石を破壊したあれよ」
王都の入学試験で使った混合魔術か、それしか手が無いのか。
「あー それもあったな。供給する魔力を激減させれば範囲は絞れるし、それで行くわ」
「良いからさっさとしろ!」
「では、【風よ雷よ還元し、暴風よ集雷し逆巻け粉砕せよ「止めろーーーーーーー! 何処の馬鹿だ! 禁術教えた奴は!】」
禁術? 混合魔術が? どういう事よ? 分らん……。
「試験官さん、何ですそれ?」
「き、貴様の師匠は誰だ。誰がテリストに魔術を教えた?」
織り交ぜて説明するか、それが良いな。
「師匠ではありませんよ。隷属の首輪を嵌められて強制的に覚えさせられましたし、それが師匠だって言うのなら帝国アルテトラスの名前知らない国に仕えてる人ですね」
「チィ、くそったれが。相談していたって事は連れだな、何人で来ている?」
「俺入れて七人ですね」
「試験は他の者に受け継ぐ、その七人は俺について来い」
来た時とは別の馬車に乗せられ連れて来られた、皇宮へ。そして応接室と通されて寛ぐ俺たちだった。
獣王国の王城もすごかったが、ここは通路に花などの植木鉢を定点的に置いてあり見た目煩しく、俺としてはこの皇宮の方が好みだな。
しっかし、この案内した試験官は何者なのだか、誰に止められずに入って行くって事はトップの血縁者か何かか? 普通は公爵と言えども来訪目的ぐらいは聞くよな、それが一切ないって相当だぞ。
「なぁ、何で俺たちはこんな場所にいる訳よ?」
目立つなって事で活動してたはずだが。何でこうなった? 学校の試験をうければ自動的に皇宮へご案内される運命だったのか? アリサを助けた時のように……。
「知らないわよ。また嫌な予感がするわね」
「やっぱりさ、山奥でひっそりと隠居生活するしかトラブルを避ける方法が無いと思わないか?」
「良い得て妙ですわね。しかし、そんな生活まっぴらですわよ」
「テリクン、わたくしも流石にそれは避けたいです」
俺も避けたいと思ってるから若い女性なら当然だろうな。はてさてどうなる事やら。




