93:どうなる俺たち?
三階の一室に通された俺たちだった。その場には盾の調達でお世話になった鍛冶師のドワーフの大将も最初から同席している。
「皆様は見た目で選ばれますので説明は不要かと思います。それでは、今現在の在庫となります」
あれから試験合格者はいなかったのだろう、俺たちに売却後から減っていない処か、一セット追加されていたのだ。
「あー俺、この真っ黒いのが良かったな。もう変えられないんだよね」
「此方は闇属性のドラゴンでしてダークドラゴンの外皮で作成されております。
滅多に在庫となりません、その属性から討伐する方がごく稀ですので貴重な中でも特に貴重な品となります。そして以前申しましたが、まことに残念ながらテリスト様であれば、自力で調達しなければ着る事が叶いません」
駄目元で言ってみたが駄目は駄目だった。
「うん、理解してるよ。それでサーシャはどれを選ぶ?」
「これが良いです」
ビシっと指を刺したそれは見まごうことなき真っ黒だった。
これをサーシャが着るとなれば俺たちの集団は本当にバラバラの色合いになるな、かなり異色に見られそうだと思っていた。
それは当然だ。はっきりいって防御面を微塵にも考えてない購入方法であり、それじゃどの属性のドラゴンを倒しに行くんだと呆れかえる構成だ。下手すればどの属性も倒せずに躊躇しなければならない揃え方であり。倒す気ありませんと宣伝してるようなものだ。
ただし。その成長速度を知らない者たちから見れば、との但し書きがつく訳だが。
そもそもテリストはブレスを吐く為には口を開けるのは必須と分りきっているので開けた瞬間に魔術を全員で叩き込むか、若しくは相殺している時間に接近して首を撥ねるつもりでいるのだ。
それでも完全に相手が格下になってから順番に討伐する予定であり。通常種のドラゴンでかなりレベルを上げるつもりなのだ。後れを取る要素などは無い。
「承りました。料金が千五百万リル、白金板十五枚となりますが宜しかったでしょうか?」
「もちろん良いよ」
前回の宝箱を取り出して支払った。
「タグ付けのみですので直ぐにお渡し可能です。もう一時すれば他の担当の者がお持ちするでしょう。
次に移ります、調整希望の武器を提示して下さい」
なぜここに持ち込んだのか、最も安い小太刀ですら白金板百八十枚だ。弓に至っては白金板三百二十枚もする。信用できる場所にしかお預けられないとの判断で此処以外の選択肢が無かった。
小太刀、太刀、長槍、ロングボウ、それにドラゴン相手に使用すると考えているフランベルジュを提出する。全てアダマンタイト製だ。
鞘から抜き放ち一つ一つ丁寧に確認しては鞘に戻すと質問されたのだった。
「素晴らしい品々だがどうやって手に入れた? 全員見た所二十代にも届かん。一人除いてな。年齢に見合わん資産でもある。説明してくれるな?」
確かにな、大量の金品だがここで話すと揉めないかねぇ。
「ふむ、今回の依頼には関係ないがどういう事か説明してもらいましょうか?」
「盗品を加工したとあっては名が落ちる。そういう事だ」
「なるほど。カーラの意見を聞きたい」
「事情も含めて話すほか無いと思いますよ」
実家の事だからと話を振ってみたが……うーん。揉める気がするな。
「アリサの判断は?」
「話す前に制約を掛けなさい、そうでなければ調整してもらわなくても結構よ。それでトラブルになれば、この後の想像は出来るわね」
また皇国からの引っ越しが必要になるって判断か。まぁ妥当な所かな。それなら脅しも入れて話すに限る。
「了解だ。
それじゃ口外したら、もしくはこの事が知れ渡ったとしたら、あんたらが情報を流したとしてギルドと敵対して殺し尽くす。さて、覚悟が有るなら教えてやる、どうするね?」
「ほう、若造が吠えよるわ。ギルドを敵に回すだと、この国にSSSランクが何人いるのか知らんのか?」
ワザと低く見積もって話しとくか、正確に言う必要は無いからな。
「そっちこそ、俺たちを舐めるよ。俺のレベルは百三十オーバーだ、止める事が出来るってのなら試してみろ。あんた程度なら素手で十分だぞ、なんならSSSランクを十人ばかり連れて来い、同時に相手にしてやるよ」
「はったりもそこまで行けば滑稽だな、話して見ろ」
「そうかそうか、なら此処にいる奴全員が対象たと思ってくれよ、嫌なら出ろ」
興味があるのか皆残った。
カーライルが罠を張り、それに俺が乗った事で罠を食い破ったことから、王城の宝物庫から全ての資産を奪い取って来た事まで詳細に教えてあげた。
「以上だな、騎士は数千人、たぶんだが三千から四千人規模だな。
負傷した連中は火傷だったからとっくに対応不可能で死んだか、治療が間に合って生きてるかだろうな。
ま、俺たちが城の家具だろうと全部分捕って来たから資産0だし、治療する薬の調達には苦労した事だろう。以上だが、何かあるかね?」
「……」
「話せと言ったのはお宅だぞ。はっきり言えば獣人族の国からしてみれば国家機密中の機密で下手に洩れたら国としての対面が保てんうえに、今後の対外的な部分が危ぶまれる。だから話したくは無かった。
鍛冶師の旦那、国がやらかした火の粉をはらっただけだが、俺たちを捕らえるって判断をするなら戦力を集めてから行動する事をお勧めするぞ。
騎士数千人じゃ相手にならん。連れて来るなら万単位で連れて来い。
半端な数で押されようと問題じゃない。揃えられんようなら質を高めて揃えてよこせ」
「……」
「はぁ、無駄だったな。サーシャ、その一セットの支払いは完了してる、持って行くぞ」
「お待ちくださいテリスト様。他のご予定がお済になっておりません」
「これじゃ対応処じゃないだろ、やっぱこの国も駄目か、共和国に行くぞ。それじゃあな」
「また引っ越しするの? やっと落ち着けると思ったのに」
「ほんと、面倒ですわね、どうにかなりませんの?」
「どうにかねぇ、対処ならあるぞ、獣王国へ取って返して王の地位に収まる。そうすればこの後は安泰だぞ。
歯向かって来る馬鹿を根絶やしにすれば完了することだ」
「テリ。結論を今すぐに出さなくて良いわよ、頭を冷やして考えるわ、この場は引くわよ」
それもそうか。今の所はと但し書きが付くが、一応は敵対していないからな。
「了解。それじゃそう言う事で、タグは付いてませんが頂いていきますわ。ではさいなら」
武器を各自回収して後にした。
帰りにだが、今回も雑貨店の梯子をしてMP回復のポーションを確保した。サーシャにも時間経過しないマジックバッグを与えて、今使っているマジックバッグは回収だ。こうして宿へ戻るのだった。




