91:探索
宿屋の一室に皆で集まる、広い方の大部屋だ。そこで気がついた事と照らし合わせて確認することになった。
「大体の予想は出来るわね、テリは何かに気が付いた。だからこそ地図は不要だったが買うことにした。そうよね」
「先ずは見てくれ」
開いて見せる。俺は見なくて大丈夫なので、皆に見える様に。
「なるほど、そういう訳ですねテリスト様。これなら発見は容易ですね」
「ただ、問題は叩くと音が響くから別の手段が必要だって事だ。魔術を撃ち込むべきだが敵が寄ってくる可能性が有る、それでもいいならその手を使う」
「はーん、なるほど。空白地帯が隠し部屋に見えたのね」
そう。周囲は既に探索された通路だが。ぽつんと取り残された空白地帯。ここが隠し部屋なら周囲の壁の何処かが開くはず。俺たちならそれが罠であったとしても噛み破れる。その自信があるからこそ購入して来たのだ。
「正解だ。もう一つ予想がある。踏めば別の地帯にある罠が作動すると言ってただろ、そちらで操作して開くタイプかも知れないって事だ。あまりに離れていれば効果が無いからな、割と近くにスイッチが有ると思ってる。ただし、複数スイッチがあるのは単に罠の可能性が高い。ダンジョンは侵入者を殺す為に罠があるんだからな」
「ありえるわね。罠だと思っていれば絶対に避けるもの、それが隠し部屋のスイッチとは誰も気が付かない」
「決まりだな。空白地帯の周囲を探索して、小さめの罠表示であればあえて発動してみる。本当の罠でも問題無い、食い破るだけだ。それに超遠距離から打ち抜けば問題無い、飛べば角度は確保できる」
「一階層分だけなら今日中に探索可能よね、少し早いけど食べて行くわよ」
「まったまった。スーシーへ盾の使い方のレクチャーを一度はしておきたいから人型のいる階層にするぞ」
これで選定されたのは四階層だ。そう、あのよわっちいゴブリンなのだった。
ちなみに一階層スライム、二階層ライトゴブリン、三階層一角兎だ。
「それと注意だ。探索中は極力下級魔術で倒す。スキルレベルを上げる為にな、下層で通用しなくなったらその都度使用する魔術のランクを上げる。その為に大量にMP回復用のポーションを買った訳だ、倒れる前に飲めよ、それじゃ行こうか」
この町はダンジョン中心で成り立っている。ならば言わずと知れて魔物ハンターギルドも北寄り、そして高級な宿も北寄り。
そして俺たちの資産は腐るほどある。その為ダインジョンへ行くために好都合な宿屋なのだ。宿を出ると二十分足らずで到着する。
説明で聞いた通りに建物さえ立っている。そして塀がないので常に衛兵が目を光らせているのだった。
そして当然の様に声を掛けられた。
「見ない顔ですが初参戦ですかな?」
「どうもこんにちは、おっしゃられた通りに初参戦ですね」
「なるほど、実力は申し分ないようですが罠にだけはお気を付け下さい」
「はい、それでは」
毎度ながらの階段の様だ。下へ行けば誰でも最下層の八十階層へ挑める仕組み。
足が疲れそうではあるな。
スーシーは右利きとの事だ、ソードシールドを両方共に借り受け俺の斜め後ろにいてもらう。
安全面からか側面の刃があるかと思っていたが付けてない、上部のみだった
第一魔物発見という事でレクチャーしながら戦闘だ。
「基本的に盾の側面を自分に向けない事、押し切られた場合に角が当たるので危険だからだ。
だけど向けなきゃいけない時がある。こうして、相手の攻撃に合わせて跳ね上げる時だな。
そしてがら空きになった横っ腹に右手の盾で突き刺すなり切り払えば良い。次は俺が引き付けている内に真横に来い、もう一度見せる」
同じ事を繰り返してバトンタッチだ。女は度胸というが思いっきりがいいね。後は場数を踏むのと、雑魚では無くて対人戦での訓練をすればいいな。もう一度借り受けて次の獲物を探す。
「次はシールドバッシュだな、盾の受ける面を使って攻撃する。この場合両手なので、其方方面の盾を使えばいい。
前回は跳ね上げたが今度は角度を調整して腕にも当てる、こうな」
相手の腕にもぶち当てるが、威力があり過ぎて腕が千切れ飛ぶ。
「威力電々はいいな、とにかく弱点を狙って潰すんじゃなくて、相手の攻撃手段を潰す方向でぶち当てればいい、それと変則的だがもう一つな」
使い物にならないので止めをして次を探す。
「次はソードシールド特有の使い方だな。最初の跳ね上げからそのままに相手に切り込みこうやって攻撃な」
武器持ち手を跳ね上げ、体に引き寄せずにそのまま切り込む。
「こんな感じだな。攻撃面はこうだ、次は防御面だが、口のレクチャーだけにしておく、今回はな。相手との目線を塞ぐ位置には絶対に上げるな、その場合は相手の攻撃を上に跳ね上げろ。
目線を塞いだら相手の後の行動が見えないからな。絶対に注意だぞ」
こうして攻略を進めて行く、罠感知を教えなきゃならないから途中で止まり止まり教えて進んで行くのだった。
こうして空白地帯横に到着した。とりあえず壁にファイアボールを撃ち込むが無反応だ。周囲を探すとそれらしい罠かスイッチか‥‥‥。
遠距離から土属性の矢を射ち当てると見事に御開帳、だけどそれが罠でワラワラと出て来るゴブリンたち、良い的でした。終わり。
こうして第一日目の攻略は終わり宿屋で一息入れるのだった。
「見事に罠だったわね。ま、お試し攻略だから収入は期待してないけどね」
「だね。そもそもさ、上の階層で箱見つけてもしょぼいんじゃねえの、それなら手持ちの箱開けろって事だろ」
「テリクンそれを言っては終わりですよ。ある程度中層から攻略すれば見つけた際の品も少しは良くなると思いますよ」
「ふむ、スーシーに合わせて下に行くか。スーシー、今のレベルいくつかな?」
「十五ほどです御主人」
おや。そういえば様が抜けたな、その調子だ。
「なら次は五階層下で九階層に入ろうか。それとアリサ。鑑定する道具って売って無いのか?」
「売ってないわよ。調べたいなら職員立ち合いで使えるわよ、ギルドでね」
俺が鑑定して告げれば良いのだが。ご法度らしいからな。例え嫁さん相手でもしない方が無難だ。そこでレベルのみ口頭で教えてもらえばいい。それに合わせて魔物を選定し、次に潜る階層を決めよう。そういう事だ。
「了解、それじゃ潜った日の帰りに寄って確認しようか、そのレベルに合わせて次に行く階層を決めるぞ。
ただ、対人戦の訓練をしておきたいな、その方が安心だ」
「それなら明日しなさい、ダンジョンは逃げないわよ」
「それもそうだな、先に技術を叩きこもうか、真っ新な今が一番癖が無くて教えやすい」
「スキルもでしょ、縮地を教えるのよね」
「それもあったな、予定が潰れたの忘れてたわ。さて、一時落ち着ける拠点じゃ無いが長期滞在するんで打ち上げするぞ」
酒樽を出して小太刀の柄を使いコンコン叩いて蓋を緩めて開けるのだった。
各種果物を箱ごと取り出しては数個ずつだしてテーブルへ山積みする。
柄杓とコップを準備して並々と注ぐのだ。
「さてさて、アリサお姉さん。ご挨拶どうぞ」
「自分でやりなさいよそんな事」
年長者だと思って話を振ったがお嫌いらしい。まあいいけどね。
「あっそ。
えー、国を追われた俺たちですが、あ、一人違うか、まあいいや。
新しい門出です。国のお偉いさんに目を付けられないように、ほどほどに活躍して生活しましょう。
もちろん火の粉は全力で排除する方向で。かんぱーい!」
「「「「「「かんばーい!」」」」」」
「ぶごっ、ゲホッ! なんじゃこりゃ! 強すぎだろ!」
「あの、ドワーフ殺しって名前の最高に高いお酒です」
「いかん、これは一口でアウトだな。ちと、下から果物のジュースもらって来るわ、割らないと飲めない」
薄めると飲みやすい。但し五倍ほどにだが、このせいで飲み過ぎた皆は酔い潰れて寝るのだった。




