87:皇都で買い物
翌朝。身支度を済ませて朝食を済ませた俺たちは、大将に服屋さんの位置を聞いて出向き見繕ったのだ。
俺たちのズボン部分の加工は不可避だった、尻尾の出し口を繕う必要があるのだよ。
やはりと言うべきか、スーシーは特注品になるのだった。それでもエルフは華奢なぶん、皆にはギチギチの様だが何とか妥協点と言ったところか。とりあえず二着分を注文して四日掛かるとの事で、代金先払いで店を後にしたのだ。
皇都の魔物ハンターギルドはこの大陸の中心地で総まとめの総本山らしく、相当な規模だった。
地下一階は訓練場と買い取った素材の一時保管庫。罪を犯したと思われるものを一時入れる牢屋だ。それぞれの階段で向かう事になる。
一階は通常業務の受付と買取業務、仕事の張り出し、商人などからの護衛の受付などだ。
二階は主に食事関連だ。調理場、食料倉庫から職員の休息所、ハンターたちへの食事一般提供など。
三階は皇国専用かつ、他国へ流せない情報などの総括、資料室やギルドマスター専用部屋、会議室に個別対応の個室などなど。
四階は完全独立だ。マスターであろうと迂闊に入れない。世界各国からの情報の総まとめの組織で、各国から出向したエリートたちの集う場所である。相互監視の役目も担っており、退職するにも相当な覚悟が必要とされている部署だ。
俺たちが到着した頃はまばらだった。スーシーの採寸に手間取ったからだ。そのおかげで混雑に行き当たらなかった点だけは幸いした。早速受付へ出向く。
「お早うございます、紹介状を預かっているのでお願いいます」
と手渡した。
「ふむふむ、カイル様からのご紹介ですね、拝見させていただきます」
「‥‥‥」
「なるほど、今現在の防具からのアップグレードをお望みで、各種ミスリル製の盾を御所望なのですね。防具を鑑定させていただきますね」
「お願いします」
例の鑑定器具を鎧に押し当て鑑定しているようだ。
「なるほどなるほど。通常種のドラゴンの外皮製でミスリルでの補強品、ハーフプレートメイルに当たりますね。ご同行の方々は、見た目から同種のスケイルアーマー、それとサラマンダーのスケイルアーマー各種一式ですか。
そうなると選択肢は一つしか有りませんね、属性竜の外皮を用いたハーフプレートメイル一式とスケイルアーマー一式ですか。
ん~在庫は有りましたかね、何分貴重品ですので実力に見合う方にだけ提供しております。
それと申しますが、一セット白金板十枚は覚悟して下さい。
品が無ければ実力を確認いたしましても無駄になりますから、少し確認させていただきますね」
こうして女性職員は中へと入って行った。
「詳しいなあの人、うちの面子にいてほしい人材だな」
「テリにしては珍しいわね、能力だけで選ぶのって初めてじゃないの?」
「確かにそうかもな、片方が好きになったり両想いだったりそんな人ばかりだし。それは良いが実力となるとスーシーは今回受けない方が良いな」
試験内容しだいでは模擬戦もあり得る。超初心者のスーシーは受けない方が良いと思うのは当然であった。
「そうね、相手によっては無理に参加してはケガで済まないわ」
そんな事を話していると先ほどの方が戻られた。
「お待たせしました。ハーフプレートメイルはございませんでしたが、加工すれば大丈夫ですのでご提供可能です。
内訳を申しますと、ファイアドラゴン二セット、スカイドラゴン三セット、サンダードラゴン二セット、ロックドラゴン三セット、ウォータードラゴン一セット、クリスタルドラゴン二セット、サンライトドラゴン一セット。以上ですね。
見た目はそれ煽れに応じた色になります。ファイアドラゴンですと赤色とわかりやすいです。何名挑戦されますか?」
いやいや、雑過ぎるだろ。試験内容を教えてくれと思うテリストだった。
「まったまった、攻撃手段がけっこうバラバラだ。その辺りの配慮はしてもらえるのか?」
「いえいえ、相手は動かない的を用意させて頂きます。その攻撃でレベルを予想させて頂きますのでどの様な手段であろうとも構いません」
攻撃力の判定のみで実力を測るのか。動かない的への攻撃なら負傷するリスクはほとんど無いな。失敗なら失敗でまた挑めば良いだけの話だし利点はあれども損はないな。
「ふむ、ならスーシーもしてみるか? アダマンタイト製の武器なら有るから好きなの使っていいぞ」
「攻撃だけなら試せば良いわね。こっちの強度が上なら少しは期待できるでしょ」
「あ、あの、申し訳ありません。アダマンタイト製の武器をお持ちなのですか?」
その様な詮索はご法度だろに。だが、使えばバレるから遅いか早いかの違いでしかないか。
「もってるよ、ほら」
腰にさげている小太刀を渡した。太刀は長すぎて俺には腰にさせない為、背負っているからだ。
「‥‥‥間違いなくアダマンタイト製ですね、お返しいたします。別の者がそろそろお迎えに上がりますので、其方の指示に従って下さい」
結論から言えばダマスカスの塊を用意されていたのだ。
そこで攻撃の仕方をレクチャーしながらスーシーの使う武器を有効的な、そしてその重さを利用できるように円を書き、振り回す勢いを付けさせて斬り付ける事で試験を突破させたのだった。
他はあっさりクリアだ。カーラが弓の為に心配したのだが、なんてことも無く突き刺さり突破したのだった。試験の監督の者と受付に戻り合格した事が伝えられたのだ。
「試験は合格との事でおめでとうございます。今から現物を見て頂きましてそれぞれ皆様に選んでいただきます。
テリスト様。此方の方の加工ヵ所を決めさせて頂ければ金額が分かりますので、その後に購入の手続きとなります。注意しますが、一生に一度しか販売致しません。よって、名前と番号を振られまして管理させていただきます。破損した場合はこちらに出向いて頂ければ在庫が揃い次第に修復させていただきます。
その様な事から、魔物ハンターギルドへ登録されていないお二人には、恐縮ですが、ご加入をお願い致します」
名前を告げてないのにこの短時間で調べたのか、何処から情報を持って来たのやら。
「加入は良いがちょっと待ってくれ、何で俺の名前を知ってるんだ?」
「加入時にお聞きになってないのですか?」
その説明を受けた覚えはない。アリサが説明忘れかね?
「どういうことだアリサ?」
「そうだったわね。そのハンター章には登録時の情報を刻み込むの、だから専用の読み取り器があるギルドなら名前はばっちり分るのよ」
そんな風になってたんだな。特段知らなくても困らなかったか。
「なるほど、すみません話の腰を折ってしまいまして」
「いえいえ、疑問が解消され何よりです。ご購入前に登録をお願いいしたしますね」
用意された羊皮紙に書くだけなので簡単だ。模擬戦するかって事になったが、まっさらの一番下からスタートにしたのだった。上がれば強制参加になりやすいからな、避けさせたのだ。
ハンター章の準備に少し時間が掛かるとの事なので三階にある特別室へ案内された。
護衛任務についているハンターが監視役となり、その場で選ぶことになるのだった。




