85:港町皇国側
船員に見送られてふらつきながらも下船した俺と、普通に下船した残り五人と一匹だった。
やっと地上に降りた事で、完全治療してもぶり返す危険性がないので魔術で治したのだ。
使用した魔術は【水よ還元し、不和を取り除き癒せ、オールキュア】 例え致死量の毒を盛られようと石化されようと治療可能な魔術だ。本人が石化したら無意味だが。
レベル6と結構なランクだ。増血魔術と同ランクだな。その有用性は自身の身を持って体感するのだった。
町並みは獣王国の港町とあまり変わらないが、建物が、と言うより尖った塔のような一つだけぽつんと飛び出している建築物がある。それだけに異様に映るのだ。
周囲の人はエルフばっかりだな。美形かつ高身長かつ細身で人形ぽい。能面に似てるって言いますか、あれほど目は細くは無いがやっぱり細目で特徴は尖った耳だな。
髪は金髪か銀髪の二種に奇麗に分かれて頭が金銀のインゴットみたいだな。
顔はいいが‥‥‥体は好みでは無いな。抱き心地が悪そうだ。やっぱ嫁さんが良いな。
「おし、ふっかーーーつ! 宿を押さえたらギルドを探すぞ」
「魔術使ったのね。船の上でも常に使えばよかったんじゃないの?」
「嫌だよ、あの徐々に気分が悪くなってるなって感覚。あれはいかん、気分が沈むからパス」
「馬車は平気ですのにおかしいですわね」
「揺れ方の問題だな、ゆっくりと同じ周期で揺らされると並行感覚が狂う。一方馬車は常時ランダムに揺れっぱなしだろ。たぶんその違いだと思う」
「それは良いわ。テリの危惧は起きなかったようね、特に騒がれもせずに降り立てたわ。宿は移動方法次第で決めたが良いわよ、先にギルドを探すわ」
確かにね。移動先に近い方面で宿を探す方が効率的だ。
「魔物ハンターギルドは大抵主要道路沿いだろ、このまま進むぞ」
俺たちの様な獣人族の団体は珍しいのかね、話しかけては来ないがチラチラと執拗に目で追いかけて来るのが大半だ。俺たちは動物園の動物じゃ無いっての。
魔物ハンターギルドは問題なく見つかった。国を跨ごうと統一規格なのか、壁に掘られたマークは見知ったマーク。早速入るのだった。
こっちも同じか、昼前で閑散としたものだ。三組分だけ食堂のテーブルが塞がれている。
そっちには用事はない、早速受付へと行くのだった。イケメンの男性の元へ。
「こんにちは、情報が欲しいです。首都へ最短で行く方法と、此方の国にある最高峰のダンジョンがあるという町への行く方法。どの様な方法がありますか?」
何処で馬車を借りてとか、首都へ定期便があれば楽なのだが。
「ふん、獣人族か。それもウイングキャットの変異種の使い魔連れ、実力はそこそこありそうだな。それなら挑む事は可能か。銀貨二枚だ」
一目でクインの素性を探り当てるとか中々の知識だな、これは当たりを引いたかもしれない。
皇国はチップ制なのか、日本では絶対に見かけないが、一部の外国では普通だったな。
その国に入ればその国の慣習に従え、ここから派生するトラブルを避ける最善手だ。
銀貨が基準ならばと、握れるだけ握って取り出して相対する。
とりあえず二枚だ。
「ほう、獣人族にしては馴染める頭がありそうだな。少し別になるが其方も説明する。
此方では首都と言わずに皇都と呼ぶ、正式名称は皇都アラヴァスタだが皇都で通用する。普段は此方を使え。そしてダンジョンの方だが、ターラルという町名だ。
一つの建物。飛び出ているのがセントラルという。其処へ行けばゲートが設置してある。それを使えば首都まで一瞬だ。
ターラルへはこの町から直接は飛べん。一度皇都へ行き、其処から飛べ。
金額だが、馬車一日での移動距離に換算され、一日当たり金貨一枚、千リルだ。
首都へは十日の距離だ。一人金貨十枚となり、お前さんたちは金貨六十枚必要となる。
首都からターラルへは三日だ。金貨十八枚となる。そしてその使い魔は子供だ。追加料金は取られんから安心しろ。馬車での旅が安くつくが聞くか? その方が地理を把握するなら其方がお勧めだぞ」
テレポート用のゲートがあるとかその手の魔術が存在してるのか、これは来て正解だったかもな。銀貨を一枚置き追加で聞く。
「いえいえ。十分ですが、地理の把握であれば荒くで構いません。地図は売ってませんか?」
「軍事機密に直結する。無いと断言する」
国家の位置が記された地図でも良いのだが。無いと言ってる以上、無さそうだな。次は銀貨五枚を積み上げて質問する。
「了解しました。先ほどこの子を看破されましたが、その手の情報が多いと判断します。捕らえて使い魔にする方法を教授する機関、もしくはその手の子を販売とかしてるのですか」
「ふむ、少し足りんな」
なるほど、重要な情報か。金貨一枚取り出して置く。
「魔術が存在する。召喚魔術だ。だが、何が出現するか分からん為に不要になる者が当然出る。
そこで仲介者としてその手の専門店が存在する。但し、皇都にしか潜在せん。場所までは把握しておらんから現地で聞け。
ただし、在庫の観点から一体売却で一体購入の権利が与えられる。一度売れば購入の権利が与えられ、購入するまで永久に権利を失わないシステムだ。
希望の使い魔が居なければ要望を伝える事は出来る。が、入所しても数日しか取り置きはされん。欲しければ連日通うのだな。
それともう少しで魔術学校の募集がある、場所は皇都だ。そこを受講すれば覚えられるだろう。
適性は関係ない、頭の良しあしで結果が出る。
年に三回募集される。四月一週一日、八月一週一日、十二月一週一日、それぞれ翌日も含めて二日間行われ、当日飛び込みでも構わん。
最短で一日。最長で一年。覚えられなくても卒業だ。もし失敗しても何度でも受験可能だ。料金は十万リルで受験費用1万リルだ。試験内容は至ってシンプルだ。魔術の実力を示せ。以上だ」
なるほど。頭だけって事は何か丸暗記が必要なのかね。
それじゃ次だな、装備を整えなきゃならん。皇都か、それともターラルが良いのか、この方の知識はどうかな? 銀貨五枚を積み上げて質問だ。
「少しずれますが、今着てる鎧の系統でより高品質の品とミスリル製の各種盾を売っているのは皇都ですか? それともターラルですか?」
見える範囲で眺めて判断してくれた。
「皇都だ。そうだな、俺が紹介状を書いてやろう。皇都の魔物ハンターギルドへ渡せば利用できるようにしてやる」
へえ、これは中々だな。紹介料を弾んで金貨十枚積み上げた。
「これで足りるのでしたらお願いします」
「十分だ」
五分も待つと蝋封された一通の封筒を渡された。
次が最後だ、白金貨一枚を出して置く。
「これが最後です。
ゲートとおっしゃいましたよね。時間魔術、空間魔術、時空間魔術、何にせよ瞬間移動系の魔術が存在していると認識します。あなたを見込んでお願いしたい、覚えることができる機関を紹介して頂きたい」
「‥‥‥」
うーむ足りないかね、黙り込んだか。板を出すか。
白金板1枚取り出してさらに乗せる。
「では、足りないようでしたらこれを上乗せしましょう。どうですか?」
「金額の問題ではないのだよ、その魔術はおいそれと教えることが出来んのだ。最初から白金貨を積む辺り、その有用性を知っているのだろう、俺では判断できん。召喚魔術を習いに行くのであれば、その際に講師と相談しろ。それしか言えん」
なるほど、機密レベルか。それなら一受付では無理なのも頷ける。なら、今日中に皇都に飛んで宿の確保までしてしまおう。
「わかりました、無理なことを言い申し訳ありません。白金貨は差し上げます。道筋を教えて頂いたお礼です」
「必要無いから持って行け、全てを纏めればもらい過ぎなほどだ」
なら、無理に押し付けては相手が困るだけだな。回収して行こう。
「そうでしたか、それではお世話になりました。失礼いたします」
こうして魔物ハンターギルドからセントラルと呼ばれる建物へ向かうのだった。




