84;船旅
翌日早朝から買い出しだ。魚は少量、果物大量ってな。
魚は暖かいので締りがなさそう、フライにすれば柔らかいのが丁度よくおいしそうであるが、それよりも果物だ。
熱帯地方なのか、冬の季節でも雪は降らなかった王都。それより太陽の位置により近い南ならば甘い果物が育つだろうと海側ではなく、町の入り口方面に多くある果物店から、各種果物を箱買いするのだった。
それぞれの店から同じ果物であろうと一通りすべて箱で買うために結構な量である。
嫁たちはめっちゃ呆れていたが船上では鮮度の高い品は食べられそうにない。
それに俺は甘い物大好きなので確保しておきたいのだ。
虫歯は大丈夫かって? 食べ終えたら【クリーン】掛けますので無問題ですハイ。
歯磨き不要! 手間がかからず異世界最高! なのである。
そして出航当日、二人の御者から見送られて無事に出航したのだった。
予定では六泊七日との事だ。案内された部屋は広々空間だ。六人用大部屋を三人で使うと考えてもらえれば差し支えない。
それも揺れにくい中央部で中層だ、最下層が食料倉庫、中層が最高ランクをはじめとして高ランクの部屋とそれなりの部屋。上層が安い部屋と雑魚寝同然の大部屋となる。
そして食事もランク別だ。俺たちには特産の果物詰め合わせが朝と夜に提供される。
もちろんクインには果物だけを提供。案外口に合うらしく、これはおいしいのじゃとしゃべりながら食べてるよ。
そしてもれなく船酔いコースでグロッキーな人物が一名。
俺だよ俺。魔術で無理やり直して食事もしてますが、寝て暮らしてます。クインも外を出歩く気はないらしく俺と同じくベッドを温め中です。そして海の魔物が襲撃しては、護衛として雇われたハンターが退治しているようだ。
長年船上専門として雇われているそうで相当に手馴れているし、俺たちの出番は皆無だったのだ。
そして三日目の昼過ぎ、大物が襲ってきました。気配や魔力の反応からも相当な巨体。
専門家がいるので大丈夫だろうと高をくくって寝て待つ俺。そこに駆け込んでくる嫁たちだった。
「テリスト。手を貸しなさい! 船が沈むわ、早くして、ほら、急ぐのよ!」
専門家にアリサたちもいるのに俺に手伝えって、そんなに強いのかね?
「アリサでも倒せないの?」
「大きすぎて少しの攻撃も効いてるか分からないのよ」
人相手に爪楊枝で攻撃してる感覚かね、それなら手数で押せば何とかなるんじゃ。
「チィ、これで実力隠す案がパァだな、沈ませるわけにはいかんから選択肢がないけど」
「良いから早くするのよ!」
「はいはい」
手をつかまれ引きずられて出動させられる俺であった。
甲板に出ると本当にデカいわ。船も戦列艦クラスで最長七十m程度あるのだが、その船の高さより十mばかり上になり、のしかかるでっかいイカ。イカ刺しにしたら何人分かね。
鑑定
テンタクルス
レベル:101
種族:頭足族
状態:通常
HP:2102
MP:849
なるほど、体力集中型で回復能力に長けるのか、攻撃魔術ではなく足を使って攻撃してる辺り、回復専用かもな。
それじゃいっちょやりますか。
普段着だが問題ない。刀を取り出して鞘を戻して【フライ】を発動する。
飛翔して奴の背中に回り込みイカの背開きと行こうじゃないか。
頭の三角のてっぺんに根元まで刀を突きさして、一気に足の生え際まで切ってやっても開かない。
今度は俺自身が上下逆になり、足側から切り開いてやると、この攻撃で綺麗に開いたのだった。
それも一瞬の出来事でアイテムに代わり、一切れのイカの切り身になったのだった。それも一塊には違いないのだが、大きさが違いすぎる。多分だが二百kgはありそうだ。
刀をしまい込み海に落ちる前にキャッチ、アリサに手渡ししてまたも寝るのだった。
流石アリサ。レベルが上がって鍛えているだけあり、平然と受け取ってくれた。
その日の夕刻。食事時になりユッサユッサとゆすられて起きれば船長さんイカ、幹部の人と三名でお礼に来られ、酒樽ごと俺に提供されたのだった。それも三本。一本二百リットルクラスのドラム缶サイズだ。俺にウワバミになれってか。邪魔なので収納して、同じく配達された食事を堪能するのだった。
がっつり食べる気力もなく少食ですが。
「テリ大丈夫なの? 見るからにやつれてるわよ」
「気分悪いんでね、そりゃやつれるわ。だからさ、俺を連れ出さずに決着つけていれば余計な体力使わずに済んだんだけどね」
ジト目で見てあげる。
「あんなデカ物は無理よ。テリが参戦したら5秒も掛からず倒せたでしょ、適材適所よね」
「まあねぇ。だけどさ、予定が狂ったぞ、絶対に到着早々俺の名前がテリヤキって事で広まるな」
偽名が食い物の名前の一部だもんな、もうちょっとマシにしてればよかった。
「逃げる際中だったから仕方ないでしょ、偽名使ったのはすぐに理由が分かったから何も言わないわよ」
「どうにもならん選択肢だったって事で済ませようか、それであのイカどうしたの?」
「必要ないから食材として提供したわ、そのまま受け取っても腐らすだけと思われた方がスキルばれしないと思ったから」
なるほど。だからイカのフライがあったのか、油物だから俺は食べなかったけど。
「時間経過しないとか異常だからな、それはいい判断だ。それじゃ寝るわ、あ、飲むなら出すぞ」
「こんな状況では要らないわよ、無事に到着して宿を確保できてから祝いの際にあけましょうよ」
「了解、それじゃお休みです」
「寝てるほうが楽だものね、おやすみなさい」
後は呼び出されるトラブルもなく、順調に襲われながらも皇国アヴァサレスに到着したのだ。




