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アリサの探知能力がどれほどなのか、を証明してもらうためにアリサに合流までの案内を丸投げしたのだった。
丁度その頃。服の購入をしており、服屋の店舗の中に滞在中、前を通り過ぎようとしたところで気が付き無事に合流ができたのだった。数m程度なら精度が高い、そこから離れれば荒いことが証明された。
到着早々では旅の疲れがある。その為早々に宿へ帰り、遅めの昼食を平らげて部屋で寛ぐのだった。
「まず俺からだな、見ての通り治った。というより直した。これまで不便をかけたがこれからはバリバリ行くからな。そんな訳で感謝申し上げる」
「これ以上バリバリ頑張られたらこっちの身が持ちませんわよ、ほどほどにしてくださいまし」
「そうよテリ。実力を隠すんでしょ、手抜きで行動しなさい」
実力を隠せってのを忘れてたな‥‥‥。
「あーそうだったな」
「相変わらず抜けてるわね。それより、追手は今のところ居なさそうね」
来る訳無いだろ、あの惨状で。
「一週やそこいらだと追う余裕がないと思うぞ」
「なぜよ?」
簡単な事だろうに分からないのか。
「あれだけの惨状だぞ、死者の弔いから負傷者の治療が山積してる。手を抜くと死にそうなのが多数いるからな。それも、治療する為に薬の買い付けが必要だが、その資産が全然ないときてる。きっと装備を売り払って調達してるだろうな」
と、うんうん頷きながら答えた。
「テリクンは後の処理に手間がかかるようにと回収したのですね」
「いや、単に報復だよ。それが相手の足かせになっただけ」
「でしょうね、テリの対応を見てればわかるわ。普段はこんなに落ち着いてるのに、いざ対処を始めると完全に割り切って行動するもの」
アリサは俺の事を良く分かってるね。目的は報復だよ、もちろん。それに手抜きして自滅したら嫌じゃないか。叩けるときには徹底的にたたく。これは基本だよ。
「あれだけの窮地になったのは人生初だよ、手を抜くという言葉がなかった。それに、その余裕がなかったのも関係してるな」
「魔人族の国でも似たような感じではありましたが、規模が違いましたもの、早々に何度も起こってはたまりませんわよ」
そう言えばヤヨイって死んだと思ってたんだよな、何故無事だったんだ?
「あー思い出した。ヤヨイ、あの城の惨状でよく無事だったな」
「今ですからお答えしますが、私の所属している部隊が機密性の高い部署で、お城の敷地内には無いのです。到着早々にそちらへ出頭してましたので命拾いしました。
こちらに亡命したのはその事が切っ掛けです。諜報活動は相手国にとって敵対行動であると、その事に気が付かせて頂いたテリスト様に生涯ついていきたいと思ったのです」
ヤヨイは仕方がなかったのかもしれないな。元々小学生の高学年辺りで拉致されてるから。俺と比べても勉学の量が違うからな。
「なるほど。筋は通っているな。あちらもあちらで罠を仕掛けたから俺の反撃で城が壊滅。笑えんな」
「やはりテリスト様の手腕だったのですね。そうだろうとは思っておりました」
混合魔術を見ているから、その答えにも辿り着くか。
「はぁ、その言葉使いどうにかならんのか? こっちに拉致されたのなら五年前か六年前だよな。そうなると十台になったばかりかその程度。小学生の高学年辺りだ、本来の口調じゃないだろ」
「嫌がおうにもなれました。丁寧な口調で話さなければ死の危険がありましたので、今ではこの口調が一番話しやすいのです」
さすがあの屑帝国。本当に口調を直さないと殺してるかもな。
「それはそれで寂しいものがあるな、本当に腐ってやがる。近いうちに絶対潰してやる」
「今回の事でテリの実力が証明されたもの、一年かそこいらの勇者程度では相手にもならないでしょうね。今攻めても落とせるわよ」
そこは安全確保が出来てからだな。そもそも三人共に死んでる様だし、今更感もあるが‥‥‥。
「確かにな。だが、今はまずい。拠点を確保してから動いても遅くはない。
遅くはないが一つ確認させてくれ。去年四名拉致された勇者がいるが、全員死亡は確実なのか?」
「私は直接行っておりませんが、同じ部署のものが帝国にも行っております。
報告では、強力な飛行する魔物が先陣となり襲ったのだとか。その後にゴブリンクラスの弱い魔物が到達し、それらの処理が終わり周囲の探索で馬車が発見されたそうです。その様子は食い散らかされたような様子であったとか。この事から絶望的であるとしか思えません」
何度確かめた所で一緒か‥‥‥。
「それなら死んでるな」
「簡単に割り切れることじゃないわね。ヤヨイもなぜテリストがここまで勇者に固執して情報に長けるのか疑問でしょ。船の上でとかいう前に、説明したらどうなのよ」
ここまで話を振っておいて後から話すってもの変か、遅いか早いかの違いでしかない。
「‥‥‥仕方ないな。俺の出身は千葉県の田舎だ。数キロ程度移動すれば都会ではあるんだがな。
日本の地名は南から、沖縄、鹿児島、宮崎、熊本、大分、長崎、佐賀、福岡、海を挟んで北上すれば山口。さて、ここまで言えば分かるな?」
「あ、あの。テリスト様。もしかして、日本人‥‥‥」
出身地を言ってる時点で御察しがだ、ついでに地理を言ってみた。嫌でもわかるわなぁ。
「正解だ。死んだと言われている四名の内の一人でもある。知りたかったのは、内一名は俺の親友だった、助け出すと決めていたが手遅れって訳だ。そもそも四人の内で真っ先に死んだからな。三人の動向が知りたかった。以上だ」
「ははっ。それでは私を見た瞬間から日本人だとお気づきだったのですね。その日本人が、犯罪に手を染めていると、激怒されても仕方ありません。やっと会えた同胞がこれでは幻滅されますよね」
下を向き、ふさぎ込んだか。ヤヨイのせいで死んだわけでもないから関係ないんだよ。
「済んだことだ。気が付かず馬鹿を繰り返さないのならやり直せばいい。それだけだ。
その為にアリサが手を伸ばした、その手を放して裏切るなよ、その手を利用して這い上がれ」
「はい。ありがとうございます、ありがとうございますテリスト様」
「いいから、その様はやめろ。同胞にまでそんな呼ばれ方はされたくない」
「感謝するお相手にそれはできません。どうかお許しを」
言い出したら覆さないのが結構いるよな、俺も含めてだが。
「しっかし、このメンツって頑固なやつが多いよな。俺が一番人に言えないと思うけど」
「ご主人様は頑固さでも中心人物ですね」
「違いないわね、誉め言葉よ、一応ね」
「アレサも言いますね、一応ですか」
本人からもう少し詳しく聞きたい所だな。
「さて、少しまじめな話題に変えるぞ。ヤヨイは捕まって洗脳を解かれ一応は助けられた。それで合ってるか?」
「その通りです。戦争に駆り出された私はその使用する武器から最前線を任されていました。
魔人族の放った雷系の魔術で体が麻痺している間に隷属の首輪を外され、私は治療を施されて命を取り留めました。
そこからは一応の監視者の下ではありましたが自由を許され生活する事で洗脳が解け、間違っているのは帝国であるとの確信から、軍部に所属していたのです」
そうでも無ければ自力で脱出は不可能だよな。隷属の首輪だったか? 強制運用されるからな。
「それじゃ、帝国にいた頃、大半のスキルを強要で覚えさせられたか?」
「あの。テリスト様もあの拷問のような事まで受けさせられたのですか?」
「やっぱりその頃からスキル取得方を知ってたのだな。闇以外の火、風、土、水、氷、雷、光の魔術から、肉体的なパッシブスキル、はたまた抵抗スキルまで一通りな」
「帝国が召喚したとなれば当然ですか」
ふむ。一般的な騎士の質では突出してそうだな。ま、レベルの関係で大した障害にはならないと思うが。
「で、固定スキルはなんだ? 俺は付与魔法で、こちらの住人はなんだ、空いたスロットが装備品にあるよな。俺はそれを無視して付与可能だ」
「私は地図作成です。一度通れば全て自動で覚えます。範囲は目線で確認できた範囲でしょうか。少しそのあたりが不明です」
ヤヨイはヤヨイで便利すぎる固定スキルだな。正確な地図を書いたら、通常戦力でも相手を倒し放題じゃないか。
「軍事機密に直結したスキルだな。詳細な地理の把握は軍の運営において非常に重要だ。それだけで戦況がひっくり返る。帝国は馬鹿だな、俺なら絶対に前線に出さない」
「テリスト様は流石です。私も前線へ配属された際には驚きました。敵の弱点を突ければ容易く落とせるのに気が付いてないのです」
「なるほど、詳しいな。三国志辺りが好きだったのか?」
「いえいえ、私は戦国時代が好きでした。友人の間では歴史オタクと呼ばれていましたね」
小学生でオタク呼ばわりされるって相当だな。
「あのですね。盛り上がってる所悪いんだけど、さっぱり分からないのですが何のことを話してるの?」
悪いな。こっちの情報を擦り合わせるのが面白くなっちゃってさ、話し込んじゃったわ。
「ごめん。軍の指揮は無理だが、作戦立案ならヤヨイが立てられるて事だ。それも帝国に居るお偉いさんの馬鹿たちよりはるかに有用なのをな。そちらで活躍させていれば今頃は落ちてるかもな」
「地図だけでそれほど有効なの?」
その手の事を学ぶなり、ゲームや小説とかで知識を習得しないとわかり難いからな。
「うーむ、わからないか。詳細が分かればおびき出して横合いから攻める事も、後方遮断して孤立させる事も容易だよ。俺の場合は補給路を潰すけどな。
発見されにくいルートを選定して、前面より後方へ多くの人員を送り込む。
遮断する人員と、後方から襲う部隊と二つに分けで前後から砦を責める。中に貯めこんでる物資次第だが、そう長くは持たないな、せいぜい維持できても一週程度だろ。俺が混合魔術を使わない前提なら、俺が三人いれば落ちるな」
「あ、あんたね。騎士を正面から数千人規模を破っておいて、高々砦一つ程度一人で十分でしょ」
「それを言うならアリサも一人で落とせるぞ。混合魔術を作ってやろうか?」
「テリクン。環境破壊はよくないので止めてください、人が住めなくなりますよ」
「そりゃそうだ。忘れてくれ」
この後も雑談で時間を使い、楽しくその日が過ぎるのであった。




