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79:脱出

「逃げる前に確認したい、馬車は何処にある? 奪うぞ」


 相手の脚を奪う事は必須条件だ。少しでも追跡の手が緩むのならば馬車を奪い取り、馬を殺す事は理に適う。現在は現場にいる訳で脱出前の今すべき事に上げられる。


「それなら右手です。細かな場所はその都度お教えしますので向かいましょう」

「了解。魔術を一気にばら撒くから音に注意してくれよ。それじゃ行くぞ」


 本気を出すか。無詠唱と同時詠唱のコンボで同時に数発ずつばら撒くのだった。

 扉を開けた瞬間から戦闘開始だ。相手は攻撃の準備が整ってはいる。だが、即座に攻撃とはいかないのだ。ファイアボールを面で放ち前列から潰して大きく後退させる。

 更に追い打ちをかける。今度は後方へも含めてばら撒く、数名程度は死ぬ覚悟で突っ込んで来るが到達は出来ない。

 俺の討ち漏らしは嫁が対処する。全員が遠距離攻撃魔術持ちだ。カーラに至っては弓も合わせれば数千人といえど的に過ぎない。こうなると王という人質すら不要だな。

 移動砲台ならぬ固定砲台と化して五分も戦えばいかに生き残りであろうと心が折れる。周囲は熱と圧力で死んだ者から立つ事すら不可能になった者たちで溢れ返り、肉の焼ける匂いが辺りを覆う。戦意喪失させるには十分だった。

 こうなればめっけもの、無駄に命を刈り取る必要さえ無い。負傷者を残せば治療の為に人員を割く必要があり、その分此方に回す手を減らすしか無くなる。そんな意味では負傷者がいる方が俺たちにとっては有利だ。騎士たちの間を突っ切り、馬車小屋まで到着すると一台として無かったのだ。


「無いな……」

「ありませんわね。護衛を当てて脱出させたのですわね」

 誰をとはいわずともわかりきっている。王妃と第二王子をだ。

「そうだろうな、とりあえず屋敷に帰るぞ。スーシーがどうなってるか心配だ。もしかすると捕まってるかもな、そっちの無事が確認とれ次第に食い物を大量に調達してそのまま脱出するぞ」

 寄り道もせずに帰宅すると騎士もおらず平穏無事だったのだ。

「こっちには手を回してないか」

「お帰りなさいませ……へ、陛下、如何なさったのですか?」


 気絶した状態のを抱え込んでるからそりゃ驚くか。戦闘した事など知るはずもなく、あの場を離れた俺たちは匂いバレしない様にと全員が【クリーン】で浄化完了しているからだ。


「馬鹿やらかしたカーライルを助ける為にテリを殺そうとしたのよ。だからこいつはいわば人質よ。その辺り、ルーシーから聞いてるかしら」

「え、ええ。その事で今先ほどまで旦那様とご同行された者たちから話を聞いておりました」

「そこまで知っているのなら丁度良いわ。居間に全員を集めて頂戴。今後の予定を少し話しておくわ」

「おいおい、アリサ、話すのか? 巻き込んでしまうぞ」

「真実を知ってる人が今後必要よ。その為の布石なの、任せなさい」


 なら任せるって事で話す前に、王をロープで縛り覚醒させて同席させた。一言でも話せばぶん殴りだまらせる手法を取りながらだ。なぜこんな事をするのか良く分からんが任せるのだった。


「そんな訳で国外へ脱出するわ。今から即行動に移すから皆はこれで雇い止めね。今日までお世話になりました。それと、この屋敷は売り払って全員でわけなさい、せめてもの選別よ」

「それは不可能でしょう。陛下の事ですから、罪人の資産は即座に没収。そうですな?」

「聞かれるまでも無いだろ」


 罪人では無い奴から資産をはぎ取るのか、今殺したらはぎ取れないよな。カーラの手前、忍びないが聞いてみるか。


「罪人を討伐した者を罪人に仕立て上げるとか本当に腐ってるな。カーラどうするよ、このまま野放しにするか?」

「どういう意味ですかテリクン」

「今の内に殺した方が良い気がして来ただけだって」

「……」

「追跡の事を考えたら死んでいただくのが一番ですわよね。人の命を御所望だったのですわよ。当然自身に降りかかる事も覚悟の上でしょう、私は反対しませんわよ」


 ココアは思いっきりが良いな、死にそうになって半分以上切れてるのかもな。


「……テリクンなら言葉を発せない状態にまで出来ますか?」

 意思疎通を極力低下させる事で命令系統を混乱か、良い手ではあるが。

 食道の反対側の気管、そこの膜ってなんだったかな、あれを振るわせる事で言葉を発していたはず。だが、直接口から狙うとなると相当に難しい。そもそも血で塞ぎ死にかねない。それではカーラの意図した事を遂行できないな。

「不可能に近いな。出血する血が気道を塞いで死にかねない」

「ならこうしませんか。後を追えないほどの距離にテリクンが運び、脱出の時間邪魔されない時を稼ぎます」


 その案なら相当な距離でなくとも山にでも放置すれば数日は稼げるが死ぬだろうな。

 ここはやっぱり面倒見る相手がいる隊長の元へ送り届けるのが一番良いか。

 場合によっては隊長にも死んでもらう必要があるしな。

 追撃隊を組織するとなればその指揮に当たるのは隊長だろう、確認して庇うようならその場で殺す。これでいこう。


「なら、今丁度彼方には隊長がいるからそっちに渡して来るか。では行動に移すぞ、その前に寝具は回収しとくか、あれ、寝心地最高だし」

「そっちはやっておくわ。こっちも移動開始してると思うから、街道沿いに来るのよ」

「食い物も店にある品を全部買い占めろ、調味料ごとな。金はこれを使え」


 この屋敷から発見した金品を十分割して売ってもらったお金だ。十袋の内の一つだった。他にも肉や皮に魔石と大量に売却した資金はあるが、其方は多すぎるからな。


「交渉で長引く様なら倍額出してでも買い占めておくわね。さぁ、早くいってらっしゃい」

「クイン、そっちの護衛は任せる。向かって来る奴は皆殺しにしろ、遠慮は無用だ」

『うにゃ~ん』

「すまん。ロープでこいつ口を縛ってくれ、猿轡だ」



 俺は片腕なので無理だからと縛ってもらいマントをかぶせて小脇に抱え【フライ】で飛び立ち最速で向かう。今度は最初からプレストリア目掛けて直線コースだ。

 方角は北東と北北東の間位か、若干ずれて山が見えた為に少し修正すれば問題無く到着した。例の屋敷前に到着したのだった。そして屋敷の入り口を守る騎士に来訪を告げるのだ。


「伯爵のテリスト・ファーラルだ。隊長はいるか?」

「テリスト様、何時お戻りに、いえ、隊長は此方です。お越しください」

 通された部屋では何故か書類仕事をしてる隊長だった。

「(コンコンコン)テリスト様がお越しです」

(テリスト? 何故だ? まあいい。通してくれ)


 がちゃっと扉を開き入室する。


「隊長、三日ぶりって所ですか。急用ができましたので会いに来ましたよ。詳しく話す前に確認しますが、隊長は俺の敵ですか?」

「敵? 何の事だ? 敵対も何も俺たちは獣王国国王の臣下だろ……その、脇に抱えているのは陛下か?」

 なるほど。隊長が出立した後に決心したのか。なら、交渉の余地はあるな。

「そうですか、では事情を説明しますね」


 時間が無いのでザックリとあらましを伝えた。


「そんな訳で王城で命を狙われましたので、今はこの方人質ですわ、さて隊長さん、俺の敵に回りますか? 回るなら今ここで殺します、ついでにカーライルも殺します、もちろんこいつも殺します。さて、隊長の御判断は?」

「……カーラ様はご存じなのか?」

「送る事はご存知ですよ、そもそも命を狙われた席に同席されてましたし。これはいいましたか。ここで殺す事にしたのは俺の判断ですよ。カーラ様は知りませんし、どうされます?」

「中立だ、それしかいえん。この任務が終わったら俺は退職する。カーライルの命も陛下の命も好きにしろ。そこまでやらかした陛下を庇う事は出来んと俺は判断する。以上だ」


 見捨てる選択をしたか、それなら大丈夫そうだ。例えこの場限りの言葉だとしても、ここで襲われる事は無いだろう。


「ま、良いでしょう。カーライルは確実に殺しますが、こっちは生かすという手も考えてます。

 この場に残した場合、この事を知った隊長は無事ですかね? 命が危ぶまれるとのご判断でしたら殺しますが、どうです?」


 この場で殺すと国が崩壊しかねないからな、殺す気は無いがいってみた。


「それなら生かしてくれ、殿下もおらず陛下もおらずでは国として対面が保てん。獣王国の崩壊は避けたい」

「なら良いでしょう、お預けします。

 それと一つ忠告です。何故この様な凶行に走ったのか知りませんが、必ず先導した奴がいるはずです。

 俺の世界では離間の計といい、言葉で先導し、主従関係を壊し、互いに争わせるのです。

 今後も起こり得るので心に止めて置いて下さい。では」

「テリスト! なぜそこまで予想しておきながらこの様な事態になった!」


 予想ではないですけどね。その計略にぴったり当てはまり、俺たちの関係を壊すとすれば最高のタイミングだから直ぐにわかる。バレバレだって事ですよ。


「隊長、予想じゃないですよ。

 事を起こされたのでこの計略を用いられたと確信してるってだけです。考えてみてください、カーライルは単に自滅しただけで俺に非は無い。それを取って返し、カーライルを助ける為に俺を殺すよう証言すれば通ると思いませんか。これは、王家と俺を争わせる最高のタイミングだったんですよ。

 そもそも隊長を送り出したのはカーライルの身柄を確保して、早急に手を打つためです。カーライルを助ける為じゃないんですよ。その点は隊長が一番ご存知でしょ」

「それはそうだが、その計略だと気が付いたのなら、和解まで持って行けなかったのか?」

「それは絶対に無理なのは隊長ならわかると思いますがね。

 城に罠を張り巡らせて殺す気満々だったんですよ。俺が襲う立場でしたら気が付いた時点で止める事は可能です。襲われた俺の立場では回避は不可能です。だってそうでしょ、王の一言で即座に襲われるんですよ。

 事の詳細を説明するならば、城に入る前に武装解除され、案内された部屋は魔術を妨害する部屋だった。入った直ぐから部屋の前に騎士二百名程度で塞がれました。

 スタンピートの原因はお前だと糾弾されました。俺たちが原因ではないと証明不可能な点を突かれ最初からいいわけの出来ない状態におかれた出来レース状態だったんです。

 父親と兄二名を人質にしてるから大人しく捕まれとも脅されましたし、城の前には数千名で待ち伏せ。

 和解など不可能な状態にしてたんですよ。理解できましたか?」

「それは。怒鳴ってすまん」


 大雑把に説明した弊害だからそこは気にしてないよ。


「良いですよ、時間が無いのでザックリ飛ばして説明したから俺の落ち度です。

 その場に居合わせた貴族は皆殺しにしましたが、先導して内紛を企んだとなれば、誘導はしても被害に合いそうなその場にいないはずです。ここに誘導された本人がいますので話せば直ぐに犯人がわかるでしょう。後は任せますよ」

「そこまでわかっていながらカーライルは殺すのか」


 生かす選択肢が無いんだよな、此処に来たので丁度いいって事だ。


「当然でしょ、理由はどうあれ一般人すら巻き込み殺してる事に変わりありませんし、今回の騒動の原因を作った張本人ですよ。例の伯爵はどうなったんですか?」

「処刑したよ」

「なら、規模は違いますが同罪ですので俺が代わりに殺しときますよ、それでは」


 ぽいっと放り退出する直前。


「テリスト。お前、随分変わったな、会った頃はもっと可愛げがあったが」

「今更ですよ隊長。命が掛かっている時点で割り切って行動しなければ此方が死ぬと実感してますから、それも実体験でね。では」

 有言実行して嫁たちと合流する為に急ぎ飛んで戻るのだった。


______________________________


 テリスト・ファーラル

 レベル:133

 年齢:10歳

 種族:猫人族

 状態:部分欠損

 HP:2938

 MP:1358


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