75:王都
今現在空の旅を満喫中だ、速度が何処まで出るのか限界へも挑戦している。
速度を上げる=魔力の消費が激しい=MPの自動回復が間に合わない=MPポーションを消費するという流れだ。
その甲斐もあって二時間足らずで王都に帰還した、北門を歩きで通る。
先ずは防具の購入だ。皮鎧というよりドラゴンの皮と鱗製なのでスケイルメイルだな。折り畳みは出来ないがぺったんこになるのでプレートメイルの様に嵩張らないのが利点で重さもそれほどじゃない。
マントは別途本人に選ばせるので他の部位一式を購入して屋敷に戻ると相当に驚かれた。
行って戻るだけでも十二日間は確実にかかる。悪天候に阻まれたらさらに伸びる。それが七日で帰って来たのもだから到着せず引き返して来たのかと思われた訳だ。
緊急に陛下へご報告がある為戻って来た事を伝え、地下に置いてある必要そうな物資と換金可能な品を見繕い回収して王城へと向かうのだった。
そして衛兵に謁見の申し込みを行うのだ。
「伯爵のテリスト・ファーラルだ。緊急に陛下との会見を所望したい。プレストリアの統治に関わる事だとお伝えしてくれ」
「これはテリスト様。それでは待合室までご案内しましょう。お待ち頂いている間に伝えて参ります」
「お願いします」
十分も待つ事無く陛下の元へと案内されたのだった。当然の如く隊長とローラさんも同席している。そして王妃もだ。
「突然の会見に応じて頂き誠にありがとうございます陛下」
「テリスト。プレストリアに向かったと聞いておったがどうしたのだ。急な帰還かと思えば統治に支障があるそうだな」
「まず、これをお読みください」
ローズさんに手渡して陛下の手元へと渡る。俺は追加で例の宝箱を横に取り出して置いたのだった。
中身は確認してないが、金銭と書状だったのは間違いない。間違ってたとしても、奴らの犯行の証拠であって此方の不利益にはなりえない。なので、違う品が混ざっていたとしても問題無い。
「……どういう事なのだテリスト。口頭で説明しろ」
わかるのは俺を狙って雇い入れた事と、その金額程度だからな。当然の質問だろう。
「では、説明いたします。
三ヵ月ほど前から連続殺人が頻発していた模様です。カーライル殿下のご説明ですと、例の伯爵が暗殺者を既に雇っていたのではないかとのご意見でした。
到着早々に調査へ乗り出しまして、俺が囮となり敵に食いつかせました。
襲って来たのは三十二名です。内七名はSランクの魔物ハンターであります。
内一名を使い司法取引を行いまして、証拠品の押収を済ませ、主犯の元へ報告させました。返り討ちに合い全滅しましたと。
俺も報告の際に同席しました。気配遮断と魔力操作で認識できない状態として潜り込んだわけです。
主犯は説明するまでもなく、カーライル殿下です。
殿下はこうおっしゃっていました。十人で返り討ちに合った実績があるので三倍用意したと。うち七名はSランクのハンターだと。それらは参加していなかったのかと。
三十一名全て死んでいるのなら証人は目の前にいる一名のみ、口封じの為に斬り殺そうとしましたので割って入り止めました。
殿下お一人では俺に敵いませんからお金をいくらでも用意するから命を助けれくれともいわれましたが、婚約者を呼んでると伝えると急変しまして殴りかかって来たので拳を潰させて頂きました。
当然カーラ様も合流されましたので、カーラ様の力を使い、今は牢屋の中に入っておいでです。
付け加えますと、その際に報酬と渡された金品と、それに備えられてます書状もこの箱の中。
襲って来た者のうち三名は死亡してますが二十八名は存命です。内1人は司法取引の報酬として俺が逃がしました。
更に付け加えるならば、俺を矢面に立たせて調査させる為に、相当な数が犠牲になってます。
以上、ご説明を終わります」
ぐらっと傾き倒れる王妃。誰も彼も実質呆然で気が付いておらず、そのまま倒れてもらってはテーブルに打ち付け負傷しかねない。
俺が咄嗟に動き、王妃を抱き抱えてソファーへ寝かせるのだった。
陛下も顔が青くなり地面へとへたり込みどうしたものか、そこへ隊長からの質問が飛んできた。
「テリスト。聞きなれない言葉があるな、司法取引とは何だ?」
「相手の内情を暴露する代わりに代価を渡すんです。
今回の場合は身の安全と命を代価としてトップを売らせたんです。
その者の協力で証拠品も揃いました。殿下の元で、殿下の口から直接俺を狙た者を雇った事を話されましたので、最初の取り決めの通りに逃がしました」
「罪人を逃がしたのか!」
「逃がしましたよ。助けないといえばどっちにしろ殺されると判断され、証拠も揃わなかったでしょう。
おかげで証拠も証人も大量に揃いました。取引の通りに応じただけです。
こちらでは、言葉の重みなどなく、事が済めば処断するのですか?」
「事と場合に寄るだろ」
「では良いでは無いですか、その者の協力のおかげで決着できました。違いますか?」
「……」
怒鳴りつけるも不利になるとダンマリか、嫌になるな。
「それは良いです。ですが、この雇った資金の出所が不明です。一人殺すたびに二万リル放出してるようです。殿下の資産にこれほどの資金があるのでしょうか?
そこら辺が不明でしたのでプレストリアの資金を含めて調査するようにと本来の代官に伝える様に頼みました。もしかすると破綻してるかもしれませんね」
「ギルバード! あの馬鹿息子を直ぐに迎えに行け! 鉄の檻付きの護送車も準備しろ。三十名連れて来れる規模で編成しろ!
テリスト。スマンが今日の会見はこれで終わる。報告ご苦労だった」
「失礼する前にもう一言。
この様な事態ですので直ぐに出立するように申し付けております。帰還後すぐにお伺いさせて頂きます。
それと、殿下を逃がす者がいるかもと思い、鍵を破壊して絶対に開かない様にしてますので、鍛冶師の方を雇い入れた方がよろしいかと。それでは陛下、失礼させて頂きます」
王城を後にした俺だが、そろそろお昼なはず。そんな訳でスイーツを大量に出す喫茶店に寄り軽く食事を済ませた。帰りにお土産を大量に箱詰めしてもらい、お持ち帰りしたのはいうまでもない。




