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72:罠

 受付側に行きテーブルと椅子を出して食事の準備を整えて、以前、魔族の国地アラハルトへ赴く際に準備してもらった食料を一食分取り出して、軽く食事を済ませたのだった。

 生活魔法の【クリーン】を掛けて全て収納して行動へと移る。

 さてさて、引っかかるかね。律義にも、食事をゆっくりと食べたが移動する気はないらしい。

 俺に食いついてくれればいいが。

 クインには左肩に乗っかる形で首に巻き着いてもらう。これなら腕を振ってもクインへ負担をあまり掛けなくて済む。

 【ライトボール】を発動して頭上に留まらせて魔物ハンターギルドを後にする。

 さて、どちらに向かうかだが、当然そいつらがいる方向へ行く。が、完全にスルーされ食いつかない。

 魔物ハンターギルドが近すぎるので、ある程度離れなければ駄目なようだ。

 向かって来るのがわかったのだろう。道の奥へと移動し、もう一つ併設されている道を先に進み先回りを選んだようだ。

 もう七百mから八百mほど直進すると、町の出入り口である門まで到着する。その様な場所で俺を襲って来た。

 それも火の魔術でだ。

 選択間違ってるだろうに。ここは光らない別の属性で攻撃しないと即バレするぞ。

 向かって来る火の玉の後ろには当然の様に走り込んで来る多数の人影がある。

 魔術を刀で切り裂き気配遮断と魔力操作で体外への漏れを無くす。相手からの認識を激減させ、上空のライトボールも消すと闇に包まれて俺は姿を消したのだった。

 相手は突然消えたように感じるだろう、何せ光源を頼りに此方へ攻撃を仕掛けて来た。その明かりに慣れていれば突然の暗闇では直ぐに目は慣れない。


「クソ、奴は何処だ、直ぐにランタンを付けろ。円陣を組めよ、全周囲から襲われても良い様に互いに死角を無くせ!」


 なるほど、奴がリーダーかな、逃がすなら奴だな。

 俺も全く見えない為、ランタンの準備をしている者をクインに発見して指示してもらう。

 流石猫。夜行性なだけあり夜間でも問題無く活動できる。

 とりあえずは殺さない。準備していた奴の腕と足を一本ずつ拝借するだけだ。


「ぎゃあああ! た、助けてくれーー。腕が、足が、斬られた!」

「おい、魔術使える奴がいただろ。とりあえずファイアで良いから火を灯せ。これじゃ同士討ちしかねん。一刻も早く別の光源を確保しろ」


 頭が切れるがその程度か。ま、そんな簡単には使わせんよ。

 魔術使った奴の両足を切り払い、止血の為にヒールを掛けておいた。これで一応は死なないだろう。

 恐怖を植え付けより上位の奴に助けを求める様に仕向ける。

 喚き散らしているのはさっさと足を切り飛ばし、指示を出してる奴を残す。残り十名まで無力化した頃【ライトボール】を一定場所に留まらせる為発動すると、全部で三十二人だったのが、僅か十名にまで減っている。

 二十二人はお察し、全て足を片足なり両足共に切られて一応は止血しました。って程度になっている。


「ふむ、弱すぎて話にならんな。もっと強い奴はいないのかよ」

「うっ……お、俺の仲間たちが……」

「テリストたった一人だから余裕とかいってただろ、これじゃ話が違うぞ、あの方は俺たちを殺したかったのか?」


 あの方ね、目線は相手が上か。そして相手を知ってるって事だな。あいつを逃がすかね。


「黙れ、その事を口にしてみろ、俺たちが追われる立場になる」

「ふむ。俺を殺すように頼まれたのか、なら、生きてるのは一人で良いな。口が軽いのさえいれば後はいらんか」


 近くにいた奴の息の根を止めるべく刀を振るい、三人切った所で命乞いをして来たのだった。


「な、何でもいうから。い、命だけは助けてくれ!」

 面倒が省ける分それも選択肢としては有りだな、一晩で決着がつくとか幸先良いわ。

「そうだな、依頼主を教えて今から直ぐに作戦は失敗しました。と報告出来る奴に生き残ってもらおうかな」

「か、カーライル殿下が「それ以上いうな!」」


 カーライル殿下? 何で殿下が俺の命を? いやそれ処じゃないな、喋ろうとする奴を切ろうとした奴の腕を切り飛ばして阻止し、話すといっていた奴以外の脚を切り飛ばしてヒールを掛けておいた。

 正面に移動して問い詰める。


「カーライル殿下だと、それは本当か?」

「ほ、本当だ。アジトに戻れば契約した書類もある。直筆のサイン入りだ。あ、あんたにとっては確実な証拠になる」

 依頼を受けましたと口だけの証拠より、命令書があれば確実だが……殿下が……今は良い。遂行する事に専念しよう。

「ふむ。なら、真っ先に確保すべきだな。アジトは何処だ?」

「き、北の門を出て道沿いに進んだ所にある一つ目の村の村長宅だ」

「なるほど。それじゃ取りに行くぞ」


 そいつを脇に抱え込み【フライ】を唱えて飛翔する。

 こんな時間では門は閉じられており、いかな俺でも開門の要求は通らない。それこそ、町から退避しなければ存続が危ぶまれるほどでも無ければだ。

 よって、この場合の手段は飛んで行く事がもっとも確実で早い。

 周囲が暗い事で迷子になっては困るからと、先ほど発動したライトボールを先行させ向かうのだった。

 地理に明るければ直通で行く事も可能なのだが、昨日着いたばかりで詳しくはない。

 手間ではあるが道沿いに飛翔し、村の中央に降り立ち案内させるのだった。


「こ、此方です。村長夫婦が住んでるだけで、一部屋だけ、荷物置き場としてお金を払い、お借りしてる次第でして」

「事情は良い。さっさとその書状をくれ」

「は、はい」


 勝手知ったる他人の我が家って事でずんずん進んで行く暗殺者。その一室に入ると、ダンジョン産の宝箱が無数に置いてあり、一度開封した宝箱を利用して保管しているようだ。

 一つの宝箱を開封してお金を入れた巾着とこれまでのやり取りの封書などいくつも入っているようだ。

 一番下から、蝋封されていたのだろう、開封された書状を手渡された。


「これが一番初めに取り交わしました書面です」


『甲は乙に対し、仕事の依頼をする者である。

 甲は乙の活動に対し対価として、一仕事辺り二万リルを支払う事とする。

 乙は最終的にテリストを葬る事とする。

 最終的な仕事の報酬は十万リルとする。

 これが成された場合、甲と乙は無関係の状態へとなる。

 今後便宜は計らない事とする。

 カーライル・グラグロス、印鑑』


「ふむ、十分な証拠だな」

「こ、この箱ごとお持ちください。これまでの仕事の報酬とやり取りを全て保管してあります。

 完全に遂行し終わるまで、此方も身の安全を図るために手を付けておりません」

「報酬も手付かず残すとか徹底してるな。頂いて行くか」


 収納して村長宅を退出した。再び脇に抱えて空を飛び、町へ戻るのだった。



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