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70:ハンターと決闘

 相手はミスリル製両手用大剣か。ツヴィハンダー当たりかね、刃渡り百五十cmって所かな。

 クインにマジックバッグを持たせて離れてもらい、俺は刀を引き抜いた。


「それでは決闘を開始する。ルールは通常の通り、周囲の者へ攻撃が及んだ際には即時失格となるので注意するように。カウント0で開始する。三、二、一、0、始め!」


 走り込んで来るがなかなかの迫力だな、大物の武器を扱えるガタイが迫って来るのは結構な恐怖が生まれそう、クインと比べれば屁でも無いが。

 実力も走る速度からソコソコだろうな。

 唸りながら攻撃して来る辺りが馬鹿だな、今から攻撃しますよと相手に合図をしてどうするのか。

 まともな打ち合いには応じず、回避して受け流してとのらりくらりと相手の体力を削る。

 一見防戦一方だが、徐々に攻撃速度が落ち、精度が落ちと目に見えて疲弊しているのがわかる。


「のらりくらりと貴様は逃げの一手しか取れんのか!」

 こんな事いってますが、どうせ体力の回復の為に話しかけたのでしょう。少し攻撃へシフトを変えて話しますかね。

「そう思う? これも立派な戦術だよ。相手の無駄な動きを誘い、体力を削り、いずれ力尽きて負け確定。

 残念だがお前に回復の時間は与えんよ。デカイミスを犯した時がお前の命運が尽きる時だ。

 そんな大物を選んだ事を後悔するんだな」

「チィ、クソが!」

 此方の攻撃は上に下にと剣を振らなきゃ受けられない様にする。嫌でも受けなきゃ腕が切れるか足が切れるか。すでに回避するという体力は無いだろうな。


(おいおい、ユカンダさんがあそこま攻めきれないとはな、何者だあのガキ)

(防戦一方だからじゃないのか、攻勢に回り切れていない時点で実力はお察しだろ)

(そんな事いってるが、疲弊したらかなり不味い展開だぞ。もう十分以上は武器を振りっぱなしだ。そろそろ限界じゃないのか)

(それはあのガキもだろ、確かに武器は軽いが、十歳かそこら、体力と力じゃ絶対にユカンダさんが上だ)

(確かにそうかもしれんが、あの顔の表情からすると、決着まで長くは無いな)


 話し声が聞こえる中、俺の装備してるネックレス、阻害のネックレスより警笛音が鳴り響いた。

 違和感出まくりだった。

 物による鑑定では全く違和感が無かったのだが、スキルによる鑑定を受けた途端にゾワゾワ感が体をめぐり、スキル使用者まで簡単に特定できた。


「この状況で俺に鑑定するとか死にたいらしいな【風よ還元せよ、(ヤイバ)となり切り裂け、ウィンドスラッシュ】」

 見物客が大勢いる中、顔だけ晒して鑑定していた為に、頭を縦に切り裂いてやった。

 次いで、もう終わりだといわんばかりに、一気に速度を上げて左腕を切り飛ばすのだった。

「そこまで! 勝者Bランクハンター! しかし今の警笛音はなんだ? それに一人倒れた様だが……」

「それは俺を鑑定したからだ、阻害のネックレスが反応して警笛が鳴った。敵対行動と見なして殺したんで、後から騎士の詰所まで出向きますよ。証拠を提示させてもらいます」

「おい! そいつのいう通り一人死んでるぞ!」

「そいつを捕まえろ!」


 馬鹿すぎる。鑑定は禁止事項なはずだが、理解する頭を持ち合わせてないとみえる。こんな奴を相手にしなきゃならんとか本当にめんどくさい。


「はぁ、正当防衛なのを理解せず一方的に悪者ですか。それなら降りかかる火の粉は振り払わせて頂きますよ。死にたいなら掛かって来い」

「双方ともに止めよ! この場は俺が預かる。

 決闘は一時中断だ、この者との決闘はいずれ日を改めて執り行う。別の騎士を付けるので期日のすり合わせを行う」

「それもですけど、相手の資産をはぎ取らせてもらいますよ」

「貴様! この状況で資産をはぎ取るだと、何をいってやがる!」

「抵抗した場合、強制執行の邪魔をしたとして殺しますけど、死んで良いなら邪魔してください」

「てめぇ!」

「止めろ! ユカンダさんが弄ばれるように負けたんだ。お前が十人いても相手にならん。そもそも決闘に準じた行いだ。お前がどう庇おうと無駄だ。それでも無理に行えば、お前が騎士に捕まるぞ。

 立ち会ったのが騎士なら、その執行の邪魔をすれば騎士が敵に回りかねん」

「双方ともに落ち着いて下さい、刑の執行は此方で行います。先ずは部屋を借りて事情をお聞きしましょう」

「ならお任せします。クイン、行こうか」


 クインを抱っこして騎士の後に続き訓練場を後にするのだった。そして一部屋を借り受け、騎士と対面したのだった。


「先ほどは申し訳ありません。カーライル殿下より貴殿、テリスト様の身分は一切公表するなと申し付けてありまして、あの場はああいいう他ありませんでした」

「あら、俺の事聞いてたのですね。改めましてテリスト・ファーラルです。

 先ほどの警告音は国王陛下より頂いた阻害のネックレスに施されたスキルによるものです。簡単にいうと鑑定の無効化とスキルを受けた場合にアラートが鳴る品です。

 敵対者として殺しましたけど、どうされますか?」

「問題ありません、相手の実力を調べる行為は敵対者と断罪しても全く咎められません。

 しかし、こうも揉めてしまっては今後の活動に支障があるのではないでしょうか」

「支障も何も、相手に殴られたから発生したんですよ。それとも、伯爵だと公表して牢にでもぶち込んだ方が良かったですか?」

「申し訳ありません、その選択が取れない為に決闘になったのでした」


 理解してくれたようで何よりだ。


「謝る必要はありませんよ、あの馬鹿が悪いのであって、貴殿が悪い訳ではありませんから。

 もう一つの決闘ですが、明日以降で同じ程度の時間帯に絞って頂きたい。

 調査の為に昼夜逆転の生活を続けますので、日の高いうちは寝てますから」

「了解しました。しかし、町から逃亡するかもしれませんな」


 あり得るな。資産を差し出す事になるのはわりきってるだろうし、それなら今夜中に逃げれば決闘受けずに済むとか考えそうだ。


「それならそれで良いです、面倒事が一つ減って清々しますから」

「また、彼方でお食事をされるのでしたら、此方へ運ぶように申し付けて参りましょうか?」

「いやいや、騎士の貴方がそんな扱いをされては周囲の目が更に悪くなります。食べに行きますよ」

「では、以上ですかな、相手の資産もお調べした上で押さえますので、早くて明日でしょうか」

「余計な事までお願いしてしまいましたね。申し訳ない」

「いえいえ、年に何度も行っており慣れておりますので、お気になさらずに」


 別れの挨拶を交わして食堂へと戻ると人は半減といった感じに減っていた。

 人を殺しておいて無罪放免か? 野放しにするなよ、ガキはこれだからとか色々と聞こえて来る。

 ウザいな。ちょっと脅してやるか。


「文句があるなら何時でも決闘受け付けるぞ、死ぬ気で掛かって来い」

「……」

 黙ったようで何より、視線は向けて来るが口を開く事はなくなった。カウンターに座って注文する。

「おっちゃん、今日のおすすめを一人前ちょうだい。それとこの子に肉料理を一皿」

「……猫に食わせる料理は無いが、お前の分だけなら承った。料金は銅貨五枚だ」


 料金を先払いしてクインには俺が別途出してあげた。さすがに台の上では怒られるので俺の足元に、同じくマジックバッグも椅子の横に立てかけておいた。

 出て来た料理だが、周囲の人より量が少ない。それも分る範囲で。こいつも喧嘩を売るタイプか。

「もしかして俺って喧嘩売られてるのかな? 明らかに周囲のより量が少ないよな」

「嫌なら食わずに帰るんだな」

 こういうのを何と言うんだっけ? 金額に見合わない少量を提供されました。詐欺か?

「なるほど、ちょっと確認して来るか」


 スープの入った器を持ち受付へと赴き女性に聞いてみる。


「聞きたいのですが、お勧めを注文したらこれを提供されました。これって普通の量ですか? 明らかに少ないと思いますが」

「……少ないね、それがどうしたのかい?」

「銅貨五枚支払って出て来たのがこれとパンが二個です。明らかに詐欺られてると思うのですけど、これ、どうしましょうか?」

「は? それじゃ値段は銅貨二枚程度よ。何を考えているの? ちょっと待っていなさい」


 当然の様に後を追いかけたのだが、クインに取り押さえられているのが一名おり、そこに受付嬢と俺が到着したのだった。

 

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