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69:ギルド

 魔物ハンターギルドへは女性たちが先に入り、俺はその後を追うように入る。

 とりあえずは周囲を見回すと案の定と言うべきか、閑散としている。

 王都の魔物ハンターギルドの縮小版では無い様だな。

 真正面には地下と二階への階段があり、入って左手正面には受付とその反対側の壁にはランク別の仕事の張り出しが、右手には食堂が併設されている。

 特定の魔物からドロップ品の何々を取って来てだの、交易路の護衛募集が大半だが、今残ってるって事は割に合わないのだろう。

 さらに酷いのになれば、羊皮紙が日焼けして変色するほど長期間塩漬けになってるのも少なからず存在する。

 犯人を捕らえる事がひと段落着いた後、塩漬けの案件を処遇しなきゃならないかもな。はっきりいって見苦しいの一言に尽きる。

 そもそも依頼主が生きてるのかね、金額に見合わないと判断されている次点で察しろといいたい。金額を上げるなり元から引き揚げろってね。

 後はパット見た感じ違和感はないし、ギルドを監視しているような輩もいないようだ。

 アリサたちは別室へと案内されるようでエントランスからいなくなる。俺は宿へと戻るのだった。

 そして部屋へと戻り、待機していたメイドさんに手伝ってもらい防具を脱ぎ、寝るのだった。

 素っ裸に薄手のタオルケットを羽織り、真っ黒のタオルをアイマスク代わりにかぶって寝たのだ。

 

 ユッサユッサと揺らされ、名前を呼ばれて覚醒した俺。どうやら夜になったようだ。

「テリクン起きて下さい、そろそろ完全に日が落ちますよ」

「うーん、ふぁあああ、お早うカーラ」

 夜だけど。

「お早うは兎も角として、とりあえず着替えるわよ、こっちに来なさい」


 目をこすりながらベッドから這い出して、その俺に下着から防具まで着せてくれる嫁さん候補。いや、もう嫁で良いか。確定だし。


「聞いてきたことを話すからシャキッとしなさい」

「あい、それでどうだった?」

「被害が出始めたのは今年に入って三月からよ、男女別で比較するとあまり偏ってはいないわね。

 大通りでも被害が出ているとは聞いていたけどごく少数よ、脇にそれた道で発生した事例が圧倒的に多いわ。

 防具ははぎ取らずに武器と持ち物を漁ってる様ね。

 それと、やっぱり魔物ハンターギルドから出た人が一番狙われているわ、次点でお酒を出すような酒場ね。酩酊してる人物も襲われてるわ」

「内容的には予想の通りか、だけど解せないのはなぜ伯爵が絡んでるって考えに行きついたんだ?

 今ではあの伯爵家に住んで、隠された証拠も全て陛下の元に行ってる。

 律義に金の出所まで記載する几帳面な奴なら、別途此方で雇うとかの書面があっても可笑しくない。

 これがあったとして殿下が知ってるのなら、当然隊長も知ってるはず。

 直接出向いて行く事を知るなら注意喚起位はするよな。

 そもそも囚われた伯爵の頼みを遂行するかね?」


考えれば考える程別件としか見えない。何か伯爵と結び付けなきゃならん理由でもあるのかね?


「辻褄が合わない事が多すぎますわね。犯人も罪を重ねる分捕まるリスクが増える訳ですから、伯爵から資金提供があったとしても、わたくしならそのまま持ち逃げして遂行しませんわ」

「他に狙いがあると見て間違いないな。三ヵ月前からってのも解せない。そんな訳だから気を付けてな」

「見通し良くて人の通りがある場所を探して訓練するわね、そうなると西の街道沿いね」

「それでいい、朝には帰って来るんで、進展報告はその時に。

 もしかしたら相手を特定したら遅くなるかもね、その時はクインを一人で来させるよ。場所は大丈夫か? そうそう、今の面子なら話しても大丈夫だぞ」

『宿の場所は記憶してるから大丈夫じゃぞ、いざとなればわらわが見張りにつけばよいからの』

「そんな訳で行って来るか、それじゃ俺の防具は置いて行くから、スーシーの事頼むな【光よ還元し、辺りを照らせ、ライトボール】」


 食べずに宿を後にしようとしたものだから宿の店員さんに声を掛けられた。

 お食事の準備が整っていますよ、出掛ける前に済ませては如何ですかと。ありがたい事なのだが丁重にお断り申し上げ宿を後にするのだった。

 話し込んでる内に完全に日が落ち帰路につく者はランタンを持ち、光源を確保してる事が見て取れる。

 俺はクインを抱っこしてる事から光魔術で代用してるが、付近には俺と同じことをしている人物は皆無だ。

 当然ながら食事が可能な店以外、この場合食料品店なども既に営業していない。

 何事も無く魔物ハンターギルドに到着した俺たち、入る前に光源を消して入場するのだった。


 流石は魔物ハンターギルドといった所か、少数だが受付へ並ぶ者がおり、食堂に至っては席が空いてるのかというほど満員御礼だ。

 テーブルに相席求める程入れの度胸は宜しくない、グループグループにわかれて楽しんでる所に見ず知らずの俺が加わっては、熱々の鍋料理に水を差すのと変わりない。

 よって、唯一空いているカウンターの一席へと座る事にしたのだった。

 椅子を引きいざ座ろうとした所、腰を落としている最中に右隣の男性から裏拳を左鎖骨当たりにモロに受け椅子事後ろへ転倒したのだった。

 クインを抱っこしてるので受け止められなかっただけ、それにしゃがみ込んでいる最中だった為に避ける行動がとれなかったのだ。


「いつつつっ、おいあんた、何するんだ。予約席なのか?」

「止めとけ、そいつの左隣は何時も空制にするのがここのルールだ。わったら別の席を探すんだな」

 後ろの別の奴から声を掛けられた訳だが良く分からん。空いてるのに詰めるなとか営業妨害だろうに。

「何を馬鹿な事をいってる、それじゃこいつがいるだけで営業妨害だろ。なぜ放置してる」

「訳ありな上にそいつの実力は折り紙付きだ。誰も逆らえん」

 なるほど、訳はどうでも良いが、力をちらつかせて強要してる訳ね。排除するか。一発良いのを貰ったしな。

「なるほど。力を誇示して強要してるんだな。クインすまないが少し離れててくれ、加勢は不要だ」

 最速で接近して首元に手刀を食らわせて意識を刈りとり、襟元掴んで後ろに引き倒した。

「おいおい! 何してやがる!」


 見てのとおりですが何か?


「俺はこいつから攻撃を受けた、だからお返しした、それだけだな。

 何してやがるって言葉は俺が攻撃を受けた際にいうべきだろ、最初に攻撃したのはこいつだし、何考えてるのかいからんな」

「何を! 新参者のガキのくせに何言ってやがる」

「は? 新参者だろうが年齢が若かろうが、こいつが先に攻撃したのは明白だろ。そっちは咎めずなんで俺が注意されなきゃならんのよ。

 前後が逆転してる上に注意する対象を間違えてるぞ。そうだよな、そこの騎士殿」


 俺が配置してくれって頼んどいたからな、暗くなったので来たのだろう、俺にばかり気を取られて騎士が来た事に気が付いていない様だ。

 驚いた顔で怯んでいやがる。さて、どう出て来るかね。


「正論だな、そこに倒れている者が先に攻撃したのならやり返されて当然だ、全く非は無い。

 それどころか、罪人を庇いだてするのなら同罪と見なすが、良いのだな?」

「チィ、勝手にしろ」

「勝手にするからこうしてるんだろ、お前にいちいちいってもらわずともするから安心しろ」

「き、貴様、騎士がいるからとつけあがりやがって、決闘だ!」


 手前が悪いくせに、八つ当たりの逆切れとか本当にウザイ。全部はぎ取ってやるか。


「条件付きなら受けてやる。今持ち合わせている全財産を賭けようや。

 負けてこの事を拒否した場合は強制執行する。それで相手が死のうとお咎め無し。どうよ」

「馬鹿なガキだ。なら、その高そうな防具もはぎ取ってやる」

「その立会人は俺が努めよう。ルールは一般的な事を採用するが、場所は地下の訓練場なので場外は無い。それでは行くぞ」


 相手は半酔い状態だ、その為仲間だろうか、水をがぶ飲みさせ身支度を手伝っている。

 俺は既にフル装備なので騎士の後を追って訓練場へ行くのだった。クインもちょこちょこと歩き、俺の後をついて来ている。

 相対可能な様に俺が定位置で待つと、俺が気絶させた奴まで起こしたのか、連れて来ていた。


「その決闘俺も混ぜろ。後ろから不意打ち食らわせやがって、後悔させてやる」

「ああいっているがどうするかね」


 不意打ち以前に犯罪者風情がすごんでもねぇ、見栄にしかなって無いぞ。


「わかったわかった。そのおっさんの前にあんたを相手にしてやるよ。

 賭けるのは財産の全てだ。拒否した場合は強制執行する。邪魔したら殺してもお咎めなし。それで良いなら受ける」

「決まりだな」

「あ、あの旦那。それでは俺の出番がないでは無いですか」

「あんな奴の資産はいらんから全てくれてやる。それならどうだ」

「それでしたらお任せします」


 現金だねぇ、こいつが負けたら決闘を拒否するんじゃねえの? それも含めてこの順番を提案したんだけどね、拒否したら不戦敗で強制執行しますがなにか?




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