68:到着初日昼間
メイドさんに屋敷から一番近い宿へと案内してもらい、大部屋二部屋を借り受けた。
町の案内もしましょうかといわれたのだが、それは目立ちすぎるので遠慮したのだった。
魔物ハンターギルドの位置だけは口頭で説明してもらった。
先ずは街中の地図を頭に叩き込む必要がある。馬車では無く歩く事が最も覚えやすいので早速安い方の防具に着替えて近場からぐるぐると何が有るのか観光へとしゃれこむ。
それなりに稼げてますよとのアピールにもなるし、それならついでに楽しもうかなと、スーシーの私服も買わなきゃ、メイド服で出歩かれても困るからね。
将来の嫁さんなので他の三人と同列に扱うのは当たり前なのだよ。
そういうわけで、一番最初に寄ったのは服屋さんだ。
胸を度外視した普通サイズでは当然着こなせず、体型にあったのを着れば胸以外ブカブカで歪、特注でフルオーダーしました。
採寸され、生地にデザインをこの服に合わせてくれといった注文方法で五着注文したのだった。
そして俺たちはクインを抱っこして観光に移った。
猫なのに翼がある珍しさ満点な子ですから、ちょっかい出されるんじゃないかなと危惧してる訳でして、外を連れ歩くときは必ず誰かに抱っこされてるのですよ。
そんな訳で火耐性がある俺が適任だって話だよ、何せ暑いですから。
「ご主人様。宜しかったのでしょうか、五着もオーダーしてしまいまして」
「気にしなくて良いのですわよ。奥さんになる方へのテリストなりの配慮ですわ」
「それだけどテリのお嫁さんになるのにご主人様は駄目ね。もう少し砕けないと」
「それは当たり前だな。ルーシーも俺の事をそんな呼び方してたら、周りが気が付かないんじゃないか、メイドとして見られるのは流石に不味いから」
「その為の服の発注ですものね、呼称がご主人様では駄目ですよね」
「それとメイドって役職も変更だな、何かするにしてもメイド長や執事より立場が上になってもらわなきゃ困る」
我が家にいるのは当たり前だとしても、メイドとして働くのは解せない。いうなればメイドの仕事を嫁さんが奪っちゃうわけだ。
そうなればスーシーは手際が良い分二人分は仕事を奪う可能性がある。
それでは雇う人数が減り、散財する機会が減ってしまう。
貴族という立場上それは不味い。貯蓄は必要だが、不要な分は放出しないとね。
「それもそうね、体格から武器の扱いに関しては無理がありそうだから、魔術方面で鍛えて魔物討伐に加わってもらうとか?」
メイドを辞めたからってハンターへ転職は敷居高すぎるだろ。俺の嫁になったらハンター確定路線の設定は宜しくない。
「いやいや、そこは無理強いすべきじゃないよ。流石に命のやり取りに参加してくれなんてのは駄目だ。
俺が家にいなくてスーシーが家にいる場合には家長代理って事で良いだろ、その方が極端に役割が変わらずに落ち着くんじゃないかな」
「その方が無難ではあるわね、戦闘に特化した奥さんばかりなのも変でしょうから」
「あの、私でしたら戦闘への参加も構いません」
こんな事言ってるけど良いのかね。生きて行くうえで必須とはいえ、不得手だという人を引っ張り出すのは非常に不味いと思うのだが。
「……」
「護身程度には鍛えておくべきだとは思いますわよ。特にトラブルへ発展しそうな案件に呼ばれますもの」
トラブルメーカーの俺の嫁って時点で配慮する必要があるのか‥‥‥。そう考えると複雑だな。
「確かに王城へと招かれるたびにトラブルに合ってるな、そうなると家族を狙われる事態に発展するかもしれないのか……後日、魔術適正を調べてみるか。スーシーは力強い方?」
「どうでしょうか? ガラハルト様からの品を受け取った際に運び込みをお手伝いはしましたが、特に可もなく不可もなく終わりましたが」
「中身は空でもタンスとかは結構な重さがあったからな、それなら強い方かも」
「テリ、そんな事を聞いて何を考えてるのよ」
「武器を振るには流石にきつそうだから無理だと判断する、だっだら防御重視で盾を二枚持ってもらおうかなと。
魔術なら遠距離特化で攻撃へ参加できるから基本的にはカーラの傍で頑張ってもらう。
もし、敵が抜けて来た場合はカーラの護衛兼引きつけ役なら防御特化で問題無い。
魔術でごり押しが可能な時点でそこまで追い詰められる事は無いと思うけどね」
「で?」
ここでそんな聞き方するのかよ。何を聞いているのかあてずっぽうで答えろってか、受けようじゃないか!
「準備するのは最低でも二種類で全部で四つだ。魔術使うような相手で後衛を狙って来るようならタワーシールドの二枚持ち。
普段持つのは攻撃にも使用可能なソードシールドかな、盾の外周部が刃になってる奴。大きさとかはそうだな、カイトシールドあたりかな。そっちは実物を見てもらって選んでもらおうと思ってる」
「よく聞きたい事がわかったわね……」
「そりゃ、盾っていってもピンキリあるからね、総オリハルコンで作ればほとんど傷すら付かないんじゃないのかな」
「テリクンは知らないようですね。魔術攻撃の防御も視野に入れてるのでしたら、ミスリルの方が効果は上です。ですから元ギルドマスターのガラハルト殿は、武器も鎧もミスリルで統一されていたのです。
武器への転用でしたら切れ味も強度も硬度もオリハルコンが上ですから、武器用の素材と考えたが良いですよ」
なるほど、そんな理由があったのか、あれだけの資産持ちのくせにオリハルコン以上の素材が一つも無かったのが疑問だったんだよな。
蟻さんの魔術すらミスリルの刀で切り裂けていたし、対魔術用ならミスリルが良いのか。
レベルが上がれば腕力も上がる。その都度厚みを変えて行けば良いか。
「なるほど。それならミスリルで作る以外の選択肢は無いな。戻ったら特注で発注しよう」
「注文せずとも既製品から選べばよろしいのではないですか?」
「いやいや、二枚合わせたら正面に隙間が無い様に溝を切って張り合わせになる様に加工してもらう。
それに、既製品だと腕で胸を挟み込んでしまうからな、その辺りを調整するように握り手を若干斜めにしてもらうつもりだ。肘の位置が少し離れた方が良いだろ、その方が苦しくない」
「そんな事によく気が付くわね、胸に関しては妥協は無さそうよね」
いや、大きければ直ぐにわかる事だろ、腕を真っ直ぐすれば嫌でも胸を挟み込むし、それだと防具もあって邪魔過ぎるっていうより痛そう。
それなら肘を寄せずにきちんと張り合わせられるように握りて部分を加工してもらうのが良い。
「何よその批評。なぁ、ここに避妊具って無いか?」
「あるにはあるわよ。テリがオブラートとかいってたミル皮。あれを加工したのがそれよ。それと飲むのがあるわね、高いけど。なに? 本番がしたいの?」
なるほど、ペラペラで先が見通せるほど薄かったからな、そんな活用方法だったとはね。
それなら飲み薬的なのが確実かね、少々高くても良いですから。
「うむ。胸ばっかりっていわれると釈然としないです」
「はぁ、そんな事でする事じゃないでしょうに、変な所で意地張っちゃうのね」
意地とかいわれてもね、こちとら17で未経験だったのですよ、今では精神年齢一八歳ですけども。そりゃ女の子の体に興味ありまくりな訳でして、胸だけではなくあそことかもね。
「それじゃ要らないわ。
とにかく俺は早めに宿に戻って寝るわ、昼夜逆転生活に入るからスーシーの魔術教官は任せる。
それに合わせてココアに縮地のスキルを取得をお願いするよ。スーシーは……俺の高い方の防具を着こめばがっちりホールドするからいけるか?」
あまりに高品質の防具を着こめば相手が警戒するからな。俺の防具はほどほどで丁度良い。
そして最適化の魔術を込められているからがっちり強調するように固めるからな、相当に揺れなくなるとは思うが……アリサに任せるか。
「帰るには早いわよ、一応魔物ハンターギルドには寄って帰るわよ。
スキルの方は任せなさい。テリはテリのやるべき事を全力で、ね」
「全力は兎も角、確かに暗くなる前に一度は行くべきだな、どんな点に気を付けるべきだと思う?」
「事件の概要だけで詳しくは聞いてないもの、その点を聞いておいた方が良いわね。発生しはじめた時期と頻度、どの地点が多いのか、性別はどうか、襲われる直前に何処へ寄ったのか。
この辺りは聞くべきね」
「流石アリサ、といいたいが、俺は聞かないぞ、調査してますって職員に知られたくはないから聞き出すのは任せる。それじゃ行こうか」
「で、今の所尾行者はどう?」
ふむ、それらしいのはいないな。今日着いたばかりで俺たちの情報は流れていないはず、これで尾行されていたとしたら殿下を疑うからな。
「一定距離でついて来るのはいないな、尾行者をとっかえひっかえしながら尾行されていたとしたら、判別不可能だが」
「私もある程度までは分かるようになったけど、そこまで正確にはわからないわね」
「いずれわかるんじゃないのか、慣れれば」
「それはそうとテリはクインを連れて行きなさいよ。こっちは近接も遠距離も攻撃可能な三人で固まるから、不用意な接近にさえ気を付ければ安全だから」
「なら、クインには此方を手伝ってもらおうかな。相手を特定した場合には手を出さずに尾行してもらう方向で。全員を捕らえずに逃がす予定だから、そこにクインがいれば絶対に逃げれないからな。
俺の事を知ってる輩だったら、クインがいれば絶対に逃げれないとわかってしまう、逃がしたではなく、逃げ切れたと思わせたいんだよ。
相手に逃げさせたと感ずかれては誘導されて違う場所に殴り込む可能性があるからな」
他人の家に殴り込みとかした日にはいい訳出来ないほどの失点だからな。誘導されない様にしなければ、それか全員捉えて尋問コースでもよさそうかな。
「そろそろ着きそうだからここまでね、テリは別行動が良いのよね、仕事の依頼でも眺めて、適当な所で帰って寝てていいわよ。夕食の時には一度起こすからそのつもりでね」
「いやいや、食事はギルド内で食べるから、そろそろ出かけろって直前に起こしてくれると助かる」
こうして別れるのだった。




