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66:公爵家

 屋敷に帰り着くと我が家に馬車で乗り付けている御者が目に入る。どうやら我が家に既に入室してるらしく、御者はびしっとしておらず、リラックスしている。

 誰か来るとも聞いてないので突然の訪問か? 聞いてみるか。


「我が家に何かご用ですか?」

「これは……テリスト様にカーラ様、ココリアーナ様、もう一方は存じ上げず申し訳ありません。

 この度はカッリサス公爵閣下の御者として参っております。閣下はすでにテリスト様の邸宅へとご案内されておりますれば、お会いして頂ければ幸いです」

「ふむ、コウシャクってどっちのコウシャク様?」


 字で書くと一発なのだが、普通に言葉で説明されてもどっちか判別できないんだよねぇ、そもそも知らない人の名前だし。


「お父様の遠縁にあたる方です、より上位の公爵家の方です」

「なるほど、理解できたよ、貴方は入らなくて良いの? 案内するよ」

「めっそうもございません、私共二名はこの場でお待ちさせて頂きます」

「そう言う事なら、失礼させてもらいますね」


 そのまま放置で屋敷の門を潜ると当然の様にカシナートに出迎えられた。


「テリスト様、お客様を応接室にご案内しております。

 お越しになられた方はカッリサス公爵閣下御自らでございます。失礼のない様にお願い申し上げます」

「了解、それで用件は?」

「主自らお聞きください、私の立場ではお聞きする事叶いません」

「了解。では行きますかね、皆は別室で寛いでて良いよ」


 初めましてテリストですと気軽に挨拶できないのが面倒な所だな。これだから形式に拘る貴族は嫌なんだよなぁ。婚約者三名とクインは別室に行った。俺目当ての様だからな。


「(コンコンコン)お待たせいたしました。主がただ今お戻りに、お目通りしてよろしいでしょうか」

(やっと帰宅したか、今すぐに通せ)

 ガチャッと扉を開け入室、右手を左胸の前、手のひらを自らに添えて、腰から45度曲げて挨拶をする。


「お待たせして誠に申し訳ありません。テリスト・ファーラルと申します。カッリサス公爵閣下」

「うむ。私の名はカッリサス・グラグロス、隣は二女のアンネロッテ・グラグロスだ。挨拶しなさい」

「アンネロッテ・グラグロスよ、私に会えたことを光栄に思いなさい」


 ぶっ、こいつ頭大丈夫か? 光栄に思えとか、会えなくて上等ですけども、早くお帰り下さい。といいたい……。

 見た目は悪くない、悪くないが……今の一言が性格を表しているな。光栄に思えとか上から目線で最悪だわ。

 こいつに物を買ってやったら、買わせあげた事を光栄に思いなさいとかいいそうだな。

 座っているので背は不明だが、俺よりは上かなたぶん、まぁどうでも良いか。


「アンネロッテ様、お会いして頂き光栄に存じます。して。今回の御用向きをおたずねしてもよろしいでしょうか?」

「娘一人をこの場に連れて来てるというに、その程度の事すらわからぬのか。陛下はお主の事を過大評価してるのやもしれぬな」


 あ、こっちの公爵本人も駄目だわ。確かに身分としては上だが、家長を座らせずそのまま会話に突入とか、最低限の配慮する気質無し。

 挨拶が終ったらすぐに対面に座る様促すのは最低限の礼儀である。それすら行えない頭の持ち主なら此方から関係そのものをご遠慮願うレベルだな。


「それは大変申し訳ありません。何せ貴族になったと申しましても一年にも満たない俄か貴族でございますので、大貴族であるカッリサス公爵閣下ほどの見識には程遠く、恥を晒しております」

 どうせ、この娘をやるとかの話だろ、俺はそれほど有能ではありませんよと、とことん下に置いて破断まで持って行かせる!


「だが、自らの力で伯爵になったのは事実であろう、まぁそこは良い。今回はアンネロッテと婚約を結んで頂く」

 やっぱりか、今回は正面から断らせて頂きますわ。

 遠慮なんてする必要のない相手だ、断るまでとことん付き合ってやる。

「閣下もお人が悪い、その様なご冗談はお慎み下さい。私の様なほぼ、一般人の様な輩では釣り合いません。お断りさせて頂きます」

「貴様! アンネロッテでは不服と申すのか!」


 当たり前だろ、こっちから願い下げですがなにか? 傲慢そうなお嬢さんはいりませんですハイ。


「その様に聞こえたのでしたら申し訳ありません。

 私の様な新参者が釣り合うとお考えですか? 先ほど、閣下の真意さえ読み取れないほどの馬鹿をアンネロッテ様の伴侶にするおつもつもりですか? それではアンネロッテ様がお可哀そうです。

 せめて十年以上は貴族として地位を確立されている、威厳ある方の元に嫁がれる方が相応しいと愚考しますが、如何でしょうか?」

 さて、この程度で引き下がってくれるかね? もちっと下げたが良いなら下げるが。

「お父様。自らをこれほど酷評する方の元には嫁ぎたくありませんわ。破談させて下さいまし」

「ぐぬぬぬっ、もうよい! アンネロッテ帰るぞ!」


 おっしゃああああ! 帰れ、かえれ、か・え・れ! お見送りしてさようならしたのだった。

 そして三人と合流してカシナートも同席させた。


「話は終わったよ、アンネロッテとの婚約の話を破談まで持って行った。あれは駄目だな、側にいてほしくないわ」

「自らの地位を笠に着て人を見下ろす発言が多いと聞きますね。テリクンと結婚した場合、相当に喧嘩の絶えない家庭になるかも知れませんね」


 それは受けたらの話だろうけど、追い返したから大丈夫だ。


「自分で破談するといってたから大丈夫だ。二度と来ないだろ」

「そんな相手をどうやって破談まで持って行ったの?」

「俺をとことん下に置いた、相応しくないってね。

 あの手の輩は確かに自らを上に置きたがるが、それゆえに旦那の身分が低いのも嫌がる。

 当然だよな。他人からそんな目で見られたくないからな。

 いかに釣り合わない存在か、説明したら彼方が破談といいだした」


「だけどそれ、公爵様は気が付いてるんじゃないの?」

「そうかもね唸ってたし。本人が嫌だといってるんだし、無理強いしたら今度はあの子が父親を酷評するようになるだろうな。なにせ性格が傲慢だし」

「そこも計算の上だったのね、呆れたわ」

「テリストに掛れば公爵閣下も手の上ですわね、何処でその知識を取得されたのか興味がありますわね」


 手は出せないんで口論での応酬ばかりしてましたからねぇ、元々此方の名前を弄ってきてる事から容赦なく論破してやってました。

 そのお陰か友達はごく少数でしたけど後悔はしてませんです。


「止めといたが良いよ、なんせ口喧嘩が絶えなかったから嫌でも慣れた結果だし」

「それは今更ね、カシナートさんを連れて来たのは伝える為でしょ?」

「だね、明日任された管理地、プレストリアに向かって出発する。

 食料に関しては魔人族の国に行く際に準備してもらってるから大丈夫だが、同行するなら必要な食器類とテーブルや椅子を確保しておいてほしい」

「視察に赴かれるならば絶好の機会ですな。私は離れられませんので、見習い一名とメイド二名をおつかわし下さい」

「了解。それでだが、俺は地理に疎い。その辺り明るい者を選抜してもらえるか?」

「ご期待に添える者を選んでおきましょう」

「では以上かな、何か報告とかあるか?」

「大変申し訳ないのですが、お見合い希望者が後を絶ちません。主は伯爵ですので同格の貴族様まではお断りさせて頂いておりますが、爵位が上の方となるとそうもいっておれません。どうかご判断を」


 その断る為に雇ったも同然だからな、それでも捌ききれないのが混ざってるのか。


「そのまま蹴った場合のデメリットは?」

「相当なやっかみを受け、少なからず圧力を受けるやもしれません。いうなれば物資供給の面などで都市運営が難しくなるやもしれません」

「そうかそうか、それなら全部断れ。その圧力かけて来た馬鹿をこっちから逆に追い詰める」

「あ、あんたね。今度は何をやらかすつもりよ……」


「ん? そうだな、先ずは特産品でも作ってそいつ以外の場所で販売しようか。客を引き抜いてやる。ついでに商家もか」

「具体的には?」

「先ずはスイーツ関連だな、俺の知識を流し込む。材料は同じだが、色々と手を加えられそうだからな。

 それに砂糖って高いんだろ? 普通に食事するより倍以上高いよな」

「前者は兎も角、確かに砂糖はたこうございますな」

「それ、別のを作って値段を下げようか。パンがあるから麦ってあるよな?」

「ありはしますが、それが砂糖になるのですか?」


 麦芽糖の製造から水あめを作るんだよ、一度家庭科の授業で作り方を習った。実際に作ったのだが、大根の酵素でも作れるようだが、そっちは分量が不明。試行錯誤するなら麦からが手っ取り早い。

 無理だった場合だけ大根使うか、それっぽいのが汁物に使われてたからどうにかなるだろ。


「パンの原料になる前の、収穫して乾燥させただけの品って手に入るか? 簡単にいったら種子のままの状態の品」

「難しいですな。今の時期は既に収穫され、もみすり作業まで進み、既に粉砕まで行われております。

 種籾ならばありましょうが、何分種用ですので買い付けるのは難しいかと思われます」

「ふむ、とりあえず試すだけだからな、一kgでいいから手に入れてくれないか、合わせてもみすりまで終わってるのを十四kg頼む」

「それほどの少量でしたらある程度の料金を上乗せすれば売ってもらえましょう

 粉砕していないのも同様です。手間が掛かりませんので喜んで売りましょう」


 それなら帰ってきたら直ぐに仕込めるまで手を加えてもらおうかな。


「それを買ったら種籾の方を発芽させといてくれ。一晩水につけて水から上げ、日陰にあまり重ならない様にして広げておけばいい、場所は地下が適当かな。あまり気温が高いと出ないからな、それとあまり乾燥しない様にちょくちょく水をあげてな。

 そして元の三倍程度の長さになったら、水やりを止めて天日で完全に乾燥、そこまで可能か?」

「手間はほとんどかからないようですな、入手し次第しておきましょう」

「それともう一つ買っておいてくれ、それを粉砕するからすり鉢の様なのをな」

「石臼で宜しいので?」


 それは粉になるな、時間も掛かるし叩いて砕く程度で良いのだが。


「そこまで細かくは砕かない、荒く砕ければ良い」

「では、それらしいのを購入しておきましょう」

「頼む。最悪ハンマーで叩き潰して荒く砕けば良いからな」

「やけに雑なのね」

「砕かず使えもするけど効率の問題かな、だからそこは大雑把で大丈夫だ。商業化する場合は手間を省くために砕かないけどな。まず、作れるかが問題なだけだ」

「それでどうやって追い詰めるのよ」

「原料も何もかも、そこから関連してるところとは取引しない。当然技術も教えない。孤立させるんだよ、美味しい商品があるのに手を出せない商家、どんな対応をするか楽しみだな」

「はぁ。あんたと来たら悪知恵が働くわね、好きにしなさい」

「婚約断られたら報復処置とか人として残念な部類ですからねぇ、きっちり報復しますよ」



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