59:崩壊
王城の敷地内の中。お城からだと百m程度は離れているだろうか、その正面に俺たちは陣取っている。
結構な時間待つと、相手方が来たには来たのだが、的外れな馬鹿が騎士を二十名ばかり引き連れて来たのだった。
黒髪黒目、背の高さは俺に頭一つと少し高いか、全身ミスリル製フル装備だった。ヘルムまではかぶって無いが。
ついでにいえば、城勤めの衛兵にも後方を絶賛囲まれ中である。ざっと十五人前後か? 其方へはアリサが威嚇している。
「貴様がテリストだな。ヤヨイを拘束した上に、その際殴り飛ばしただと、勇者相手になんてことをしやがる」
行ってた内容には目もくれず、都合のいい部分のみしか考えませんってか、こいつも駄目なタイプだな、これなら譲歩する必要さえ無いわ。
そもそも、フル装備の奴ばかりさし向けて来た時点で和解する気はないのだろうと当たりを付ける。
相手が自分都合なら、こっちもお返しにいうまでだ。
「そんな事はどうでも良いんだよ。国王のボケからの返事はどうしたよ、さっさといえ、ウスノロ」
「返事だと、お前の様なチビなんぞの相手は俺に任せるだとさ、それより貴様、勇者に対する態度がなってないな」
なるほど、元から対話は不要って事か、罪を上塗りしてる時点でお察しだがね。
「勇者? どこに居るよそんな奴、私は馬鹿ですと自ら不評ばら撒いてる馬鹿なら目の前にいるが」
「き、貴様、この俺を、勇者を前に何たる暴言! 許さんぞ!」
暴言の前にお前自らの態度を考えてみたらどうよ、滑稽だぞ。
「あははっはっは! 許さんとか馬鹿かお前。許しを請うのはお前だろ、お前らは諜報活動という宣戦布告にすら取られる行為をしてたんだ。戦争したくなければ頭を下げろ、エセ勇者」
「き、貴様だけは許さん! そこへ直れ!」
「許してほしいなど一欠けらすら思ってねえよ、死にたくなきゃ許しを請うんだな」
突っ込んで来るが、俺の前に到達できなかったのだ、頭に血が上り、俺にだけ集中していた所をカーラに射かけられて目に刺さって死亡しましたが何か?
レベルが有りHPという概念が有ろうと、脳まで達する攻撃を受ければそら死にますわ。
後ろの騎士はあっさりと殺された勇者を目のあたりにして止まっちゃいました。それ処か後ろに少しずつ引いて行きますが、どうしますかね。
とりあえず衛兵の処理だな。アリサ一人で十五人はきついか、気配遮断と魔力操作を使用し、後ろに回り込み端から順に首を斬り飛ばして残りは騎士だけになった。
「はぁ、どうにもならんなこれ、戦争おっぱじめた方が早くないかこれ?」
返答を待っては見たが。謝罪する意思は無く、此方を殺すつもりで寄越した勇者一人と騎士二十名。和解どころでは無くそのまま戦闘するつもりで来ている事からお察しだろう。戦争回避? しろと命じれれてもどうやってて回避するんだよ。命令するならお前が行って来いと匙投げたい気分だ。
「早いといわれれば早いわね、それよりも、この事を陛下にお伝えしたら卒倒しそうよね」
そんな事言われてもね、相手方が余計な事してくれたからこの事態なんですよね。
相手が仕掛けて来たのに避けろっていわれても、不可能な時点で行きつくところまで行くしかないんだ。
「そもそも根底が違ってますわよ、彼方は戦争も辞さない考えで事を起こしましたのよ。それなら此方も打てる手は一つしか有りませんわ」
「そうですよテリクン、既に戦争へ舵を切られたのです。この場をどう取り繕うと回避は不可能ですよ」
どうも女性二人はすでに戦争へ移行したと考えているようだな。俺たちの処理を良く分からんエセ勇者に頼んだ時点で察しろってか。
「了解。それじゃ戦争に突入しましたって考えで行動するか。それよりここにも魔物ハンターギルドってあるよね?」
「確実にあるわよ」
なら、ハンター業営んでますって風姿を取れば紛れ込んで活動もそれほど難しくは無いだろう。
俺たちはその点既に着替えているからな。
到着した時点で直ぐに謁見可能な様に服装を整えてはいたのだが、此方への諜報が発覚した時点で着替えて男性四人の部屋へ向かったからな。
御者二人は良いのだが、騎士と文官が不味い。それならいっそ四人ともにハンターらしい格好に着替えさせて行動させれば難なく脱出できるだろう。
八人で団体行動するより四人ずつに分かれた方が良いな、あまりに多いと警戒される。所詮はよそ者だからな。
御者二人にはその辺りも考慮して色々な品を持たせてある、この作戦で行こうか。
(俺達はこれからひと暴れするから男四人で行動しろ。そして可能だと判断したらハンターたちと市民へ情報操作して帝国に擦り付けろ。
俺たちの入国は一部しか知らないからな。そもそも城へ攻撃した人物を特定されなきゃそれで良い。
当然服は変えるようにな、ハンターですといった格好に変えるように、武器もだぞ、その方が怪しまれないからな。そして頃合いを見計らって国外脱出だ)
(その様な対応で宜しいのですか?)
(もう戦争回避は無理だが情報操作次第では逃げれる可能性がある。
勇者が殺しに来た時点で察しろ。それより、いい加減な情報を流されて獣王国が悪者になるのは避けたい、だから今の内から情報操作しろ、この場は俺たちが受け持ち引き付ける。絶対に獣王国の名前を出すなよ。そうそう、馬車は諦めろ、別のを調達しろよ、お金は有るか?)
今からの攻撃でダメになりそうだし、そもそも今からここへ敵方を引き付けるからな。そんな中で馬車で出て見ろ、怪しいですから調べて下さいと表現してるってもんだ。
それに、うちの使ってる馬車は元々陛下所有の品、そこから辿り着かれてはかなわない、ここで一緒くたに処理する方が良い、燃えれば跡形も無く証拠隠滅できるからな。
(お金はあります。直ぐに行動へ移ります、どうかご無事で)
(なーに、がっつり時間を稼ぐからその間に紛れ込め、頼んだぞ)
(はっ!)
よし、此方の行動方針はこれで良い、後は正面の騎士とこの城その物をどうするかだな。
魔術撃ち込んでボロボロにするのと、可能なら中の人員を皆殺しにするのが望ましいが、どうしたものか。
「そこの騎士ども! いい加減話の出来る奴を連れて来い! 魔術を撃ち込むぞ!」
「それなら撃ち込んだ方が早いわよ、戦争になるのは決定でしょ、回避できるというのなら手段を教えてほしいわね」
最後の最後に慈悲を与えたつもりだったが乗って来ないのなら仕方が無いか。
ジリジリ下がるだけで言葉を発さないだよな。
うーん、難しいな。そもそもあちらの馬鹿な行動で此処に来てるのだし、その上で更に同じ事を上に積み上げやがったし。
これに対する対価と言われてもピンと来ないよねぇ。
そもそも金銭的に片を付けたとしてもこれほどの確執があれば、もう敵対認定しても可笑しくない状況だ。
更に更にで勇者の御登場で更に倍! これをどうやっても纏めて戦争を回避しろといわれても手がありませんとしかいいようがない。
戦争回避? ありえんな。
「それもそうか、城が破壊されるけど、自業自得だよな。新しいのをくれてやるよ【風よ火よ還元し、暴風よ圧し圧し逆巻け爆散焼き尽くせ、ファイアトルネード】」
炎を纏いし逆巻く台風が城の直前に出現した。微速前進して城を蝕んでいく、熱により城を構築している石材が溶け出し上空へと舞い上がる。
熱による自然発火で城の至る所から火が燃え広がる、それさえ台風の方へ引き寄せられ、さらに成長を遂げ、凶悪さを更に増すのだった。その為逃げ遅れて死者が激増したのだ。
ぼーっと見てても仕方がないので勇者の装備を遺体ごとゲットと、これで俺たちが殺した証拠も、騎士という証人すら目の前の台風に引きずり込まれて既に燃え尽き上空の彼方へ、だ。
確かに魔族は魔術が得意と聞いたが、この規模の対応は不可能だったようで逃げ延びた者はいない。
これにより城にいた者は全員死亡した。俺たちが乗って来た馬車も馬共々焼け落ちた。
そして、今回は極秘に連れて来られた事で、獣王国から来ている事を知るのものは生きておらず、犯人不明のまま闇へと葬られた。
大半の者は帝国の手によるものと疑っているのだが。
本来ならばエクスプロージョンは瞬間的な爆発による圧力と膨大な熱量によって攻撃する広範囲系熱殺魔術だ。
そこでカギになるのは瞬間とはいえ、早く発動する台風の方にある。自然界の台風では無く魔力による台風の為、本来の爆発部分の魔力を台風が奪い、熱を取り込み撹拌させる事で台風と同化し、凶悪な混合魔術と化してるのである。
城にある可燃物が燃え盛り、その熱が上昇気流を後押しする事で更に凶悪化、火炎を纏いし台風は、構成する魔力が失われてもなお勢力が衰えるまで居座り続けたのだった。
「人が来る前に退避するぞ、気配を消して移動だ」
気が付いたの者たちは各々判断がわかれた。実力のある者は急行して対処しようと頑張り、我先にと離れる者や、後は巻き込まれまいと手近い店でも構わず入り込み息を潜めるのだった。
逃げずに店へ駆け込んだ者の判断としては悪くはない、台風は留まっており移動しない上に、大勢で一斉に逃げれば将棋倒しに発展しかねず死人すらでかねない。
俺たちは野次馬に紛れ込み、犯人探しに奔走する騎士を避け、近場の宿を確保して話し合うのだった。
「あれは予想外の威力でしたわね、やり過ぎな感じがして震えてしまいますわ」
「放った俺がいうのもなんだけど、威力があり過ぎたな……」
城が溶けて削れてたからな、ちょっと予想外だった。
「何を悠長な事を言ってるのよテリ、こっちが手を出さなければ下手すると死んでたのは私たちよ、割り切りなさい」
その上に獣王国が悪者になる様情報操作までされるおまけ付きだろうからな、アリサの指摘も尤もか。
「それはそうだけどさ、あれは無かったなぁ、本当に城がめちゃめちゃになったわ」
「テリクンそれより今後の事ですよ、直ぐに出て行けば怪しまれます。獣人族はこの地にあまりいないので目立ちますよ」
放って即逃げだと流石に怪しまれるか、移動するにしても他の者と同じ速度で移動しないと悪目立ちするのは明白の理、ここは数日滞在して情報の仕入れをするかな。
元々スタンピートの情報取集も含まれていたのだし。
「確かに……観光とこの近辺の魔物退治にやって来た。俺以外は初心者だから弱いモンスターを探してるで通そうか。
それと帝国の情報も粗方仕入れたいな、可能ならそっちにすり替えればいいからな」
俺が初心者と言うにはBランクからして無理だからな、良い訳に利用させておらうとしよう。
「それなら堂々とした方が良いですわね、体は良いですが、顔は隠さず堂々としていた方が怪しまれませんわよ」
「その方向で良いな。今日はこのまま宿でゆっくりして、明日から活動しますかね」
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テリスト・ファーラル
レベル:96
年齢:10歳
種族:猫人族
状態:部分欠損
HP:1998
MP:923
装備品:ミスリル製刀(刃渡り75cm、全長95cm) ダマスカス製ソードブレイカー(ショートソード、刃渡り45cm)
防具:ドラゴンハーフプレートメイル・ズボン・小手・ブーツ・マント
予備武器:ダマスカス製ソードブレイカー(ショートソード、刃渡り45cm) 鉄製エストック(刃渡り40cm) ラージシールド(小円形盾、直径30cm) ダマスカス製フランベルジュ(全長120cm) ダマスカス製短槍(全長150cm) ショートボウ、木の矢(尖端鉄製)832本、爆裂の矢27本
予備防具:サラマンダー製皮鎧・ズボン・小手・ブーツ




