57:戦争準備か?
クインをナデナデしながらMPがフルにならない様に【ハイヒール】を掛け、用意されたお茶を飲み、茶菓子を摘みながらぼーっと待つ事三十分程度経過すると女性たち三人も合流して来たのだった。
あちらが無事にかどうかはわからないが会談が終了したようだ。
「テリクン大丈夫? あの、親友の方が……」
「最悪の予想としては当たってほしくは無かったけど、どうも当たっちゃったようだね……。
襲われた当時、魔物以外にいたのは勇者とその付き添いの騎士だけだ。そりゃ狙われるわ、そういう意味では当然の成り行きだったのかもね。
それよりさ、この事をココアは知ってたか?」
「学校で行くようにいわれた際に、少しだけお聞きしましたわ」
「なるほど、ヤヨイを捕まえた事は学校に行ってる本人を含めた五人と陛下、衛兵と近衛騎士が数人しかしらない、誰かが漏らしたな。
陛下は学校関係者の中にもいるような口ぶりだったが、確実に王城内部にいる奴がヤヨイの事を漏らしてる。
立場上、奴が出て来た事で完全丸裸にはなったが、諜報員はこれからも居座るって事だ」
何を決めるにしても全部彼方に筒抜けって事だよ。
あの後陛下が誰かを呼んで相談していた場合、そいつの可能性も浮上するわけだ。
そこは直接お聞きしないと分からないが、あちらが謝罪したとしても諜報員は残るんだよな。
その点を理解してるとは思うが、どう決着付けるおつもりか。
「……」
「まぁいいか、今更だろ。それより話はまとまったの?」
「テリが退出した後に具体的な話に移ったのよ、使者の帰国と同じくして同行するそうよ。
そして要請があったわ、テリにも視察団の一員として行って欲しいみたい」
非があれば容赦なく喧嘩売る俺に帯同しろか、それは彼方で何かあったらそのまま戦争へ移行しても問題無いと考えてるのかね。
ただ、この場ではいえないな、誰が諜報員か分かったもんじゃない。
陛下へこの事を相談した場合、また漏れる可能性がある。
それは不味いからその意思をくみ取って動くしかないわけか。
はぁ、本当に面倒だな。この事は口に出さず話を進めなきゃ駄目か。
「はぁ、一長一短あるな。折角ダンジョン関連の技術習得に移りそうだってのに、今抜けたら今後に響く。 そもそも奴は信用ならんからいちいちイライラする。
だけど行かないと今までの事も含めて理解できないかもしれない、どうするか……」
「最低でも行き来だけで一月前後は見ておく必要があるわね、そしてどれだけの滞在期間になるかしらね」
「情報収集次第ではあるよね。そもそもスタンピートの発生頻度とか魔物ハンターギルド経由である程度情報が入ってるんでしょ、そこらはどうなのよ?」
「確かに国とは関係なく運営されてるわよ。だけどその国その国との結びつきの方が強くて、国の一部になってるのよ、だからおいそれとは流れて来ないの。来たとしても友好国と同盟国の情報だけよ」
「それじゃ魔人族の国は?」
「相互不可侵の状態ね。確かに隣国ではあるのだけど、あちらの様に諜報員は送ってないみたいね。
それを考えれば今回の事は戦争の切っ掛けになっていても不思議じゃ無かったわ」
相互不可侵て事は、中立と敵対の間で微妙な位置関係なのか。
奴が絶妙なタイミングで来なきゃ戦争へ舵を切る判断になったとしても不思議ではないと。
さらにいえば獣王国が参戦した場合は完全に落ちるな、主力は帝国側に張り付いてる訳だし。
そこに横腹が薄い現状で攻められたら完全に入られるものな。
「まぁそうなのかもな、不可侵で内情を探られたら情報戦と取られるわなぁ」
「だからよ。結構テリがきつい事をいったでしょ、そんな関係もあって全然問題にはなって無いの。
そもそも最初の陛下の要求をテリが強引にいい直したでしょ、あれ位で丁度良かったのよ」
丁度良いかは兎も角、弱腰でいうべきじゃないからな、仕掛けて来たのは相手だし。
「ほう、中々の見識だな、俺の知識に世界情勢って部分が完全に抜けてるから本当に助かるよ。
だけど、行くかどうかの判断は出せないな、どうするか」
「テリクンの考えにまたスタンピートがって考えもありそうですよね」
「だね、蛙の事も含めると時期的に考えて四十日から五十日程度の間隔で発生してるだろ。行くとなったら一度発生した後に帰り着くかもね」
「そんな事を考えていたらどこにも行けないわよ」
「如何にもならんからね、魔物に聞いて下さいってか」
(コンコンコン、入るぞ)
何故に陛下が来るのやらだ、こっちを呼べばよかったのに。
「どうぞー」
「何やら決断が出来んみたいだな」
複雑なんですよ背景が、行っても行かなくてもどう転ぼうと痛手があるんですよね。
損得勘定をどこに持って行くべきかで揺れるんですから決められないのですよ。
「ですね、ダンジョンへ行く為のスキルを習得したかったのですから、肝心な時に抜けるとぽっかり穴が。それに、不信感しかないですからね、行くと余計に揉めたりして」
「人死に程度が起きなければ変わらんと思うぞ、それ位の事を彼方はしてる訳だしな」
内容は重々、こっちの手の内が流れるのも問題なのよね、もう防ぎようが無いが。
「はぁ、こんな事なら半死半生まで持って行くべきでしたね、確実にこっちの手の内が流れますか」
「魔術の事か……」
「です」
「ならば余計に行くべきでは無いか? 直接見んと分らんことが確実にある。それに、あちらの勇者事情を探るのに最適な人物は、誰かな?」
「俺ですねぇ、やっぱり行くしかありませんか」
「よくぞ決心した、出発は十日後だ。それまでに必要な品は最低限人数分は確保しておくが、個別に必要な品を買い揃えてくれ」
「早速準備に入ります。無補給で二ヶ月ぐらいは生活できる程度に」
最悪の想定をするならいくらあっても困らないから当たり前の備えだ。
敵地のど真ん中に行く事はほぼ確定、孤立無援でなおかつ獣人族だから目立つので下手に買い物は出来ない。
ならば、腐る事が無いので大量に持ち運べば全て解決する。
解決するはいい過ぎか、生き残る為の食料だけは確実に持って行ける。
「買いすぎだろ……」
そして王城を後にして直ぐの門の前にて。
「さて、準備をするわけだが、肝心な事を聞いてないんだよね。来るの?」
「テリが行くのに行かないって選択は無いわね」
「そうですよ。一人では行かせませんから」
「今回はついて行かせてもらいますわよ」
「ココアも来るとなると……ちょっと強くなってもらおうかな。準備と並行してリザ狩りするぞ、帰って来るまで自主休学する。
そうなると、御者含めてテントも買わなきゃならんから最低六人分と、それと矢を鉄の矢と木の矢を三千本ずつと九日分に千八百本でまぁ九千本で良いか。
武器屋で予備の武器を各自一つとカーラには代えの弦も数本確保だな。一度屋敷に帰らんと素材が足りない。それはそうと、ココアは武器要らんのか?」
「ちょっと待ちなさいよテリ、何処かに戦争しに行く気なの?」
「最悪の想定をしたうえでどんな場面にも対応できる様に準備する。これ、最低条件だ。俺にとっては仮想敵国だからな」
矢の消費は極力抑えて魔術主力で行動する。ま、あちらで孤立したらの場合だな。
騎士に追われる事態となった場合、この程度の準備はしておかないと下手すると殺される。
対策は万全にがモットーなのよ。
「確かに敵地へ入る様な事かな、それなら準備は必要ね。
買い付けても使わなければ傷まないから有といえば有りね、それじゃ真っ先に必要なのは屋敷に戻って馬車の確保と学校へ休学届とスーシーを学校から連れて来ないと」
「それは良いが、マジックバッグは各自用に作っとかなきゃならんな。それは俺しかできないとしてだ、ココアはどうする? 自分のは自分で買い揃えるか?」
「それはそれで面倒ですわね、お金は出しますから便乗させて頂けますか」
「了解。それともう一つ聞かなきゃな、御者はどっちが出すんだ?」
「うちは家の馬車で行く方が気楽じゃないの?」
「なるほど、臨時給料を弾んでやらんと駄目だな」
さてと行くか。
帰って直ぐに執事のカシナートにザックリ書いた羊皮紙と資金を手渡して九日以内に用意するように伝える。
今日から屋敷で出発まで暮らす事を伝えて屋敷を出たのだった。
用意を頼んだ品はこうだ。
馬車足回りそっくり交換可能な工具と合わせてもろもろ一セット。
食料を六人で二ヵ月分と同じく飲料水六人分。当然一人ずつに小分けして、合わせて食器とテーブルに椅子。
馬用の飼葉と水、それに合わせた樽。
テント二人用六棟と十人ばかり寝泊り可能な大型のを一棟。
六人分の寝具。
HP回復用ポーション百二十本、MP回復用ポーション四百本、各種状態異常回復ポーションを六十本
ロープを十m程度で二十本。
ランタン六つと合わせて油を五リットルを六つ。
残りは学校関連が終った後武器屋に寄る。予備武器と矢を七千本発注を済ませてとりあえず矢を二千本購入した。適当な食堂で食事を済ませて早速魔物狩りに行くのだった。




