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55:確保

 そして俺の部屋に五名揃ったのできりだすかねぇ。

 ヤヨイ以外は俺の背に隠すように立ち、ソードブレイカーを抜き放ち、尖端を突き付けながらの尋問開始だ。


「さてさて、ヤヨイ。先に言っておくが、下手な事するとお前死ぬぞ、生き延びたければそれ相応の態度で望めよ」

「何してるのよテリ、武器を突き付ける必要は無いでしょ、少なくともお世話になっているのに」

「良いから黙ってろ。クイン、今日と同じ大きさで戦闘態勢を維持してくれ、対象はヤヨイだ」

『うにゃ~ん』

「テリスト様、何かの御冗談でしょうか? 武器を突き付けられる事は何一つしておりませんが」


 してるからしてるんだよね。


「で、なぜ今日のスタンピートの際に俺たちを監視していた?」

「学校で訓練しておりました。何かの間違いでは?」

「直ぐにばれる嘘ついてもしょうがないだろ。それとも分身可能なスキルでも覚えたのか? それとも勇者固有のスキルでも使ったか?」

「…………」


 沈黙は肯定と取りまっせヤヨイさん。


「おや、俺が気が付いてないとでも思ってた? 流石勇者だよな。あの速度で移動できるって事はお前は縮地か、それとも風魔術のフライでも覚えてるのか?」

「…………」

「ダンマリは肯定と取るぞ。それで地球出身で日本国籍のヤヨイさん、苗字は何なのかな?」

「なぜおわかりになられたのですか? テリスト様」


「勇者の情報を持ってるのが帝国と魔人族の国のみとは思わない事だな。黒髪黒目、顔はのっぺり、名前がヤヨイ、特徴がありすぎるんだよ。

 それで、なぜ獣王国へと潜り込んだ? どうせ行き倒れは入り込む口実の為だろ、それも国の中枢部に入り込むなら貴族の側が一番良い」


「…………」


「ふむ、だんまりか。予想はつくぞ、帝国から来たとしたら、お前は今でも洗脳を受けた状態で元々戦力外、そこで諜報活動へと用途を切り替えられた。

 そして各国の動向と戦力の把握。可能なら首脳部を殲滅させれば国の機能が一時低下、援軍を派遣できない状態まで持って行き、手近い国を落として兵を確保、捨て駒として扱い一気に魔人族の国へなだれ込む。

 そちらが外れで魔人族の国から来たとすれば、魔人族に捕らえられ洗脳を解かれた。何らかの理由で周囲の国へ援軍の要請をしたいが戦力は未知数、その為お前が入り込み調査中、いい人材がいるような場合は正式の使者を使わし交渉開始って所か。さて、お前はどっちだ?」


「…………」


「これにも答えないのか」

「本当にテリって、こんな時には頭が回るわよね。何処まで把握してるのよ」


 把握って言うよりは現状から考えられる事を並べただけですけどねぇ。だけど間違ってはいないと思うよ。


「まぁまぁ、今回のスタンピートもお前は絡んでるんだろ、直接か間接かわからないがな。

 前者だとすれば強制ランクアップの手法を確立済み、それを使って今回の戦力確認に利用した。

 今起こってる他国の首都近辺で起こってる事もお前らが絡んでるかもな」

「その様な事はしておりません、断じて違います」


 不利だとダンマリ、ここだけ反対か、ブラフか本当か……分らんな。拷問にでも掛けてもらうのが手っ取り早いが……同胞だものな、出来ればそんな事してくれとは頼みたくは無いが。


「やっと返事してくれるのか、まあいい。

 それが本当だとしたら厄介だな。どうせ帝国の勇者召喚が影響して次元の壁でも薄くなったか?

 それが影響して、魔力溜まり、この場合は人だ、首都はもっとも魔力の集まってる場所だ、その近場で影響が出たとなると、今の現象も納得がいく」

「なぜそんな結論になるのですかテリクン」


「次元云云は適当の出まかせだ。

 クインが魔力を欲しがるだろ、命の源だからな、そうなると魔物同士で奪い合えばクラスアップは可能だがその兆候は全くない。

 奪い合うならば個体数が全体に減るからな、散々リザゲートを倒してたがその兆候は無かった。

 なら、その魔力は何処から来るのか、自然界にもあるみたいだが、それなら人が大量に住んでる王都が一番魔力があるともいえる、そこから取り込めば良いだけだ。

 で、ヤヨイが関与してると考えたのは魔石だ。魔力の塊だからな、どんな手法を使ったか知らんが、大量に与えるなり、濃縮して与えるなりすれば、強制ランクアップは可能じゃないのか。

 だが、それは誰が行う? 魔物の巣に突入しなければ行えないし、組み伏せて行為を行う実力が無いとそもそも行えない、この場合、勇者が適任だと思わんか?

 俺にやっと探知可能な時点で、あの程度の魔物が相手なら手玉に取れるだろ。お前は本当に無関係かね?」

「……」


 ふむ、引っかかて来ないか。


「さて、獣王国も、勇者は攫われた犠牲者であり、帝国は滅んだ方が良いと考えている。

 当然ヤヨイは被害者な訳だが、諜報活動をしてる時点でそれは外れる。理由は説明するまでも無いよな?」


「敵対的行動と見なされる……」


 おんや、騙されてでもして送り込まれたか? どうも表情からすると今気が付きましたって感じだが……。わからんな、わざと其方へ誘導してるのかもしれない。


「ご名答、諜報活動は相手国の弱点まで探る行為だ。洗いざらい話さんとお前は確実に死ぬぞ、例え元が被害者だとしてもな。

 これは忠告だ、例えお前が話したとしても、裏が取れなきゃ信用されん、最低でも裏が取れるまでは牢屋行きだ、どうせ逃げれるから平気だと思うのなら試せば良いぞ、それで捕まったら死ぬまで永久に解けない魔術を仕込んでやる。

 さて、どうするね?」

「テリ、もう少しまともな説得は出来ないの?」


 説得は不要だよ、現時点で罪人だからな、その線は消えてる。


「今日の尾行さえしてなければ逃げて来たものとして保護するように進言するつもりだった。

 だが、此方の動向を探っている事からして諜報員だ、その線が消えた、それだけだ。

 カーラならどう判断する?」

「諜報員とわかった時点で見逃せません。どの程度まで情報をお持ちなのか分かりませんからお父様に全て任せます」


 順当な判断だな、俺でもそうする。


「と言う事だ。行動の選択を誤ったな、ヤヨイどうする?」

「…………」

「そうか」

 武器を手放し、縮地を使用して最接近、そして速度と体重を乗せた掌底を鳩尾の上に食らわせる。

「ガハッ!」

 無防備な状態で吹き飛び、壁にぶつかり気絶したのだった。武器をしまいこむ。


「俺は陛下にこいつを預けて来る。諜報員として探っていたとね、拷問でもなんでもして聞き出してくれるだろ」

「あのね、もうちょっと手加減しないと下手したら死んでるわよ」


「そんなたまかよ、Lv五十程度は無いと絶対に置いてけぼりだ、大丈夫大丈夫。そんな訳で行って来る」

「今からだと結構遅くなるわよ」

「飛んで行くから大丈夫、クイン、そのままで良いから一緒に行こうか」


 小脇に抱えて窓から飛び立ち向かうのだった。

 衛兵さんにお願いしたのだが、今はプライベートな時間なのでと拒否されたが、緊急なので御目通りをと強引に言伝を持たせたお陰で会う事が出来たのだった。


「今日は二度目か、それで、聞き出した結果がそれか?」

「そうですよ陛下、何分夜更けでしたが緊急でしたので。

 結論から言いますと、どこかの国から依頼を受けて侵入してた諜報員の可能性が高いです」

「テリストでも聞き出せなかったのか」

「普通に話してもしゃべらないのでお手上げです。

 拷問の類は知識としては知ってますが、流石にそこまでは出来ませんからお任せしようかと」

「もっともな話ではあるな、それならば身柄は受け取ろう。衛兵、五名ほど近衛騎士を呼んでくれ」


(はっ)

 部屋の外に待機していた兵士が返事をするとすぐに走って行った。


「話を少し戻しますが、スタンピートの処理の際に此方を監視していました。それ相応に実力があるので、あの元ギルマスですか、雇って監視させたが良いと思います」

「ふむ、その速度にもついて行けるとなると、ま、鑑定したが早いな、明日朝一番に鑑定しよう。その結果でガラハルトに仕事を頼む。

 テリストは今回の事もそうだがスタンピートに関与してると考えているか?」

「その事を突き付けたらしてないと血気盛んに叫んでましたが分かりません。

 どのようにして魔物がランクアップしたのか、その点さえはっきりすれば謎は解けると思うのですが」

「可能性は?」


「もっとも高い可能性は人が故意にクラスアップさせた。という事でしょうか。

 クインは食物からも魔力を吸収できますが、俺から受け取る方が効率が良いようです。

 そう考えれば魔物にとって必須なのは魔力であると、強引に与えればクラスアップするのかなと考えてます。

 もう一つ可能性が低そうですけど、帝国の勇者召喚による影響でしょうか。

 四人召喚されましたが、ガルーダといい、頻発する上位種の出現といい、関連が0では無いのかなとも思えますが」


「可能性の問題としては両方共にあり得る話ではあるな。それで送り込んだ国はどちらだと思っている?」

「お聞きしなくても分かってるのではありませんか?」

「念のためだ、答えてくれるか」

「魔人族の国ですね、名前は知りませんがそちらが筆頭でしょうね。

 強制制御されている次点で帝国からは逃げられませんし、洗脳されていたとしても、俺なら帝国のいう情報が本当なのか放逐された時点で調べますし、今の状態で送り込むなんて事は絶対にしません」

「ついでにいえば、魔人族に拘束され、洗脳を解きさえすれば強力な先兵の出来上がり。か」

「やっぱり話す必要無いじゃないですか……いや、まだ可能性がありますね。召喚方法を知ってるのは帝国だけですか?」


 そうなると、全部の予想がひっくり返るな。わからん、もうお手上げだわ、考えるだけ無駄だな。


「わからんが、手法だけなら俺も把握してる……」

「なら、前提条件から全て見直しが必要そうですね……」

「そう、なるな……」

「俺が送るとしたら、敵対国と仮想敵国、それも隣接してる国限定、一つ飛びの国はとりあえず放置するでしょうし、これに当てはまる国を想定しておいた方が良さそうですね。

 俺には地理的な事の情報が欠如してます、その辺りの検討は陛下にお任せしますよ。

 それとすみませんが、帝国と魔人族との関係に関して話してしまいました。まぁ住民が知ってる程度の事でしょうが、それに便乗して話してくる可能性がありますので、すみませんが、尋問の難易度が跳ね上がったと思います」


「地理か、今度というより明日来い、ついでに説明する。

 だが、難易度は変わっておらんぞ、そもそも帝国以外の住人なら帝国の悪だくみを知ってるのが大半だ」

「なるほど。では、明日お伺いします」

「うむ、ではそちらの娘は預かろう。魔術を使う事は確実だろう、阻害用の腕輪を装着した後拘束して牢に放り込め」


 陛下の言葉で扉前に待機していた近衛騎士が入室して受け取ってくれた。


「すみません、会話に夢中でお渡しするのが遅れまして」

「いえ、お気になさらずに。重要要件と把握しておりましたので大丈夫であります」

「それでは陛下、騎士さんも、これで失礼します」



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