47:決闘騒ぎ
王城から帰った俺たちだが、執事見習い事、男装しているヤヨイを呼び出して学校へ俺のメイドとして来るように申し付けた。
何分片腕で不自由だからな、理由はきちんとあるのだよ。そしてメイド三名よりも執事を一名混ぜる方が対外的に動きやすい事も上げられる。メイドは生活全般の支援をする職業だが。執事はもっと大枠だ。主人に寄り添い先に行動する事を求められる。食事しかり、着用する服しかりだ。
そしてメイド長たるスーシーも来ると言いせがんだのだが却下した。長が不在で誰が他のメイドを指揮するのかと指摘すると、あっさり他の子に渡しちゃいました。
これなら拒否する理由が無くなるのでお願いしたのです、カーラのメイドとしてですが。
アリサは不要だそうです。俺の部屋に入り浸る気満々ですから、俺も問題無いので許可しました、元々許可すら必要は無いのですが。
そんなこんなで合格発表の日、当然合格したのですが俺は文句なしのトップ。次点で俺の前にいた八十二番さん、三位にカーラ、四位にアリサと上位をほぼ独占した。
寮住まいの申請と同じくメイド枠での二名を申請するのでした。
寮に住むとなると物入りです。お客さんが来てもいい様にと、王家の者が接待するにふさわしい茶器などなど余計な出費が……。
二月一週一日まで暇つぶしも兼ねて、蜥蜴? ワニ? 狩りに勤しみましてとうとう入学当日を迎えました。
学校に到着すると見えてくるのは石材製の二階建ての校舎と体育館規模の集会場の二つのみ、そして敷地外には四階建ての寮。ただ、その規模は桁外れですが。
先導する方の後を追い、集会場に並べられた椅子に到着準に座らせられます。百人程度しかいないのですが番号順に並べるなどの手間を省きたいのでしょう。
そして校長の挨拶から在校生代表による挨拶、カーラの挨拶と続き閉幕。
そして担任の先生に名を呼ばれた者はその場で立ち上がり、整列の元教室へと誘われるのでした。
またもトラブルが待ち受けているとも知らずに……。
「本年度皆の担任を務めるアーガストだ。それなりの扱いをするつもりだからな、気合い入れておくように。それでは右前列の者から自己紹介をしろ」
全員で三十数名か、女子が圧倒的に少なく十二名、そして八十二番さんも当然の様に同室している。
そしてメイドや執事たちだが、当然の様に主人の隣に着席している。部屋に入場の際、主と共に入ったのだ。そして俺の出番になり。
「魔物ハンターBランク兼男爵のテリスト・ファーラルです、こっちは相棒のクインです、よろしくお願いします」
ここで余計な珍客が割って入り込んで来たのだった。それも手下と思しき下っ端四人を伴って。
「貴様がテリストか! 我がランザーク侯爵家に恥をかかせたな!」
また面倒な輩が……教室の外で待機していたと思ったら、俺を特定する為にわざとこのタイミングで来るとかうざすぎる。
「ホームルームの時間に割って入るのは感心しませんな、個人へ御用なら学業の終わった後にして頂きたい」
「貴様が指図するな、これは我が侯爵家としての威信の問題だ、邪魔だてすると教員といえどただでは済ませんぞ!」
「やれやれ、少し時間を差し上げましょう。その代りに今後はこのような事が無いようにお願いしますよ」
「無論だ。我が名はターサハラ・ランザーク、貴様の存在で結婚が破談になった、この始末どうしてくれる!」
知りませんがなそんなもん。俺、二人以外に結婚の約束なんてしてないんですけども、いちゃもん付けるなよメンドイ。
「ターサハラ様。申し訳ありませんが一つ確認させてください、そちらの四名は何ですか?」
「我が侯爵家の寄子の御子息だ。そんな事はどうでも良い、貴様、このけじめどうつけるつもりだ!」
「それ、わたくしの事ですわね。以前からお断り申し上げてますのにしつこいのですわよ、それでテリストに求婚申し上げますのでお断りしますと再度申し付けましたの」
この縦ロール女が俺にとばっちり食らわせたのか……。俺のあずかり知らないところで喧嘩売られてもしらんがな。
「はぁ、そんなの知りませんよ、俺は此方の女性に会ったのは試験の時だけですし、此方から求婚もしてませんし、一方的に言われてるだけです、文句がおありなら本人へどうぞ」
「貴様がそれを言うな! 貴様の存在が威信を汚したのだ!」
「存在ねぇ、俺に死ねって言ってんの? それならそれでこっちも覚悟を決めるからさ、どうなのよ」
「覚悟を決めるのならば丁度よい、貴様に決闘を申し付ける」
「はぁ、またテリの好きな展開ね。またトラブル引き込んで、本当に懲りないわね」
無茶苦茶な理論を押し付けないでくれよ、完全にとばっちりだろこれ。
「あ、あのな。俺のあずかり知らないところで勝手に発生した事を俺が悪い様に言わないでくれるかね」
「受けるのか受けないのか潔く返事をしろ!」
しかし凄いな。威信を汚されたと怒鳴り込んできているが。この態度をこの人数に晒してる時点で本人が一番威信とやらを汚している事に気が付いてない。ついでに取り巻きも完全にスルーしてお構いなしときてる。
「はぁ、まいったねぇ。威信を掛けられてもこっちにうま味が欠片も無いんですよね、此方の条件を呑むのなら受けますよ」
恥さらしな威信を賭けられても。とうにどん底の威信では釣り合いませんわ。
「流石下っ端の男爵だけあり、威信が露ほども無いと見える。良いだろう、条件を提示してみろ」
うむ。どれだけ恥さらしな行為をしているのか微塵にも感じていないらしい。馬鹿すぎる。
「ターサハラ様としては侯爵家全体が侮辱されたとお考えなのですよね?」
「無論だ。そんな事はどうでも良い、さっさと提示しろ」
「ならば全てを賭けて下さい、俺も全てを賭けますから」
「どう言う事だ、もっと砕いて話せ」
ちぃ、こいつも馬鹿な頭してるのか、面倒この上ないな。
「ランザーク侯爵家が馬鹿にされたとお考えなら全てを賭けて下さい、此方も同様に全てをお賭けします」
「馬鹿か貴様! それでは全然釣り合わんでは無いか!」
「そうですか? うちは伯爵家の資産をぶんどってますからね。現金は一億リル以上、ミスリルに至っては百kg以上ありますよ。資産だけならほとんど対等だと思いますけど、どうですか?」
暗殺者の報酬に元ギルマスの資産をぶんどった上に、隠し通路から山盛り金銀財宝受け継いでますからね、ついでに連日の狩りで数千単位の素材持ちですから、軽ーくあるんですよねこれが。
「それは偽りではあるまいな?」
「それはわたくしが保証しましょう。テリスト様は提示された資産を軽く超えるほどお持ちです」
「これはカーラ王女殿下……殿下のお言葉とあれば信用致しましょう。
ならばその条件飲むとしよう。
互いに準備も必要だろう、明日朝八時にコロシアムに来い。九時を過ぎた場合は不戦敗とする」
決まったらさっさと帰ろうとするが、それを引き留める。ガチガチに固めて逃げれんようにしないとな。
「まったまった、時間だけ決めても駄目だ、ルール等も決めた上で書面化する。後から言ってないとか水掛け論になっても困るからね」
「良いだろう。案があれば言え」
さて、このボンボンのおぼっちゃんが何処まで気が付くかね、がちがちに固めて絡めとってやる。絶対逃がさん。
「では最初から詰めますか。
賭けるのは現時点のお互い家門の全て。決着後拒否した場合は強制執行をする。この際に負傷しようとお咎めなし。
当該人物同士の決闘を持って決着とする。
使用武器は身に着けている品のみ、決闘の場へマジックバッグの持ち込み禁止、魔術使用制限無し、アイテム使用禁止、並びに事前使用も禁止。
違反した場合は即時敗退とする。
以上ですが、何か変更点ありますか?」
「魔術使用制限無しは駄目だ。周囲に影響がない範囲にしろ、後は無い」
おや、そこに気が付きますか。わざと周囲に被害があるかのようにして、其方へ目を向けるように仕込んだのですけどね。
しかし気が付きませんか。貴方、今、爵位すら賭けのテーブルに乗せてしまいましたよ。
「では、二通作成して署名捺印、割り印で終わりです」
こうして無事? 作成も完了すると彼ら五名は後にした。
「えーとすみませんが先生、早退させて頂きます」
入学式当日に早退とかありえないだろうけど、これは陛下へも伝えておかなきゃならないだろうしね。爵位持ち本人次第だが、場合によっては奪い取るからね。
穴が開いても良い様に今から準備するようにと伝えておく方が良いだろう。俺って良心的?
「本来ならば帰さない所だが準備が必要か、明日もそれなりに時間がかかる。欠席扱いにしておくぞ」
「ありがとうございます先生。それとアリサ、カーラ様、今の出来事を書面に書いて同席した人の署名を貰っといて、たぶん後から必要になる」
逃げの口実を作らせない為に証言者の確保だな。これで止めを刺せる。
「本当にこんな事には頭が回るのよね。わったわ、行ってらっしゃい」
「お父様に報告するのよねテリクン」
「だね。今回決着が付けば勝者の判断次第で貴族位を廃位にする事も可能だからな、穴埋めの事を先に考えてもらわないといけない」
「行くのは待ちなさい。テリスト、どういう事ですか?」
教師が気が付いてないのか。この手の問題にそうそう出くわさないだろうしな。しかし、教師すら気が付かないのなら、あの馬鹿のボンボンでは気が付かないのも当然か。
「いやいや、文面に書いたでしょ、全てと。だから資産だろうと爵位だろうと着ている服だろうと相手に渡さなきゃダメなんですよ、体は要りませんから捨てますけど。
誰も資産の全てとは書いてないでしょ」
「うっ、もう知らん、俺が間に入り決めた事では無いからな。無関係だ」
「そりゃそうですよ。俺と、あちらの家族の問題です。彼が一家の代表者として、全てを決闘の商品に上げたんですからね、ですけど署名は下さいね、ここで全て決めましたと証明になりますんで」
「あ、ああ、その程度で良ければな」
「それじゃ終わり次第には戻ってきますけど、クインを護衛に預けて行きますね」
「行ってらっしゃいテリクン」
こうして教室に入ったのもつかの間の事、直ぐに退室するテリストであった。




