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46:試験突破

 いよいよ試験当日。混雑が予想されるので三人と一匹は歩きだ。クインは俺が抱っこしているが。

 受け付けは四種類ある。学校割りではあるが、五年間の学校では一般と貴族枠が重なる為に二種類あるのだ。

 そして受付けした順番で試験は進んで行く、わざわざ一番から順番では無い。片っ端に試験を受けさせなければ処理は不可能というわけだ。

 受け付けで名前を告げるとあらかじめ決められた番号札を渡され、それ以降は番号で呼ばれ、試験結果も番号に対して成績が書き込まれる。

 俺たちの番号だが、一番から三番を頂いてる。王家が介入したんだろうな……。


 周りを見ると、いや、並んでいるので前後をみると同じ背格好の者が大半、中には結構背の高い者もいる。俺たちの様にハンターです的な恰好から、フォーマルで如何にも貴族です的な者まで様々だ。中には普段着ぽい者までいる。

 ただし、俺たちの様に武器まで持ち込み、フル装備な者は皆無だった。

 そして俺のすぐ目の前のお嬢様、俺より頭一つ背が高く、髪は薄桃色の縦ロールときている。何処の貴族なのだか……チャームポイントはピョコッと頭から出てる耳だな。尻尾は無さそうなので種族不明っす。

 そしてお嬢様の試験が開始されたのだった。


「八十二番。手段は問いません、前方の的を敵だと思い攻撃するように、必要であれば武器も準備してありますのでご利用ください」

「わかりましたわ。【土よ還元し、巨岩よ圧壊せよ、ロックフォール】」


 ズドーンと轟音と風塵をまき散らして効果が露わになったのだが……。

 的が完全に潰れちゃって巨大岩石に置き換わったんですけども、これ、どうしろってんだ。俺の番で片付けしてくれるのかね?


「一番。手段は問いません、前方の的を敵だと思い攻撃するように、必要であれば武器も準備してありますのでご利用ください」

「ちょ、ちょっと待って、あれが的って事?」

「そうです、あれが的です」


 指を突き付けて聞いてみるとあれが的だそうだ。これ、物理職だったら巨大岩石相手に斬り込めって事よね、当たり負けしたら腕が不味いんじゃねえの。

 それなら破壊しつくして奇麗さっぱり無くす他ないよな。後ろのアリサとカーラの為にも、そうじゃなきゃ流石に対象が不味すぎて試験結果が悪くなるかなら。

 自重無しでぶっ壊してやるよ。ただ、周囲に影響があり過ぎるエクスプロージョンだと、爆圧で飛散するから悪手だよなぁ。あれをするしか無いか。


「そうですか、あれをぶち壊せばいいんですね【風よ雷よ還元し、暴風よ集雷し逆巻け粉砕せよ「待ちなさい! 何を詠唱するつもりですか!」】」


 流石にわからなかったか。【風よ還元し、暴風よ逆巻け、トルネード】と【雷よ還元し、集雷し粉砕せよライトニングバースト】の同時詠唱による混合魔術だ。

 まぁ、帝国では教わって無いので完全にオリジナル手法だけども。


「何よ待てって、試験官さん言ってたでしょ手段は問いませんと。あれをどけなきゃ話にならんでしょうに、すっきりさせますんでお待ちを【風よ雷よ還元し、暴風よ集雷し逆巻け粉砕せよ「全員伏せなさい!」ライトニングトルネード】」


 時計とは逆回転の台風が発生した瞬間、時を待たずして雷光と共に落雷の奏でる音が木霊する。台風の根元に収斂された雷により巨岩が砕かれ上空へと誘われ、時が経てば粉砕されし破片が辺り一面へと降り注ぐ。

 本来は戦略級規模の攻撃魔術だが、威力をめっちゃ絞っている、はっきりいえば込めるMPをケチった。

 立ってるのは俺たち三人だけ、後は全員地面に伏せている。短時間だから大丈夫ですよ、威力は二割も出ていないんで。

 魔術の効果が消えた頃、次の筆記試験へと行くのだった。


「では試験官さん、俺は次に行きますね」

 無言で見送られたのだった、その前に二人と分れるので護衛にクインをカーラに手渡しておいた。

 次は筆記試験だ、模擬戦無いのね。一つの部屋が埋まると問題を渡されて開始される。

 此方の方が時間は掛ったのだが簡単だ。常識問題は怪しいが、計算と歴史は完璧だ。何せ片方は丸暗記だし、そして答案用紙を回収され帰宅と相成った訳だがそうはいかなかった。


「貴方。1番さんですわよね、私の魔術をああもあっさりと、何か特別な訓練でもされていたのではなくて? それにあのような詠唱は聞いたことがありませんことよ」

「あー、82番さんか、訓練は受けたと言えば受けましたかね。実は近衛騎士に混ざり訓練していた時期もあるのですよ」


 武器を使った訓練だけですけどね。しかし、聞かれていたのか、離れていたんだがな。


「エリート集団の方々に揉まれたのですわね、それならば納得ですわ、これなら学業も楽しそうですわね、それではごきげんよう」

「ええ、さようなら」


 そして帰ろうとして部屋を出た所を隊長に捕まり、陛下の元へ連行されるのだった。そして入室早々。


「今日も派手にやったようだなテリスト」

 ジト目で見ないでくださいよ……。

「あれはー、前の人が良くなかったんです……82番、あの方何方かご存知でしょうか?」

「ファーメル侯爵の娘さんだ。月を跨げば会えるからな、その時に聞けば良いだろ。それは良いが、新入生代表で挨拶しろ」


 また変な縁が出来た気がするのは俺だけか?

 しっかし挨拶ねぇ、前に出るのは嫌なんですけど……。


「え……嫌ですよ! 前に出て挨拶とか無理ですって」

「貴族の立ち並ぶ中で喧嘩売るテリストが無理ね。説得力無いな」

「当日は頭痛、腹痛、歯痛、下痢、嘔吐で寝込みますので出席できません。悪しからず」

「だそうだギルバード。回復要員を連れて自宅に向かえ」


 冗談は通じないのね、歯が痛いとか引っこ抜かれる気がするな……。


「テリストも大変だな、諦めろ」

「……分かりました、好き勝手喋らせて頂きますです」

「……とりあえず、何を話すか言ってみろ」

「そうですね。

 生活は魔物の脅威にさらされています。身を守るすべを身に着ける事は必須事項です、死にたくなければ死に物狂いで学びましょう。

 以上です」

「あながち嘘では無いが……どうなんだろうな……やっぱり駄目だな、カーラ変わってやれ」

「元々そのつもりだったのではありませんか、お父様」

「無論だ。王女が入学する、それで他の者に挨拶をさせては立場が無いからな」


 出来レースなら最初からそちらへ投げて下さいよ、俺に振らないでください。


「はぁ、それでは失礼させて頂きます……」

「まてまて、愚痴ぐらい言わせろ。あの後大変だったんだぞ」

 被害の出る大きさではないが。かなり広範囲に降り注いだからね。そりゃ掃除が大変だわ。

「申し訳ありません……」

「貴方も意地が悪いですね、全然気にもしてらっしゃらないのに」

「そうなのだが呼んだのは別の案件でだ。

 貴族にはテリストの実力が知れ渡っている。それとカーラとアレサリアが婚約者という事もな。

 それで片腕になった事から結婚希望者が激減すると思っていた。だがな、今回派手に魔術を放った事が知れ渡るだろう。片腕でも将来は安泰ですよと見せつけた訳だ、意味わかるよな?」


 げっ、それって俺はめちゃくちゃ手加減して弱すぎて話にならん。

 そう持って行かなきゃ駄目だったって事か。


「それってもしかして……一夫多妻と関係してるって事ですよね……」

「そうなるな。テリストの側にいるのが最も安全かつ、魔物を倒せば稼ぎ放題、カーラが嫁ぐから其方との縁で少なからず王家との縁も生まれる。

 そして暗殺者集団を潰した腕前の評価もあり、元SSランクのハンターを瞬殺した事も完全に知れ渡った。

 更に言えばカーラへ恩賞を与えた事で、テリストが間接的に受け取るのだと感づいている者もいる。超優良な物件なんだよ。結婚希望者が押し寄せるから留意しておけ」


 なんじゃそりゃ……資産目当てにわんさか群がって来る蟻じゃねえか、いらんわそんなもん!


「あの、面倒なので全部蹴って下さい」

「それは無理だな。

 一部はカーラの手前、こちらにお伺いを立てる者もいるし、予想よりはるかに少ないとはいえすでに数十件話が来ている、そちらはお断り可能だ。

 だが。学校で直接申し込まれたり、屋敷に直接来られれば防ぎようは無い。

 そもそも貴族は後継ぎがいなければ話にならん。一部の高位貴族などは五名ほど娶っているのも珍しくは無いからな、そういう意味で増やして構わんぞ」

「陛下も無茶言いますね……資産目当てに押し寄せる蟻じゃないですか、嫌ですよそんなの」

「そう言うだろうと思ってな、屋敷に来る者をシャットアウトする人材を用意しておいた。ローズ連れて来てくれ」


 そして別の部屋にでも待機させていたのだろう、結構な年を召した老紳士がつかわされた。


「テリスト、此方は去年まで学校で教鞭を振るわれていた方でカシナートだ、内容は教えるまでも無いな、今度そなたの執事となる」

「カシナートと申しますテリスト様、よろしくお願い申し上げます」


 姿勢が良いな。服も皴一つなくビシっときまっている、仕事できますと言った感じだ。


「テリスト・ファーラルです、此方こそよろしくお願いします」

「合わせて執事見習いを三名付けてあるのだが、一人は女性だ。男装の麗人とでも言えば良いか、メイドで雇うつもりだったのだがな、執事が良いそうだ、まぁ何とかなるだろ。

 合わせて屋敷の規模に見合うメイドを雇ってある。今頃は屋敷についてる頃だろう、給与は先月売却するのに預かったあれから引かせてもらう、学業が終る六年分だ」

「押し寄せる人を相手にするのは大変ですから、大助かりです」

「うむ。ではこれまでとしよう、試験結果を吟味し、合否を決定せねばならんからな」

「それでは失礼いたします」


 こうして帰宅したのだった。

 帰宅直後、これまた増えた執事とメイド全員からお帰りなさいませ旦那様との挨拶から自己紹介へと移り。

 メイド長の地位もそのまま継続して総勢十名、執事長は新規雇いのカシナート。

 そして異色だが、執事見習いの中で唯一の人族で十七か十八歳ほど、黒髪でショートカット、目の色はこげ茶色を濃くした感じの執事見習い、顔が平坦なのでまんま日本人、きっとアルテトラスが関係してるのだろう少し様子を見るか、腕輪も首輪もはめていない、どうやって逃げ出したのやら、不明な点が多いから側につけて観察だな。

 明日辺り王城へ行き経緯を聞いてみるか。


 翌日。三人と一匹で聞きに行った所、行き倒れている所を助けたらしい。そして教養があった事からその拾った家族は養子として迎え入れ、ローズの伝手でメイド募集をしていた所にこの子ならばと立候補、今に至る。


「テリにはまったくの異世界人に見えるのよね、それも同族に」

「見えるな。こっちの世界の人って、けっこう顔の彫りが深いだろ、だけどけっこうのっぺりした顔なんだよ、髪の色も目の色もまんまだから」

「テリストの見識が合っているとしたら帝国から逃げて来たのかもしれんな」


 やっぱりそこに行きつきますよねぇ。


「あの拘束をどうやって外したのかって疑問があるからわからないんですよね、各国の動向を調べる為に、洗脳が完了したのを送り込んだとも考えられるのですが」

「それは無いだろ、勇者は特別だ。ただの諜報員として使うぐらいなら戦争へ投入する」

 そこだよな。貴重な戦力をただの諜報員に使うかといえば、俺なら否と答える。

「そもそも俺の時にあの子はいなかったんです。とすれば、準備期間の情報が本当だとしたら最低でも五年以上こちらで生活してるはず。

 今の俺と同じぐらいの年で拉致されている計算ですよ。その期間、こちらの知識を学んでる訳で金銭的に困る事態にはならないはずです。それなのに行き倒れますかね? 何か噛みあってないんですよね」

「テリと同様の訓練を受けていれば収納も使える事から食料確保は容易よね、そして奴隷化の事もあり、チグハグ、分からないわね」

「こうは考えられませんか? テリスト様の代から奴隷化を開始した。訓練についても明確になったのはここ最近であれば辻褄が合うと思いますが」


 どれもこれも憶測の域をでないなぁ、最終的に聞き出さないとさっぱり分からないから最終的には聞くしかないんだけども。


「本人に突き付けて鑑定した上で聞き出すか、その方が手っ取り早いですよね」

「本当に大丈夫なの? テリは言い方が極端だから心配なのよね」

「そんな事言ってる場合か? 逃げて来たのならきちんと保護した上で、ある程度の腕になるまで鍛えた方があの子の為だろうし、抑止力の面からも力は付けさせたが良いんだよな」

 ただ。不明な部分があり過ぎて、時期を考える必要はあるが。

「ならばこうするか。テリスト、その娘をメイド枠で学校へ連れて行け、特例で学生と同様の勉学が出来るように取り計らう、害が無さそうならばテリストの判断で聞き出して構わん」

「観察も必要そうですから、それが良いでしょうか、屋敷から通うつもりでしたが寮に住みます、その方が観察しやすいので」

「同室だからな、それで構わん、寝首を掻かれるなよ」

「俺が何者かも知らないのでピンポイントに狙えないでしょう、それはありませんよ」

「それもそうか」


 同室となれば真っ先に疑われて拘束される。仮に敵対者だとしてもそんな下手な手は打てないはずだよな。



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