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38:女王との死闘

 遠目に見えるその大きさではソードブレイカーだと不利だと思い、短槍に交換して地上の雑魚魔物を倒して此方からも接近する。

 その思惑は魔物の群れを突き抜ければ雑魚がいなくなり、相対する際の邪魔にはならず、最低でも後方の空は確保できると踏んだからだ。


 その思惑は空振りに終わり雑魚処理の最中に補足されてしまった。

 そして接触の時、上空から爪による攻撃と同時に着地して来たのだった。バックステップ+縮地の二連続で距離を取りその全体が見て取れた。全高は俺の約三倍程度、体長は不明、体の模様は豹柄、俗にいう虎猫か。そしてウイングクイーンキャットの名に相応しく一対の翼が見て取れる。

 そして雑魚たちだが、蜘蛛の子を散らすように方々へと逃げて行くのだった。


 そして思わず声に出してしまった。


「げぇ、不味いよなこれ。俺、勝てるのか怪しくなって来たわ……ここまで大きいなんて予想外……」

 接近の最中、時間と共に大きくなるその存在、ヒヤヒヤしながらも其方へずっと目線を向けるわけにも行かず、ちょくちょく見ていたのだが、此処まで大きいとは予想外だったのだ。

『このような場で小童に出会うとは、わらわもついておらぬのう』

 は?

「え……魔物が……喋った……」

『なんじゃ小童。魔物が話せぬなど固定観念があったのかの、偏見にもほどがあろうて、下っ端は兎も角、わらわほどの格の者ならば話せるのは当然であろうに』

 小童? よくそんな言葉が出て来たな……。

 いやいや、そこじゃない、この程度の魔物なら話せるって方だ。そうなると相当数の話せる魔物がいるのかね……いかん、そんな事考えてる時じゃない、話せるなら交渉しないと。


「いやいや、そんな知識無いですから、と言うよりだ、話せるなら丁度良い。町を襲うの止めてくれません? 何も敵対する事無いでしょうに」

『何を馬鹿な事を申すのじゃ。魔物の領域に攻め込み滅ぼしておるのは貴様らだと言うに、認識が足らぬのう、そういう訳じゃ、止めたかったらわらわを納得させい、その力でな。

 わらわを従える事が出来れば、小童の意思に従おうぞ、では行くぞ!』

 あー。猫を十四匹狩ったのは俺ですわ、ちょと言えないなこれ……。


 移動速度も攻撃速度も反応速度も相手が上、縮地使っても少しの余裕しか得られずめっちゃジリ貧、下手に攻撃しようとしてもカウンターを取られかねず接近戦は無理だった。

 そこでファイアボールとウインドスラシュを無詠唱で叩き込むも表面の毛が縮れて刈り上げた感じになるだけで傷が無い、これ完全にジリ貧じゃなくお手上げだわ。

 その反応速度から急所を狙うのは絶望的と言って良いほどの実力の差、ウインドスラシュがあの程度では武器での攻撃もかなり阻害される事が目に見えている。

 そもそも下手に攻撃するとカウンターを受けかねない。

 ファイアボールが効かない事から爆裂の矢も効かないことは明らかで、これはとうとう覚悟を決めるしかなくなったのだった。

 長期戦回復の為に【リジェネレーション】を自らに掛け、相手の爪術での攻撃に合わせて【エンチャント/ライトニングオーラLv2】を掛けることにしたのだ。

 先の魔術はどうとでもなるが後者は別だ。さすがに瞬間の接触では付与する事が出来ないので最短でも一秒程度触れている必要がある。

 そもそもオーラ系魔法は身に纏うほどの大きな対象に使う魔法、それ相応にMP消費が激しいため永続化のエターナルは使えない。そしてファイアの方ならLv四を使えるのだがそちらはMPが心もとない、それなら麻痺に期待が出来る雷を選択するのは当然の事だったのだ。


 そして決行するのだが、左手の爪攻撃に合わせ、死角になる様に腕に捕まり付与は問題無く出来た。ただ、そこへも右手の爪で攻撃され左手一本を切り落とされたのだった。

『ぎゃにゃああああああ! 小童何をしたのじゃーーー!』

「がっっ! ……ふぅふぅふぅ【ヒール】 出来たと思ったらこれか。はぁはぁ、まさか腕一本持っていかれるとは……」


 相手はもれなく感電中。こっちはこっちで片腕を失い血は足りずに若干ふらつく、血量増やす魔術はあるのだがスキルレベルが足りない。あれは最低レベル六は無いと使えない。

 MPポーション飲んでもう一度別の属性を付与する手もあるが、流石に今の状態でカウンターを受ければ死にかねない。

 そもそも同じ手をしようとすれば接近する際にカウンターを受けるだろう。

 それに飲む時間はくれないだろうな、感電して若干麻痺してるはずなのに、話しながらも攻撃してる辺り、本当に危ない相手だ。


「本来なら防具に付与する魔法だが、効果があったようだな。一時間みっちり耐えろ、そうじゃ無ければお前は死ぬぞ」

『上等にゃ! 一時間もあれば充分にゃ、その間に殺してやるにゃ!』

 地が出てまっせ猫女王さん。キャラ作りでもしてたのかね……。

 血の足りなさと左腕を無くしたバランスの悪さから常時縮地を使わなければ逃げ切れないほど追い詰められた。その為長期回復を掛けてはいるのだがそれでは回復が間に合わずヒールを掛けなければならない。

 付与魔法で大量に失ったMPも自動MP回復頼りで綱渡りの回避が延々と言えるほど体感する事になったのだ。

 逃げ回る事一時間程度、もう少しと言う時にMP枯渇による影響でテリストは気絶するのだった。

 そして同じくウイングクイーンキャットはHPを九割削られ、テリストに屈服した頃ライトニングオーラの効果が消えるのだった。


 テリストは気絶から二時間程度経った頃、MPが一定量回復した頃唐突に目覚めたのだった。

 猫のざらざらした舌でベロンベロン顔を舐められて、そしてその状態はウイングクイーンキャットに守られるように腹部近くに横たわっていた。

「はぁ、ちょ、ちょっとストップ。もう起きたから」


 この状態って、気絶した俺をずっと守っててくれたのか。スタンピートの為に周囲一帯の魔物がいない、更にこの猫の威圧で魔物はいないとはいえ、危険な状態に変わりなく。

 そもそも俺の命を狩ろうと思えば狩る事も出来たのに、二重の意味で命の恩人か。

 このまま懐いてくれるのなら連れて帰りたいな。

 腕一本の敵ではあるけど、敵対してた以上はそれは当たりまえ、それより命の恩人という側面の方が重要だ。何より、俺って猫が好きなんだよね、ちょっとでかすぎるけど。


『やっと目覚めたのじゃな、死んでおらぬとは思っておったのじゃがな』

「気絶していた間守ってくれてたのか、ありがとうな。敵対してたっていうのに」

『言ったじゃろ、屈服してみよと、汝は見事それを成し遂げたのじゃよ、今後はそなたを主としようぞ』


 そりゃ、これだけの強さのペットがいれば安心は安心だねどね。

 それに、命の恩人だし俺の傍にいてもらう事もやぶさかではない、と言うより来てほしい。

 だけどこのサイズだと家に入れんだろ、どうするのよこれ。


「それは嬉しいけどさ。その大きさだと、言い難いんだけど俺の家に入れないんだよね。特注で小屋作るか? 一応お金はあるし」

『なんじゃ、そんな事を気にしておったのじゃな、どれ、待っておれ』

 グングン小さくなり子猫サイズになるのだった、もしかしてあのスキル、大きさ変化形だったのね。

 やっぱ猫は可愛いわ、癒されるわで最高だな。それよりある程度決めておかないと不味いよなこれ。

「おー、すごいな、これなら何処からどう見ても子猫だわ。それは良いけどね、ある程度情報のすり合わせをしとこうか、じゃないと厄介だからな」

『そうなのかの、ほんに面倒よな』


「ところで、何を食べるの?」

 肉をがっつり食べさせろだったら、大量に必要そうだし、蛙倒しに通う事になりそうよね。

 そもそも、あの巨体を維持するには相当な食費が掛かりそうで怖いのですが。

『主の魔力がよいな、食べ物は食べても食べなくてもどちらでもよいぞ』

 魔力って事はMPの事だよな、体内で循環させる事は常時してるけど体外へ意図的に出す事って可能なのかね? 与えるっ行為そのものを知らないから本人に聞くしかないのだけども。

「ふむ、与え方は?」

『そうじゃのヒールでも掛けてもらえばよいわ、使えるのじゃろ?』

 なるほど、発動した魔術で良いのなら余剰が発生しない様にちょくちょく与えられるな。それなら問題ない。


「そかそか、それと今回の魔物の件だが、お前は、いや、名前を先に決めておくのが良いか。クイーンを短くしてクインで良いだろ。俺の名前はテリスト・ファーラルな、テリで良いよ」

『わらわはクインか。うむ、なかなか良い響きじゃな、気に入ったぞ主よ』

 テリとは呼んでくれないけどまあ良いか、強要すべき事でもないしな。

 それよりクインを何故俺が連れまわしているのか、其処をざっと決めておく必要がある。

「クインは今回の魔物の親玉の子供で通そう、そしてその親玉は俺が辛うじて追い返した、これで突き通せよ」

『ふむ。倒した証拠が無いからの、それが最善じゃろうて』

 何処で学習したのやら……それに話していない部分もきっちり理解するし結構頭いいな。


「それとな、一部を除いて絶対に人前でしゃべるな、猫になりきれ、話して良いのは俺が良いと言った相手のみ、いいか、絶対だぞ、それと絶対に人に対して攻撃をするなよ」

『それは当然じゃな、主に迷惑がかかるからの』

「はぁ、相手がクインで良かったよ。そうじゃなきゃ確実に死んでたね」

『途中で上書きされておったら死んでたのはわらわじゃがな、なんにせよ、すまなかったの、その腕』

「あの時はお互い敵同士、仕方なかったんだよそこは割り切ろう、お互い生きてるんだ、それを考えたら最良の結果だろ、お互いにわかり合えた、俺はそれで満足だよ」

『流石主殿、懐が深いのぉ』

「それじゃ戻るかな。何分、心配させてるからな」

『それなら露払いは任せるのじゃ』

「まったまった、子猫が魔物を蹴散らしたらそれはそれで不味い、こちおいで」


 片腕で抱き抱えてMP残量を確認しながら【ハイヒール】を数度かけてあげる。何だかんだいいつつも死にかける程度に消耗してるからな、これで全快させて北門へ向かって歩き出す。

 ドロップ品を足で踏みつけながら回収して向かうのだった。


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