37:実地訓練
翌日、昨日昼食は買い込んでいるので魔物狩りへと馬車でで出かける事にした。
鉄は熱いうちに叩けって事で訓練して身に着けた技術を実戦で体感させる為だ。
訓練だけでもいけない、実戦だけでもいけないと考えているからだ。
当然、訓練が一通り終われば今後は実戦中心となる訳だが、それでも一定期間の間隔を設けて訓練はするつもりでいる。
今回の魔物討伐する場所は初心者用の北西の森で浅い部分だ。樹木があり視界も良好ではなく、弓に至っては射線を確保するのは困難、こんな場所だからこそ敵の強弱では無く腕を磨けると言うもの。
そして敵の発見は命に関わるので探知のスキル取得の特訓にも持って来いなのだ。
馬車を森から百m程度離れた位置に留まらせ、平原側のウルフを視認可能な範囲一帯から俺が単独でサクッと排除した。
森側へ侵入する訳だが、戦闘はアリサとカーラにほぼ丸投げ、ピンチの場合だけ敵の数を減らす事にした。
そして倒す標的だが、こっちの方向と言うだけで後は丸投げ、距離は何も伝えない。
此方が先に発見できた場合はカーラからの先制攻撃で開始だ。それで倒せなければ横合いからアリサが突き刺して止め、複数いる場合はアリサが死角から攻撃もする。難しい場合は正面に陣取りカーラが狙われない様に位置取りを工夫といった感じだ。
探知に若干難はあるものの、戦闘に関しては何の問題も無い。相手が格下なのだから正確に急所を狙って仕留める様にと釘をさしている。
昼に近づくにつれ、食事をする為のスペースを確保すべく、魔物の空き空間が出来るようにと誘うのだった。
そしてその区切りもつき、買い揃えたテーブルや椅子も取り出して食事をしていた。
「こんな森のど真ん中で食事をしても大丈夫なの? 匂いで来るわよ」
当然の疑問だがその心配が無い様にと誘導してたんだから大丈夫。
「大丈夫大丈夫、ここら辺をすっきり倒すように先導したから数百m規模で魔物はいないよ」
「その探知能力すごいですね、どうやって覚えられたのですか?」
「遊びだよ遊び。かくれんぼしただけ、気配消さないとあっさり捕まるからね、追う側も追われる側もスキル取得できるんだよ」
「それだけでも帝国はスキル取得方法を確立してる事が知りえますね」
国としては屑だが、その辺りを確立した功績、もとい検証の正確さだけは称賛に値する。
強要されて覚えさせられたからこそ今の俺がこうして生活出来ているという皮肉なものである。
感謝したくは無いが感謝したくも有り複雑な心境だ。
「ちょくちょく鑑定されて、まだ覚えてないだの遅いだの言われてたんだけどね、毎日毎日訓練漬けだったよ。
それより最悪なのは最後の日だな。馬車で移動したんだけど街中でも爆走してな、人を引き殺してもノンストップだったよ。
直接は見えなくても、感知出来るんで丸分かりでさ、それを指摘して帝国は腐ってるといったら、首が飛ぶぞと脅して来たよ」
「確かにそれなら言われて当然だけど、あんたも恐れ知らずよね、下手すると本当に胴体と離れるわよ」
屑には屑としか言いようが無いんだよな。
「ちょっと待て…………」
この時森の奥側から雪崩れ込むように感知内へ魔物が入って来たのだ。この速度からして先頭はウイングキャットか。
この猫、奇襲が得意であって獲物が攻撃範囲内に来るのを待つタイプなんだが、自分たちから出て来て狩る場面には遭遇した事が無いんだよな……なぜこんな行動を……。
「待ってって何よ?」
これってあの時ガルーダが出て来た時と似ているんじゃないのか、奥の方から魔物が逃げるように平原目指して移動する、その圧力に負けて同じく浅い森側の魔物まで押し出されている……。
まずい! このままだと暴走の真っただ中に取り残される。
俺だけならレベル差もあるから捌く事も可能だが、二人は不味い。長時間の戦闘には慣れていない上に実戦経験が乏しい。
物量で来られた場合には守りきれる自信が無い、さっさと逃がさないと!
「逃げるぞ! 魔物が大量に出て来る! 馬車まで走れ!」
「どう言う事よ!」
「良いから馬車まで逃げるぞ! このままで構わんからこの方角だ、殿は俺が務めるからさっさと走れ!」
飲んでた器もそのままに放置して、武器だけをひっつかみ森の中を突っ切るのだった。
そして馬車に到着した頃、その先頭集団が森から出て来るのだった。
流石は速度の速い猫だけはある。かなりの距離を詰められたが、ここまで来れたら逃げ切れる。
「二人は中に入れ、行先は北の入り口に行け、あっちの方が大通りを進むのに都合が良い」
北の大通りは西の大通りと違って馬車での往来が多い、その観点から王城へ連絡するには此方からが早いと判断したのだ。
俺は馬車の上に陣取り、馬車が最高速に到達した時点で魔物に弓で射かける。敵が塊であった場合には爆裂の矢を使用してだ。
ある程度の視界を確保出来る平原の中央まで移動できた。
なら、ここで取る行動は一つだろう、絶対にウイングキャットを追い出すだけの力量のある魔物が後方から追い立てているはず。
さっさと仕留めないと一般市民への犠牲がどれほど出るか分からない。
「アリサ、カーラ聞こえるか?」
(聞こえるわよ、どうしたの)
「門に到着したら馬を二体切り離して御者一人を王城に、もう一人を西門にまで行かせて連絡させろ、魔物は西門と北門の間の外壁に接触した後それぞれの門に向かうはずだ。門は閉めずに衛兵と騎士で塞ぎ、市民をさっさと内側に避難させろ。
それとは別に外壁の上に弓兵を配置させて上から射かけろ、わったか?」
(わかったけどテリはどうするのよ)
「ガルーダが出て来た時と全く同じ状況だ、きっと突出した奴が後ろから出て来る。そいつを仕留めるから俺はここに残る」
(馬鹿な事は言わないで、それこそ騎士と連携して倒さないとテリが死ぬわよ!)
「勝手に俺を殺すな! そもそもガルーダクラスが出てきたら近衛騎士でも死人が出る。あの馬鹿なギルマス程度の実力が無きゃ犬死だ、それなら俺が一人で抑えた方が手っ取り早い」
(だからこそ連携が必要なんでしょ)
「それはそうだが、俺と一緒に行動が可能な奴なんていないだろ。縮地を連続使用で移動する俺には誰も追いつけない、付いて来れないと足手まといなんだよ」
(仕方ないわね、せめてポーションを全部持って行きなさい。私たちの分もね)
「それは有難いな、持って行くよ」
御者の間に降りて小さな窓を開きその穴から全てもらい受ける。
馬車から飛び降りて魔物が接近して来るまで弓を射る、接触寸前に弓からソードブレイカー二刀流に切り替えて魔物の団体に飛び込み切り倒して行く。
何故か此方に接触するも攻撃はして来るのだが、進行方向と接触しない個体は俺の横を通り過ぎて囲むという行為を全くしない。
波を押しのけるように逆走しながら切り倒して行くと上空からこの魔物たちを追い立てる魔物の姿が目に入るのだった、それも上空に、鑑定してみた。
ウイングクイーンキャット
レベル:74
種族:猫族
状態:健康
HP:963
MP:439
げっ……や、やばい……予想以上に強すぎる。これ、勝てるのかね……敏捷が驚異的すぎる……。
当然とも言えるのだが、視界内にいる中で唯一戦っている俺、此方に向かって突入して来るのだった。
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テリスト
レベル:54
年齢:9歳
種族:猫人族
状態:健康
HP:960
MP:444
装備品:ダマスカス製ソードブレイカー×二本、サラマンダー製皮鎧・ズボン・小手・ブーツ
資金:1630000リル+金貨多数銀貨少数銅貨少数、元ギルマス資産
予備武器:鉄製エストック(刃渡り40cm)、ラージシールド(小円形盾、直径30cm)、ダマスカス製フランベルジュ(120cm)、ショートボウ、木の矢(尖端鉄製)172本、爆裂の矢27本




