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36:特訓と休息

 翌日は特訓です。

 告げていた通りに身支度を済ませた俺たちは、自家用馬車で王城へと向かう。その途中で武器屋に寄り矢を購入して赴く。

 入口を守る衛兵に用件を伝えそのままご入場ではない、騎士に迎えに来てもらい訓練場へと行く。

 そこでは既に訓練の真っ最中であった。

 ぱっと見訓練に使用している武器は三種類か。盾と片手剣、槍、弓だな。


「待っていたぞテリスト殿。それで使用武器は?」

 早速隊長さんか、正式な場として殿扱い。それなら俺は立場が上だから何時もの調子じゃ不味そうだな。

「俺はそうだね、ソードブレイカーの二刀流でアリサは槍、カーラ様は弓ね。開始する前にちょっと実験したいんだよ、壊れて良い的ってない?」

 昨日付与した【インパクトエンチャント/ファイアボール】の矢を試しに使いたいんだよね。威力の検証に。

 通常の通りの【ファイアボール】の威力か、それとも減衰するのかを検証したかったのだ。とりあえず矢が先って事です。

「使用武器によるな、何を使うんだ?」

「カーラ様の弓だよ」

 それならこっちだと案内された先には丸太を地面に埋め込み固定されてる的があった。

「それじゃこの矢を射てね、距離はなるべく離れて、危なそうなら俺が受けるから」


 爆風からね。


「何をやらかす気だ?」

「まぁまぁ、見てなよ」


 成功しましたとも、盛大に。これ、どうなると思う?

 ここ王城の敷地内のあるので一応は一部なんですよね、確実に。その中でドデカイ爆発が起きる訳ですわ。

 何事だと陛下も護衛の近衛騎士を連れ、結構な野次馬まで集まって来る始末。

 ちょっと来いって事で別室に連れて行かれました。はい。


「それで今回は何をやらかした? 正確に教えてくれ」

 これ、陛下のお言葉ですわ。

「えーとですね、一昨日王都の外で訓練した際にですね、カーラ様の矢にファイアボールの魔術を仕込みまして、その威力の検証を訓練場でしてしまいまして、あの爆発です」

「そんな物騒な物を町の中で使うな!」

 爆発してから気が付きましたよそれ、ちょっと爆発の規模がですね……あれだったので不味いかなーと。

「ご、ごもっともです。すみません」

「それで、あれだけじゃないんだろ?」

 やっぱりそうなるよね。余分に付与してますとも。

「ええまぁ、あと八十本ほど……」


「半分寄越せ」

「え?」

「半数の四十本で良い、売ってくれ。何かの時に役立つだろ、代金は昼にでも持って来させる。

 ギルバード。束にして明記し、武器庫に保管しといてくれ」

「えーと、売るのは構いませんが、どの程度力が加わると発動するとか検証をしてませんよ。

 一本発動すると確実に残りの三十九本が発動しますけど、宜しかったですか?」

「……後程検証後に報告してくれ」

「はい、では後程に」

 どうやって検証するんだよ……踏んで力加減を調べるとか? 俺の脚が吹き飛びそうなんですけど……やっぱりさ、なぁなぁで済ませて放置しておこう。

「保管はそうだな、箱を作ってクションに皮で巻き付け入れるようにしておけ。外部から力が掛からんようにな、訓練に戻ってくれ」


 箱の準備が出来次第渡す事になり、やっと本来の訓練へ移行した。

 まずお相手は隊長事ギルバードのおっちゃん。盾と片手剣の防御重視スタイル。

 俺は代わりのショートソード二刀流だ。左手は逆手持ち、右手は順手持ち。

 開始早々縮地で最接近から速度で押し切る。相手に距離を与えず、相手の攻撃が最速になる前に潰すのがコツだ。そして背の低さを利用し、足首辺りへも攻撃してやると下がる一方で相手にならず完勝した。

 仕切り直してもう一戦、今度は隊長の攻撃しやすい距離で戦う。大振りすると簡単に潰される事から、徐々に攻撃がコンパクトに、それでも速度で優っている分余裕で捌けるのだが、そうして隊長との模擬戦は終わった。


 アリサの方は型から教わっているようだ、基本が最重要ってね。カーラの方は技術は十分、後は前衛との連携だけだ、二対二の模擬戦に突入していた。


「ふぅ、また厄介な戦い方をするもんだな」

「武器側に回り込んで速度が乗る前に潰す。その為の逆手持ちだからね、盾でも可能だけど目線を塞ぐから背の高い人が相手だと不利だし」

「何処でそんな知識を学んで来たのやらね」

 ふむ、わかる人にだけわかる言い方で答えるか。

「来る前だね、親父に鍛えられた。レベル上がって体の動きが違うから元より確実に強くなったね」

「ふむ、どうも武器の振り方も違うよな、どうなんだ?」

「円だよ円、振り切った後に止めて斬りかかったりはしないんだよ、重量のある武器ほど有効だね、完全に速度は維持できないけどある程度乗せたまま次の斬り込みに利用する、という方が分かりやすいかな?」


「ちょっと見せてくれ」

 フランベルジュで見せる事にする。簡単なのは∞になぞらえるように振るだけ、そこから切り方も見せるが上段からの斬り込みだけは無いのだ。地面に当たるからな。

「ふむ、その振り方だと確かに重いのも何とかふれるが止められた場合はどうなるんだ?」

「これ、そもそも止められるの想定してないから俺の場合。だから確実にぶち当てられる相手にしか使わないから魔物専用だよ、おっちゃんほどの体格ならつばぜり合いとか、普通の両手大剣と同じように使えるでしょ、回避された場合のそこからの軌道だよ。

 これほどの重さだと振り抜いたら隙だらけでしょ、そこを埋める為に円を書くようにその隙を埋めるの。軽い武器でも応用は効くけどね」

「俺は無理に習得しない方が良さそうだな」

「そりゃそうでしょ、どっちつかずの半端は余計に隙が出来るよ」


 こうして五日間みっちりと訓練に精を出した。

 そして翌日、皆でスイーツ食べ倒しツアーだ。と言ってもお昼ご飯の代わりに。

 アリサは特にだ。事務から突然体をメインに使い始めてかなり体力的に参っているようだ、そんな時は甘い物に限る。

 水分、糖分、繊維とバランスの良い果物を大量に摂取だ。繊維が入ってる分糖分の吸収速度が落ちるのが良い。

 そもそも体力低下してる時に食事は取り難いが、果物なら食べやすいってのもある。


「考える事が極端よね、良かったの? 昼食がこれで」

 俺はでっかいプリンが乗っかってるパフェを食べていた。タンパク質も取りたいのでこの選択だ。

「朝になっても疲れが抜けなくてあまり食べてないでしょ、これなら思う存分食べれるから遠慮なく食べて良いよ」

「その分高くつくわよ」

「良いの良いの、どうせよそ様からぶんどったお金だしね、有効活用しないと駄目なのよ、高給取りはその分お金を使わないと経済が回らないんだから」

「今度は経営学まで混ぜて説明する気なの?」


「ふむ、聞きたい?」

 今回の場合は貯め込むからデフレだな、硬貨が少なくなり供給とのバランスが崩れる。必然的に品物の値段が下がったように見える。実際は硬貨の価値が上がる。

「テリクンはその方面の知識もおありなのですね、ぜひご教授お願いします」

「まずは高給取りだけで話そうか。さて、お金を使わずに貯め込んだらどうなると思う? 高給取りと言う分、周囲から相当なお金を回収する訳だ、その筆頭は当然陛下が突出してる。

 それを外に出さず貯め込んだら当然国として回らないからここは除外ね。

 高位の貴族や大店と言われる商家も少なからず影響を与えるだろうね、そうなるとリルの総量が一点に集まるからそもそも絶対量が不足しがちになる、そうなるとリルの価値が上がる。

 なぜ価値が上がるのか。硬貨そのものが無いから銀貨一枚でも貴重品になる訳だ。これまで銀貨一枚で買えていた品が銅貨五枚で買えたりね」

「理解しがたいのですが、どういう事ですか?」

 これだけの説明だとわかりずらいか。

「ふむ……貴族が回収に走って、国内の五割を手放さずに管理したとしたらどうだろう、残りの五割で国全体のリルを賄う事になるよね。

 以前は十リルは十リルでも、銅貨が圧倒的に不足したら、見合う価値まで上げさるを得ない訳だ。ま、勝手に上がる訳だけどね」


「でも、その分鋳造されて市場に流れますよ」

 無償でばら撒き、それはやっちゃいかんのよ、対価としてばら撒く事も可能だが、流す奴が無制限に硬貨を持ち合わせてます宣言にもなる。周囲から叩かれるんだよ、そんな事したらね。

「そう簡単にはいかないんだなこれが、勝手に流すとどうなるかな、無償でばら撒く訳にはいかないんだ。対価として流さないと受け取る側に莫大な資金を与える事になるからね、そんな事は許されない。

 そもそも流す側が上限無しで資金がありますとアピールする事にもつながる。それは最悪の事態に繋がるからそもそも簡単には行えない。

 例え陛下の判断でもね、それこそ貴族が反発する。自分の資産が目減りする事に繋がるからね」


「前半はわかるわよ、後半はありえるの?」

「リルの価値が上がった所で陛下がリルを大量に流し込みました、それで元の価値に戻りました。

 価値が上がったのに下げられたんですよ、貴族としては損でしょう。

 これでは貯め込んだ貴族が反発する、敵に回ったと言ってもいい」

「確かにそうでしょうがわかりにくいですね」

「ふむ、それじゃこれならどうかな。フロッグ討伐の時に三十万リル程度稼げたのでそれを軸とするよ。

 今の俺なら一日で三十万リル以上稼げます。毎日の出費を五百リル程度に抑えて、残り全額を保管する事にしましょうか。

 一年で総額一億飛んで八百万リル以上、生涯貯め込んだらどうなるか、一個人で六十億リル以上貯め込めます。こんな事したら経済が破綻するんですよ」


「それならわかりやすいわね、だけど計算すると途方もない金額ね」

 まあね、年中無休で戦ったらの話だけど、そもそもレベルが上がるから相対的に収入も増えますけどね。

「だからある程度の貯蓄は必要だけど、余分なお金は使わないと駄目なんですよ、高額取りの責任ですね」

「それで何かあるたびにパーティーを開いているのですね」

「なるほど、そう言うのもあるのか。一回で相当なリルが開催者から出るから丁度良いのかもね。

 それはさておき次だね、税収を上げるとしたらどんな手を使うかな?」


「簡単じゃないの、税金を上げるのよ」

 そっちに走るか、俺が拉致される前の日本と全く同じだな。

 下手に上げると消費しなくなるから税収の機会ががた減りするんだよ、そうなったらちょっとやそっとの対策してもまた上げるんだろうと不信感が強くなり、元には戻らなくなる可能性がある。

 かなりの悪手と言えるんだよ。

「あー、それは駄目だよ。最悪の手だ」

「それ以外に手は無いでしょ、それとも何? その地域でしか買う事が出来ない品を売り出すとか?」


「税金を上げると一時的には税収が上がりますが財布の紐が緩まずに出費を控えますから税収の機会が減ります。

 商人も住人も税金が安い地域に逃げ出します。そうすると長期的に見れば疲弊した上に町が無くなりますから最悪な手なんですよ。

 それじゃどんな手を使うのか、後半のは良いけど今それは除外、他の地域より税金を下げるんだよ。簡単だろ」

「簡単ですが、逆に税収が下がってしまいますよ」


「ここは他へ目線を移せば解決するよ。さて住人側はどうだろう、税金が下がれば給料が上がる。使えるお金が増える訳だ、だから個人の出費が増える機会が多くなる。

 次は商人側だ。他の場所より税金が安い分、仕入れも安くなり販売額も下げられ客足が近くなる。

 目ざとい商人なら仕入れにわんさか集まるだろうね。他の地域へ持って行けば差額があるから利益を余分に上乗せ出来る。

 他所から持ち込んだ場合、仕入れは他所から持ち込んだ分高いから差額は少ないが、活性化してる分在庫として残り難い。収益としてはとんとんか、余剰在庫にならないぶん商売はしやすい。

 これを総合的に考えると商売が活性化する分税金の金額は下がるが、回収する機会が大幅に増える。後は言わなくて良いね」


「周囲を管理する貴族が反発しそうね、その案」

 その返答が出るなら完全に理解できたようだな。

「卸元としては税収が落ちるだろうね、下手すると総スカンを受ける。

 陛下がこの手を使ったら面白いかもね、周囲の国は全体が税収減、こっちはウハウハ、笑いが止まらんね、どうみられるかが怪しいけど」

「あんた、この国を孤立させたいの?」

「そんな事は無いよ、税金を下げたら税収が下がると思ってる様だから教えただけ。

 それこそ目線を相手の立場に変えて考える事、これが出来れば考えつくからね、特別な事でもない訳だな。

 それに、帝国を潰すのに経済で追い詰めるならこの手以外にないかなと少しは考えてる」

「面白い手ですね。周囲一帯の国が税金を下げれば、こぞって商人は抜け出すのですね」

「そう言う事。あっちにはその手の知識持ちが三人いる訳だが、強要されて使われてるからな、絶対に教えないだろうな。そもそも生きているならって言葉が続くけど」

「力の面ばかりを考えていましたが、その手の知識を流されただけでも本当に脅威ですね。……テリクンは死んでると思ってるのですか?」


 雑魚は馬車に追いつけないだろうけどあのガルーダからは逃げきれないだろうな。標的とされた場合は確実に補足される。生きている可能性の方がかなり低いと思っている。

「可能性の問題だが死んでるかもな。飛んでる魔物だったし、その機動力から逃げるのに馬車じゃ到底逃げ切れない。

 あのまま追いかけられていたら全滅もあり得る。襲えそうな生きてるのってあの場にはそいつらしかいなかったんだからね。確立としては死んでる方が高そうだ」

「もし。死んでいたとしたら、次の手は何をして来ると思う?」

 そりゃ一つしかないだろうな、また勇者の再召喚、犠牲者が増える一方だ。

「簡単だ。再召喚だろ、準備期間が五年ほど掛かるって俺たちの監視役が暴露してたからな。

 俺たちが学校に在学している時には新たに……だな」


「その辺りの情報を集めた方が良いかもしれませんね。それに、魔人族の国に支援し、そのまま排除する事も視野に……」

 それも可能ではあるな、獣王国として俺の行動を認めれば、だがね。

「国境に引き付けてくれるなら俺が単独で潜り込めば潰せると言えば潰せるんだけどね。相当な準備が必要だけど」

「また無茶な事を考えるのね」


「そうでもないぞ、付与した武器で皇宮を囲んでしまえば出れないからな。後は皇族専用の避難通路を潰してしまえば後は放っておいても勝手に自滅する。

 後は【フライ】で近くに行く奴を排除すれば絶対に出られない。

 その為にもあの三人がいたら邪魔になる。生きていれば、だが」

「それでも引き付ける方は大変そうね、実力が突出してるのは確実だろうから」

「固定スキルが何なのかによるよね、結局、俺のはモロにばれてる上で、あちらの三人のスキルは知らないから痛手ではあるな」


「そもそも今は無理よ、あちらは十七歳でしょ、その体格差で相対してごらんなさい、確実に不味いわよ」

 確かにな。レベル上昇速度が彼方の方が下だとは思うが、これが外れて同等だった場合には体格差で勝敗がつきかねない。

 そうなると後八年は待つ必要がある。その間如何なるのか、其処が不安だな。

「はぁ、八年ほどは事を起こせない訳ね、まあいいか、助け出せないが直接的な被害がある訳でもないからな」


 この言葉で締めくくった。








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