23:決闘準備
アリサの終業を待ち、王城から南へ行き、軟らしい態度の武器屋さんに買い物に来た。結局はついて行くと言い出して二人で行ったのだ。
購入するのはダマスカス製ソードブレイカーの二本とそれに合わせて剣帯を。
剣帯はおまけでもらい総額八千二百リル(金貨八枚銀貨二枚)の出費だ。
宿に帰り食事を済ませて今はダブルルームの部屋だ。
「はぁ、本当に決闘するの? あの人、今ではああだけどSSクラスの猛者だったのよ」
猛者だろうとスペシャリストだろうと既に火ぶたは切って落とされた。今更後には引けないし引く気も無い。
ハンター間ではタブーな事を強要しようとした付けはしっかりと支払わせる。
最大の理由は前例を作らない事、これが当たり前になってもらっては困るからだ。
目線が上、ランクが上の者なら下の者からスキル構成を聞き出しても構わないとなれば、各個人の弱点が周囲に広まる事は必至、これだけは避けないといけない。
これを避ける為ならあのギルドマスターが死のうと知った事では無い。
自業自得だし、殺すつもりで攻撃するからな。
この決闘を受けるのにはもう一つ理由がある、タブーを犯せば決闘になる恐れがあると周囲に知らしめる効果もある。
今後の抑止力になれば一石二鳥ってなもんだ。
「するよ。レベル五十三になったから何とか殺せるでしょ、その為に武器を買って来たんだし」
「あのね、確かにそのレベルなら対等でしょう。それでもその買った武器、ダマスカスまでなら折れるわよ。だけどあの人はミスリル製の武器を持ってるの、だから挟み込んで捻っても折れないわよ」
なるほどね、俺はBランクでミスリルには手が出ない。その点彼方は元SSランクでその手の武器も防具も揃えてるから此方が不利って事を言ってるのか。
武器の優劣のみで見たらそうだろうけど、俺には別の手で威力を上乗せするから良いよ。
相手の鎧に付与するって手もあるからな、そうなると面白い事になる。
着ている時間の分だけ拷問器具に身を包む、と言う事態になる。
死んだも同然だろ。ま、この手は最後の手段だけどな。
「それは構わないさ、固定できればそれで良い。まぁ見てなって、今から本当の準備をするから」
鞘に【エンチャント/火抵抗Lv2】と【エンチャント/雷抵抗Lv3】を附与し、武器に【エンチャント/ファイアブレードLv1】と【エンチャント/ライトニングブレードLv2】を附与する。そして鞘に戻して収納する。
抵抗を一段上で付与したのは鞘に納めた状態でも外洩れしない様にとの配慮からだ。
スキル収納は時間経過しないのでほぼ丸々の時間、一時間使用可能な状態で取り出す事が出来る。現場で掛けるのは人がいて無理だから収納サマサマなのだ。
鉄の短槍、フランベルジュ、ソードブレイカーの二本に施して準備完了だ。
「はぁ。武器同士が接触した瞬間にマスターは感電して麻痺、その間殴り放題ね。ある意味必勝よね、その凶器」
「使う方の俺も痛いんだけどね、ずっとダメージ負いっぱなしだよ」
「その程度で済むんだから規格外よね……」
そりゃそうだ。火傷しない、麻痺しないで済んでるのは、ある意味帝国の馬鹿連中のおかげでもある。感謝はしてないが。
「そういう訳で明日は早いのででさっさと寝ますです」
「そうね、さっさと寝ましょうか」
今日も抱き着いて寝る。やっぱりこの体勢が安心して寝れるね、寒い時期だしあったかくてふわふわ包まれ良い匂いと何重特なのよ。である。
翌朝。防具を着こみ、偽装のマジックバッグを持って朝食を食べて外に出ると待ち伏せされていた。隊長のおっちゃんに。
昨日何も言って来なかったから謁見は無いと思っていたのだが……急遽予定を入れたのかね。
決闘と被っちゃうな、こっちの予定を先に済ませれるならいいが。とりあえず伝えてみるか。
「突然ですまんな。昨夜、急遽本日のお昼ごろか、謁見となる。貴殿らお二方にはご同行願う。
そして、職場には夜のうちに許可を取ったので安心してほしい」
やっぱりか。それとアリサの方への手回しも済んでると、こっちへの配慮が足りないが、最低限度の準備はしてるのか。
断れないから仕方なしに行くしかないけどね。
この口調だと正式な場と考えてるのか、それなら対応する口調で応対しなければ顔に泥を塗るな。
「謹んでお受けいたします、騎士様。ですが一つお願いがあります」
「可能な範囲でなら聞き届けよう。話してみろ」
「本日早朝、魔物ハンターギルドのギルドマスターと決闘いたします。場所はお城の敷地前、相手も呼び出しておりますのでぜひに御許可を」
「ちょ、ちょっと待て、俺の聞き間違いか? あのギルマスと決闘と聞こえたが、嘘だよな?」
口調が崩れてまっせ隊長さん。
「本当であります、近衛騎士隊長様、けっして嘘を言ってない事を、陛下に誓い此処に宣言します」
ここまで宣言するなら信じるだろ? じゃないと面倒なんだけど。
「そこの奥さん候補だったか、本当か?」
話を振るなよ。やっぱり、俺の言葉って軽いのかね?
「事実です。ギルドマスターがテリの攻撃手段を無理に聞き出そうとしまして、結果的に決闘をギルドマスターが付きつけました」
「あのボンクラ! 何を考えていやがる! 早馬で戻り陛下へお伝えしろ!」
瞬間湯沸かし器の如く激高して。連れて来た騎士に命令を下したのだ。
連れ添ってる一名が颯爽と馬に飛び乗り王城方面へと駆け抜けて行った。
「あの、隊長様、止めないですよね? あちらが宣言して俺は受けました。既にお互いに納得済みなので他者に入る余地は無いのですけども」
「決闘のシステム知ってるか?」
そこはさっぱりですけども、意味は理解してますが。
「いえ、まったく知りません。そもそも決闘があったんですね」
「はぁ、よく聞け。今回はお互いの尊厳を賭けた決闘との判断になる。相手がギルドマスターなので俺が立ち会う。
そして場所だが城の前は無理だ。コロシアムを準備するからそこに両者を連れて行く。
到着後、各自に準備時間を十分与えるから控室で準備しろ。
武器は自分の持っている品なら何でも良い。装備してるなら武器十本だろうと構わんがマジックバッグに大量に詰めて来る事は禁止事項だ。
そして魔術も制限は無いが基本的に観客が巻き込まれる規模は禁止だ。当然アイテムの持ち込みも禁止される。
そして勝敗は相手の敗北宣言、もしくは戦闘続行不可能と俺が判断した場合、それと死亡だ。
先ほどの件だが、受ける側が了承した場合、本人も陛下でも止められん、どんな体調であったとしても遂行される。質問を受け付ける、なにかあるか?」
それじゃ逃げ放題じゃないか、それどうにかしないと俺の武器を見た瞬間に逃げ出すって、これは摘めないと単なる準備の無駄になるな。ちょっと突っ込もうね。
「それって、賭けてるのが尊厳でしょ、それってペナルティも何もないよね。開始早々逃げれるでしょ、どうにかしてください、どちらか死亡を持って決着とかに」
「これまで決着方法を変えた事例が無いが可能なのかね。はぁ、戻って陛下の御許可を取ってみる、無理だったら諦めろ」
ふむ、前例がないのなら変更するのは敷居が高すぎるかもな、あまり期待しないで待っておこうか。
だけど財産ぐらいはテーブルに乗っけてほしいな、じゃないと勝ってもメリットが何もない。
それだけは避けたい。
「それもですけど、勝ったら相手の財産没収とかして下さいよ」
「……それも陛下に判断してもらう。無理だったら諦めろ、俺にはこれしか言えん」
「それなら参りましょうか、いやぁ、コロシアムってあるんですね、始めて行きますよ」
「あのなぁ。何でそんなに緊張感が無いんだよ、あのギルマス相手だぞ」
「あのギルマスとか言ってますけど、昨日が初対面ですよ。相手がいくら威嚇しようと実力知らないんですから威嚇する意味がないでしょうに」
「はぁ、あ、そう言えば最近ため息が多くなったな」
「まぁまぁ、とりあえず行きましょ、コロシアムに直行、じゃないですよね」
「当たり前だ、とりあえず乗れ」
最初の威厳ある態度台無しである、最後には完全に元の口調だし。 どうせなら最後まで通そうよ……。
城の客間らしき部屋に案内されたものの一時間たっても進展なし、二時間たっても進展なし、そして三時間経った頃やっと隊長が説明にやって来た。
暇すぎた。お茶とお茶菓子なら大量に飲み食いできるのだが……決闘直前ならすきっ腹の方が動きを阻害しにくい。
特に短時間での決着ならばだ。
長時間なら腹に何か入れておかないとジリ貧だが、今回は避けるべきだ。
「待たせたな。ギルドマスターの言動が本当かギルドへの確認を取っていた。
その場に居合わせたコリンの証言からマスターに非ありと判断された。
有能ではあったので決着方法に変更は無し、但しマスターが負けた場合は職の剥奪、並びに全資産をテリストへ譲渡が決まった。
そしてテリストが敗北した場合は全財産の没収となる。よって、資産はコロシアムの準備室にて預けてもらう、確認だが宿に一部でも置いてるか?」
「全部持ってるから大丈夫です」
「了解だ、では行こう。場所は王都南西部に隣接している、馬車で向かうぞ」




