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20:報告

 フランベルジュを襷掛けに背中に担いで魔物ハンターギルトへと入る、もうすぐ夕方だ。受けた依頼の報告に来る者で徐々に人が増えつつある。

 朝のラッシュほどでは無いが依頼内容に見合った成果を果たしたのか、そして支払いで一人当たりの時間が長くなるのは必然だ。捌いても捌いても列が途切れるには時間が掛かりそうだ。

 そして俺と同じくアリサを待つ存在がすでに到着している。隊長が向かわせてくれた騎士さんだろう。

 夕方になり夜勤の者と交代してアリサと合流、騎士を伴って宿屋へと移動する。

 お城方面へ移動して十字路を南下、右手にある宿だった。追加料金と合わせて銀貨一枚と銅貨五枚を渡して三階にあるダブルルームを確保した。そこまで確認が済むと騎士さんは帰って行った。

 部屋に行く前に食事を済ませて部屋に行く。そうそう、マジックバッグの一番小さいのはアリサが使ってるの。前の宿は専用部屋の様に三年ほど住み込んでいたらしく、ソファーは個人の資産だったらしい。

 そんな訳でもう一つのバッグをお城には持って行けなかった訳だ、大きさが違うので。

 高価な方をアリサに持たせようとしたのだが持ってくれなかったのだ、そのせいもありお城へは持って行かなかったのだ。

 そして部屋でのんびりと過ごす。


「それにしても大物を買って来たのね、刀はどうしたの?」

 当然の疑問だよね。刀を買うと言っておきながらフランベルジュを買った訳で、気にしない方が可笑しい。だけどきちんと理由があるんですよ。

「実際に見たら反りが激しくてね、突きがし難そうだったから急遽フランベルジュに変えたの」

「問題は長さと言うより重さよね、振り回されないの?」

 やっぱりその点が心配か、くねっている分強度を上げる為に肉厚だ。当然重くなる。

 そこは使い方を工夫して使用するしかない。

「そこはほら、重心の移動でカバーだよ」


「なるほど、自覚はあるのね。

 それはそうと謁見に呼ばれるってどう言う事よ。実際に手を下したのってテリよね、どうして私が呼ばれるの?」

 当然の疑問だよねぇ、聞かれる事は確実だって思ってたし、此処は正直に話すか、嘘で取り付くろ必要は皆無だしね。


「あの隊長さんに聞かれたんだよ、お姉さんとの関係をね。それで言ってやったんだよ、お姉さんが承知するなら結婚するって」

「ブフォ! グッッ……何てこと言ってるの」

 対面に座ってるからちょっと顔に唾が飛んできたんですけども……まぁいいけど。

「なぜ行くことが必要になるのかって事なんだけど、どうも貴族になりそうなのよ」

 貰いたくは無いんだけどねぇ、なし崩し的なんですわ。

「それって爵位を頂くかもしれないって事よね」

「男爵までが候補だろうって話だった。それと謁見とは別に顔合わせするんだってさ。

 それで結婚を視野に入れてるなら紹介すべきだなって隊長さんが言ってた。

 問題は他にもあるんだよね。服、どうしようか……」

「命は助かったけど、本当に厄介ごとが舞い込むわね。服か、買いに行く暇が無いわね」

 買いに行くのもねぇ、あの時店員さんにコーディネイトを頼んだのは良いけどほら、これを着てみてこれを着てみてと、どんどん催促されて着せ替え人形だったのよね。あれはなるべく避けたい。

 それなら魔物と戦かってた方が気が楽でましな位に。


「それじゃ仕方ないか。俺もハンターの正装は防具です、で押し通すかな。

 それでね、報酬は断れないから全部貰えって、それでもれなく貴族だよ。ただ、色々と質問したら抜け道があってね」

「また、ろくでもない提案をしたんでしょ」

 そんなジト目で見なくても良いだろうに。

 提案じゃないんだけどね、現行制度を利用して丸投げしたいなーと思っただけです。

「提案じゃないよ。お姉さんと結婚して養子をとるの、その子に爵位を丸投げするって言ったら絶句してた。騎士爵なら無理だけど、準男爵と男爵なら可能だよね」

「プププッ、ククッ、あははは! 抜け道って言うより現行制度を積み重ねたのね、実行可能な分それは陛下が困るわ」

「これを相談したから絶対に指摘されると思う、絶対に実行するなって」

「当然ね。陛下の面目丸つぶれだもの、観念しなさい、受けるしかないわよ」

 やっぱりお姉さんもそこに行きつくか、これも常識なんだろうなぁ。

「それはお姉さんもだよ、貴婦人ってところだね」

「当然そうなるわね」


「隊長さんが言ってたけど、普通なら飛びつくって言ってた。そんなに貴族になりたいものなの?

 たしかに金銭的に見れば魅力的だろうけどさ、権利を有するって事は当然義務も発生するよね、俺はそんな事背負いたくないな」

 目を付けられている分厄介そうだよね、騎士の仕事を一部でも投げられるんじゃないのかなと思う。

 基本的に陛下の要望ならば断われないだろうからね。

 それでもごり押しはしないだろうけどね、強要すれば独裁ととられかねない。連続してそれを行えば貴族が反発するから今後の統治が危うくなる。断る場合は大勢の目が有る場面が最善かな。

「特権階級で確かに縛りもあるけど、基本良い事の方が多いから、ほとんどの人は憧れてるんじゃないかな」

「お姉さんも?」

「どうかな。見つからない様に見つからない様にと生活してたからそんな事考える余裕が無かったわね」


「嫌だと思われた場合は俺って振られちゃうのか」

 それはそれで嫌だな、やっと見つけた生涯のパートナーと思える人を手放すのはなぁ。

「そんな事しないわよ、こっちにいらっしゃい」

 その言葉通りにガシッと抱き着く。

「あ、そうだった。お金貰ったのを確認しないと」

「急がないから良いわよ、明日にしなさい」

「逃げる訳でもないから良いか。しかし、話が大きくなったね」

「それも仕方のない事だったのよ、この件を解決したら自動的に爵位までついて来る案件だったって事でしょ」

 報酬にもれなく爵位が付く案件だったって事でも、解決しないって選択肢は無かったから仕方が無いんだよね。


「解決する以外になかったんだとしても理不尽だよね、爵位は要らないからその分金銭にしてくれないかなぁ」

「はっきり言って無理ね。相手の無力化をすべて一人で行った人物を野放しになんて絶対しないもの、囲い込みたくなるのは当然よ」

 それは理解できる。だが理解と納得は別だ。理不尽だよなぁ。

「立場的にはそうだろうけどさ、対象となった俺は如何なのよ」

「これしか言う事が見つからないわ、私も支えてあげるから諦めなさい」

「とっくに諦めてるよ。ただ、愚痴を言いたいじゃないか」

「はいはい、この場だけにしときなさい。隊長さんも理解してると思うけど、何度も言われたら流石に凹むわよ」

「忠誠の対象である陛下の決断だもんね、それから逃げたいと何度も言ったら、そりゃ下手すると怒るな」

「そこまでわかってるなら良いわ、それじゃもう寝るわよ」


 起きてる=明かりの為にランタン用油を消耗するか、魔石を加工した電灯ぽいのを使うかの選択肢な訳で、基本的に寝るのが早いのだった。

 日の出で活動開始、日の入りで活動停止、そんな暮らしが一般的で、電気の無い時代の暮らしの様だった。

 その日は何も無いだろうとがっつりMPを使う事に。マジックバッグ収納Lv3を作り抱き着いて就寝した。

___________________________

 資金:3280リル(金貨3枚、銀貨1枚、銅貨3枚) 中身不明の巾着


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