19:新たな武器屋
王城一室にて。
ローズさんとの別れ際にマイバッグを渡された。これ、お金を入れた巾着を直接持たずに済むように用意してくれたのだ。結構重い、宿屋で確認してみよう。
ギルドへは行かずに武器屋さんに行った。明日、何事も無ければ、送り届けた後に蛙退治に行くためだ。
切り用武器を準備しておかないといけない。相手の攻撃手段を潰す、これ、元も安全かつ素早く倒すコツである為外せない選択肢なのだ。
「こんにちは、いらっしゃいますか?」
「おお、来た様だな、いつか来るとは思っていたが早かったな。聞いたぞお兄さん二人が来て、家を出たそうだな」
ここにも縁があるから知ってても不思議じゃないのだけど、ほんと、正確に伝わって無いのね。修正しておこう。
「いえいえ、出てませんよ。捨てたんです」
「同じ事じゃないのか?」
違いますって、戻るつもりは一欠けらすら無いんですからね。
「違いますよ、家出なら戻る事もあるのでしょうけど、捨てたんだから一生戻りませんよ」
それを聞いたおっちゃんが激怒して殴りかかって来るが然避ける。ま、一応心配しての事だから反撃はしない。本当なら攻撃して来た手を潰す処だがね。
「それじゃおっちゃんは、俺が一生道具扱いされてろって考えですか」
その一言で攻撃は止めたが、やはり納得している顔ではない。むー、この武器屋ともお別れかな。
「そうは言ってない、両極端な考えは止めて何処か妥協点を探せばいい、その努力はするべきだ」
「おっちゃん、その場にいなかったからそう言えるのかもしれないけどさ、極端なんだよ言ってる事が。
お前は死ぬまで家にいろ、そのスキルを使ってお金を稼げ、お前には常識は必要無い、学校へは行くなお前に勉強は必要無い。どう思うよ、この内容を」
「……そうは言ってもだな、九歳で家を捨てるとか言い過ぎだと思うぞ」
言い過ぎの前に、あの馬鹿が極端な事を言うからこんな事になる。
説得するななら俺じゃ無くあの馬鹿を説得しろよ。順番が逆だろ。
「捨てる以外の選択肢を選べって事は俺に道具になれって事よね。
そもそも前提条件が可笑しいんだよ。俺を説得する前に、馬鹿やらかした奴を先に説得しなきゃならんよな、そいつさえ考えを改めていたらこんな状態にはなっていないのだし。
その点、勿論あの馬鹿を説得したんでしょうね?」
「そんな事で俺が出しゃばる訳にはいかんだろ、家の恥とも取られかねん」
言ってる事が支離滅裂になって来てんな、きちんと考えを纏めておけよこのアホが。
「出しゃばるのがダメって言う割には俺には言うんだな、なに、この矛盾は。
おっちゃん、原因作った奴より俺の方が悪いと考えてるから殴りかかって来たのか? どうよ」
「そうじゃない、そうじゃないが」
くそ、だんだんイライラして来たぞこの野郎。
「へぇ、そんな適当な事で人を殴るのか。それも、実情を全て理解してますと言った体で、実際は中途半端の分かったつもりですってか。
いい加減にさらせよ、調子こいて説教か? きちんと把握したうえで言えよこの馬鹿!」
「確かに事情を完全に把握はしていなかったかもしれんが、お前の事を心配してだな」
「へぇ、心配してたら相手を殴っていいんですか。
そもそも馬鹿やらかした奴を放置してするべき事じゃないよな。それとも、この程度すら理解できないか?」
「理解も何も、そんな極端に考えずとも良いだろう」
話にならんな、極端な考えに持って行かなきゃならない状態に追い込んだのはあの馬鹿なのを理解してない。ここの武器屋ともお別れだな。
「はぁ、俺もおっちゃんの考えが理解できないよ。
家にいると言っても缶詰じゃないだろうから外は歩けるだろうし妥協点はあるよ。
次のスキルで金稼げは完全に俺依存でしょ、俺のスキルで物を作って販売する。それって金を生み出す道具扱いだよね。
次の常識は必要無いって何だよ、人様に迷惑かける存在でも構わないとか親の言うセリフか。
学校費用は自分で工面すると言ってるのに行かせないとか、そもそも親失格。
勉強は必要無いって論外だよ。
それで本当に妥協点を探せってふざけてんの? おっちゃんも最悪だな、見損なったよ、さいなら、もう二度と来ない」
「……」
外に出て大声で叫んでやった。
「最悪なクソ親父だな! さっさと潰れろボロ武器屋! 事情も知らんくせに殴りかかって来るとか最低だぞ!」
何よあの子あんな事叫んで、どんな武器屋なのかしらね、あれは相当よ。下手に関わらない方が良いわ。ボロイのか、なら行かなくて良いな。店から反論に出て来ないぞ、本当にクソなんだろ。ここの武器屋の店員は客を殴りつけるのか。
色々な声が聞こえてくる、大通りに面した店だし聞いてる人は少なくない。
さて武器屋を探さないとな。商売(魔物退治)が出来なくなるし、ギルドに行ってお姉さんに聞いてみよ。
そして魔物ハンターギルドへと戻って来た。
この時間はハンターたちもごく僅かにいるのみ。並ばずに済むのは良いな、朝もこんなだったら良いのに。
「お姉さん、情報が欲しいの、西の武器屋さんに行けなくなっちゃた」
「あのねぇ。今度は何をやらかして来たのよ、言ってみなさい」
ため息つきながら、げんなりした表情で訪ねて来る。
「うちの親の知り合いでさ、俺の元兄が行って事情を話してたんだよ。
それで極端な結論を出さずに妥協点を探せって説教されちゃた。ついでに殴りかかって来たよ」
「それはテリの事を心配して言ってくれてるんでしょ、でも殴るのは論外ね、それで反撃したの?」
俺が反撃したら相手はド素人だから心配してるのだろう。
「反撃はしてないよ。
その後が問題なんだよ、家にいろは何とか妥協はできるんだけど、一般常識は必要無いとか、お前はスキルで金稼いでろとか、勉強するな、学校行くなとか、妥協できないでしょ。
この点を突き付けてやったら黙り込んじゃった」
「はぁ。下手にテリを説教するから、言い返せないなら最初から言わなきゃいいのに、そもそもお金稼ぎってあれでしょ、どんなリスクが舞い込むか分からないのに本当に呆れるわね」
俺が売ってくれって頼んだものだから、その手段を簡単にわかったのだろう。
「それで何処か良い所ってない? 資金は金貨九枚で買える範囲で」
「話したダマスカス製品を取り扱ってる武器屋さんね。北にあるのは貴族御用達だから行けないとして、お城から南へ行くと左手に見えて来るわ、初級を脱した人たちが主に行くお店ね」
なるほど、あの店意外にもあと二軒あるのか、流石首都だな、お客のランクに合わせて商売をする。
お互いに潰しあわずに共存関係が出来上がってるのは見事だね。
ただ。あの場で俺が叫んだことにより。南に店舗を構えている武器屋に客が大量に流れたのは言うまでもない。何とかギリギリ潰れない程度には保てているようだが。時間の問題のようだ。
「ありがとうお姉さん、それじゃ行って来るよ。それと、お姉さんも謁見の時に呼ばれるから覚悟しといてね」
どういう事よと後ろで言ってるが、また後で話すからと、手をひらひらと振って後にした。
そして肝心の武器屋さんだが、結構遠かった。城まで歩いてそこから南下する事三十分ほど掛かり店舗へ入る。
「あらまぁいらっしゃい、この辺では見かけない顔ねぇ、何処のお坊ちゃんかしら」
お坊ちゃんって初めていわれたな。小僧や小童とか言われるよりはマジだが背中がむず痒い。
「うーんどう言えば良いのかな、独り立ちしてるから家族はいないよ」
「あらそうなのねぇ、人は見かけによらないとは言うけれど、君みたいな子は初めてよ坊や」
ちょっと、ガチムチ系のお兄さんなんだけど、ちょっと女性気質が混ざってるポイ、対応する言葉が柔らかくて良いとも言えるか? 実害さえ無ければだが。
お坊ちゃんからランクダウンしたか。どうでも良いが。
「お城から南の大通りに来たのが初めてだから当然だよ」
「あらそうなのね。それで、何を御所望かしら」
「今度蛙を倒しに行くの。それで刀が欲しいなと思って、予算は金貨九枚で頑丈なのをください」
「こっちよ、いらっしゃい」
黒光りする金属で作られた武器だ、ちょっと一つ鑑定してみる。
鑑定
直刀
材質:刃、ダマスカス:グリップ、トレント
価値:金貨4枚銀貨6枚
刀身75cm、グリップ25cm
武器を目の前にして腕を組み考えている。
直刀は要らないな。切れ味重視だから反りのある太刀にするか、それだと用途がなぁ、反りがあるから突きに向いておらず切り専門になってしまうし、別のにするか?
素材的には頑丈なうようだけど、やっぱり見た目的に対人戦向きじゃないよな、別のにするか……。
襲われる環境からして、対人戦も視野に入れて買っておくのが望ましんだよねぇ。
フランベルジュなら切りでも波状に噛みあえば切れ味は期待できるし、厚みもあるからガチの対人戦も問題無い。そして突きも波状の波型なので余計に傷口が広がる。
うん、刀より用途が広くて頑丈さもあるから多目的に使えそうだ。
「すいません、フランベルジュありませんか」
足から頭の先まで見られた。
「あるにはあるわねぇ。でも坊やの体格では不向きだと思うわよぉ、まぁいいわ、こちらにいらっしゃい」
あるにはあったが結構長い。短いので全体が一,二m、長くて二mか、一番短いのを早速鑑定した。
フランベルジュ
材質:刃、ダマスカス:グリップ、トレント
価値:金貨6枚。銀貨5枚
刀身:90cm、グリップ30cm
これが長さ的に一番短い、これしかないか。
振ることできますかと頼んで、店舗の裏へご案内。
鞘から引き抜き右上上段の構えから右外を回して速度を付け右下から左上への逆袈裟斬り、勢いを殺さず円に回し左から右への横なぎ、上方へ回して右上から左下への袈裟斬り、上方へ回して左上から右下への袈裟斬り、上方へ回して右から左への横なぎで終わる。
問題無いな。一気に止めて即逆斬りしなければ体への負担もなさそうだ。それを行うには体が出来ていない。
「これを頂きます、それと背中に斜めに担げるようにタスキか何かありませんか?」
「そっちはサービスしてあげる、鞘に直接肩掛け出来るように結んであげるわよ。それにしても独特の剣術ね」
体が子供なんで、振り抜いた後に逆切り込みは不可能だからね、燕返しとかは。
振り抜いた後の隙をなるべく小さくするためには円周運動が好都合なんですよ、特に重い武器だとね。
「俺は体が出来てないからね、負担を掛けない様に円を描くよう、勢いを利用すれば重いのもある程度使えるの、途中で止めるのは難しそうだけどね」
「面白いのを見せてもらったし勉強してあげる、六千二百リルでどうかしら」
「三百リルもまけくれるんだね、ありがとうございます」
「鑑定持ちのようね。まあいいわ、今後ともごひいきにね」
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装備品:ダマスカス製フランベルジュ(刃渡り90cm)
防具:ハードレザーアーマー一式
資金:3280リル(金貨3枚、銀貨2枚、銅貨8枚) 中身不明の巾着
予備武器:鉄製エストック(刃渡り40cm)、ラージシールド(小円形盾、直径30cm)、鉄の短槍(150cm)




