15:追跡者
隊長さんからアドバイスも頂いたので帰宅中である。帰宅といっても防具を受け取とるワンクッション挟んだ上でギルドに向かっている訳だが。
此方への連絡は宿を教えていないので受付をしているお姉さんに会いに行くから伝えといてくれと伝言を頂いている。
きっと騎士に関係者が混ざっていないか分からないので用心の為だろう。
アリサお姉さんの受付へ行き、調書が終った事を報告した。それと言伝を伝えて今夜重要な話があると伝えて離れるつもりだったがめっちゃ注意された。
ハンター章という身分証だが、常に見えるよう首に下げとけってさ。
思い出してみると確かに首からネックレスをするようにはめていた。武器を平然と持ち歩く存在だ、下手すると危険人物と考えられても可笑しくはない。
だが、魔物ハンターは別だ。魔物と戦う為の武器は何時も身に着けているのが当たり前の存在だ。緊急でスタンピートが起こった際はすぐに現場へ急行する事が町の安全へとつながる。だからこそ当たり前なのだ。
今の時間は半端だ、昼食は王城で馳走になったので済んでいる。だが今度の狩場へは馬車をチャーターしても移動に一時間掛かるそうで、今から行くには半端すぎる。そこで二階でで読書しとくから、終わったら迎えに来てもらう事にしたのだ。
歴史の勉強はなにぶん丸暗記なので造作もない。一冊読んで終わったので魔物図鑑を読む事に、此方ははっきり言えば絵本だな。近場に出現する魔物一覧、種族別に纏められた物、レベル順に書かれてる物など様々だ。
他にも素材図鑑だの生息地一覧など魔物に関する資料が一杯だ。
そして早く読めるように流し読みして取得したスキルがこれ<速読Lv1>
今後あまり活躍しなさそうだけどねぇ。
そんなこんなでアリサお姉さんの仕事も終わり一緒に宿へ帰還する。例のストーカーが相も変わらずいたので、捕らえる事はせずに後をつける事にする。
例の追跡者を見つけたから後を追うよ、場所次第で帰りが遅くなるから食事はしといてと銀貨一枚手渡して追跡する。
宿の前を通り過ぎて北へ行く様だ。そして北へ向かう大通りへ出て北上、そこから十字路の五つ目で右折し、直ぐに左の家と次の家との外壁の隙間に入り込み裏手から塀を乗り越え、左手のかなり広い庭付きのでっかい邸宅へと入って行った。
平たく言えば十字路から北へ五つ目、通り過ぎて右側一軒目の邸宅だ。
これはあれだな、どう見ても貴族の家だ。貴族が絡んでる事は確かだがどうするか、入る直前で捕らえてそのまま突入、これだと相手が貴族な事から下手すればこっちが御尋ね者になりかねない。
尾行してましたと言ってもしらを切られれば証拠を提示しようがないからだ。
それとも相手に食いつかせるか、今も追跡者を送り込んでる事から狙う事を諦めていないことが明白だ。
それならそれで相手が証拠を此方に持って来てくれる事にもつながる。
それとこの件を騎士に伝えるかどうかだな。確かにあのおっちゃんは信用できそう、だけどその周りは不明だ。
そちらの言伝から、貴方が犯人だと目星が付けられていますよ、と報告されては叶わない。
俺では判断が出来ないので相談する事にしたので帰路につく、夕食を済ませてないが一応顔は通しておこう。
「ただいまー、おかえりー」
「無事だった様ね、お帰り。それでどうだったの」
「特定は出来たよ、あれは確実に貴族だね。そっちは話が長くなるから食事を先に良いかな?」
「私は済ませたわ、行ってらっしゃい」
宿泊者用の食事が運ばれ、味そっちのけで掻きこみ食べて部屋に戻る。
「それじゃ説明しようか」
「はいはい、先ずはこっちね」
ポンポンと膝を叩いてる事から抱き着いて来いって事だろう、今日は汗だくにもなったからきちんと【クリーン】を掛ける事を忘れない。エチケットですので!
「まずは追跡からね。この前の通りからね…………」
説明をすると納得したような顔だった。
「はぁ、やっぱりあの事が尾を引いてたか」
「心当たりがあるんだね、話したくないならそれで良いよ。ただ、騎士が調査に取り出してるし、そこに辿り着いた場合は証言した方がスムーズに解決すると思う。
ただね、あの隊長さんは信用できると思うけど周りがそうとは限らないから、俺もこの事を話すか、それとも事を起こされてから協力を仰ぐ方が良いのか、正直判断が出来ない。
例の追跡者を利用してるから諦めてないのは確かなんだよね。どう思う?」
「そこまで調査の手が伸びたら協力するのが筋よね。
だけど後者はテリのいう通りどちらもデメリットが大きいから判断出来ないわ。
それより本当に助かっわわ、命の恩人ね、本当にありがとう」
がっしり抱かれたので顔が胸元にめり込み息が、いきがああああ! 肩を叩いてタップする、それももがいて。
「ああ、ごめんなさいね」
「ふぅふぅ……生きてるから大丈夫、だけどさ、そんな事するから立っちゃったよ」
「あら、本当ね」
触られたお返しに胸を正面から揉みまくる、大きさといい弾力といい、柔らかさといい最高だな。服の中に手を突っ込み直揉みが一番だ。
こっちもこっちで耳と尻尾をいじくられてるんだけどね。
「それも踏まえてだけどね。一つアドバイスを貰って来たんだよ、隊長さんに。
一緒に学校に来ない? その方が安全だよ、お金は問題無い。蛙倒しに行くから十日もあれば十分稼げるから大丈夫でしょ」
「確かにメイドで行く事も可能ね。少し考えさせて頂戴」
人生の分岐点になりえるからな、それは当然だだろう。
「いきなり退職すると迷惑が掛かるから伝えるのは早めにね。
別の話になるけど今日魔物図鑑見てて、今の武器だと不利だと思うから刀を買って来る」
「跳躍して来るから着地点を狙えばテリの腕なら大丈夫よ」
「いや。厄介なのが舌でね、絡み取られるのを警戒するなら切り飛ばせる武器が有利なのよ。
相手の攻撃手段を潰すのが最も安全に狩る秘訣だからね」
そう、フロッグの事も書いてあったのだ。体長の一、五倍ほどに舌を伸ばせる様なのだ。跳躍しながらでも同時に操作可能なら着地点を狙う俺の方に攻撃をして来る事も考えられる。その場合、更に避ける行為が必要になる為に時間が余計に必要そうなのだ。
それに対処できる最善手は切れ味の良い武器で舌を切り飛ばす事、叩き切りでは無く引き切りで最高の切れ味が出る刀がもっとも相応しい。
対人戦でガチの切り合いならば、材質次第では刀だと欠けやすく折れやすい為に、地力の差が必要になる。これは武器同士を当てれば剣と比べて耐久力に劣るからだ。その場合は別の武器を買えば解決する。
用途次第で選ばないとね、折角のスキルだし。
「それなら買った方が良いわね。勝つ事は可能でも有利になると分かってるなら選択しない手は無いわ」
そうだろうとも。有利不利で命の奪い合いなのだ。有利となる事がわかっているのに揃えない馬鹿はいない。
「もう少し固い材質の武器を買おうかな。今日思ったけど、細い武器だから正面で切り合うのは怖いんだよね」
ぽっきり折れたらそのまま切られる感じがして……。
「それなら買える限界はダマスカスね。そうね、値段は三千リルから八千リルは必要ね」
一本なら何とか買えそうだな。先行投資と考えれば損のない選択だ。
「結構張るね、仕方ないか、今回は刀一本にしとく」
馬車のチャーターが幾らほど掛かるのか分からない現状だと使い切るって選択肢はありえない。
王都の周囲で少し狩れば確保は容易だとは思うが、その手間は省きたいからな。
「決めたのなら寝るわよ。ランタンの燃料も高いんだから」
まあね。売ってたから値段は分かりますです。
MPがほぼ満タンなのでマジックバッグ、収納Lv二を一つ作り素っ裸で就寝した。もちろん抱き着いて。抱き着いてるのはアリサの方だが。俺は抱き枕代わりになっている。
そして完全に町全体が寝静まり、朝まで二時間程度か、という時間帯に宿で眠る俺たちを狙う暗殺者集団がやって来た。




