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13:暗殺集団

 魔物ギルド受付嬢であるアリサと暮らすようになった翌日の早朝。

 宿屋で寝ていた訳だが、お姉さんに叩き起こされて身支度をしてる最中だ。

 窓から外を見ても薄暗く、まだ日が昇っていない。そんな時間である。

 昨日俺たち二人を尾行していた者が、すでに宿の入り口を確認できる位置にて待ち構えているのが俺のスキルで正確に見て取れた。

 今だ、どちらが尾行されていたのかはっきりとは鑑別出来てはいない。

 いないが、俺が対象であったとした場合。尾行者ではなく元家族が直接宿屋に乗り込んで来る事は想像に難く無く、この線は低い。

 であれば対象はアリサお姉さんだという事が濃厚だ。

 外で名前を出すな、こう言ってる事から相当に警戒してる事が窺える。では、何から身を隠しているのか、そこが疑問となる。

 この場で追及する気はない、する気は無いが俺の面倒を見るという選択肢をしてくれた恩人だ。忠告もするが、可能な限り助けるのは俺の中では決定事項だ。宿屋の一階にある食堂に行く前に伝える事にした。

 それだけでは緊張させるだけだろう。なので、一つ別の話題も振るのだ。


「お姉さん、ちょっと注意するようにね、昨日の奴がすでに張り込んでる」

「何でそんな事わかるのよ」

「うーん、ざっくり言ったら魔力の質かな。尾行してた奴とまるっきり同じなんだよね。

 それは兎も角、これ、ギルドで買い取ってもらえる?」


 と、昨日作ったマジックバッグ(豚皮製)を手渡した。

 お姉さん経由で売る方が手間が省けるしね。


「バッグ……では無さそうね。マジックバッグ……もしかして雑貨店を探したのってこれの為?」

 手を突っ込んでみれば直ぐに判別が可能だ。なんせ見た目以上に手が入りますから。

「正解、流石お姉さん」

 イラっときたのか。俺の顔を自分の方へ向けるべく両手で固定して説教されたのだった。

「……テリはもう少し常識を学びなさい! 子供のあんたがこんな物売り払ったらトラブルを引き付けるようなものよ。そんなに注目されたい?」

 簡単に稼げると思ったらやばかったのか……ごめんよお姉さん……。

「……そ、そかもね。それはやるよ、俺はスキルがあるから不要だし」

「はぁ。あのね、また常識はずれな事を言ってる自覚ある? 無いよね?

 これはテリが使いなさい。手ぶらで何も持たずに狩場に行ってごらんなさい。収納スキル持ちですって宣伝して歩いてる状態なのよ。それよりも、これを持ってる方がマシなの。わかった?」

「わかった。確実に」


 スキルの偽装の為にマジックバッグを使用する、そういう事ですね。

 物よりスキルの方を隠す必要性が高いと。

 言っている意味は分かった。物であれば奪われて終わるが、人の場合だと攫われるリスクが付いて回る。

 説明するまでも無いだろうな、俺は現在僅か九歳だ。実力以前の問題で、知った相手がどうでるのか。そこが問題だからだ。


「時々頭が良いのか悪いのか分からなくなるわね、本当に常識が抜け落ちてるわ。

 恋人だって言うのならこの辺り本当に考えてみようかしら……」

 最後の後半は何とか聞き取れた。ここは分からないふりして突っ込んでみようか、今回は紳士さんの出番では無い。

「お姉さん、何か言った?」

「いいえ何も。そろそろ食事に行くわよ、私が遅刻になるわ」


 バッグは肩掛けにして食堂へ、今日の朝食はパンに野菜たっぷりのスープと目玉焼きだ。ただ、醤油じゃなくて塩だな。そもそも醤油は見た事が無いが。

 例のストーカーは宿からさらに北の位置から俺たちの後を追って来ている。そして十字路に差し掛かって来た所で、隣のアリサを狙った矢が右方向の頭上から襲って来た。

 屋根の上に反応があるものだから注意していたのだ。普通は屋根の上に登らないからね、特段屋根の修理をする必要があるにしても日が昇った直後の様な早朝からはしないもんだ。それもたった一人では。


「ふざけるな!」


 叫びながらジャンプしてマジックバッグに収納できる様にバッグの口を開けてキャッチ、お返しに無詠唱の【ウインドスラッシュ】をプレゼントしてやった。

 そいつは一応命拾いしたようだ。放った直後に直ぐに逃げの態勢へ移ったから死なずに済んだ。

 頭の上部をすっぱりと切断したがね。円形に頭の皮を切り飛ばされ、皿を斜めに被った河童の出で立ちになったのだった。

 それを確認した後ろのストーカーだが捕らえても何の証拠もないので泳がす事にした。

 回収した矢を取り出して鑑定してみた。


 鑑定

 ヒュドラの毒矢

 素材:鉄、木、コカトリスの羽根、ヒュドラの毒

 価値:金貨12枚

 ヒュドラの毒袋より精製されし毒を塗り乾燥させた特性の矢、体内に入れば三十分で死亡する。


 めちゃくちゃ物騒だな。殺す気満々かよ、これは報復必須だな。

 お姉さんをさっさと送った後にとっつかまえに行って突き出してやらないとな。


「テリ、どうしたのよ突然……どうしたのその矢」


「説明は後。今は急いでギルドに送り届けたら捕まえに行って来る。走れ!」


 スキル収納に確保してアリサの真後ろに張り付き疾走する。送り届けた後、ギルドの中ならハンターだらけなので安全だろうと判断して即座に取って返す。

 縮地も使用して短時間で現場に戻ると弓を射た奴がギリギリ探知範囲に入る。

 屋根伝いに逃げているようだが縮地を利用すれば此方が早い。

 三つ目の交差点から暗殺者は通りに降りて南下、このまま追いかければばれる恐れがあるので気配遮断と魔力操作を全開にし、盾と特注エストックを抜き身の状態で装備して更に距離を詰める。

 何にせよこいつはあのまま全速力で逃げているようだ。それならば通った周辺に証拠物を隠した、もしくは今も持っている可能性が高い。それに、切り飛ばした頭皮はあの場に落ちてるだろう、切られてそのまま逃げだしたからな。

 そもそもこの逃げている方向から、昨日特定した家に逃げ込むのだろう。

 そういう訳で、こいつを取り押さえるタイミングは例の家のドアを開けた瞬間だ。

 早くてはあの家の中にいる奴を釣りだせない。遅くては中にいる奴に報告される。その為に絶妙なタイミングがドアを開けた瞬間、その一瞬しかない。

 今は早朝、出勤ラッシュ時間とも言える。食材屋側を全力で進み、追い越して何でもない様に逃亡者が一秒程度早く扉に着けるよう調整をする。

 そして逃亡者が扉を開けた所を後ろから横殴りのシールドバッシュを横っ面に食らわせる。勿論手加減をしてだ。

 見事に意識を消し飛ばす事に成功した。

 この男、見事に頭の皮が切れてるな。とりあえず鑑定か。


 カイン

 レベル:17

 年齢:23歳

 種族:犬人族

 状態:昏倒、流血

 HP:52/209

 MP:113


 結構若いのに道を踏み外してるのか。ご愁傷様だが、お姉さんを狙った時点でお前は最大の失敗を犯した訳だ。


「おいおい、あんた何やってるんだ……って子供!」

 これは丁度良いな、ぜひ手伝ってもらおうか。出勤途中だと思いますがすみませんねぇ。

「丁度良いな。騎士を呼んでくれ、魔物ハンターギルドの職員が命を狙われた。それで追いかけて来て捕らえたんだ。頼めるか?」

「そ、そうか。向かいの店に知り合いがいるから見てくれるように言っておく」

 ちょっとへっぴり腰だが。相手をここにやるつもりは無く。全員屋敷内で無力化するつもりだから大丈夫だろう。

「この家に逃げ込もうとしてたからな、仲間がいるだろ。踏み込むから後は任せたい」

「聞いたな! 力のある奴は手伝ってやってくれ!」


 こいつの持ち物を取られない様にしてくれるだけで良いのだが、まあ良いか。五人ほど建物内にいるようだし。つーか、この騒ぎで逃げ出そうとしてるし、さっさと行くか。

 先ずは一階にいる奴からと家へ入り込み、窓を開けて片足を外に出してる場面に遭遇した。盾の角でぶん殴り気絶させた。

 玄関脇の階段を上がると二人で待ち伏せして通せんぼ状態だ。勿論フル装備とはいかず、防具無しの武器だけ、それも片手剣。

 何者だとか聞いて来るが当然無視する。二人相手は面倒なので【ウインドスラッシュ】で右側の奴の武器を持ってる腕を切り飛ばし、左の奴には縮地を利用して接近しながら盾で片手剣を跳ね上げ右足の太腿を突き刺して怯んだ所を盾で殴り飛ばす。そして右の奴も同じく殴り飛ばす。

 扉を蹴り飛ばし部屋へ侵入すると、二人でせっせとハサミで切り証拠隠滅を図っている最中だった。羊皮紙だから手じゃ破れないわなあ。それにこの世界、魔術でも使わなければ火を起こすのにひと手間かかる。

 そもそも部屋の中で燃やす訳にはいかないが。

 ハサミしか持っていないので超楽勝。縮地で距離を詰めると手に持ったハサミで突き刺そうとして来るがシールドバッシュで手を複雑骨折にして先ほどと同じく盾でぶん殴って終わりだ。

 そして証拠隠滅していた羊皮紙を見てみると、誰々が、何時ごろ何処を通過、と対象の行動記録だった。言うなれば襲いやすい位置を何時通るのか検証し、確実な日時を特定していた証拠品だったのだ。

 俺、拘束用のロープを持ってないんだよね、それじゃ騎士が来るまで待つのかってのも面倒だ。何時目を覚ますのか分からないし、ここはどうするのが良いのか。

 悩むまでも無く簡単だ、盾と剣をしまい込み二人の脚を掴んで引きずって外へ出る。ま、死ななきゃいいでしょとこれを実行する。

 階段だがどうでも良い、罪人に人権など無いのだよ。

 その中の一名、腕を切り飛ばしてるので出血多量で死にかねないので止血代わりに【ヒール】を一回掛けておいた。そして漏れなく全員を外へ引っ張り出した所で騎士が来てくれた。


「確か子供が犯人らしき人物を盾で殴り倒して確保していると聞いたが、坊主か?」

 しかし、坊主率高いなぁ、会う人会う人言われてる気がする。まぁ、ガキには違いないのだが。

 もうちょっとこう、言い方がね、少年とか言ってほしいもんだよね、ジャリと言われるよりはましだけども釈然とはしないわなぁ。

「そうだよ騎士のおっちゃん、頭が剥げてる奴が殺そうとした実行犯ね。他の奴は、実行犯が逃げ込んでる所に住んでた奴だよ、証拠は二階にある。俺が突入した時にはせっせと証拠隠滅してたよ」

「聞いたな、拘束する奴を除いてガサ入れしろ、壁も床も天井もボロボロになって構わん、根こそぎ調査しろ。

 なかなかの手際だな、年端もいかない子供じゃなかったら勧誘してた所だ、名前は?」

 勧誘って、騎士にって事だよね……謹んでお断りさせて頂きます!

「テリストだよ、ただのテリスト。昨日魔物ハンターギルドの試験を受けたから、今日が身分証の発行なんだ。それで身分証は今は持ち合わせてないの」

「テリストには事情を聴く必要がある。協力してくれるな? それとギルドに一緒に行くか、ま、確認の為にな」

「了解だよおっちゃん、それで、こいつが使った武器を持ってるんだよ、今この場で渡す方が良い? かなり物騒な品なんだけど」

 一掠りで死んじゃいますからねぇ。


「物騒な品ならこの場は避けるべきだな、後程来てもらった時で良い」

「わかったよ。それで、この頭の皮を切り飛ばしたんだけど、襲った現場にきっと落ちてるよ。証拠品に回収しとく?」

「証拠は一つでも多い方が良いな、回収はこちらでする。場所を教えてくれ」

「魔物ハンターギルドから西に向かって一個目の十字路を通り過ぎて、右側一つ目の建物。その屋上だよ」

「屋根上って事は……傷口から風魔術で切ったのか。一人屋敷の調査員から派遣しとけ、俺はテリストとギルド経由で戻る」

「隊長、了解です!」


 マジックバッグに武器を入れといたが良かったか、今は中身が空だし、矢を渡す際に移動させないと駄目だな、今ガサゴソすると変に思われる。

 ギルドへの道は俺が先を歩く事に、背が低い俺が前の方が何かと護衛の意味も含めて好都合の様だ。

 あ、忘れてた、あいつの仲間らしいのが一人いるんだった。

「ごめんごめんおっちゃん、一つ忘れてたよ」

「ん? 何をだ?」

「今から行くギルドに狙われた人がいるんだけど、その通勤途中で襲われたんだけどね。

 ずっと監視してた奴がその時もいたんだよ、失敗した事を知ってから北に逃げたんだけどね。証拠が何もないからそのまま放置したよ。あいつらから聞き出してね」

「ほう、そこまで気が付いていたのか。なぜそいつが一味だと思ってるんだ?」

「昨日夕方に宿屋に向かってたんだけど、そいつに監視されてる事に気が付いてね。俺たちが宿に着くと離れて行ったの、それを逆に追跡したらさっきの家に入った訳。さっきの襲った奴があの家に入ったから確実に仲間だよね」

「それは確実に仲間だな。留意しておこう」


 そんな話をしながらも魔物ハンターギルドに到着して、アリサお姉さんに話しかける訳だけど、騎士を連れて行っても大丈夫よね。ま、行くしかないんだけど。

 騎士を見たらすぐに納得するでしょ、頭の切れる人だし。

 そんな感じで入ったのだが、それはもう混雑しまくりで受付に長蛇の列が……。

 後から聞いたが、前日に受付、翌日朝に依頼の張り出しらしく、割の良い仕事を探すなら朝一番じゃなきゃダメだと全員が分かってるらしく、そりゃもう、その日に仕事するぞって人が集中する訳で、最悪の状態になるのは必然だなと思ったものだ。

 騎士と言えども割って入る訳にもいかず、お姉さんの列に並ぶ事四十分弱、やっと出番が回って来た。当然の如く後ろは長蛇の列だ。


「ごめんお姉さん。今朝の件で此方の騎士さんに協力してもらったの」

「すみませんな。この子のハンター章が今日発行されるとお聞きしたので、こうして同行させて頂いてます」

「左様ですか。確かに今日発行する事となっております、少しお待ちください」

 二分ほど席を外し、戻って来たお姉さんから銀色の板をぶら下げたネックレス? を手渡された。

「ほう、すごいですな、それほどの逸材ですか。年端もいかぬと言うのに。六人も一人で無力化した実力は本物の様ですな」

「昨日の模擬試合で試験官と互角でした。文句なくBランクです」

「ほう、話し込むと迷惑ですな、ですが一つだけ確認を。被害者ですかな?」

「ええ、その子がいなければ死んでいました」

「ご協力に感謝を、この子の調書で完結するとは思いますが、何かあれば伺うかもしれませんので、その時は良しなに」

「それじゃお姉さん。終わり次第報告に来るよ」

 


 


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