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12:追跡者

 軽くシチューだけを食べてお出かけだ。と言うより子供服なんて、死ぬ前でも自分で選んだ記憶が無いのですが。

 お店にいた店員さんに丸投げして二着分購入した。下着も同じく、資金をがっつり稼ぐべく雑貨屋さんを探して回る。勿論捨てた家では無く別の店を。

 言い忘れていたが中心部には高さ十mを越える様なでっかい城が建っている。城を中心に十字に大通りが通り、円を描くように幅の狭い道が何本も通っている。

 そんな地理なので中々に見つけずらいのだ、仕方が無いので通行人に訪ねて行くのだった。

 空スロット付きのノーマルバッグを纏めて十個ばかり購入して一つに付与してみた。当然Lv一の品だ。そしてこれがその鑑定結果。


 マジックバッグ

 素材:オーク皮

 収納量:10,89㎥

 価値:金貨54枚銀貨4枚銅貨5枚

 【収納Lv1】


 この付与でMPが五十飛んだ。時間が経ち少しは回復したが、本当にこれで打ち止め。

 さて、俺は何処を歩いたでしょうか?

 いろんな道を探して回り、道を聞いて向かった事から完全に迷子になったのだ。

 それで対策は今まで見えていたお城を思い出して大通りを特定する事だ。これで無事に魔物ハンターギルドへ到着したのだがすでに夕方であった。

 待たせたみたいで中へ入ると腕を組んで仁王立ちしていたのだ。


「遅いわよ! 何処ほっつき歩いてたの!」

 かなりのハンターたちがいる中で説教されたのだった。

「雑貨店を探してたら迷子になったの、ごめんなさい」

「あー、実家には行けないのか、それは災難だったわね。それじゃ帰りましょうか」

「あい」


 場所はギルドから近かった。ギルドから西へ、そこから一つ目の十字路から北へ入り左に見える一つ目の宿で木造三階建てだ。

 が、ギルドを出てからずっと一定距離を保ちこちらを伺っている者がいた。

 そして宿に入る事が確認できる場所で止まり、宿に入ると遠ざかって行く。


「お姉さん。俺たちのどちらか分からないけど尾行されてたね、心当たり無い?」

「無い、事も無い。でもテリかも知れないでしょ」

 おや、呼び方が変わったか、親しみを込めて? 言ってくれてるのなら幸いだな。

「心当たりねぇ、家を出た俺を探して、魔物関連から行く場所も限られてる。可能性あるね。

 とりあえずこれで料金を払っといて、お店の人に何と聞けばお姉さんの部屋に案内してもらえる?」

 銀貨一枚受け取りながら。

「そうね、テリが来たら案内してと頼んでおくわ」

 アリサお姉さんの名前を出さずに部屋までご案内か、徹底してるんだな。

「了解。ちょっくら行って来る」


 もう少し離れられると探知外に出られるので急いで追いかける。勿論察知されない様にしてだ。

 あちらと違って目線で追う必要が無いのでじっくり道順を覚えながら尾行できた。

 場所は南西区とでも言えば良いか。魔物ハンターギルドから西へ行く事十字路の三つ目を南下、右手にある二階建ての木造建築物だ。真向かいに食料品店があったので覚えるのも容易かった。

 そのまま対象の家を通り過ぎて次の道を左へ、次の道を左へ、そして大通りへ出て右へ、そこまで行けば迷う事は無かった。

 宿で店員さんにテリですと伝えると直ぐに案内してくれた。


「ただいまー、おかえりー」

「それ、一部私のセリフよ。それでどうだったの?」

 アリサはソファーで寛いでいる為、俺を手招きしながら答えている。それにならい隣に座って答えるのだ。

「場所は特定できたよ。魔物ハンターギルドから西へ十字路の三つ目を南下、食料品店の真向かい。入るまで間があったから確認でもしてたんでしょ」

「その辺りに顔見知りは居いないわね」

 悩みながらもそう答えたアリサ。当然ながら俺にも全く心当たりなどない。

「何かされたらそこが一番怪しいって事で良いでしょ、それより待たせちゃったね、食事に行こ」

「食べる前に手位は洗いなさい」

 まぁ正論なんだけどね、母親みたいだよそれ。

 記憶無くしたって設定だけど、食事毎に言われたし。


「そうだね【クリーン】 お姉さんにも【クリーン】 これでいいね」

「どれだけ便利なのよ」

 この生活魔法だが、帝国では教わっていない。ではどうやって覚えたのかと言えば、ポーション作成で頻繁に掛けられるものだから勝手に覚えてしまったのだ。

 生活魔法には老廃物や汚れの除去をするクリーンと、火種を作る事、微風を吹かせる事、少量の水を出す事の四つがセットになった生活便利魔法なのだ。

「まぁ、これだけとしか答えようが無いけど」

「詳しい予定は後程聞くとして行きましょう」


 流石専門家、家の食事より美味しかった。パンも高級品らしく、そのまま噛みついても歯は無事だった。一泊1万円換算だと思えは当然といえば当然か。

 あの帝国産のパンは粗悪品らしい。それとも、俺の食事だけ質が悪かったのかもしれないな。

 帝国はやっぱり腐ってるな。人攫い、監禁、拷問、戦闘強制、捨て駒と、すでに人命すら尊重せず体の盾として使い潰す極悪国家だ。やっぱり助けるか潰すかしたい所だよなぁ。

 残ってたら残ってたで常時死に直面しても可笑しくない使われ方を強要される訳で、常に死が付きまとう。

 それを考えれば今の俺は幸せかもな。そもそも戦争に行かせる事を前提としてる分、かなり、いや、最悪としか言いようがない訳だしね。


 食事を済ませて部屋に戻ると話しかけられた、アリサはソファーに座ってる訳だが。


「ちょっとここに座りなさい」

「んじゃ遠慮なく」

 座った先はアリサの膝の上、それはもう容赦なく体重を預けるのだった。

 バインバインの胸が心地よい弾力を生み出し至高のひと時である。

 ずり下がり、首元に来るように調整とおまけつきだ。

 のだが。アリサはなんと、俺の耳をいじくり出し、何も言えないほどムズムズするのだが話をするのだ。


「それで学校だったわね、何処まで聞いてるの?」

「十歳で受験可能。六年、五年、一年の学校があって、それぞれ行ける身分と白金貨三枚とかの学費。成績優秀者は無料。一年の学校は特殊で無料だけどギルド加入が義務で五年間の活動も義務とか? 後は試験内容の大枠かな、実技と筆記。俺は五年の学校に行く予定だよ」

 聞いたのはこれ位かな。試験受付や試験会場が何処なのかまでは把握していない。

「大枠だけの説明を受けたのね。今も準備してるようだけれど戦闘関連の実技試験は問題無く合格ね。

 後は魔術を鍛えて国の歴史を丸暗記。後計算は出来るの?」

「計算は得意だよ。元実家に新しい集計の方法を教えて来た」

「何よそれ、もっと詳しく」


 やっぱり気になるのか。あれほど詳しく話さなくても大丈夫でしょ、ザックリいきましょうかね。

 素材買取や仕事の報酬を手渡す立場なら数字にも強いはずだし、それを考えると何処の店でも売り子になれるな。やっぱり優秀だわこのお姉さん。

 なんせ計算するための道具が無いからな、全部基本的に暗算だし、ここはひとつ原始的にソロバンでも製作するか? たぶん売れると思う。


「簡単だよ、一日通しての集計とは別に、商品毎の売り上げも同時進行で計算していくの。

 商品の方を最後に足せば間違いないなら合致するでしょ。

 月の総まとめは三十日分をそれぞれ足して終わり。

 年単位の集計が必要なら十二ヵ月分を足せばそれで終わり。

 ざっくばらんだけど簡単だよ」

「そ、そうね。その時は忙しそうだけど後がかなり楽ね、そのやり方。

 脱線したわね。知ってると思うけど年が明ければ自動的に生まれた日では無く齢が増えるわ、だからテリも問題無く受けられる。

 そして受験の申請だけど一月二週の十日間よ。翌週の三週一日に試験ね、先に実技よ。そちらの方が時間が掛からないからね。

 そして問題なのは費用よ。受験の申請時に一割払う必要があるわ。五年のだから金貨十枚、一万リルね。

 そして合格発表が同四週五日に王城前に張り出されるわ。この時点で残りの全額を払うの、特待生なら逆に金貨十枚を払い戻しね。

 そして二月一週一日に入学式。

 最後に受付は王城入り口ね、試験も王城であるわ。言っておくけど試験内容は貴族と一般は別内容よ。貴族枠はかなり試験が緩いわ」

 貴族には国を背負う立場として勉学に励んでもらう必要がある。馬鹿では役に立たないからだ。そこで勉学に励む場を提供するのだが、そこはなるべく合格させなければならない。その為に試験内容も一般と比べ簡単なのだ。


「丸々二月あれば十分か。受験資金はほとんど足りてるから、残りは一日で稼げる金額だし。このペースなら十二日間あれば費用の全額は確保出来るかな」

 そもそも、帰りに作ったマジックバッグを一個売り払うと受験代金支払ってもお釣りがくるんですけどね。

「え? 正味たったの二日よね。それに今日はあれだったし、それでそんなに稼いだの、よね」

 驚いたのか、耳をいじくる手が止まってしまった。

「まぁ、初日は二時間程度しか狩れなかったからね。二日目で百匹以上倒したから全部で金貨十枚分は稼げてる」

 しかし。一般的な人たちって、一日にどの程度倒すんだろうね。これまた答えの出ない問題か、考えるだけ無駄だな。

「あ、あのね。五人程度のPTで狩りをしても精々十数匹が限度よ、どんな狩の仕方をしてるのよ」


 たったのそれだけなのか、ちょっと拍子抜けだな。いや、敵の位置を粗方調べるスキルが無ければ無理なのか? それを考えれば警戒するのもそれほど神経使わないし楽なんだろうな。

 そのおかげで、最短距離で次々に倒せるから他人から見たら俺って異端かも?

 まあいい、普通なら話さないところだな。手の内晒すのは遇の骨頂ってね、だけどここまで親身になってくれてるお姉さん相手なら大丈夫だ。


「今使ってる武器は短槍と盾にエストックね。相手の弱点が丸わかりだから全部一撃だし、そもそも気配探知と魔力探知があるから探す手間が大幅に軽減されるんで、ある意味狩り放題?」

「一歩譲って尾行に気が付くほどだから場所が分かるのは良いけど。一撃って何処を狙ってるのよ」

「まず犬と猫ね。俺は刺す武器しか持ってないんで突き刺す訳だけど、弱点は口、鼻、目だね。あいつらジャンプして噛みつこうとするから口開けるでしょ、刺してくれって口を開けてくれるから特に狙いやすいね。柔らかいから刺せば奥まで貫通するよ。あと、犬ならシールドバッシュだけで倒せる。

 次はゴブだけど、こっちは目か喉を突き刺すだけ。

 芋虫はジャンプして来るから、わざと近寄ってジャンプを誘発、そこを刺すだけ。以上だね」

「それをレベルが一桁の頃から?」

「そうだね、最初の武器が短槍で結構リーチがあるから簡単だった。傷一つ負わなかったし」

「ま、それはそれで理解出来たわ」

「それは何よりです」


「それよりも本当に記憶を無くしてるのね」

 これと言って何もそれらしい会話もしてなかったよな……なんでそうなるんだ?

「ん? なんで?」

「今の状態がそうなのよ。猫人族は例え家族でも相当に親しい人にしか耳や尻尾を触らせないの。

 特に血の繋がりのない他人となれば更にハードルが上がるわ、結婚を意識してないと触らせないほどにね。

 種族としての尊厳とも言えるわね、それを平然と触らせている。その種族の尊厳すら忘れているのよ」

 なるほど……ある意味知らなくて良かったのかも知れないが、助かった部分もある訳ね。一応記憶があるのか確認してたと、今回はいい意味だったけど、逆だったら大変な事に……触られるのが趣味みたいな種族ならもっとーもっとーだろうし、そうであれば記憶が有るのか? と警戒されてるはず。

 それは兎に角、一応警戒はしてたのか。関心関心!

「そう言われてもねぇ、元々知らないのか忘れてるのかすら分からないので反応のしようが無いと言いますか。と言う事は、最低でも恋人関係の行為をしてる訳だ。よね?」

 ここ、最重要なので確認しました。

「確かにそう言えるわね」

 ふふん、それなら恋人としてお姉さんを扱って良い訳だよな。そもそもお姉さんがそれ相応の事をしてきてる訳だし。それを逆手に取らないって手はない! 引っ込んでろ紳士君!


「ちょっとストップね」

 止めさせて立ち上がり反対を向いて座りなおす。そして身を預けて胸にめり込む。

「あんた、何してるのよ」

 そりゃそうだ、上に書いてる様に反対に向き直すとお互いに向き合うのだし、抱き着いた形だし。

 ついでに顔を当ててスリスリしてるし。

 柔らかさといい弾力といい匂いといい、何重に幸福なんでしょ。

「大丈夫。恋人だから問題無い」


「……本気なの?」

「確かに記憶なくしてはいるけど、気安く言えるほど図太くないと思ってるよ」

「それで、理由は?」

「色々あるね、一目見た時からこの人良いなって思ったのが最初。もうちょと俺が齢取ってればなぁと思たよ。

 それで二度目があれでしょ、他人事なのに色々と親身になって接してもらって余計に懐いた。

 そして最後が今の状態」

「それなら良いわ」


 そしてがっしりと抱きしめられて就寝した。

 翌朝叩き起こされたが……もう少しだね、やさしく起こしてほしいのだよ……。

 

____________________________


 資金:9、580リル(金貨9枚、銀貨5枚、銅貨8枚)



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