104:伝授
セントラルまで同行した俺たちはオウカを送り出した後ヤヨイは皇宮へ、俺達はヴァルサルの元を訪ねたのだった。
「(コンコンコン)お早うございますヴァルサル様。テリストです」
(おー。ようやっと来おったな、待ちくたびれて死にそうじゃったぞ。玄関は開いておる、入ってまいれ)
ガチャッと開けてずんずんと入る。
「すみませんでした。体が馴染めませんで、その事もあってオウカを鍛えてましたのでお時間を頂きました。彼は今朝、出立しました」
「わかっておる、本来の体の持ち主じゃて。さて、此処からは本題といこうかのう。
魔導書を現代語に訳す作業と同時進行で複写しておると聞いておるからの、理論などは説明せん。それは魔導書を読むがええ、そちらが確実じゃからの。
教えるのは一つだけじゃ【時空よ還元し、時を斬り裂け、ディメンションカッター】
言っておくがここで使うのは禁止じゃ。慣れておらぬうちは飛距離の制御ができんだろう、それでは危険じゃからな。効果は至ってシンプルじゃ。風魔術にウィンドスラシュがあるじゃろ、あれを恐ろしく強化した強化版と思ってくれればええ。注意するのは飛距離で消費する魔力が変わって来る事じゃ、それだけじゃな」
それなら慣れてるからうってつけだな。後は検証作業をするだけか。
「確かにシンプルですね。後は魔力操作がいかに正確か、その一点のみですか」
「消費に対する飛距離の把握を怠らぬ事じゃ、これを把握せんとMP枯渇で気絶じゃな。それと要件はもう一つ。
スキルレベルが九になれば【ディメンションタイム】が使える様になる。
平たく言えば個人の時間を加速も逆行も停滞も可能じゃな。さてどうするかテリスト殿よ」
何だか化け物染みた魔術だな、加速って事は早く老ける、逆行は若返る、停滞は現時点で止めるって事だよな。
性能良すぎだろ、それなら伝承者が少ないってあり得なく無いか? 寿命で死なないんだし。
「え、えとですね。何とか理解は出来ましたが、腑に落ちないと言いますか、それなら継承されてる方が大勢いるのでは?」
「なんじゃ其処まで聞いておらぬのか。
獣王国が危険視した為に攻め込んで来たのじゃよ。そのせいで徹底的に術者が狙われた。そういう事じゃな。
儂なら使えるからの、希望の年齢に上げる事も下げる事も停止させる事も可能じゃぞ。希望は有るかの?」
今の俺は精神年齢と肉体年齢がバラバラだからな。選択肢としては年取って十八のはずだし、お願いすることも吝かではないが、嫁さんがいる次点で俺だけの問題じゃない。とてもじゃないけど現時点では決められないな。
「……」
「御主人。上げて頂いては如何ですか、本来であれば召喚時に十七歳であれば現在は十八歳のはずです」
「決断するのは早いわよ。何か影響はないの?」
「少しじゃがあるの、生活の仕方次第で成長が変わる。若干背の高さが上下する事があるの。
今話しておった本来の十八歳に近づけば近づくほどブレは無くなるがの」
確かに、極貧生活してたら栄養足りずに成長を妨げる。そんな理屈なんだろうな。
それならいっそ全員十八に引き上げてもらうか? 確か、カーラは今十三歳だっけ? それで結婚するには早いしな。いや、もう一つ問題があったな。
「質問が有りますけども、それって年齢を上げて妊娠したらどうなるんですか? お腹の子供にめっちゃ影響でませんか?」
「なんじゃ完全には理解できておらんの、儂は個人と説明したのじゃよ。妊娠して二つの命となれば個人とは言えん、分ったかの?」
なるほど。命を宿してる期間は全く手が出せないって解釈すれば良いのかな。それとも影響なしで本体だけなら調整が可能かもしてない、そんな所だろう。何にせよ妊娠中は魔術を掛けない選択をすれば良いだけか。
「あーなるほどなるほど。それならさ、俺も十八歳になるから全員十八歳にならないか? それとも、平均的な夫婦の年齢差に調整するか? 出来ますよね?」
「合計年齢が百歳以内なら調整してよかろう」
「テリクンは此方の常識を知りませんよね。男性より女性の年齢が高い事は稀ですよ。
そう言った事は全然気にしておられませんでしたから結婚する事が出来る。とも言えますね」
あー、アリサの例があるからな。めっちゃ姉さん女房状態だったのだし。それを考えれば年齢の差なんて微塵にも考えませんとアピールしてたって事か。
「うーん。なら俺が+八だろ、アリサが十七だっけ? -一だろ、カーラは+三、ココアはそのまま、スーシーが-二だろ、サーシャが何歳だ? -百程度か。サルーンが姉って事は-百+αだな。
数日に分けたら大丈夫ですか?」
「常識が無いとこれほど酷いのか。サーシャとサルーンは人の年齢にしたら二十歳程度じゃぞ、年齢操作など不要じゃわい」
さいですか。知りませんから教えて頂けると幸いですハイ。
「常識電々は不要ですハイ、自分が一番分かってますので。それじゃアリサ、一歳しか変わらんだろ。実験台に行って来い」
「あ、あのね、テリ。あんた私に喧嘩売ってるでしょ。選択したのなら自分から進んで行ってらっしゃい!」
「まぁ良いわ、テリスト殿からじゃな。
確かその防具は適正化されておったな、着たままで大丈夫じゃな【時空よ還元し、未来よ過去よ現在よ導け、ディメンションタイム】」
防具じゃ無いが下着が食い込みぶちぶち引き千切れながら体が拡張されて行く。
「グェ、グッ、ちょ、ちょっと待って……ぐるじい……下着が…………」
「そういえば下着があったの、忘れておったわ。そのまま引き千切れるから安心せい」
「あ、あのな……他人事だからって、そ、それは、ないだろ……」
発動したら止められないとでも言うのだろうか、無理やり完了したのだった。




