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1:プロローグ1

 現在いる場所だが部屋全体は石材か。大理石のように全体的に白く、床には召喚に使用したと思われる魔方陣らしき変なマークが掘り刻まれている。

 その中心部にいるわけだが、目覚めてみればなぜか首輪と左手に腕輪を嵌められた状態であり、周囲を多数の人によって取り囲まれていた。

 中には王族と思しき王冠をかぶり、クロークを身に着けた年齢が四十台程度の男性。

 ティアラをかぶりそれに見合ったドレスを着こむ二十台程度の女性。

 そして大半はプレートメイル、グリーブ、小手といってもいい金属製の鎧を身に纏う者たちに周囲を取り囲まれている。

 取り囲まれているのは俺だけではない。隣には友人の佐藤岳風、そして服装から同じ高校に通う女子生徒で顔は見知っているが名前を知らない二名を入れた合計四名である。


 自己紹介も含め少し話を戻そう。俺の名は安里桜嘉、現在十七歳の高校三年生、部活には入っておらず帰宅部だが、中学卒業まで父の道場で総合武器術を学んでいた。そのため体は鍛えられており贅肉はあまりない。

 それでも二年と五ヵ月ほど離れていては当時の動きを再現できるほどの力量はないが、そこいらのド素人と喧嘩をして負けるとは露ほども思っていない。

 というのも名前がおうかであり、男性、女性共に付けられる名だ。そのため、揶揄されることも少なくはなく、そこから口論になることもしばしばあった。

 もちろん物理的な攻撃は絶対にしない。武器を使う術ではあるが体の使い方は一辺倒学んでおり、それで障害沙汰となればきっかけは相手であっても罪になりかねないからだ。

 よって口喧嘩が多くなり友達は少なく、帰宅中であるが隣を歩く佐藤岳風とは近所に住む幼馴染であり、唯一の親友であった。


 二学期開始早々の帰宅途中、そろそろ進路を決めなければならない時期だが全く決めておらず、そのことで佐藤岳風とも相談しているが決めかねていた。

 そしてお互いにそちらの方向へ目線を向けていた為、二人の前方の地面にぽっかり空いた穴、それに気が付かず足を踏み入れ奈落の底へと落ちて行った。


 そして気が付けば冒頭の通りであった。

 王族の一員らしい女性が一歩前に進み現在の状況などを話し始めた。


「私は神聖帝国アルテトラス第一皇女、アルサートと申します。

 この度は、私共の勝手な都合で召喚してしまい申し訳ありません。

 そして、重ね重ねせではございますが、現在、皆様方に話を聞いて頂くために行動の制限をさせて頂いています。

 このご説明が終わり次第、拘束はお外しします」


 その地位に似つかわしくないほど深々と頭を下げ謝罪された。


 あの突然足元に空いた穴、俺たちを攫った本人が目の前にいる。

 説明にもあった召喚という言葉だが、服装といい武装してる者たちといい、現代世界ではありえない格好だ。嫌でも異世界だと認識させられる。

 家族に連絡もなしで拉致され、連絡手段処か帰るすべがあるのかすら不明だが、この時点で帰る手段はありますと説明をされた場合、相当に信用できない国だろう事が窺える。

 どういう基準で呼ばれたのかという部分を考えれば、多数あるであろう異世界へピンポイントで送り返すとなれば、条件付けての召喚と比べ、難易度が桁外れに上がることは簡単に予想がつく。

 そう考えればいくら足掻こうと帰れるすべはないと考えて行動すべきだろう。

 そして、なぜ俺たち四人が呼ばれたかだ。考えるのはひとまず置き、聞いておこう。


「現在、私共は魔王の軍勢による侵攻で、徐々に版図を奪われております。

 その侵攻を食い止める戦力が足りず危機に瀕しております。このままでは近い将来蹂躙され、私たちの尊厳すら踏みにじられます。

 勝手な願いとは存じております。ですが、この地に住む者たちの為、力をお貸しくださいませ勇者様」再度、直角とも取れる角度で頭を下げる皇女であった。


 う、うさんくせぇ。無理やり聞かせるために制限掛けるとかありえないし、突っ込みどころ満載だし、突っ込もうとしても本当に声すら出ないし、そもそも召喚の過程で気絶してる間に腕輪は兎も角首輪を嵌めるって最悪だろうに。なに考えてるんだかこいつら。


「勇者様方、ご紹介いたします。現皇帝デュオニス・アルテトラス・アールデルです」

「紹介にあったデュオニス・アルテトラス・アールデルである。朕のことはデュオとでも呼んでもらえればよかろう。

 先ずはアルサートの申すように、こちらの都合で攫うような真似をしてしまい本当に申し訳ない。

 今から発言を許可する。答えられる範囲でならなんでも答えよう」

 アルサートを同じく頭を下げられた。


 それじゃ早速聞くとしますかね。


「あ、あー、んん、俺の名は安里桜嘉です。それでは質問させてもらいます。そもそもどうやって召喚したのですか? その手段は?」

「アンザト・オウカ殿だな、古来より伝わる勇者召喚の儀を執り行った。それにより選ばれたのがこの場にいる勇者殿たちだ」


 この回答だと適任者を適当に拉致って来たと考えてよさそうだな。


「そんなことはどうでもいいのよ。人を勝手に攫っておいて、命を懸けた戦いに無理やり参加しろって事でしょ。人の命を勝手にテーブルに上げる前に、自分たちの命をテーブルに上げなさいよ!」


 あちゃぁ、言っちゃいかんことをオブラートに包みもせず言いきっちゃったよこの子。

 髪は茶髪で結構な長さなのだろう、後ろで結わえポニーテールにしている、目は切れ長で鋭く近寄りがたい美人さんだ。

 隣の子にもうすこし穏便に話すように諭されている。

 当然とも言うべきか、周りの騎士風の者たちが武器の剣を抜き放ち威嚇してくる。


「良い、武器をしまえ。

 当然朕も指をくわえて見ていたわけではない、住民を助けるため、騎士を使わし対抗したのだが、地力の差が激しくいかんともし難いのだ。

 特別な力を持つ勇者殿方の力をお借りせねば更に版図を奪われよう、それでは不幸な者たちが増えてしまう。どうか力をお貸しくだされ」と先ほどと同じく頭を下げられた。


 あの突っ込みで大丈夫なら相当突っ込んでも大丈夫そうだな。


「俺たちは送還してもらえるんですか? 友人どころか親兄弟にすら挨拶も出来ずに拉致されたわけですけが」

「それに関しては申し開きすらできんが、魔王を討伐後必ず送り返すと約束しよう」


 送り返すねぇ。知らない場所から拉致しておきながら、ピンポイントで送れるのか? 怪しすぎだな。


「それじゃそっちの女性が言ったように戦争参加は強制ということですか?」

「……一名であればこのまま皇宮で保護してもよかろう。だが二人となれば戦力の低下が著しく魔王に敗れてしまう恐れがある為そこはお願いしたい」

「では送り返す事自体は可能なのですよね」

「可能だ」


 それじゃでっかい穴が開きそうな質問をしてみるか。


「先ほど勇者召喚の儀とおっしゃいましたよね、それってピンポイントに狙った個人ではなくランダムで適性のある人物を召喚したと聞こえるんですよ。

 送ることが可能ならどこの世界から引き寄せたか知ってるのですよね。ピンポイントで送るんです、当然知っていなければ送れない。違いますか? それでは俺たちの世界の名を教えて頂きたい。仮名でも構いませんよ」

「……」


 周りの騎士らしき連中は剣をまた抜いて威嚇するし、ここで返答はないし、やっぱり送り返すのは不可能ですって証明しちゃったか。


「やっぱりね、予想が当たりました。嘘を言いつくろってこの場を濁し、戦争に強制参加させるつもりだったのね」

「クソ、ある程度友好関係を構築して運用予定だったが仕方がない。プランを変更し強制運用へと舵を切る。ザック、後は任せるぞ」


 苛立ちを隠さぬままにその言葉を言い残し、皇帝と皇女はその場を後にした。


 どうやら一つの作戦を潰したらしい。そのために意識がないうちに強要可能なように首輪と腕輪を付けたのか、これは突っ込み過ぎたかね、生き残るハードルが上がった気がするのは気のせいではないだろう。


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