愉快な勇者たち。その1
ワイワイガヤガヤ
ここはとある王立学校の校門前。
お昼時には少し早い時間で、普段なら学生たちが黙々と勉学に励む。そんな時間である
しかし今日は騒がしく学生たちが校門付近の中庭で遊んでいるのが見える
そんな学生たちのほとんどには胸のあたりに真っ赤な美しい花が見て取れる
それを見てたいていの人は気づくだろう。今日は卒業式だと
胸に花がない学生もいるがどうせ遊んでいる拍子に落としたのだろう、ちょっとみればそこらへんにポツリポツリと落ちている。
そしてそれらを黙々と拾い集めているのが俺だ。
「...先輩何してるんですか」
と、俺に話しかけてくるのは金髪金目で肌も透き通るような美少女
「シズハ、逆に俺は何をしていると思う?」
黙々と赤い花を拾い集めながら言われたことを問い返す。
ちなみに、周りから注目されているのは重々承知だ。
「花摘みでしょうか?私にはちょっと理解に苦しみます」
背中まで届く長い髪を揺らしながら首を傾ける。あぁ~保養になるんじゃぁ~
...じゃなくて。彼女、俺の幼馴染で同じ家に住んでいる【シズハ】は若干不機嫌そうな目でこちらをにらんでいる。
そんな俺とシズハの胸元にも真っ赤な花がある。
「まあそうにらむなって、これにはちゃんとした理由があるんだから」
俺はシズハの気をなだめる為に真面目に言ってやった
「そうですか、理由をお聞きしても?」
「家にいるチビ達に手土産だ」
「そうでしたか...それはごめんなさい...」
ちょっと意地悪すぎたかな?と思いつつ、若干落ち込んだ様子のシズハを元気づける為に頭をポンポンしてやる
するとバシッと手を払いのけられ「公衆の面前ですよ?」と後ろに怒りの魔人が目に見えるような笑顔で言われた。
...なにこれめっちゃ怖い
◇◇◇ ◇◇◇
とまあ、そんなこんなで俺たちの卒業式も終わり学校からの帰路で
「ちょっと道よりしませんか?」
と言うシズハからの提案に乗り、そこらのお茶屋で一服しよう。ということになった
「はぁ~、やっぱお茶はいいねぇ。五臓六腑にしみわたるぅ~」
店内で温かい緑茶を飲み三食団子を食べている俺と対照的に
「先輩そんな口調しながら背筋伸ばしているのはなんだかおかしい、と前々から言っているでしょう」
シズハは紅茶とクッキーを食べていた
「俺と一緒にいてそんな些細な事気にしてたらハゲるぞ」
「その時は先輩の髪の毛でカツラでも作りますよ」
にぱっ、と擬音が付きそうな笑顔で言われてもこっちが困るんだが...
ちょっと時間がたって、俺が2杯目のお茶を楽しんでいるとき、対面に座っていたシズハが唐突に口を開いた
「先輩はこの後どうするんです?」
「どうするって、家に帰ってチビ達と遊ぶんだろ?いつも通りだ」
今日これからの予定を言うとシズハは軽く首を横に振ってため息をついた
「そうじゃなくてですね、学校も卒業していい大人になったんですから手に職をつけるでしょう?それをどうするかって聞いているのですよ」
いつになく真面目なシズハの表情を見つつお茶をすすってから、俺は自分のこれからについてどう話そうかと考える
「そうだなぁ、何でもいいかな」
「は?」
真剣な顔から一転呆けた表情になるシズハ
「何でもいいって、どういうことですか?」
あ、これは選択ミスったかなぁ
「まてまて落ち着け、俺が何でもいいって言ったのにはちゃんとした理由があってだな、...そういうお前はどうするんだ?」
全く思いつかなかった俺は必殺の切り返しを繰り出した
「私は簡単ですよ、先輩についていくまでです」
「笑顔でそんなこと言われても困るんだが...」
すっごい良い笑顔で言われた、すっごい良い。
「それでほんとにどうするのです?」
ちぃ、諦めてなかったのか
「んー、毎日がころころ変わって俺的に面白い職業なら大歓迎だ」
「そんな職業、冒険者の宿で冒険者をやるぐらいしかないじゃないですか」
「それもいいけど、俺たち2人しかいないから無理じゃん」
最低でも1パーティが組める5人は欲しい
「じゃあどうするのです...」
明らかに呆れているような口調だがシズハよ、お前も相当おかしいぞ?とは口が裂けても言えない俺であった。
しばらく店でお茶を楽しみ、のんびりしていた俺たちだったが、そろそろいい時間になったので
「さて、そろそろ行くか」
そういって俺が席から立ちあがった瞬間、店の外から
「キャー!暴れ食い逃げよぉーー!!誰か捕まえて!!」
と聞こえてきた。なんだそれ。
「シズハ...今のって」
「ええ、先輩急いでたすk「凄く面白そうな事件が起こってそうだよな!」「えー...」
俺は店のお代を机の上に置いてワクワクしながら全速力で外に出た
......シズハを置いてきぼりにして
「はぁ、置いてきぼりはやめてほしいです」
そう呟きながら自分のお代を机の上に置き
「店員さんお代ここに置いときますね」
先輩を追いかけようとしたところで後ろから声がかけられた
「お待ちくださいお客様、お代を払いすぎです」
「はい?」
店員が持ってるお代をよく見てみるとお代が自分の払った分多いことに気づく
「先輩ったら、言ってくれればいいのに...」
そう呟いてから店員にお礼を言って駆け出した
「お客様!お礼だけで受け取ってないですよおお!!!」