第84話「復活ぽんた王国」
「ねぇねぇ、ポン太、どうしたの?」
「ポン姉……帽子男さんがボクたちを殺すって言い出したんです」
「はぁ?」
「あれ、見てください」
「ぽんた王国」が復活したら、帽子男の「仕事」も復活なんだって!
カウベルがカラカラ鳴ってます。
お店の開店時間にはまだまだあるの。
でもでも、お店、鍵なんてしてないから入れます。
店長さんによると……
「盗まれるようなものはないんだけど」
その後ですぐ、
「誰かポンちゃん、もらってってくれないかなぁ~」
そんな事言う人にはチョップですチョップ!
はい、回想終了。
今度店長さんには誰が一番働いているか認めさせないとね。
でもでも、誰が来たのかな?
お店に出てみたら……
いました、コンちゃんの定位置テーブルに座ってます。
「帽子男さん!」
「よう、タヌキ娘」
「朝からなんですか、まだ開店前ですよ」
「いいじゃねーか、開いてるんだし」
「むう……なんの用ですか?」
「朝メシ食べに来たんだ」
「はぁ?」
「簡単なのでいいんだ、残りのパンとコーヒーとか」
残りのパンでいいならありそう。
コーヒー淹れるのは面倒ですけどね。
「ちょっとミコちゃんに聞いてきます」
帽子男、じっとわたしを見てます。
「なんですか!」
「この間、俺のそば、食ったよな」
「……」
「朝メシ出てこないとバラす」
この男は……でも、ニヤニヤしてます。
まぁ、バラされてもいいんですけどね。
台所に戻って、
「ミコちゃ~ん、帽子男さんが来てます」
「学校の用務員さん、朝から?」
「朝ごはん食べに来たそうです」
「そう……」
「残りのパンとコーヒーでいいって」
ミコちゃん、考える顔してます。
「面倒くさいから連れて来て、こっちで一緒に食べちゃいましょ」
そんなわけで、帽子男さんと一緒に朝ごはんです。
「わーい、ようむいん」
「おう、レッド、朝から元気だな」
「ちょっとアンタ、なんでいるのよ!」
「おう、みどり、今日もツンツンしてんな」
二人は学校でいつも顔合わせしてるから、うれしいみたい。
帽子男も扱いに慣れたもんです。
ミコちゃん、そんな帽子男の前にごはんとお味噌汁をやりながら、
「朝からどうしたんですか?」
「おお、こっちのタヌキ娘がツケで……げふっ!」
余計な事、言わんでよろしい。
隣に座っててよかったです、即肘鉄なんだから。
って、ミコちゃん微笑みながら、
「ポンちゃん、いいのよ、私もおそば、ごちそうになったから」
「そ、そうなんだ」
「まったく、タヌキ娘、すぐ手が出るなぁ」
「当然です……でもでも、どうしてパン屋さんに朝ごはん?」
「ああ……それなんだが、今まではそば屋で食べてたんだ」
「そうなんですか」
「でも、今はそば屋で働いているだろ」
「はいはい」
「ここの朝メシだってそうじゃねぇか」
「?」
「ごはんに味噌汁、ノリに魚に卵焼きと漬物」
「それが?」
「朝からパンは嫌じゃねーか?」
う……それはちょっとあるかも……
パン屋さんの朝でパンだと昨日の残りだし。
おやつでちょっと食べるならいいけど、パン屋でパンはちょっとね。
「そう言われると、そうですね」
「それに、朝メシ食いに行ったら、そのまま仕込みやらされるからな」
「それですか」
と、ミコちゃんが、
「みんなそろったわね、じゃ、いただきます」
「いただきま~す」
みんなのお箸が動きます。
って、コンちゃんがモグモグしながら、
「はて、帽子男よ、おぬしは何所に住んでおるのじゃ」
「学校」
「帽子男さんは学校……って、宿直室ですか?」
わたしも聞いちゃいます。
「吉田先生の部屋は宿直室、俺のは隣の用務員室」
「名前が違うだけですよね」
「まぁ、な」
「では、今まで食事はそば屋だったのじゃな」
「そうだな、コンちゃんよ、学校の中にあるし」
コンちゃん、何か考えています。
「おぬし、そば屋に食べに行っておったのか? じじいの所に行っておったのか?」
「そば屋だが……」
「ふむ……そば屋にポン太やポン吉はおらんかったかの?」
「ポン太……ああ、あの仔タヌキ」
「おらんかったかの?」
「いなかったな」
コンちゃん、わたしに向き直って、
「これ、ポン、あの二人はどこに住んでおるのじゃ?」
「へ? ポン太とポン吉ですか?」
「そうじゃ」
「長老と一緒って思っていたんですけどね……違うのかな?」
コンちゃん、帽子男に顔を向けて、
「これ、メシを食いに行くなら豆腐屋ではどうかの?」
「は?」
帽子男だけじゃないです、わたしもびっくり。
「コンちゃんなにを!」
「ポン太とポン吉はあそこに住んでおるのではないかの?」
「ポン太たちはあそこで働いているけど……長老と一緒じゃないの?」
「これ、ポン、おぬしタヌキであろう……ふ抜けたか?」
「なんですかモウ!」
「おぬし、そば屋でポン太たちのにおい、感じるかの?」
「え?」
「じじいの所にポン太達のにおい、弱いであろう」
そう言えば、そんな気もします。
ポン太たち、長老と一緒に住んでないんでしょうか?
お豆腐屋さんの子供になっちゃったとか?
ごはん終わったら、配達途中に寄ってみましょう。
レッドとみどり、帽子男と一緒に登校です。
って、わたしは朝の配達ついでなんですけどね。
途中、工事中のお豆腐屋さんに寄って行きます。
まだ、囲いがしてあるの。
「ポン太、ポン吉、来ましたよ」
わたし、お店の戸を開けて声をかけます。
すぐにポン太たち、出て来ました。
「ポン姉、おはようございます」
「ポン太、おはよう」
「どうしたんだよ、ポン姉」
「ポン吉、おはよ……あのさ」
「?」
二人が首をかしげます。
わたし、お店の前でクンクン。
「ねぇ、ポン太とポン吉、ここに住んでいるの?」
「はい、そうです」
って、奥からおばあちゃんが出てきました。
「そうだよ、二人はここに住んでもらってるんだよ」
「おばあちゃん、そうなんだ」
わたし、さらにクンクンして、
「長老はいませんよね?」
「そうだね、長老さんは遠慮して学校なんだよ」
おばあちゃん、ポン太とポン吉の頭をなでながら、
「でも、もうすぐ一緒に暮らせるね」
「なんです?」
「工事が終わったら、そっちに長老さんやポン太、ポン吉は住んでもらうんだよ」
「そうなんだ」
「建物増えるからね、別にいいんだよ、新しい方に住んでもらう分にはね」
「さっき『もうすぐ』って言ってましたよね?」
「そうだね、明日にでも囲いはとれちゃうね」
「じゃあ……長老も一緒はどうなんだろう」
わたし、帽子男さんを見ます。
「あ、用務員のおっちゃん」
「おう、ポン吉、おはようさん」
「なにしに来たんだよ」
帽子男さん、ポン吉の頭をなでながら、
「いや、朝メシをここでごちそうになれないかなって思って来たんだよ」
って、おばあちゃん、パッと表情が明るくなりました。
「にぎやかになっていいねぇ……あんたも新しい方に住むかね」
「しかし、タヌキじじいも来るんだろ」
「だね」
「俺、そば屋でも働いてるから、タヌキじじいにいっつも顔合わせはなぁ」
「ポン太のごはん、おいしいがね」
おばあちゃんの言葉に帽子男ピクリ。
「それは確かに魅力だが……」
ポン太、そんな帽子男の言葉に力無く笑いながら、
「明日の朝ごはん、準備しておきますよ」
「むう……ではお呼ばれするか」
「あの……」
「?」
「長老、そんなにコキ使います?」
「そんなに人使い荒くないんだが……」
「だが?」
「酒くさいのと、イヤミが『グサグサ』なんだよ『チクチク』じゃなくて」
「すみません」
ポン太ペコペコしてます。
ともかく明日の帽子男さんの食事は確保ですね。
話だと工事も終わりだから、囲いも取れちゃうみたい。
「それで今日は来なかったのね」
ミコちゃん、ポツリと言います。
帽子男さんが朝ごはん食べにこなかったんですよ。
「うん、だからきっとポン太のごはん食べにお豆腐屋さんに行ってますよ」
「ちょっと残念ね」
「なにが?」
はっ!
「まさかミコちゃん、帽子男さんが好きとか?」
わたし、思うんです。
帽子男はヒットマンでそれなりに渋い男って思います。
でもでも、ミコちゃんにはつり合わない気がしますよん。
「用務員さん来ると、レッドちゃんやみどりちゃん、喜ぶでしょ」
「ですね~」
「じゃ、配達行くわよ」
そうそう、今日の配達はわたしとミコちゃん。
レッドとみどりも通学で一緒です。
お豆腐屋さんに到着すると……囲いも取れててなつかしのわらぶき屋根のお家。
「ふわわ、ぽんた王国のと一緒だ」
「なつかしい感じの家ね」
わたしとミコちゃんが見上げていると、お豆腐屋さんから帽子男出てきました。
なんだか殺気含みです。
どうしたのかな?
その後を、ニンジャ姿のポン太とポン吉です。
お豆腐屋のおじいちゃん、おばあちゃんも心配顔で出てきました。
全然状況、わかりません、どうしたの?
帽子男……なんかコワイ空気漂ってるから聞けません。
ポン太とポン吉もなぜかニンジャ服でコワイ顔……
「めめめめがねにんじゃっ!」
ああ、シリアスな空気、レッドの声で台なし。
「ちょっとアンタ、なんなのよ、その格好!」
みどりはポン吉につっかかってます。
子供ふたりにつっかかられてポン太たち困ってます。
ちょっと聞きやすくなったかな?
「ねぇねぇ、ポン太、どうしたの?」
「ポン姉……帽子男さんがボクたちを殺すって言い出したんです」
「はぁ?」
「あれ、見てください」
ポン太の指差す先。
看板は「ぽんた王国」。
「なに? わかんないよ?」
「帽子男さんはヒットマン」
「うん、だったよね」
「俺の仕事はぽんた王国の関係者抹殺」
帽子男、割り込んで来ます。
「ぽんた王国が復活したからには、命をいただくしかねぇ」
帽子男、言いながら銃を確かめてます。
本気で「殺る気」みたい!
わたし、帽子男に近付いて……
「……」
近づいたら気付きました。
帽子男をクンクン。
「あの~、帽子男さん……」
「何だ、タヌキ娘」
「朝ごはん食べてから、言いがかりつけてますよね」
「うっ!」
「食べるだけ食べてから、それじゃあ……ねぇ」
「これは仕事なんだ、仕事、仕事でね」
「食べてから言うかなぁ~」
わたしが「ネチネチ」言ってると、銃口向けてきます。
「流れ弾、当たるかも」
「流れてませんよね、狙ってますよね」
「ダ・マ・レ!」
銃口向けられて一歩引いたらなにかにぶつかりましたよ。
振り向けばミコちゃん。
髪がうねりまくり。怒ってます。
「ちょっと用務員さんっ!」
「何だ?」
「ポン太くんやポン吉くんを殺そうって言うの!」
「仕事でね」
「子供相手に大人気ない」
「何とでも言え」
「どうしても、二人を殺すって言うの?」
「まぁ、な」
「どうしても?」
「ああ、そうだ」
ミコちゃん、ゴット・アローの体勢ですよ。
光る弓矢が帽子男をロックオンなの。
「どうしても?」
「ああ、俺の仕事はぽんた王国の……」
って、今の言葉を聞いて、ミコちゃんの手からゴット・アロー消えちゃいました。
それどころかニコニコしてるの。
なんでかな?
「じゃあ、あなたの仕事は『ぽんた王国』だから?」
「ああ、そうだ」
「……朝ごはん食べた恩義は感じてるのよね」
「……ちょっとは……な」
「私のごはんも食べたわよね?」
「……そうだな」
って、帽子男、ブンブン首を横に振ってから、
「いや、ダメだ、俺の仕事は『ぽんた王国』のっ!」
「これならいいでしょ!」
ミコちゃんが指を鳴らすと「ぽんた王国」の看板がビリビリ輝いてます。
そんなビリビリが終ると……
「どうっ!」
「……」
「ぽんた王国」の看板が「ニューぽんた王国」になってます。
「ニュー」が付いただけなの。
「ど・う・で・す・かっ!」
「ニュー……って」
「名前、変わったでしょっ!」
ミコちゃん、改めてゴット・アローを構えてます。
「名前、変わったでしょっ!」
「し、しかしだな……」
「お店に出入り、禁止しますよ」
「う……」
帽子男、看板を見ていましたが……銃を納めますよ。
「ぽんた王国じゃないなら……いいか」
「ニュー」が付いただけですけどね。
ポン太とポン吉、震えています。
ミコちゃんすぐに駆け寄って、二人を抱きしめます。
「よかったね、二人とも!」
あ、ミコちゃんに抱きしめられて二人とも赤くなってます。
震えもとまりましたよ。
わたし、ジト目で二人に、
『あー、ミコちゃんに抱きしめられて赤くなってる~』
ポン太もポン吉もデレデレしてますね。
『コンちゃんやシロちゃんに言っちゃおうかな~』
あ、二人とも青くなってわたしをにらんでます。
あれれ、レッドとみどり、ポン太たちをうらやましそうに見てます。
二人も「ギュッ」ってしてほしいみたい。
わたし、しゃがんで、
「抱きしめてあげようか?」
って、途端に二人とも駆け出します。
ミコちゃんもすぐに気付いて、レッドとみどりもまとめて「ギュッ」!
みんなより、ミコちゃんがすごいしあわせそうですよ。
わたし、スルーされて苦笑いするしか。
渋い顔をしている帽子男さんに聞いちゃいます。
「看板、ニューがついただけですよ?」
「しかしなぁ~」
「しかし?」
「ここで食事の選択肢が減るのもなんだし……」
「それですか」
「ミコちゃんに嫌われると、面倒くさそうだしな」
「湯加減が熱いそうであります」
温泉の神さま、不機嫌みたい。
そういえば、最近レッドを連れて行っていないような……
じゃあ、レッドを連れていけば即解決ですね。
ひさしぶりに、温泉掃除に行きますか~