八話 一歩
今回から少し字数が多くなってます。
あと、今回もあのネタ入ってます。
それでは
空は快晴…ではなく、雲に包まれている。心地よい風が吹いて…いる訳でもなく、生温い湿った風がおれたちを包む。こんな旅の始めに、ただ雲の隙間から射し込む日の光だけは希望をくれた。行く先を暗示するかのような天候におれたちは、雨が降った次の日だから仕方ないよねと思う以外には何も考えなかった。
「ねぇ、セリー。ここから町までどれくらい歩けばいいの?」
「そうね。5キラくらいかしら。日が沈むまでには着けると思うわ」
「ご、5人のキラ!?日本滅ぶじゃん!あのノート5冊もあったら人死にまくりだよ!?」
「あんた、なに言ってんの?キラは距離の単位に決まってる…そういやあんたって記憶喪失だったっけ。」
「ここのこと全然知らないってことならそうだよ」
「じゃあ教えてなかったわたしが悪いわね。あんたの世界だとどうだったのかは分からないけど
ここだとシル、ルート、キラって感じで長さの単位が変わるのよ。ほんとは略称らしいんだけどね」
「うーん、シルとキラって英語で書くとどうなるの?」
「英語?そんなのあったかしら…」
「じゃあアルファベットは?」
「アルファベット?ああ、エルスト教国の文字ね。ええと…こんな感じだったかしら」
セリーが近くに落ちていた棒を使って書いてくれている。なんて優しい子だろうか。こんな子滅多にいな……こ、これ以上はやめておこう。なんかセリーが睨んできてる気がする。
「あれ?同じだ」
セリーが書いてくれた文字にはメートルはrになってはいるもののcやkは変わっていなかった。
もしかしたらセンチやキロ、そして実際の長さも同じかもしれない。これは、勝ったな。風呂入ってくるのコメントがくるのではなかろうか。でもフラグだから来ないで下さい。スタイリッシュ土下座するんで許して下さい。
「あんたって、考え事してる時にコロコロ表情変わって面白いわね。でも人がいるときはやめたほうがいいわ」
「ちょっ、笑いながら言わないでよ!」
「悪かったわ。でも顔真っ赤にして恥ずかしがってるあんた、可愛いわ。ほんとに元男?」
すごくいじわるな笑みだ…ここで期待通りの反応をしてしまったらセリーの思うツボだ。
努めて冷静に返さないと…
「か、かわっ、可愛い!?そそそ、そんなことないって!わたしお、おお、男だし!!」
「あれ~?可愛いって言われて照れてるのに男って言えるのかな~?」
「うっ」
大失敗だ……もう嫌になってくる…
「じょ、冗談よ。そこまで怒らなくても…」
「怒ってない。落ち込んでるの!」
「悪かったわよ…ごめんなさい」
(アノンって男だって言い張ってるけど怒り方とか照れ方とかもろ女の子なんだけど気づいてるのかしら。人から見たらほんとに女の子にしか見えないわよ…?)
「怒ってないから」
「怒ってるじゃない!」
「怒ってない!」
「あんたねぇ…そろそろ気づきなさいよ!あんたのそれは怒ってるのよ!わたし謝ったでしょ!もう終わり!」
「セリーだって怒ってるじゃん!わたしセリーを怒らせることしてないと思うんだけど!」
「あんたがいつまでも怒ってるからでしょ!?冗談だって、悪かったって言ってるじゃない!」
「だから怒ってないって言ってるじゃん!」
「怒ってるじゃない!」
「「むむむむむ…」」
グゥ~
「「あっ」」
お腹の音だよな今の…。しかも二人分…。それになんであんなに怒ってたんだろ…。
「そ、そういえば昨日ご飯食べてなかったわねっ」
と顔を赤らめたセリーが言えば
「そ、そうだねっお、お腹空いたねっ」
とおそらく顔の赤いおれが言う。
……なにこれ
「そ、そうだ。わたしリネレ持ってるから一緒に食べよ?」
「リネレ?」
「そう、これよ」
セリーのバックパックから出てきたのはリンゴのような形をした…とゆうかリンゴだった。
「リンゴ…だよね」
「記憶喪失の人達はみんなそう言ってるわね…。リネレとリンゴって似てるのかしら」
「うん、すっごく似てるよ。瓜二つかってくらいに」
「そうなんだ。ほら、食べるでしょ?味はどうなの?」
「うん。でも貰っていいの?」
「いいわよ。でもそれ一個しか残ってないから半分残してわたしにくれる?」
「わかった。じゃあ…」
カプ
やたらと可愛い擬音だったな…ってこ、これは!リ、リンゴだ!
「う、うますぎるっ!」
「そ、そう。で、味もリンゴと同じなの?」
「うん。懐かしいなぁ。もう何年ぶりだっけ…。あ、セリーも食べるんだっけ」
「焦らなくていいわ。食べにくいんでしょ?」
「う、うん。ごめんね。」
「いいわよそんな。それにしても人いないわねぇ。」
「? あっ、セリー後どうぞ」
「ありがと。」
「もう結構歩いたよねぇ…あとどれくらいなんだろ。あっ聞いてなかったけど、わたしたちが向かってる町ってどんな名前なの?」
「んっ…ふぅ。ええと、なに?」
「食べるのはやっ。えと、町ってどんな名前なんだろうって」
「ああ、今向かってるのはリネレの町よ」
「リネレって…」
「そうよ。あのリネレ。リネレが特産品なのよ。そしてあの町が……」
「リネレの町…」
目に映ったのは、決して大きくはないけれど、たくさんの家々と豊かな自然、そして行き交う人々のあるこの世界で初めての町だった。
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