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忘れ物。  作者: 桃色 ぴんく。
9/15

~デートの約束~

 ある日、まこちゃんに聞いてみた。

「ただしと付き合ってて、どうなの?」

マサちゃんが知り合った風来坊のただしとまこちゃんが付き合い出して数か月。ただしは大阪の西成に住んでいた。まこちゃんがただしに会う時は、まこちゃんが西成まで通っていると言っていた。治安が悪いと聞いている場所なので18歳の女の子が一人で通うってどうなんだろう・・・と思いながら聞いていたら、まこちゃんが変なことを言い出した。

「ただしちゃんね、優しいんだけど・・・エッチの時に、私の顔に布をかぶせるのよ」

「ええ???」

「ひどいと思わない?私がブスだからってさぁ」

「ええ・・・まこちゃんブスじゃないのに・・・」

 まこちゃんは、美人でもないが、ブスでもないと私は思っている。イメージ的には昔アニメであった【ふしぎな島のフローネ】のフローネみたいな顔をしている。ただしの好みの美人じゃないとしても、付き合ってる彼女なんだし、顔に布をかけて見えないようにしてエッチするって何なの!

「そんなんでいいの?」

と、まこちゃんに聞いたが、

「私、ただしちゃんのこと好きだから・・・いいの」

と、答えるのだった。





 まこちゃんにこの話を聞いてから、マサちゃんと私、ただしとまこちゃんの4人でカラオケに行ったことがあったが、私はついついただしを見る目が変わってしまったのだった。目の前で、まこちゃんと仲良くしてるくせに、エッチの時にはそんな風にするんだ・・・嫌な感じ。まこちゃんもよくそんなんで平気だなぁ・・・と思うけど、楽しそうに笑ってるまこちゃんを見ると、まぁ、本人も納得してのことだから、私が口出しすることでもないのかな。そう思って私はもう何も言わないことにしたのだった。






 そんなある日、いけす料理店のお客様に声をかけられた。

「ねぇ、俺とデートしてくれない?」

 数人のグループで来店していたその人は、爽やかな短髪のイケメンだった。以前から何度か見かけていて、なんとなく、雰囲気がジョンローンに似ていたので、私はそのお客様のことを勝手にジョンと名付けていたのだった。そんなジョンが私を誘ってきたのだ。別に、すぐにでも誘いに乗ってもいいかな、と思ったが、ここは少し勿体ぶってやることにしたのだ。

「そうですね、あと10回来店されたら考えます」

 きっと「あほらしい」と思って、ジョンは乗らないだろうと思った。だけど、その翌日から頻繁にジョンは店にやってきてくれた。もちろん、ちゃんと普通通りに食事やお酒を飲んで帰って行ってくれた。10回の回数稼ぎにビール1杯とかではなかった。

 そんな日々が過ぎて行き、とうとうジョンの10回目の来店日を迎えた。

「ねぇねぇ、あの時のこと覚えてる?今日で10回目だよ」

 やはりジョンも私の口走った【10回来店されたら考えます】という言葉を覚えていた。

「・・・はい」

「お店終わるまで待ってるからさ~、今日どう?」

 いきなり今日なの!?と思ったけど、別に予定はないので私はジョンと約束をした。

「じゃあ終わるまで待っててください。22時半ぐらいになると思うけど」

「オッケー。その頃店の前で待ってるよ」

 こうして、ジョンとのデートが決まったのだった。





 そして、22時半を過ぎ、私が私服に着替えて店の外に出ると、ジョンが立っていた。

「お疲れ様。さて、どこいく?」

「この時間からだし、ファミレスとかしかないかな」

「ファミレスか・・・俺のとこ、来る?・・・寮なんだけどさ」

 へえ、会社の寮かな。良くわからないけど、そこに行ってもいいのかな。

「女子禁制だから、こっそり入らないとだけどね」

「え、そうなの?見つかったらやばいんじゃない?」

「大丈夫大丈夫。この時間だったらバレにくいよ」

 夜の男子寮っていうのも、なんだか興味があったし、私はジョンについていくことにした。




 いけす料理店から国道沿いに少し行って、角を曲がると白っぽい大きな建物があった。

「ここだよ」

 辺りは暗くて静まり返っている。普通に歩くだけでも足音が響くので、緊張感が強まっていく。見つかったらどうなるんだろ・・・そう思いながらも、私はジョンの後ろに隠れるようにして寮の中に入った。

 喋ると声が響くと思って、無言でジョンの後に付いて行く。階段を3階まで上がったところで、ジョンが一番端の部屋のドアを開けた。部屋の中は真っ暗だった。

「もう喋っても大丈夫だよ」

 ジョンが部屋の電気のスイッチを押す。ベッドのある狭いシンプルな部屋だった。あれ、ベッドが2つある。ってことは、ここは一人部屋ではないのかな?

「ああ、今日は俺一人だけだから、心配しなくても大丈夫」

 私がベッドをじっと見てたので、察したのだろう。

「そうなんだ」

「今日は一人だから寮に連れて来ちゃったけど、今度は外でデートしようね」

 そう言ってベッドに腰かけたジョンが私を手招きする。そんな男前の顔で手招きされたら・・・やっぱ行ってしまうよね。でも、ここは女子禁制の寮だから、さすがにそういうことは出来ない。ジョンと私はベッドの上で布団にくるまって、寄り添いながら小さい声で1時間ほど話をした。

 寮を出る時も、足音を立てないように、かなり神経を擦り減らした。スリルがあるけど、もうこういうのは疲れる、と思った私だった。





 数日後。今日は夕方から会おう、とジョンと約束していたので、私は会うことにしていた。ところが前日になり、いきなりマサちゃんから『明日そっち行こうかな』と言われたのだった。

 そして、私は、どっちと会おうか考えて、ジョンと会うことの方を選んだのだった。マサちゃんは、気まぐれで会いに来たりすっぽかしたりを繰り返していたので、明日会う約束をしても、来ない可能性も高い。マサちゃんと会うためにジョンの約束を変更したら、ジョンにはもう会えない気がした。だから私は『予定あるから』とマサちゃんの方を断ったのだった。そして、この日はバイトを15時で上がり、私はジョンと私の自転車で2人乗りをして、カラオケに行って楽しい時間を過ごして帰って来たのだった。その夜、めずらしくマサちゃんから電話があって、こんなことを言われた。

「自転車で2人乗りとかして、楽しそうだったね」

 会うのを断ったのに、きっとマサちゃんは神戸まで来て私の様子を探ったのだろう。いつもデートをすっぽかすのに、勝手な人だ、と私は思ったのだった。


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