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忘れ物。  作者: 桃色 ぴんく。
7/15

~着物ウェイトレス~

 体重が40キロまで落ちて、医者から「仕事を辞めて家でゆっくりしなさい」と言われた私は、事情を両親に話し、しばらくは家で何もせずに過ごしていた。

 会社を離れ、何も考えずに、好きなテレビを見て、ご飯を食べて、ゴロゴロすることに決めた。私は疲れ果てていたのだろう。きっと、会社で働いてた頃は、朝7時に家を出てから帰るのが毎日終電とかだったから、生活自体かなりハードだったのかも知れない。この頃は、マサちゃんにお弁当も作ってあげてたし、凝ったお弁当作るのに朝はいつも5時半起きだったし、睡眠も足りてなかったのだろう。その上、マサちゃんとの恋愛のことでいろいろあって体にかなりの負担がかかったのだと思う。仕事のことを考えず、マサちゃんのお弁当も作らず、とくに何も考えず、家でずっと食っちゃ寝、食っちゃ寝を繰り返していたら割と早いペースで体重も戻っていったのだった。




 少し元気になると、仕事がしたくなった。けれど、電車の中で倒れて以来、もう電車には乗れなくなってしまった。トラウマというやつなのか。大阪まで通って仕事に復帰はもう出来ない。そこで、私はどこか近くでアルバイトでもしようかな、と働けるところを探したのだった。





 結局、自転車で15分ほどで通える、チェーンのいけす料理の店にバイトが決まった。時給は900円だったが、着物を着れると1000円になるというので、着付けはしたことがなかったのだが、着物ウェイトレスで契約したのだった。

 このバイト先で、一つ年下の女の子、まこちゃんと仲良くなった。私は19歳、まこちゃんは18歳の大学生だった。フリーターで、朝9時~22時半ぐらいまで働いていた私と、学生なので18時~22時半まで働いていたまこちゃん。仕事を終えてから一緒に遊びに行ったりすることも多かった。

 そして、私にはマサちゃんという彼氏がいることをまこちゃんにも話した。まこちゃんは、聞くところによると、ずっと不倫をしているらしい。相手の人は30代半ばの妻子持ちの人で、『離婚するから待っていてほしい』と言われたと言うのだが、なかなか長引いているらしく、一向にその気配がないようだった。私はドラマとかでよくある『妻とは不仲なんだ。別れるから一緒になろう』というようなシーンを思い出していた。そういうのって、大体嘘なんだよね。奥さんと別れる気がないくせに、若い女の子の体を楽しんでいるだけなんだから。私は、まこちゃんがその彼を忘れることが出来たらいいのに・・・とひそかに思っていたのだった。




 そんな時、マサちゃんがある男の子と知り合いになったのだ。パチンコ屋で隣に座った男の子だった。九州から大阪に一人で出てきた風来坊だった。

 その男の子の名前はタダシ。まこちゃんと同じ18歳だった。私はマサちゃんからその男の子の話を聞いた時、すぐに言った。

「まこちゃんにその子を紹介して!」

 こうして、すぐに4人で会う機会を作り、まこちゃんにタダシを会わせた。身長が高く、色黒で自由人っぽい雰囲気を醸し出しているタダシに、まこちゃんはすぐに興味を示した。タダシも、大阪に出てきたものの、知り合いも少なく、まして彼女なんていないという状態だったので、まこちゃんを気に入った。そして、まこちゃんは不倫をやめ、タダシと付き合うことにしたのだった。




 この頃のマサちゃんと私は、2週間に一度ぐらいのペースでしか会わなくなっていた。お互い職場も違うし、大阪と神戸で1時間ほどかかる距離にいたし、いけす料理の店のバイトも楽しくて、ついついマサちゃんのことは後回しになっていたのだった。きっと、マサちゃんも職場で楽しく仕事をしているだろう。特に不安も心配もなかった。

 



 いけす料理の店には、カウンターの真ん中に大きないけすがあり、ハマチやカレイなども泳いでいた。そして、お客様から注文が入ると、その魚を捕まえるのだが、それがなかなか一苦労だった。特にハマチは大きく力も強いので、私たちバイトじゃ捕まえることも出来ず、いつも料理長が自ら捕まえていた。アジやイワシなどの小魚は別の水槽に入れられてるので、こちらは簡単に捕まえられる。

「アジあげてー!」

と、料理長から声がかかると、私とまこちゃんは、

「はーい!」

と、足をあげてふざけたりするのだった。

「あほか」

と、言いながらも笑っている料理長。私やまこちゃんを本当に可愛がってくれた。私はこんな和気藹々としたお店が大好きだった。




 最初の頃は、着物を着るのに30分ぐらいかかっていたが、慣れてくると10分で着れるようになってきた。簡単な二部式とかじゃなく、普通の着物で帯はお太鼓結びだった。最初は全く着方がわからなかったのだが、「おかあちゃん」と親しまれている古株のオバサンに教えてもらって着れるようになった。おかあちゃんは、ドラえもんのような体型と声で、ものすごく愛嬌がある人だ。私もまこちゃんも、おかあちゃんにいっぱい甘えた。家族のような信頼関係がそこにはあった。




 私はマサちゃんと、まこちゃんはタダシと付き合っていたが、お店では常連のお客様たちと仕事が終わってからカラオケに行ったり、居酒屋に行ったり、そういうこともよくするようになった。結婚式場をキャンセルして、いつになるかわからなくなった今では、【結婚するならマサちゃんと】とは思っていたが、別に少しぐらい遊んでもいいじゃない。マサちゃんも元カノと会ってたんだし。という気持ちもあったのだった。また、まこちゃんも別にタダシと一生を添い遂げるつもりはなかったみたいだった。なので、私たちは時々こうやって彼氏以外の男性たちと遊びに行ったりしていたのだった。

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