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忘れ物。  作者: 桃色 ぴんく。
4/15

~元カノの存在~

 12月の下旬に手術を受け、私の両親に何もかも話した後、マサちゃんと私は水子供養を済ませ、静かに年末年始を迎えたのだった。

 そして、今日は1月2日。新年明けて早々だったが、2人で京都にでも行こう、ということになり、私は待ち合わせの駅でマサちゃんを待っていた。




 いつも、待ち合わせの時は、5分前ぐらいにマサちゃんはやってくる。私が10分前には必ず待ってるので、この日ももう来るかな・・・と思いながら、待ち合わせの10時になってしまった。あれ?ああ、きっと電車1本乗り遅れたかな。そう思ってもうしばらく待つ。

 当時は、携帯電話の普及もまだ浸透していなかったため、私もマサちゃんも持っていなかった。頼れるとすれば、駅のホームの近くにある公衆電話だけだった。

 待ち合わせ時間を10分、15分過ぎても、マサちゃんが来ない。・・・何かあったのかな。もしかして、寝坊しちゃってたり?一回マサちゃんの家に電話してみよう。私は公衆電話へと向かった。




 マサちゃんの家の電話番号はもうすっかり覚えていた。慣れた手つきで番号を押す。


――プルルルル、プルルルル、プルルルル・・・

 

 誰も出ない?と、思った時だった。


「はい」

 気だるそうな声だ。電話に出たのはマサちゃんの妹だった。

「あ、智恵ですけど、マサちゃん家出ましたか?」

「家にはいないけど~?約束してたの?」

「はい、10時に梅田駅で」

「ふ~ん。良く知らないけど昨日からいなかったかもよ」

「え・・・」

「とりあえず、連絡あったり帰ってきたりしたら言うとくわ」

「は、はい。すいませ・・・」


ガチャン!

と、私が最後まで言い終える前に電話は切られた。きっと、面倒くさかったのだろう。




「家にいないって、こっちに向かってるのかな・・・」

 やっぱりもう少し待ってみよう。時刻は11時前になっていた。気だるそうな妹の言葉を思い出す。



『昨日からいなかったかもよ』



 マサちゃん、どこに行ったんだろう。せめて、連絡がつけば、今日が無理だったら他の日に旅行行けばいいだけのことだし、来るのか来ないのか、私は帰ってもいいのか、待てばいいのか。もう、何がなんだかわからなくなってきた。

 



「待った~?」

「いや、今来たとこやで」

「いこっか」

 マサちゃんをアホみたいにずっと待ち続ける私の近くで、次から次へとカップルたちが待ち合わせで合流し、楽しそうに歩いて行く。そんな様子を見ていたら、ポツンと取り残された自分は何なの・・・て思えて、涙が出てきてしまった。

 だけど、こんなに待たされても、まだ心のどこかで『マサちゃんは来る』って信じていたから、私はどうしてもこの場を離れることが出来なかった。時刻は、夜の7時になろうとしていた。




 この時間になるまでに、何回も何回もマサちゃんの家に電話しては

「あの、マサちゃん帰ってきましたか?連絡ありましたか?」

と、電話に出た妹やお母さんに聞いたのだが、

「帰ってないし、連絡もないから、トモちゃんももう帰り」

と、言われて、でも待って・・・の繰り返しだった。




 でも、さすがに待ち合わせの時間から、9時間も経てば、来るわけがないし、私が帰ってたとしても責められることはないだろう。私は、ついに諦めて、自分の家の方面の電車に乗り、30分かけて家に帰ったのだった。その日は、朝ご飯を食べて出かけて以来、ずっと待ちぼうけで立ってたので何も口にしていなかったが、お腹が空くこともなかった。泣いていたことを、家族にバレないように、そそくさと部屋に入ってお風呂にも入らずに布団に入ったのだった。しばらくは、布団の中で泣いていたが、そのうち疲れ果てて眠ってしまったようだった。




 翌日、マサちゃんの家に電話をすると、マサちゃんが電話に出た。良かった・・・マサちゃんの身に何かが起きたわけじゃなかったんだ。

「マサちゃん、どうして昨日来なかったの?」

「・・・」

「何かあった?」

「・・・実は・・・」

「何でも聞くから話して」

「・・・実は、前の彼女が、風邪ひいて看病してたんだ・・・」

 え・・・それってどういうことなの・・・?私はマサちゃんの話を聞きながら、一生懸命頭の中を整理しようとしていた。

「いつ行ったの?」

「元旦の日の夜だったかな・・・」

 ってことは、一晩彼女に付きっきりってことだよね。

「泊まったのね?」

「・・・風邪ひいて動けないし、何も出来ないから助けてって言われて・・・」

「他に頼れる人いなかったの?」

「なかなか良くならないし、置いて帰るわけにもいかないし・・・」

「どうして、私に連絡してくれなかったの?言ってくれたら私も一緒に行ってたのに」

「そんな・・・言えないよ・・・」

「今度から、何かあったら必ず言ってね。お願いだから」

「うん、わかった。ごめんな・・・」




 私は、電話を切った後もしばらく考えていた。これは、どういうことなのか。元カノの具合が悪いのが本当の話だとすると、その人はなぜ、マサちゃんを呼んだのか。甘えてヨリを戻そうとしたのか?そして、マサちゃんはなぜそれに応えるようにして一晩泊まったのか。体調悪かったと言っても、本当に何もなかったのだろうか?考えたくもないが、そもそも元カノの病気説自体が嘘だったら?マサちゃんのことを信じよう、信じようとしても、悪い方へ考えてしまう私だった。

 

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