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忘れ物。  作者: 桃色 ぴんく。
3/15

~アレもカレも来ない~

 マサちゃんと付き合いだして、今まで行ったことのない高級店や、お洒落な店に連れてってもらえて、きっとマサちゃんはお金持ちなんだ!と思っていたのだが、ある日、本当のことがわかった。

 お付き合いを初めて3か月ぐらい経ったある日、マサちゃんの家に連れてってもらえることになったのだ。すごい豪邸だったら、どうしよ。緊張するわ・・・と、思ったのだが、着いたのはごく普通のマンション・・・いや、アパートだった。あれ、予想外な家。

家の中に入ると、お父さん、お母さん、妹がいた。実は、お父さんは会社で一緒なのでよく知っている。お母さんは素朴な印象だった。そして、妹は、とても美人だった。

「え~マサちゃんの彼女???」

 私はビックリした。妹が兄のことを「マサちゃん」て呼んでるんだ。私にも兄はいるけど名前で呼ぼうもんなら何を言われるかわからない。きっと兄妹仲がいいのだろう。

「そうだよ。トモちゃんって呼んでな」

「ふう~ん。よろしくね」

 なんだか妹の視線が冷たく感じた。大好きなお兄ちゃんに彼女が出来たことを嫉妬している、そんな感じに思えた。それにしても、今までの羽振りの良さを思うと、住んでる家とのギャップが大きすぎる。もしかしたら、8歳も年上だから、格好つけたかっただけなのかな。別に居酒屋デートでもいいし、私も働いてるんだから割り勘でもいいのに。私としては、マサちゃんがお金がなくても家が古くても、そこは特に気にするポイントではなかった。




ある日、ふと私はあることに気付いた。あれ?今月のアレっていつが予定日だったっけ?確か、8月はお盆の頃だったでしょ、9月は半ばにきたっけな。10月は・・・あれ、もう月末だなぁ。ま、もうすぐ来るかな。私は「まさか、ね」と思いながらまた数日過ごした。

 思い当たる節はあった。あの、ホテルのスイートルームでお泊りした時のことだ。あの日は、妙に燃えてしまって、確か避妊もせずにしちゃっていた。それにしても、その1回でそんなすぐに妊娠とかないかな、とタカをくくっていた。




それから数週間が過ぎ、やはりアレは来ないままだった。18歳の私は、マサちゃんとの子供が出来て純粋に嬉しかった。まだマサちゃんにも親にも誰にも言ってないけど、もちろん産むつもりでいた。

「マサちゃん、赤ちゃん出来たかも」

 ある日、私はマサちゃんに告げた。まだ、検査はしてないが、ここまでアレが来ないのはやっぱりそうだろうと思っていたからだ。

「うん。結婚するつもりでいるから、大丈夫」

と、マサちゃんも言ってくれた。そして、それからの日々も濃厚で激しい愛し合い方を頻繁に繰り返す私たちだった。




 そして、無知な私は産婦人科に行くこともせず、12月を迎え、私の体に異変が起きたのだった。

「いた・・・」

 駅から会社まで10分ぐらい歩くのだが、途中で立ち止まってしまうぐらいの下腹部の鈍い痛みが度々襲ってくるようになった。

 それから数日後、出血があった。私はさすがに不安になって、前に同じ会社で働いていた仲良しのママさん、りんちゃんに相談してみた。

「妊娠したと思ったら、お腹痛くなって出血したって?」

「うん・・・」

「すぐ病院行こう。ついてってあげるから」

 りんちゃんに言われて、私はりんちゃんが通っている産婦人科に連れられて行った。りんちゃんは今、二人目の赤ちゃんを妊娠中で、ちょうど通っていたのだ。




 お腹にエコーを当てて画面を見ていた先生が言う。

「ここに見えるのが・・・赤ちゃんです」

 やっぱり赤ちゃん出来てたんだ。画面を見ながら私は嬉しくなった。

「・・・でも心臓が動いていませんね。残念ですが・・・」

 時期的に言えば、心拍が確認出来るはずの時期に入ってるのに、何も聞こえないとのこと。どうやら、お腹の中で赤ちゃんは育たなかったようだった。稽留流産けいりゅうりゅうざんだと先生に言われた。

 先生の話を横たわったまま聞きながら、私は涙を流していた。私とマサちゃんの赤ちゃん・・・




 後日、手術をすることになり、りんちゃんとマサちゃんについてきてもらった。お腹の中に胎児が残っているので人工的に取り出さないといけないのだ。全身麻酔をして、私の意識がだんだん遠くなる。遠のく意識の中、頭の中に響いてくる、ガシャンガシャンと器具のような音や、水のような音、そして下腹部を掃除機のようなもので吸われている感覚をうっすらと感じながら、私の手術は終了した。

 病室で目を覚ます寸前に、りんちゃんとマサちゃんの会話が聞こえてきた。

「トモのこと、絶対幸せにしてよ。じゃないと許さないから」

「わかってます。必ず幸せにします」

 



 手術を終え、私の家に帰った私とマサちゃんは、妊娠したこと、流産したこと、手術したこと、結婚を前提に付き合っていくこと、全てを私の両親に話した。両親はショックを受けたようだったが、『いずれ結婚するなら』と許してくれたのだった。

 そんなことがあって、私とマサちゃんはお互いの家を行き来し、デートを重ね、お互いの家族が公認の婚約カップルとなった。




 そして、年が明けた1月2日。今日は、マサちゃんと正月早々ちょっとした旅行に行こう、と約束していたので、待ち合わせの駅で彼を待った。

 が、何分経っても何時間経っても、マサちゃんが待ち合わせ場所に現れることはなかった。 



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