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忘れ物。  作者: 桃色 ぴんく。
11/15

~犯罪者の顔~

 大阪でマサちゃんと同棲をして約1年。私はまた自律神経がおかしくなり、パニック障害もひどくなってしまい、これ以上ここには居れない、と仕事を辞め、実家に戻ったのだった。

 だが、急に実家に帰ることになったので、マンションの契約がすぐには解約出来なかった。契約書によると、解約2か月前に申請するようになっていたので、私は神戸に戻ったが、残りの2か月はマサちゃんがそこに残ることになったのだった。




 その頃のマサちゃんは、以前より増してパチンコ屋に通い詰めていた。時々、私の実家まで来て私に会いに来て、泊まって帰っては、私の指輪やアクセサリーを無断で持ち帰っていた。

 お金がないけどパチンコに行きたい。でも、どうしてもお金がない。そんなマサちゃんは、毎月の給料が底をついてしまうと、その辺にある金品を質屋に持っていくという行動に出始めたのだ。

 最初は、私がクリスマスにマサちゃんにプレゼントした腕時計が消えた。

「あれ?今日時計は?」

と、聞くと最初は

「忘れてきた」

と、言っていたのだが、度々つけてないことが多くなり、問い詰めたら

「お金が欲しくて質屋に入れた」

と、白状したのだ。

 責めると、『給料入ったらすぐ戻せるから』と、あくまでも一時的であることを強調したので、とりあえず何も言わずに様子を見ていたのだが、そのうち、仕事に行く時間も惜しくなったらしく、仕事をさぼってはパチンコ屋に行く日が続いたようだった。

 そして、私の家に来ては、私の金目の物を持って行く、自分の家では妹の金目の物を勝手に質屋に入れる、さらには妹の彼氏のゴルフバックまで質屋に入れるという無茶苦茶な生活が続いていた。

「あんなの人間じゃない。悪魔よ!トモちゃんももうマサちゃんと別れた方がいい!」

と、何回もマサちゃんの妹に言われたが、私はマサちゃんに情が移っていたため、妹の忠告も聞くことが出来ず、なんとか自分の手でマサちゃんを更生させてあげたいと思っていたのだった。





 そんな時、マサちゃんから電話で言われた。

「トモちゃん・・・俺・・・大変なことしてしまった」

「え?なに?どうしたの?」

 聞けば、あまりのお金の欲しさに、もう質に入れる物もなくなり、マンションで寝転びながら考えていたら、隣の部屋に忍び込もうと思いついたらしいのだ。

 そして、包丁で、バルコニーのうすい鉄板のような壁を切り、隣のバルコニーに忍び込んだらしいのだ。だが、窓が閉まっていた上に、住人に見つかってしまい、未遂で逃げたと言うのだ。

「なんてことしてるの・・・」

と、思ったが

「もう捕まってしまうかも知れない。トモちゃん家に行っていいか」

と、縋られるときついことも言えなくなってしまった。

「・・・いいけど・・・どうやって来るの?電車賃は?」

「ない。自転車で行くから・・・」

 なんと大阪から神戸まで自転車で来ると言うのだ。私の方から迎えに行くことも出来ないし、本当に来るかわからないが、マサちゃんを待つことにした。





 マサちゃんがこっちに来るまでに、警察から私に電話がかかってきた。マンションの契約の名義は私になっているので、そこで起きた事件だから、とかかってきたのだが、私は体調不良で先月から実家に帰って来ていて、今は空き部屋になっていることを説明した。どこまで話したら大丈夫なのかもわからないので、とりあえず聞かれたことに無難に答えることしか出来なかった。




 

 夜遅くになり、マサちゃんが神戸についたようだった。神戸についた連絡が入るまでに、私は姉とその彼氏にこっちに来てもらっていた。いくら彼氏とはいえ、犯罪を犯すような人と2人きりで会うのが少し怖かったのだ。

 そして、この頃にはパニック障害が一番ひどい時期で、私は電車以外の他の乗り物も乗れず、駆け付けてくれた姉の彼氏の車に乗ることも出来ない状態だった。

 結局、姉たちには車を近くに置いて、徒歩で話し合いの場に向かってもらった。 待ち合わせ場所に現れたマサちゃんは、顔つきがひどく変わってしまっていた。頬がこけて、一見やつれてはいるが、目だけが爛々としているのだ。

 少し離れた場所から、マサちゃんの顔つきを見た姉の彼氏がぼそっと言ったのが聞こえた。

「犯罪者の顔してるな」





 結局、未遂で終わったため、充分な証拠もなく、マサちゃんが捕まることはなかった。だが、バルコニーの破損代金をなぜか契約者の私が払うことになり、3万円も取られたのだった。

 その後、半月ぐらいはマサちゃんは私の実家に住みついていた。すぐに家に戻りたくないと言うので、神戸で日雇いの仕事をすることを約束させて、しばらく実家に住まわせてもらったのだった。私の両親には、事件のことは話さなかった。ただ、こっちで仕事をしばらくするので通勤しやすいように半月ほどお世話になります、としか言わなかったが、両親もマサちゃんのことを信じていたので、特に何も言われることはなかった。

 




 そして、半月ほど私の実家にいたマサちゃんは、お兄さんが経営する焼き鳥屋で働くことが決まったようで、私の家を出て行った。ちゃんと働くところが見つかって良かった・・・と思っていたら、なんとその店の場所は石川県だった。神戸と大阪よりさらに遠い神戸と石川での遠距離恋愛になってしまったのだった。

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